TK

ポーランド・メタボ士官

●まさに現在進行形で鋭意製作中というわけではないのだが、たまには模型話でもしないと、モデラーとしてのアイデンティティが自分自身でも怪しくなってくるので、ちょっとヒマネタを一本。

ちなみに、盟友・青木伸也氏がかつて言ったことだが、単純に「模型を作る人」は「モ↑デ↓ラー↓」であるのに対して、「模型作りに入れ込んじゃってる人」(いわゆるマニア層)は「モ↓デ↑ ラー→」と、同じモデラーでも呼称が(イントネーションが)異なるのだそうだ。なんだそりゃ。

●まあ、そんなこんなでヒマネタ。

私は基本、車両は作るがフィギュアは作らない(作れない)ので、フィギュアのセットは滅多なことでは買わないし(たまにネタとして面白いものは、単純に「持っている」目的のために買う)、車両キットに付属のフィギュアも“持ち腐れ”状態にしてしまうのだが、なんとなく気に入って、ちょっとだけいじっているフィギュアが一体。

IBG社製、TKS豆戦車 20mm砲装備型(通常仕様キット)に付属の、「見るからにメタボ体型のポーランド機械化部隊士官」である。

4,5年前に同キットのレビューを書いた時にも触れたが、特定の個人を表現したわけではない無名将兵のインジェクションキットのフィギュアで、ここまでのデブはいなかったのではないか、とも思う(今ならICMとかMBとかで、これと競るくらいの体格が出ているかもしれないが)。これ、2人乗りの車両に2体入っているフィギュアの片割れだから、当然、TKSの車長兼砲手っていう設定のはずだよなあ……。あの小さいTKSに、この腹でちゃんと乗れるのか。そもそも、2人乗りの豆戦車にこんなヤツが乗ったら、車体が右に傾いちゃったりしないのか。

ちなみに同じIBGのTKSでも、機銃装備型にはまた別のフィギュア2体がついている。

さて、問題のフィギュアは下のような感じ。

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1939年戦役までのポーランド陸軍戦車兵の標準的な軍装は、カーキ色のツナギに編上げショートブーツで、IBGのTKS付属のフィギュアも、他3体(20mm砲型の残り1体と機銃型の2体)はすべてその格好をしている。

このメタボさんだけは、黒革のハーフコートと乗馬靴。

1939年時点で、ポーランド陸軍で唯一の完全機械化部隊であったという第10自動車化騎兵旅団は、独特の黒革コートから「黒旅団」と呼ばれていたそうな。このフィギュアの乗馬靴とハーフコートは、同旅団所属であることを示すのではないか……と思うのだが、どうもこれについてはキットの説明書でも一言も触れられていないし、手元に詳しい資料があるわけでもないので、いちはっきりしない。

下写真はwikimedia commonsから、戦争直前の第10自動車化騎兵旅団の1シーン(File:01938 10th Motorized Cavalry Brigade, Zaolzie, col. Stanisław Maczek.png)。

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ご覧のように、「同旅団の独特の黒コート」といっても、一般の兵のものはロングコート。ドイツ軍の第一次大戦型ヘルメットを被っているのも、ポーランド軍のなかでこの部隊だけの特徴。そして中央2人のベレー帽の高級将校のみ、乗馬ブーツとハーフコートを着ている。このハーフコートも第10旅団だけの軍装なのか、それとも他部隊でも着用例があるものなのかは、よく判らない。

ちなみにオスプレイ「Men-at-Arms」シリーズの一冊、ザロガ先生の「The Polish Army 1939-45」のカラー図版にも、黒革コートを着た第10旅団の兵士が出ているのだが、その黒革コートはほぼ膝丈で、上写真のロングコートとハーフコートのちょうど中間くらいの感じ。そういう丈の第三のコートもあったのか、単なる誤りなのか、これまたよく判らない。

ちょっと脱線話を足しておくと、上写真の中央右側のちょっと背が低めなのが、第10自動車化騎兵旅団長、スタニスワフ・マチェク。この当時は大佐かな? 後にはフランス軍下の亡命ポーランド部隊(部隊名も本国時代を引き継いで第10装甲騎兵旅団)を率い、さらには英軍下で編成されたポーランド第一戦車師団を率いてノルマンディー以後の北ヨーロッパ戦線で戦っている。タミヤのクロムウェルには、マチェク将軍乗車の指揮戦車のデカールも入っている(ただしキット自体に指揮戦車仕様に組むためのパーツはない)。

●さて、このメタボさんのフィギュアは、胴体はごろんと一体成型、脚はハーフコートの裾のラインから下が別部品。

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というわけで、コートの裾の内側はスパッと一平面に埋まっている(昔のタミヤのフィギュア、例えば「将校セット」とか「BMWサイドカー」のコート姿の兵士などと似た感じ)。まあ、普通に立てておけばまず見えない部分ではあるが、なんとなくキモチワルイので、脚を接着した後に、自作のノミやペンナイフでカリカリと削り込んだ(右写真)。

ついでに、コート裾近くの前合わせ部分も深く削り込み。ブーツの靴底も(昔のタミヤふうに)ペッタンコだったので、かかとが独立するよう段差を削った。もともと、それほどモールドがシャープというわけでもないので、他もできる範囲でちょっとずつ彫刻を強調した。

●このフィギュアの頭部は、前にも書いたが、メタボ体型によく似合った感じのヒゲのおっさん顔。モールドの甘さはあるが、「シュラフタ(ポーランド貴族)って、こんな感じかな?」と思わせるものがある。いや、知らんけど。

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そんなわけで、頭部はそのままキットのこれを使いたいのだが、残念なことに、頭部と一体成型されたヘルメットの形状がよくないうえに、そもそも小さい(「風の谷のナウシカ」のジオラマか何かに城オジとして使うにはよさそうだが)。

ポーランド装甲車両乗員用のヘルメットはフランス軍式のもので、第一次大戦中に開発された、世界初の近代戦用ヘルメットとして有名なアドリアン・ヘルメットのバリエーション。戦車兵用ヘルメットは、通常のアドリアン・ヘルメットの、四周に張り出した“つば”部分のうち前部・左右部を除き(バリエーションによって若干の差があるものの、後部のつばは逆に拡大してある場合が多いようだ)、前面には革製?のパッドが取り付けられている。頭にかぶさるクラウン?部分の形状は基本のアドリアン・ヘルメットと変わりない感じで、IBGのフィギュアのように後ろ広がりになってしまっているのはやはり格好が悪い。そこで、ヘルメット部分だけを他社製と挿げ替えることを計画する。

右写真は、その検討用に手元の同型ヘルメットのパーツを並べてみたもの。右端がこのフィギュアの頭部、上のモールド色が最も濃いのがエレールのR35/H35付属のもの、左がタミヤのルノーUE付属のもの。後になって「あ、そういえばminiartのも持ってたな」と思い出したが写していない。

ご覧のように、エレールのものも全体の形状バランスは悪くないが、昔のエレールのフィギュアは、他社製フィギュアでよくある「頭を半分切って(中の埋まった)ヘルメット部品を付ける」式ではなく、「中空のヘルメットパーツを実際にフィギュアの頭にかぶせる」形式のため、やや大きめになっている。先述のようにIBGの頭部のヘルメットは小さいが、同時に頭部自体もかなり“小顔”なので、エレールのヘルメットでは似合わないかもしれない。――で、結局タミヤ製を採用することにした。

