●週末模型親父さんのところの「SUMICON 2011」用に引っ張り出してきたwz.29装甲車について。
実車に関してはwikipediaにも概略があるが、写真と解説は、さすがにPIBWLさんちのこのページとこのページが濃密。
キットはポーランドの模型店、ヤダル(JADAR)のガレージキット“自主レーベル”のひとつ、ARMO製の1:35。
同スケールでは、これ以前にもっとマイナーな、やはりポーランドのガレージメーカーから、エポキシレジン製のキットが出ていたらしい。PIBWLさんちの解説を読むと、ペーパークラフト屋さんのGPMからもキットがあったようなのだが、これらは絶版のはず。ほか、COMMANDER MODELSからも出ている(もうとっくに潰れたかと思ったらしっかり存続していた)。
●さすがに10輌しか作られていないポンコツ装甲車となると、2メーカーから出ていれば立派なもので、当分、新キットは出そうにない気がするし、となると、特に自国製であるARMOのキットにはそこそこのレベルを期待したいところ。
……ではあるのだけれど、これがだいぶ悩ましい出来。
そもそも買ってから今まで死蔵していたのも、最初にチェックした段階で何だかトホホな部分が結構目に付いたからなのだが、実際に着手してみると、予想以上に多々ひっかかる箇所があることが判明。
●単純に模型としての質に関して。
・気泡は、少なくとも表面に大穴が開いているような箇所はほとんど無し。薄皮一枚で入っている箇所はいくつかあった。ただし、シャーシフレームの先端部などいくつか、細かったり薄かったりする端や角の部分の小さな欠損はあった。
・大型パーツの明らかな反りやねじれはないが、特に車体側面装甲など、微妙に平面が出ていない。
・原型製作時の接着剤跡やヤスリがけの跡などが残っていて、仕上げが粗い。また原型(あるいは2次原型)の段階からあったのか、それとも製品成型時のミスなのか、車体表面に何ヶ所かくさび状の窪み傷があった。
・上記のこと含め、どうにも原型の(あまりよくない意味での)手作り感が横溢していて、リベット列が不揃いだったり、蝶番がいかにもプラバンの切れ端とプラ棒を付けただけの感じだったり、それがまた歪んでいたりする。ダブルになっている後輪を合わせようとすると、間隔が斜めになってしまうだけでなく、よく見ると少し波打ってさえいる。……これは斜めになっているのだけなんとか直して、波打っているのを極力目立たないようにするしかないだろうなあ。
●プロポーション。
・このページの側面写真と右写真を見比べると、特に車体後部側面形は違っていて、実車に比べキットはちょっと寸詰まりな感じ。もっとも、それを除けば全体形は(元が特徴があり過ぎる車輌なので)そこそこ満足すべきレベル。というより、先述の、微妙に側面の平面が出ていない問題を含め、あまりウルサイことを言うと「いっそ車体をプラバンで1から作り直したほうが」になってしまう。くわばらくわばら。
●ディテール。
・先述の「どうも作りが粗い」ことと重なるが、車体側面前後2箇所ずつ、前面左の計5箇所の小さいバイザーフラップは、おそらく同じ形状のものなのだが、キットでは右写真のほうに大きさがまちまち。鮮明な写真が(少なくとも私の手元には)そう多くない車輌なので、「いや、本物も大きさが微妙に違うんですよ」という可能性も皆無とは言えないが、たぶんそれはない、と思う。
・合わせて、特に側面後部のバイザーは、キットの位置は前過ぎ。実車では、バイザーの後ろのラインは、上の装甲板の角よりも後ろ寄りにある。
・車体前後の操縦席用バイザー(例えば上のバイザーパーツの写真の一番右のもの)は、キットでは単純な1枚物になっているが、実車では真ん中に大きく切り欠き(穴)があり、スリットのある面は地面に垂直な、二重構造というか二段構造というか、とにかくもっと凝った作りになっている。これはCOMMANDERのキットも同様なのだが、COMMANDERSはムクの車体とバイザーが一体なので修正は難しそう。その点ではARMOのほうが楽。
・車体左右の大型ハッチドアは、実は実車では左右とも、蝶番が左にある。つまり車体左側面では前に開き、右側面では後ろに開く構造。キットは左右とも前開きになってしまっている。これまたどういうわけかCOMMANDERも同じミスをしている。
・砲塔パーツには、防御上これはどうなのよと思うような大きなスリットがボコボコ開いているが、実車はもっと狭くて小さい。位置も微妙にずれている感じ。
・機銃マウントのカラー部は、キットのような単純なリングではなく、上部ほど大きく、庇状に凸部がある。また車体後部機銃マウントは、キットは位置が下にずれている。
・車輪のホイール部の形状が、どうやら全然違う。しかし不思議なことに、wz.29の原型となったURSUS A型トラックの、(メーカー違いの)S MODEL製キット(右は昔作ったもの)のホイルも、ついでにCOMMANDERのwz.29のキットも、ほぼ似たようなホイル形状になっている。皆揃って真似し合って同じ形状になってしまったのか、それともURSUS Aではこういう形状が一般的だったのか、どうもはっきりしない(が、もしかしたら“Wrzesien 1939 POJAZDY WOJSKA POLSKIEGO”のwz.29のカラー図でこんな形状に描かれているのが原因かもしてない)。
●というような感じで、当然ながら1から作り直すような不毛なことはせず、このキットをなんとか成仏させる事を考えるとなると、どこまで手を入れ、どこは目をつぶるのが有効かの判断が重要、ということになりそう。
とりあえず現段階では、キット表面の傷(窪み)を埋めたり、欠けを補ったり、シャーシを車体と合わせてみたりの基礎工作中。
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