●ここからまたひと手間。

アドリアン・ヘルメットは、頂部に前後方向の「とさか」が付いている。ちょっと古めかしく見える理由でもあるが、これは塹壕の中で、頭上で炸裂する砲弾の破片や降ってくる岩などの衝撃をそらし、頭部を守る役割を担っている。ちなみに、ソ連軍の戦前型ヘルメット(СШ-36)も頂部に「とさか」があるが、これは通風孔のカバーだそうだ。

さて、戦車兵用ヘルメットの場合、ポーランド軍用ではこの「とさか」が残っているのだが、この時期の本国フランス軍仕様では通常付いていない(フランス軍用でも時期によっては付いている模様)。当然、タミヤやエレールのフランス戦車兵用ヘルメットには付いていないので、流用に際しては「どうにかする」必要がある。

形状的にもなんだか面倒くさく、ここはタミヤのキットに一緒に入っている通常型のアドリアン・ヘルメット(とさか付き)からつばを削り落としてパッドを付けるほうが、もしかしたら楽なのでは?とも考えたのだが、結局は「戦車兵用にとさか増設」の道を選んだ。この際、フランス軍仕様では付いている、ヘルメット前面の兵科エンブレムを削り落とした。

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●そして腕も付けた。

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正規の接着位置だと、まさに双眼鏡を覗き込んでいる格好になるようなのだが、それだとせっかくの「シュラフタ顔」(←勝手な決め付け)が隠れてしまうので、肩の接合部があまり不自然にならない範囲で、やや腕を下ろして、双眼鏡を少し目から離した状態にした(双眼鏡自体は、この写真では未取り付け)。

ただ、腕側に、肩章に対応した位置にちょっと出っ張りがあって、これがやや前方にずれてしまったので、今後削って付け直すかも。

なお、キットのままだとやや後ろへの「そっくり返り」がきつい感じがしたので、ブーツのかかと部分に0.2mmのプラペーパーを貼り増しした。

●現時点での製作に関しては以上。

ただ、ここから先に関しては個人的にちょっと悩みどころ。

当記事の最初に、「私は基本、車両は作るがフィギュアは作らない(作れない)」と書いたが、実際、私はここ数十年(!)ミリタリーフィギュアは作って(塗って)いない。いや、ミリタリー以外でも作っていないけれども。

もともと私はちまちまと対象のディテールをいじるのは(いつも面倒くさいと言いつつも)好きだが、塗装にはあまり熱意を持てないでいる。車輛においてもそうなのだが、特に製作上、組立:塗装の重要性の比率が大きく後者に傾いているフィギュアの場合は、はなから製作しようという気が起きないくらいに縁遠い。

そんな私がフィギュアについてあれこれ言うこと自体がおこがましいのはもちろんのことなのだが、そもそもが、無生物で基本「金属の塊」である車輛(やら飛行機やら)と、柔らかく固定した形状がない生物とでは、「模型にする」切り口自体がまったく異なっている、ような気もする。

もうちょっと補足すると、形がきちんと定まっている「モノ」である車輛や航空機を縮小して模型化するのはあまり無理がないのに対して、「ある一瞬を固定化して縮小する」という過程が一つ加わってしまうフィギュアの場合は、より実物と模型との間に距離があって、「ホンモノらしさ」の追求はさらに難しい気がしている。実際のところ、模型の展示会や、あるいはweb上の写真でフィギュア作品を見て、「うわっ、これスゲー!」と思うことはしばしばあるのだけれど、それは、その作品が「まるで人間に見える」からではなくて、「フィギュア作品として素晴らしい完成度を持っている」から、という場合が多い(と、個人的には感じている)。現実の精緻な復元ではなく、何か、フィギュア製作ならではの la bella maniera がある、というか。

だからといってフィギュア製作を車輛製作より一段下に見ている、ということではなく、単に、例えばテレビで素晴らしい職人芸を見て、「うわ、こりゃスゲーな!」と思いはするけれど、それを自分でする気にはならない、という感じ。

もちろん、車輛やら砲やらを作るうえで、「これはフィギュアが欲しいな」と思う場合もある。例えばトラックや砲の場合など、国籍マークなど付いているのは稀なので、それだけでは何軍所属かもわかない場合も多い。そんな時は、特徴的な軍装のフィギュアを添えておきたくなる。

とはいえ、そのために改めてフィギュア製作のスキルを磨くのも面倒だし、特に最近は老眼が進んで1:35フィギュアの細部塗装などますます無理感が強くなってきたこともあり、「フィギュアを作るだけは作って、サーフェサー吹いてスミイレだけして車輛(ほか)の隣に置いておくのもアリかなあ、などとも思い始めている。この「ポーランド・メタボ士官」も、もしかしたらサーフェサー仕上げになるかも。

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ポーランドのペーパークラフト

●ポーランドは(どういう理由でか)ペーパークラフトが盛んで、ミリタリー物も含めて多種のペーパークラフトのキットが出版されている。

有名どころではGPMというメーカー(出版社?)があって、ここは大戦物のポーランド軍車両なども多く出している。私もタトラT18装甲トロッコと、装甲列車編成に含まれるルノーFT搭載貨車を持っている。……が、もったいなくてハサミは入れていない。

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ちなみにGPMの陸物は、基本1:25。プラモデル畑の人間から見ると半端なスケールだが、これはやはり、紙のパーツを切ったり折ったりするにあたっては、ある程度の大きさがあったほうがやりやすいから、という理由もありそう。

●と、今回紹介したいメインは上ではなく。

先日、ネット上でふらふらしていて、ポーランドのペーパークラフト・マニアが自作のペーパークラフトのキットを無償公開しているサイトに行きついた。

Exclusive Models」というサイトで、現在は17作品が公開されている。

ラインナップは大戦中の陸物のみ。ティーガーなどの"有名どころ"も混じっているが、割合的には自国ポーランド物が半数近くを占めている。とりあえず現時点でのラインナップを(新しい順に)並べてみる。最初の作品の公開日は2007年2月、最新は2021年5月。

#017 TK-S(機銃型)
#016 PZInż. 303
#015 ACV ドチェスター
#014 4TP
#013 ウルススA型トラック
#012 PzKpfw VI Ausf.H1 ティーガーI型
#011 SU-85
#010 ウィリス・ジープ
#009 wz.34装甲車
#008 PZInż. 222
#007 SU-122
#006 クロムウェルMk. VI
#005 Sd.Kfz.251/1 Ausf.C
#004 駆逐戦車 IV/70
#003 ポルスキ・フィアット 614
#002 SdKfz 173 ヤクトパンター
#001 7TP

ペーパークラフトの市販のキットには、上のGPMのもののように、塗装やマーキングも再現された状態でパーツが展開されているものが多いが、「Exclusive Models」のキットは、すべて白地図ならぬ「白キット」。

珍しいのは、(最新のTKSを除いて)1:72というペーパークラフトでは珍しいミニスケールであることと、しかも小さいくせに、妙に部品構成が細かく複雑で凝っていること。

初期の作品はまだまだ「いかにもペーパークラフト」な形状の簡略化が目立っていたが、最近のものになるにつれてだんだんと複雑化。

そもそもペーパークラフトというのは、基本的に紙を折ったり曲げたりで立体を出していくのが普通だが(貼り合わせることで厚み/強度を出すことはある)、この「Exclusive Models」の場合は、一部パーツに厚みの指定があったり(1mm厚とか0.5mm厚とか)、さらには単純に厚みだけではなく、端部分をなだらかに丸くするとか、断面形をしているものもある。どうやら、厚みのある紙素材を押しつぶしてそういう断面形に仕上げろということらしい。

そのあたり、ずいぶん通常のペーパークラフトの「作法」と違っていて独自性が高いが、最新の数作を除いては、説明がポーランド語のみ。しかも組立手順は(割と古いペーパークラフトで見られる)平面図にパーツ番号が指示されているだけのものだったりするので、作り方の細かい部分がどうもはっきりしない。

また、(それぞれ太さが指定されている)金属線で作るよう指示されているパーツも結構ある(金属線等の使用はGPMのキットなどでも見られるが、それよりだいぶ割合が多い気がする)。

うーん。なんだか試行錯誤を重ねないと、この“メーカー”のペーパークラフトは、私には組み立てきれない気がする。

●下写真は、最新キットであるTKS(機銃装備型)。これだけはスケールがアップして1:48。なお、我が家のプリンタのカラーインクが切れかけていたので、多色刷りページの印刷がちょっと汚い(キットそのものは、上記のようにモノクロなので関係ない)。

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もちろん、実車がミニサイズのタンケッテなので、48とはいっても大戦後半の戦車の72クラスの大きさしかないが、「Exclusive Models」にとってはこれまでにない大スケール(?)ということもあって、一層気合が入っている。

キットはPDFでA4版7ページあるが、パーツそれ自体は1ページ+1/3程度。もっともそれは車輛(=パーツ)が小さいせいで、パーツの細密度はかなり高い。

だいたい、このスケールのペーパークラフトなら、履帯は1枚のベルト式か、せいぜい裏表張り合わせになりそうなものだが、このキットでは裏側は折りを入れて複列のガイドホーンを表現、さらに表側は細かい接地リブ部分を一つ一つ貼っていけ(!)という、なかなか病的な指示が。ちなみに、上右写真の右下あたり、黒く四角く写っているのが接地リブパーツ。一つのパーツの大きさは、0.3mm×3mm程度。うげー。

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7ページもあるくせにパーツが1+1/3ページなのは、同社(?)で初めて、組立説明がステップ・バイ・ステップ形式で図示されているため。これに約3ページが費やされている。

なお、上のシリーズ概略で「一部パーツに厚みの指定があったり(1mm厚とか0.5mm厚とか)」と書いたように、このキットでも車体の内部構造材は1mm厚、フェンダーは0.5m厚などの指定がある。その他の基本パーツの厚みはどうなのよ?というのが疑問だったのだが、よくよく印刷結果を眺めまわしていたら、ページの隅に書かれていた(右写真)。

重さ指定なので紙質によっても若干違いが出てきそうだが、おおよそ、0.09~0.1mm程度。通常ペーパークラフトの印刷で推奨される厚紙よりは薄手だが、普通のOA用紙よりは厚手……な感じ?

そもそも0.5mmとか1mmとかの指定のパーツはどうしたらいいんだろう? 厚紙を貼り合わせる?

まあ、そんなこんなで、「フリーのペーパークラフト!? いいね! すぐ作ろう!!」という感じにはならない。……でも、いつか作ってみたい気はする。

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TKS用履帯・改訂版 CHINO MODEL 1:35

●昨年秋、国内の3Dプリント・ガレージ・メーカー、CHINO MODEL製のTKS用連結可動履帯の紹介をしたが(当該記事はこちら)、その後、CHINO MODELさんから、改訂版2種をご提供いただいた――という話をちらりと書いたのは初夏(6月21日付)のことで、その時に「近々、きちんとレビューをアップ予定」と書いたにも関わらず、延々と放置してしまった。情けないやら申し訳ないやら。

というわけで、改めてレビュー記事を。

CHINO MODELさんはfacebookのAFV関連のグループでも活動していて、製品化の要望や改良に関してかなり柔軟に対応している。国内メーカーというだけでなく、3Dプリントという生産方式の強みを発揮しているとは言えるが、そもそもご本人のフットワークが軽くなければここまではできないと思う。

TKSの履帯に関しても、最新キットであるIBGの起動輪とのフィッティングがうまくいかない(これについては後述するが、全面的にIBGが悪い)と連絡したところ、かなりの試行錯誤をしていただいた。今回の改訂版は、そうしたあれこれを踏まえたもの。

改訂版は2種類あり、

(1).連結可動式

連結可動式の履板がびっしりモールドされた1枚のパーツと、起動輪1組およびTOM、MIRAGEキットへの起動輪フィット用アダプター、履帯組立用治具(連結用治具と金属線切断用治具)、20mm機関砲FK-A wz.38砲身のセット。

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(2).足回りが一体成型された「イージー・パーツ」

連結状態の履帯に、起動輪・誘導輪・転輪・上部転輪が丸ごと一体で成型されたもの。各転輪類の間隔や起動輪の取付部はIBGのキットに準拠。つまり、こちらはほぼIBG製キット専用のパーツといえる。

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●それぞれについて、もう少し細かいチェックしてみることにする。まずは(1)の連結可動式について。

初期生産分は連結部の穴が中央で貫通しておらず、連結用の金属線を左右からそれぞれ別々に挿し込む必要があったが、今回の改訂版は一気に挿し込めるようになっている。拡大してよく見ると、穴の詰まりを防ぐため、真ん中のかみ合わせを無理にチューブ状にせず、C字断面にすることでピンを挿しやすくしているようだ。

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もともとこの履板は1:72の中戦車クラスと同等の大きさしかなく、私もこうして写真に撮って拡大して、ようやく「あ、筒じゃないのか!」と分かったくらいなので、こういう工夫は十分「あり」ではないかと思う。とにかく、一つ繋ぐたびに2本金属線を挿すのはなかなか大変で、実を言えば旧版は20コマくらい繋いだところで息切れしてそのままになっている(しばらく模型から遠ざかっていたためもあるが)。

旧版のパーツの取り外しの際は、サポート材を根元から切って、その後ニッパーで1本ずつ切り離していたのだが、新版の説明書には「履帯はサポート材から剥がして外すことが出来ます。爪で引っ掛け、履帯の前後方向へ力を掛けるようにすると破損しにくいです」とある(バラバラにしてなくしてしまうと怖いのでまだ試していない)。

履板は300枚入り。説明書によれば、IBGの場合で片側115枚、RPM/TOMは117枚、Mirageは121枚だそう。Mirageのキットは試作車のTKS-BとTKSのコンパチだが、使用枚数が多いのは、もしかしたらTKS-B仕様でカウントしたものかも。旧版を30コマくらい切り離し、20コマくらい繋ぐ過程で2,3枚破損させてしまったが、これくらい余裕があれば足りなくなることはなさそう。

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起動輪はボルトや歯もシャープでなかなか美しい。IBGのキットにはそのまま、TOM/RPM、Mirageのキットには付属のアダプターを介して取り付けられる由。わざわざ専用の起動輪が必要な理由は、既存のインジェクションキット3種の起動輪が、イマイチ~イマサンくらいの出来だったため。

やや寄り道して、以下、それらの検証を。

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①は、TKSの初のインジェクション・キットだったTOM/RPMのもの。初キットとしてなかなか頑張った!とは言えるが、歯が奥まっていることを筆頭に、起動輪のディテールはあまりよくなく、はっきり言えば「似ていない」。

②はMirage HOBBYのもの。ディテールはやや甘さがあるものの、きちんと「あ、TKSの起動輪だ」とわかる出来。

③は最新のIBGの起動輪。ホイール部のディテール、ボルトのメリハリなどはさすが最新キットで、実物にもよく似ている……のだが、前2者の起動輪と比べ、これだけ歯数が2つも多い! 実車の起動輪の歯数を数えてみたところ、どうやら前2者の30が正解の様子。

このメーカー、アイテム選択等々、(特に私のようなモデラーにとって)絶妙なところを突いてくるのに、どうも詰めが甘いところがあると常々感じていたのだが、今回もやってくれたぜIBG。そりゃCHINO MODELのせっかくの履帯のピッチが合わないわけだよ……。

もちろん、起動輪の歯数が若干違っていたとしてもそのキットに付属の履帯がきっちり使えるのであれば、キットとしては破綻はないし、そもそもパッと見で「あ、歯数が多い/少ない」なんて判ることはまずないと思う。ただ、別途アフターパーツが出てくるとか、他社製パーツと交換したいとかいう場合には、それぞれ正確さがあって初めて「互換性」が成り立つわけなので、やはりこういうところはちゃんと押さえておいてほしいと思う。次出すII号戦車初期型、期待してますよ~IBGさん。

ついでと言っては何だが、wikimedia commonsから、実物の足回り&履帯写真を引用しておく(履帯が掛かっていると歯数は数えづらいが)。

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左は「File:TKS Pict0167.jpg」、1939年戦時のポーランドAFVに関しては虎の巻的なサイト、PIBWLのDerelaさん撮影のもの。右は「File:TK gasienica.jpg」。

こちらのセットのもう一つの目玉は、20mm機関砲身。

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IBGのTKS/20mmのキットには、足回りパーツがバラバラの通常キットと、転輪と履帯が一発成型の「イージーキット」とがあるが、通常版のほうは真鍮挽き物の砲身付き(右写真下側)。当然強度的には金属砲身だが、CHINO MODEL製はフラッシュハイダー根元の穴もしっかり抜けているのがアドバンテージ。3Dプリントならではだが、CHINO MODELのパーツは根元まで砲腔が開いており、中に0.7mm金属線を入れて強度を確保/変形を防止するよう推奨されている。

なお、実物のフラッシュハイダーは、三脚付きの重機型の場合はキット(IBG&CHINO MODEL)のような感じだが(下左)、車載型では穴の部分が太くなっておらず、穴の形状自体も細長いものがみられる(下右)。どちらが一般的だったかはよくわからない。そもそも20mm搭載車輛の実車写真があまり多くないうえ、砲口部にカバーをかけていたりするので。写真はいずれもwikimedia commons(パブリック・ドメイン)。

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●(2)の「イージー・パーツ」版について。

こちらは片側ずつ、履帯はすべて繋がった状態で、起動輪・誘導輪・転輪・上部転輪と一体で成型されている。IBGの「イージーキット」の足回りの当該パーツをそのまま交換する形となっている。

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インジェクションのパーツでこのような構成とした場合、当然ながら、複雑なスライド型でも使わない限り抜きの方向に直交したディテールは再現できないが、3Dプリントパーツの場合は、連結可動式と遜色のないレベルで再現できる。起動輪の歯が噛みあう部分も、単純に「履帯の穴が埋まっている」のではなく、しっかり歯が噛んだ形状が再現されている。

ここまで再現されていれば、わざわざ連結する手間を考えれば、(少なくとも個人的には)連結可動式よりも圧倒的にこちらの製品が魅力的。私はIBGのキットはオチキス機銃型、20mm機関砲型、両方とも通常版を買ってしまったが、このパーツを使うことが前提なら、日本での流通価格で1000円近く安い「イージーキット」で済むというのも魅力。もちろん、連結可動式のほうは塗り分けしやすく、IBG以外のキットにも使いやすいというメリットはある。

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このセットのもうひとつ良いところは、もとのIBGのパーツ(右写真右側)に比べ、誘導輪の華奢さがよりよく再現されていること。IBGのパーツはスポーク部が分厚いだけでなく、私の入手したキットは一部樹脂のショートなどもあり、手を入れる必要を感じていたので、これは有り難い。

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サポート材から取り外し(サポート材との接続部はおそらく200か所くらいあるので、切り離しにはかなり気を使った)、上部転輪と転輪とにキットのビーム(桁)のパーツを合わせてみたもの。間隔はぴったりで、無改造でキットに使用できる。

ただし、通常、インジェクションキットでこういう一体成型の構成になっている場合、一体のパーツはそれなりの強度があるが、このパーツの場合は「ちょっと連結ピンが堅めの可動履帯です」くらいぐにょぐにょ動く。3Dプリントの特徴で、各パーツの隙間まである程度再現されているためで、キットのビーム裏の軸を各転輪に通すのにちょっと手間取った。

しかしそんなことよりも、ここまで繊細な履帯を使うと、今度は、写真にも写っているビームを含め、キットのサスペンション周りのパーツの大味さが逆に気になってしまう。もういっそのこと、サスまでまるごと一体でパーツ化してほしかったような……。

上部転輪のビームやその他細部に関しては、ABERのエッチングパーツ(下)にも含まれているが、このエッチングはそもそもTOM/RPMのキット用なので、どこまで使えるかは未知数。また、パーツの大きさ的にもことに厚みが目立つ転輪部の主桁はエッチングには含まれていない。

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TKS用連結可動履帯 CHINO MODEL 1:35

20210906_171414 ●空恐ろしいものを入手してしまった。

CHINO MODEL製、TKS用連結可動履帯。

当今流行の3Dプリント製品。まあ、さまざまなアフターパーツが3Dプリントで出るようになってきたので、私もそのうち何か必ず手にすることになるだろうと思っていたが、最初がまさかこんなに“とんがった”アイテムになるとは思わなかった。

CHINO、といっても中国製ではなくて(スペイン語だとchineseの意味になる……たぶん)日本製。

●(製品の必要性に関する)バックグラウンド。

これまでにポーランドの豆戦車、TK系のインジェクションキットは、大別して以下の3社から出ている。(約20年前に書いたTK系の実車解説はこちら

TOM/RPM:たぶん90年代に、当初TOMからTKS(20mm)とTK-3が発売され、後にRPMに移って、TKS(オチキス機銃型)だけでなく、TKDやらTKWやらドイツ軍鹵獲仕様やら現実に存在しない変な改造トラクターやら、やたらたくさんのバリエーション展開がなされた。

MIRAGE HOBBY:最初のキットは90年代末? TOMの箱替えかと思ったらまさかの新規開発キットだった。どういう風の吹き回しなのか、たった1輌だけ試作された(既存のTKSから改造)試作改良型のTKS-Bとして発売されたが、実際には通常のTKSとしても組めるコンパチキット。バリエーションとして、前後して出た同社ルノーUE用のトレーラーカーゴを付けたドイツ軍鹵獲仕様も発売された。

IBG:2018年発売の最新キット。基本的なバリエーションは20mm装備型とオチキス機銃装備型の2種だが、それぞれポーランド迷彩色の塗料付きセット、足回りの組立をロコ方式で簡略化させたイージーキット仕様も発売。機銃型(通常キットのみ?)はたぶんフィギュアとデカールを替えて、ドイツ軍鹵獲仕様も出ている。

うち、IBGについては当ブログでもキットレビューを載せている。

20210909_105504 履帯に関しては、TOM/RPMとIBGはインジェクションの部分連結式、MIRAGE HOBBYは軟質樹脂のベルト式のものが付属している。3社の履帯は、おおよそ写真のような感じ(左から、TOM、MIRAGE、IBG)。

実際、車輛そのものに関しては新キットになるほど出来がよく、それぞれが旧キットに比べて、「うん、さすが、一日の長がある」と思わせる出来だったのだが(TOMのキットも初のインジェクションキットとして結構頑張っていたが)、履帯は別で、最新のIBGのキットのものは履板表面の窪みもなくぱっと見でディテール不足(もちろん足回りが一体化されたイージーキット仕様はパターンを云々する以前の問題)。MIRAGEのベルト式はまるでハシゴのような代物で、むしろ最古のTOM製の履帯が一番マトモという状況だった。

そんなわけで、TKマニアであることを自認する私にとっては、ぜひとも手を出してみたいアイテム、ということになる。

●そんな履帯セットの中身はこんな感じ(金尺は私の)。

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3Dプリントされた履板が整然と並んだ板が一枚。パッと見ると目の焦点が変な風に合ってしまってクラクラした(ステレオグラムで変な模様や文字が浮かび上がってくるようなことはなかった)。

ベースの上に並んだ履板は13×20列で、計260枚。付属の説明書によれば、TOM/RPMのキットに使用した場合に片側に必要な枚数は113枚だそうなので、1輌分組んで十分にお釣りが来ることになる。これだけ細かいと破損や紛失が怖いので、十分な余裕は有り難い。例えばMIRAGE HOBBYのキットで(やや足回りが長い)TKS-Bを組み立てたいなんて言う場合でも対応可能だと思う。まあ、わざわざ試作車のTKS-Bを作ろう!なんて人がそんなに多いとは思わないけれど。

流石にこれだけ細かいと、「連結可動」にこだわらなくても、むしろキットに合わせて「リンク&レングス方式(部分連結式)」になっていたほうが組み立てのハードルはずっと低くなるが、TKSはインジェクションキットだけで3種も出ているので、そのどれにも使えることを考えれば、1リンクずつバラバラの方がよい。それに、3Dプリントするにあたっても、同じ図形の単純な繰り返しである現状のほうが、少しずつ傾きが変わる連結体よりも楽なのではないかと思う(素人の想像)。

20210906_220242 ●組立に関しては、説明書ではおおよそ以下のように指示されている。

  1. ニッパー等を使ってサポート材(役割は異なるが、形状的にはインジェクションプラキットのランナーゲートに当たる部分)を根元部分で丁寧に切り離す。その後、サポート材を部品の至近位置で1つずつ切り離し除去。
  2. 履板を繋げ、かみ合わせ部に連結ピンを通す(0.1~0.2mmの金属線を推奨)。
  3. ピン外側を瞬着で固定。

1に関しては、当初はニッパーで数リンクを切り離してみたが、そもそも極小の履板にサポート材の「脚」は6本も繋がっていて、しかもその脚の位置が一直線ではないので、一度には切り離せない。そのため、どうしても切断中にパーツに余計な力がかかることになって不安なので、現状、ベース板の端から、ペンナイフでそぎ取るような形で切り離す方式をとることにした。

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「エッチング・ソーで切り離すのはどうだろう?」などとも考えたが、まだ試していない。ちなみに樹脂の“質感”は、通常のインジェクションキットのスチロール樹脂よりはやや硬めでもろい感じがするが、レジンキットの無発砲ウレタンよりはずっと粘りがある印象(それが3Dプリントの樹脂で一般的なものなのかどうかは経験値が低いので何とも言えない)。

現時点で20数枚切り離し、サポート材を除去したが、そこまでの過程で、2リンク、ガイドホーン部を破損した。そこそこ慣れてきたので、今後はもっと歩留まりがよくなるはず。

20210906_222847 それにしても、とにかく履板が小さい。72のIV号戦車(レベル)と比べてみたが、TKS用のほうが小さかった。なるほど、つまり72のIV号戦車の連結可動履帯も可能ってことか……(もちろん欲しいと言っているわけではない。言ってないよ! 本当だよ!)。

さて。

とりあえず履板それ自体は切り出したが、これを繋ぐという激しく大変な作業が待ち受けている。

繋ぐにあたっては、指先で一つ一つ繋げていくのは流石に無理があるように感じたので、写真のような治具を自作した。ガイドホーン間の寸法におおよそ合わせ、タミヤの3mm角棒に0.3mmプラバンを両側に貼り増して3.6mm幅のガイドを作ってプラバンのベースに接着。作業中に位置決めしやすいよう、片側にはストッパーを付けた。

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それでもこれで格段に作業がやりやすくなったかというと微妙なところ。なお、CHINO MODELさん自身も繋ぐ作業をやり易くするため、もっと本格的な(ちゃんと一枚一枚位置決めできる)治具を検討中とのこと。

ピン通しは、プリント上の都合で噛み合わせの中心部分にピン穴が開いていないため、一本のピンを突き通すことはできず、いわばカステン方式で左右からそれぞれ挿すことになる。一本で行ければもう少し繋ぎ作業が楽そうだが、自分で開けようにも、私が持っている0.2mm(~0.4mm)のドリル刃は、チャックに噛ませやすいように根元が太くなっているタイプで、刃先が短いので中央の噛み合わせまで届かない。もちろん根元が太くなっていないドリル刃なら、長く出せば行けそうだが、200枚以上開け直す間にポキポキ折ってしまう未来が想像できてコワイ。

なお、左右の穴に関しても、プリント時の誤差その他で一部狭まったり塞がったりしている可能性があり、作業前に一度ドリルでさらっておくことが推奨されている。私が作業した感じでいうと、サポート材が長い方の側で一部狭まっていることがあったが、低い方の側はしっかり貫通していることが多かった(といっても、まだほんの一部しか作業していないが)。

ピンに使用する線材については、伸ばしランナーも試してみたが、現在では細い(0.2mm程度?)のエナメル線を使用。たまたま手元にあったから、だけでなく、挿した後の切り詰めを考えると柔らかい線材のほうが都合がよかったため。もともとパーツが極小なので、線材があまり硬い必要はない。もっとも、ちゃんと内側の噛み合わせの穴に入れるまでが非常に大変で、それを考えると、穴を探り当てやすい硬い線材(真鍮線など)のほうがいいかも。……今度都会に出たら買ってきて試してみよう。

●長くなったので、実際のキットとの整合性等については改めて。

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IBG 1:35 Tankietka TKS z CKM Hotchkiss wz. 25

20181019_205450 ●IBMの新作、TKSのキットに関しては、つい先日、20mm砲搭載型のレビューを書いたばかりだが、そうこうしている間に標準型であるオチキス機銃搭載型も出たので、これまた当然のように買ってきた。……しょうがないでしょ! TKSなんだから!(意味不明)

というわけで、主に20mm砲搭載型キットとの差異の部分について簡単に。キットの全容を知りたい、という方は、先の20mm砲型キットのレビューと併せて読んでいただきたい。

なお、このキットも20mm砲型同様、足回りが細かく部品分割された通常版(?)と、履帯と転輪類が一体になった「イージー版」、「イージー版+塗料セット」版の3種類が発売されている。私が購入したのは通常版。

●キット全体の構成は、おおよその部分は20mm砲型と同じ。以下がプラパーツのリストで、黒字は20mm砲と同一、赤字が別。

Aパーツ:車内パーツ(エンジンほか)とフェンダーなど。
Bパーツ:車体下部。
Cパーツ:車内パーツ(トランスミッション、弾薬箱など)、車体前後上面板+ハッチなど。
Dパーツ:転輪類。×2。
Eパーツ:履帯(ある程度の長さがまとまったもの)。×2。
Fパーツ:履帯(1コマずつのもの)。×2。
Jパーツ:転輪桁。×2。
Kパーツ:上部転輪桁。×2。
Lパーツ:武装(オチキス機銃、マウントほか)。
Mパーツ:戦闘室上部、ラジエーター前半。

フィギュアA:機銃を対空銃架に装着して操作中。右立膝。
フィギュアB:同上。Aを補助している感じ。左立膝。

Lパーツ、Mパーツは20mm砲型と機銃型とで枝記号が同じなのだが中身が違う。普通こういうのはパーツ管理上、同じ記号にしないと思うんだがなあ。箱詰め時に間違えて出荷してしまう製品が出てきそうだ。

他、エッチングパーツが3枚(20mm砲型は2枚)、デカールが1枚(20mm砲型はデカールなし)。20mm砲型は挽き物の金属砲身が入っていたが、機銃型には無し。

Lパーツ

オチキス機銃とマウント、対空機銃架、20mm砲型とは異なる幅の上面ハッチなど。

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マウントは実車に比べちょっと凹凸が乏しい気がする。オチキス機銃はそれなりの出来ではあるが、現時点でインジェクションの製品では一番よい出来なのではないかと思われるMENGのパーツ(4枚目写真のベージュのもの)と比べると一段落ちる。特に銃身根元の蛇腹状になっている部分がいまひとつなのは残念。

Mパーツ

戦闘室。発売前は「20mm砲型とまったく同じパーツが入っているんじゃないか?」などと思っていたのだが、実際には違った。

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主な違いは、

戦闘室本体パーツ:
・車長側(右側)前部天井の、グンドラフ式ペリスコープ取付穴の位置。20mm砲型では左にオフセットされているが、機銃型ではマウントの直後方にある。
・スウプスキ式信号旗用パイプの位置。機銃型ではグンドラフ式ペリスコープの両側にある。

戦闘室前面パーツ:
・武装マウントの開口部の面積の違い。当然ながら機銃型のほうが開口部は小さい。
・武装マウントバルジ上面に、スウプスキ式信号機パイプのモールド有り。ただし、実際にはこの位置にパイプがあるのは20mm砲型で、機銃型にはなく、キットの誤り。ちなみに説明図のCG画では、この位置にパイプモールドは描かれていない。不思議なことに、20mm砲型キットの説明書では、そちらのキットパーツにはモールドが無いにも関わらず、(正しく)描かれている。
・残念ながら、武装マウントバルジ右側面の尖頭ボルト頭が、金型から取り外す際に引っ掛けられて、モールドが崩れてしまっている(写真3枚目)。基本は同一形状の20mm砲型用ではモールドは潰れていなかったので、外し方がマズかったのかも。

なお、このIBGのキットでは、機銃型も、20mm砲型も、戦闘室上面の開口部面積は全く同じで、単に右側前方ハッチの形状のみを変えている(私が「20mm砲型とまったく同じパーツが入っているんじゃないか?」と思った理由もそこにある)。しかし実際には20mm砲型では開口部自体がやや狭まっているのが正しい(はず)。キットの開口部面積は、基本、機銃型準拠になっているようだ。

フィギュア

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足回りが分割された「通常版」(?)キットには、フィギュアが2体セットされている。20mm砲型と同じフィギュアが入っているのではないかと思ったが、全く別物だった。ちなみにこちらのキットに入っているフィギュアの枝はA、Bだが、20mm砲型のキットに入っているフィギュアはC、E。……Dはどこに?

ポーランド兵のキットというだけで貴重ではあるが、モールドはちょっとモッサリ気味。2枚目写真はフィギュアBの上半身。

エッチング

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3枚入っているうち2枚は20mm砲型と共通だが、1枚は機銃型専用のもので、機銃弾帯と、弾薬箱(車内装備用のフタの閉まった弾薬箱はプラパーツで複数用意されている)。とはいっても、35スケールで、樹銃弾を平たいエッチングで表現しようというのはちょっと無理がある気がする。その下の銃弾クリップベルト?への取り付けも、説明書の図示ではよく判らない。

デカール

小さなデカールシートが1枚入っている。贅沢なことにカルトグラフ製。

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写真が見づらくて申し訳ないが、戦闘室の3カ所に白で書かれた小さな絵と「Szwadron śmierci」(死の部隊? 死神部隊?)という文字。小さな絵は、大鎌を持って馬に跨っている姿のように見えるので、死神を表しているのではないかと思う。

基本、1939年戦役時のポーランド軍AFVはマーキング等は描かれていないのが普通で、説明書の塗装指示にも「(このマーキングは)例外で、通常の1939年戦役時の車輛として作る場合はデカールは使用しない」と書かれている。付いている意味があまりないデカールだなあ……。

●気づいた点など少々。

車内パーツは、20mm砲型も機銃型もまったく同じ。エンジンやトランスミッションが同じなのは当たり前としても、弾薬ラックと思しきパーツも同じなのは大いに疑問。今回のキットのエッチングパーツから見るに、キットの弾薬ラックはオチキス機銃用のものと思われるので、20mm砲型は(少なくとも車長側は)ハッチを開けないのが無難か。

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IBG 1:35 Tankietka TKS z NKM wz.38 FK-A 20mm

20180905_234011 ●IBGの新製品、1:35「Tankietka TKS z NKM wz.38 FK-A 20mm」を購入したので、そのレビューをば。

TKSは1939年戦役で使われたポーランド製豆戦車。キット名の「Tankietka」もポーランド語で豆戦車を指す(たぶん)。

キットの製品名は妙に長いが、要するにTKSの20mm砲装備型。標準ではオチキス機銃1丁装備のTKSの対戦車特殊型として作られた(たぶん既存のTKSから改修された)もので、生産数には諸説あるが、おおよそ20輌内外。これ以上の実車解説に関しては昔まとめた別項を参照のこと。さらに詳しくは「PIBWL military site」のTKのコンテンツを読んで頂きたい。

IBGは、この「20mm砲型TKS」のキットをほぼ同時に3種類出していて、一つは足回りがロコ方式に一体成形された「イージー版」(製品番号E3503)。もう一つはイージー版に、Hatakaレーベルの塗料がセットされたもの(製品番号E3501)。そして3つ目が足回りが細かく分割された要組立て版(製品番号35046)で、私が購入したのは3つめの足回り要組立て版。

箱絵は基本共通だが、前2者は箱表右下に白カコミで完成見本のCGもしくは塗料セットが出ていて、最後のものは車輛だけでなく乗員+歩兵が描かれている。これは最後のキットにだけフィギュアが付属しているためらしい。ただし、箱に描かれた兵は4名だが、付属のフィギュアは2名。

なお、IBGはオチキス機銃搭載の通常型TKSの発売も予定している。こちらも3種類で発売されるのかもしれない。

●TKSの1:35インジェクションキットは、これまでにTOM/RPM、Mirage HOBBYと2社から出ていて、今回のIBGのキットは3社目。

先行の2キットも、それぞれそれなりに愛情の感じられる好キットだったが、再現度という点では至らぬ点もあり、ポーランドAFVファンとしては(特にTKファンとしては)新キットの登場は喜ばしい。

3社比較はまた次の機会にということで、とりあえず今回はキット内容の紹介を。

●箱の中身はざっと以下のような感じ。

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インテリア再現キットなので、極小の2人乗り豆戦車の割にはかなりパーツ数が多い。miniartのように、枝を細かく分割して金型を減らす方式を取っているようで、小さいパーツ枝が複数入っているものが多い。

ちょっと見づらいが、箱の中身写真の中央やや右下に20mm砲の金属砲身。ほか、小さめのエッチングパーツが2枚。説明書は塗装説明図はカラー。組立説明図部分は全面CG。

▼砲塔のないこの豆戦車にとっては、スタイル上のキモになる戦闘室(パーツ枝M)。先行キットと異なり、前部と後部の2分割。

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スライド金型も用いて、各面の尖頭ボルトも一発で抜いている。実際には、これらはポーランド独特の(というよりTK独特の?)2面尖頭ボルトなのだが、モールドはほぼ通常の丸頭リベットになっている。どうしても気になるという人はMasterClubで「ポーランド型(Bullet-proof bolt "Polish" cone-head)」として発売されているので交換するのも良いが、どのみち、ルーペか何かで拡大しない限りはほとんど判らないと思う。

内部再現キットだから、ということもあるだろうが、上面の乗降ハッチだけでなく、視察口フラップも、武装バルジ両面を除いてすべて別パーツ・開閉選択式(ただし、各フラップ裏面に開閉機構は再現されていない)。

TKSのインジェクションキットで一番最初に発売されたTOM/RPMのキットは、武装バルジ部分の上面の絞り込みが明らかに足りないのがスタイル上の弱点だったが、このキットはその辺は好ましい感じ。

戦闘室上面レイアウトは機銃装備の通常型と20mm砲型では違いがある。

  • 車長/銃手側ハッチが、機銃装備型は前後に開く(後方は中折れハッチ、前方は1枚式の細いハッチ。ただし、初期には前方も中折れハッチだった可能性も)のに対し、20mm砲型は後方中折れハッチのみ。ハッチの大きさ(前後長)も違う。
  • 車長/銃手側のグンドラフ式ペリスコープが、機銃型は機銃の真っ直ぐ後ろなのに対して、20mm砲側は(おそらく砲尾を避けて)左にオフセットされている。

キットはハッチの開き方、ペリスコープの位置は20mm砲型の特徴をフォローしているが、ペリスコープが付く上面固定部は、20mm砲型ではもっと前後に幅広いのではないかと思う。

また、20mm砲装備型では武装バルジ上面にスウプスキ式信号旗用の穴が1つあるが、組立説明図では図示されているにもかかわらず、キットのバルジ部分にモールドは無く、部品も見当たらない(探せていないだけかもしれないが)。

▼車体下部(パーツ枝B)。

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ここもスライド型を使ってバスタブ型に一体成形。内部再現に合わせて内側にもモールドがあるが、とりあえず目立つヒケなどは生じていない。

▼エンジン等を含むパーツ枝A。

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およびトランスミッション等を含むパーツ枝C。

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車内再現はそれなりにきちんと考証されているようなのだが……残念ながら、弾薬ラックはオチキス機銃用で20mm砲マガジン棚ではない気がする。そもそも20mm砲型の車内ディテールの資料があるのかどうかも不明。せっかく車内ぱーつがあるのに、おいそれとハッチを開けるわけにはいかなくなってしまった。

金型に無理があったのか、梱包に無理があったのか、車体後部のルーバーとハンドルに折損があった。簡単に直せる感じのものだが、ルーバーパーツはちょっと厚みが気になるので、ついでに薄く削り直すか、薄い金属板などで作り直すほうがよいかも。

▼20mm砲まわりのLパーツと、「足回り要組立て版」のみに付属している金属砲身。

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▼「足回り要組立て版」の足回りパーツ。転輪類はDパーツ(2枚)。サスペンション、転輪桁などはJパーツ2枚とKパーツ1枚。

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再現度としてはTOM/RPMよりはだいぶよく、Mirageよりやや上という感じ。特に先行2社の転輪がかなり薄っぺらかったのに対し、こちらは厚みが表現されているのは良い。

▼履帯パーツ(パーツ枝EとF)。説明書には、どちらも2枚ずつ入っていると書かれているのだが、なぜかEパーツが3枚入っていた。どちらが正しいのかは組み立ててみないと判らない(が、一定の長さのものが奇数枚になるというのも変なので、たぶんEパーツ1枚は余計なのだと思う)。

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さて、わざわざ足回り一体のイージー版と差別化して出すからには、履帯パーツにはそれなりに気合が入っていて欲しいと思うのは当然ではないかと思うのだが、実際にはだいぶ適当感があって、個人的にはちょっとがっかり。

本来は中央のスプロケットが入る穴部分にも履板同士の噛み合わせがあるのだが、キットパーツは履板の両端でだけ繋がっている表現。また履板表面の凹凸も接地リブ以外表現されていない。ガイドホーンも、実車の「薄っぺらく四角い」感じとちょっと違う。また、少なくとも私が買ったキットでは、3つ入っているE枝全てで、パーツE6に樹脂のショート部分があった(写真4枚目右側パーツ、右下部分)。

ついでに、wikimedia commonsから、実物の履帯写真を引用しておく。

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とりあえず履板表面の模様に関しては、なぜか一番最初に発売されたTOM/RPMのキットがおそらく一番それらしいという、なんとも皮肉な状況。ただし、前述の転輪幅の問題もあり、TOM/RPMの履帯をそのままこのキットに持ってくるのは難しいかもしれない(未検証)。

▼エッチングパーツ。

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なぜか説明書の図示と違って大小2枚入っている。これに関しては小さな正誤表も付属していて、どうやら、エッチング(大)に入れ忘れたパーツ&訂正パーツがエッチング(小)という位置付けのようだ。

戦闘室後面のラジエーターグリルのメッシュがエッチング(大)と(小)の両方に入っているが、これは枠部分がメッシュよりも一段高くなっている表現が付いているかどうかの違いらしい。

●最後に、足回り要組立て版にのみ付属しているフィギュア2体。

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一体はカーキのツナギを着て着座姿の操縦手(たぶん)、もう一体は黒革のコートを着た立ち姿の将校だが、これまで一般の将兵のインジェクション・フィギュアとして、ここまでデブのおっさんがいただろうか!?とビックリするほど恰幅がいい。「模型慕情」さんがまだ更新を続けていたら、ぜひこのフィギュアに付いて一言コメントして頂きたかった。

ちなみに、昔のタミヤの一部フィギュアにあったように、造形のクセとか間違いとかでデブになってしまったわけではなく、あきらかにその体型を意識して作ってある(ように見える)。

その昔、ポーランドのSKというレーベルで「ポーランド戦車兵」のインジェクション・キットが出ていたことがあるが、これはエレールの仏戦車兵セットの名前を変えただけのもので(SKはエレールの再版もの専門レーベルだった)、実際にはポーランド兵とは軍装が違う、という適当なものだった(ヘルメットは同型)。というわけで、1939年戦役時のポーランド戦車兵の35インジェクション・フィギュアはこれが初かも。……いや、いかなる兵科であれ、1939年戦役時の35ポーランド兵そのものが初?(そしてそれがなぜヒゲデブ?)

●総じて、どうも手放しで「決定版!」と称えるほどの出来ではないという感じだが、それでも先行2社のキットより一日の長はある。TKS好きなら手にして損はないと思う。

ただし、どうやら車内は機銃型に準じているようでもあるし、複数作りたい車種ではあっても毎度車内を作りたいかどうかは別なので、「足回りイージー版」よりも、「中身省略廉価版」を出してほしかったな……。

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3度目の正直なるか?(IBGのTKS)

●ちらほらとニュルンベルク・トイ・フェア(Spielwarenmesse)関連のネタが流れ始めて来ている。

以前はPrimePortalでスケールモデルの会場発表の各社別写真レポートが出ていて非常に重宝していたのだが、同サイトは更新が止まってしまったので、一覧できるところがなく不便。どなたか「ここに出ているよ」というのをご存知なら、情報をぜひ。

ともあれ、とりあえず流れてきた「ちらほら情報」から。

●タミヤからは35では「M3スチュアート後期型」と「ヴェスペ(イタリア戦線)」。48でチャーチル・クロコダイル。

M3スチュアートは完全新金型でのリニューアル。現行のタミヤのスチュアートは、(Scalemateによれば)1977年の発売。リベットだらけのクラシカルな姿を、当時としてはかなり頑張ってキット化したものなのだが、細かなミスや省略を除いても、次のような難点がある。

(1).(タミヤにありがちなミスで)博物館現存車輌をそのままキット化したため、基本、実戦で使われていないディーゼルエンジン型になってしまった。

(2).ポリキャタピラに柔軟性を持たせるためか、エンドコネクターがリンクをまたいでいないトンデモな形状。実際にこのような形状だった場合、一瞬後には履帯が全部バラバラになって地面に落ちることになる。

(3).転輪が薄い。

発売予定のリニューアルキットは現行とは仕様も違い、馬蹄形砲塔だがキューポラ無しのより後期のタイプ。従来ならM3A1に分類されていそうだが、(英語版wikipediaによれば)「M3の車体に、砲塔バスケットを除いたM3A1砲塔を載せたもの」という仕様であるらしい。

車体自体は(『週末模型親父』さんのところのBBSで教えて貰ったが)、後端が平板の装甲板の組み合わせか(M3)、丸めた装甲板か(M3A1)の違いがあり、また、M3A1ではスポンソンの機銃が略されている。

レンドリースのソ連軍マーキングのデカールも付属していて、「どうしちゃったの? タミヤ、『レンドリースの呪い』か何かにかかってるの?」という気がしないでもないが、とはいえ私自身レンドリース車輌は好物なのでまったく異存はない。

そのうち部品差し替えで八角砲塔の「ハニー」とかも出るかしらん?

ヴェスペは従来品の一部パーツ替えで、車輌自体に関しては履帯がインジェクションに変更。起動輪も新しいパーツが付属していて、歯数が違っていたのも修正されているらしい。まあ、こっちは個人的にあまり用事がないなあ……。

●もっと驚いたのは、IBGからTKSの発売が予告されたこと。

FTFはIBGの別ブランドだと聞いた気がするので、既発売のFTFの72のTKSを箱替えで出すのか?……なんて思ったら、35だった。すでにSCALEMATEには、20mm砲搭載型の箱絵が出ている。

さらに、めがーぬさんが見つけてきた、IBGのテストショットを組んだ見本と思われるもの。こちらはオチキス機銃型。

TK系列のインジェクションキットは、TOM Modellbauから発売されたものが最初で(TomからはTKS 20mm、TK-3の2種が発売されただけだったが、後にRPMでシリーズ展開)、その後Mirage hobbyから別設計の新キットが出た。それぞれ、「意欲は買うけれどちょっとなあ……」という出来だったので、第三の選択肢が登場するのは素直に嬉しい。

とりあえず、IBGの見本と思われる写真を見る限りでは、

・ハッチ、貼視口は開閉選択式で、車内再現されているらしい。ただし(なにしろ相手が小さすぎるので仕方ないのだが)ハッチ類は実車に比べ厚め。

・見本は上記のように機銃型。箱絵で予告が出ている20mm砲搭載型とは戦闘室上面レイアウトに若干の違いがあるが、キットでそれがちゃんとフォローされているかどうかは現時点では未知数。

・武装マウント部分のバルジは、Tomのキットでは上面の絞り込みが足りないのが弱点だったが、このキットでは割といい感じに見える(Mirageもここの形状はまずまず)。

・機銃マウント部はやや表現がのっぺり?(もっとも先行キットよりはずっとよい)。

・戦闘室背面の冷却気排出口のメッシュは、見本を観る限りではエッチングパーツのようだ。

・戦闘室側面下部装甲板後端の縦列のリベットは、見本では3本。walkaroundでよく写真を見かける、ワルシャワのMuzeum Wojska Polskiego(ポーランド軍事博物館)所蔵の現存車輌では4本となっているので、ケアレスミスによるキットの間違いかと思ったのだが、改めて当時の写真を見てみたら、キットの3本のほうが正しかった。MWP所蔵車輌はレストア時に間違えたのではないかと思う(ただし、後期のTKSでは側面装甲が増厚されているそうなので、実は4本リベット仕様もあった、なんてドンデン返しもあるかも)。

・ちなみに上でうっかり「リベット」と書いたが、装甲板の接合は基本、尖頭2辺ボルトが使われている。キットは、見本写真だと普通の丸頭(あるいはもしかしたら平頭?)に見える。もっともこの大きさのキットだと、ぱっと見、肉眼ではよく判らないレベルかもしれない。なお、尖頭2辺ボルトは、MasterClubで「Bullet-proof bolt "Polish" cone-head」として製品化されているので、ディテールアップ時に使える。

・見本写真にある誘導輪のスポークは明らかに厚すぎ。履帯はパターンの表現が若干大味? ガイドホーンは樹脂ショートを起こしている場所がちらほらあるが、製品版では大丈夫だろうか?

(2/5追記。Armoramaにも発売予告が出ていた。テストショットによるものという作例は上と同じものだが写真は別。)

●とにかく1月末はむちゃくちゃに寒かった(今もまだかなり寒い)。

24日水曜日は寒かったうえに強風。大崎公園から見下ろした鎌倉の海(左)、逗子の海(右)は、波立っているというよりも泡立っているかのようだった。

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22日に(天気予報通りに)かなりの雪。さらに2月1日~2日にかけても雪。

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