SOMUA S35

ソミュア!(ほんのわずかの進捗)

●前回も書いたように、仕事が立て込んできたこともあって、wz.34製作は開店休業中。だけではなく、模型製作意欲自体が激しく減退中。

●これじゃいかん、ということで、ちょっと気分を変えて別のものでもいじって製作意欲を取り戻そう、ということで、エアフィックスの1:1野鳥シリーズ(グンゼ版)を屋根裏から掘り出してきて組んでみたり。

●さらには、ほぼ発売直後に少しだけいじってそのままになっていた、タミヤのSOMUA S35の箱も開けて、一年以上ぶりにわずかに工作した。

といっても、エンジンルーム上のグリルを貼り付けただけ。

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以前のレビューにも書いたが、このグリルのパネルは実際には4枚とも同一のパーツ。スリットには傾きがあるので、左と右では逆に装着されるため、本来、グリルは左右で点対称になるはずなのだが、キットは線対称(鏡写し)になっている。

グリルのパターンはキットのパーツで言うと左側(B6)で正しく、右側(B5)が誤り。まあ、線対称だろうと点対称だろうとパッと見で判るようなものではないので、そのままスルーするのが平和的解決法なのは間違いないのだが、気付いてしまうとどうにも気になる。

というわけで、(これまたしばらく前の話だが)タミヤにパーツ請求してBパーツの枝をもうひとつ入手。それを使って、グリルを左右同パターンにした。

具体的には、右側グリルに関して、(本来左側用の)B6パーツから車体側面にかぶさるベロ部分を切除。一方でB5パーツからはベロ部分だけを取って来て丁寧に削り合わせて合体させた。結果は激しく地味な割に、意外に擦り合わせ等に気を遣う。

ちなみに「車体側面にかぶさる部分」というのはあくまでタミヤのキットのパーツ形状としてであって、実車は鋳造の車体がこの部分で盛り上がっているのを、抜きの関係で分割しているだけ。グリル枠部分も実車は車体と一体なので、この後目立つ部分だけでも継ぎ目を消す必要がある。

なお、キットパーツはこの小口部分の傾きも前後で違うため、若干削ったり盛ったりが必要になった(写真でグレーに見えている後端が盛った部分)。

●まるっきり一発ネタの更新。ああ。wz.34装甲車作らなきゃ……。

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ソミュア!(砲塔関連で補遺その3)

●ソミュアS35についての「あーでもないこーでもない」の4回目。

実を言うと、迷彩パターンについての考察を若干書いて終わりにしようと思ったのだけれど、キューポラ周りをいじりっているうち、砲塔の形やらディテールやらがやはり気になりだしてしまった。

F1019656●とりあえず、いじっているキューポラに関してはこんな感じ。我ながら、なんでこんなところから手を入れ始めるかなあ、という気もしないでもない。手を入れたポイントは、

  • 砲塔上面、キューポラに対応して窪んでいる部分に0.5mm板を貼って、逆に出っ張らせる。
  • その分、キューポラ本体の底を削って薄く。
  • キューポラの縁取りを加工。
  • 上面に、「少林寺穴」を追加。綺麗に六文銭に並んでいるわけではなく、手前側に向けすぼまっている感じ。なお、B1bisの現存車輌の写真では頂部に小穴が開いているものもあるが、開いていないものもあり、どちらが一般的なのか判断もできなかったので開けていない。
  • シャッターのある面に2ヶ所のネジ。これはB1bisの現存車輌のうち、ボーヴィントンの車輌にはないようだ。ソミュアにもそんな仕様のものがあるかもしれない。
  • 3カ所の吊り下げフックの追加。

写真右側のフラップのヒンジの隙間はまだ消していない。

F1019659●P.Danjou, "FOCUS No.2 SOMUA S35"(EDITION DU BARBOTIN)にほぼ砲塔真上からの写真があった(残念ながら全景ではない)。やはり、タミヤのソミュアの砲塔は、右前部が張り出しすぎているようだ。

砲塔上面右辺は、ほぼ前後軸と並行くらいの感じ。信号旗ハッチのバルジと右辺とも、もうちょっと近い感じ(これは信号機ハッチのバルジが小さめな可能性もある)。

すでに側面スリットブロックもはめ込んでがっちり接着してしまっているので、あまり本格的な削り直しはできないのだが、若干、角を引っ込めた。……けれど、あまり変わっていませんな。

●先日、みやまえさんに教えていただいた砲塔上面の「信号旗ハッチの向きにバリエーションがある」件についての補足。

先述のように、タミヤのキットはヒンジが前方向にあり、ソミュールの実車もそうなっているのだが、M10664号車では斜めに付いている。

ボーヴィントン、元アバディーン、クビンカの実車でも確認したいところだが、今のところ、砲塔上面の写真は見当たらない。

さて、ソミュアの現存実車は以上の4輌(のはず)だが、砲塔に限ればまだあることを思い出した。ソミュールが保有するシャールB1bisのうち、砲塔にRhôneと書かれているほうは、元のAPX-4砲塔が失われたか、あるいは元からなかったのか、とにかくレストア時にソミュアS35のAPX 1 CE砲塔を載せているのである。

これについて私は気付かず、いつだったか、柳瀬ばお氏から、「あれ、形が違うよね、ソミュアのだよね」と言われてビックリしたような記憶がある。

……と、いかにもいいところに気が付いた、みたいに書いているが、実のところ、この仮称ローヌ号の上面写真も見つけられなかった。長い前置き意味無し!

ところが、「Surviving French WW2 Tanks (PDF)」を見ると、もうひとつ、ASPHM Associationというところがレストア中のB1が、ソミュアの砲塔を載せていると書かれている(そもそもB1bisではなく、B1が現存しているというのがまた驚き)。実際、掲載された写真でソミュアの砲塔であることは確認できるのだが、わずかに写った上面では、ヒンジ位置はどう判断していいか微妙なところ。というわけでweb上に他に写真がないか探してみたのだが……。

ASPHM Associationという組織自体がサイトを持っていて、ある程度の写真をアップしていた。ここがB1のページ。……というところまでたどり着いたのはいいのだが、いつの間にか、砲塔はソミュアのもの(APX 1 CE)ではなく、APX-4に変わっていた。どこからかB1bisの砲塔を持ってきたのか、あるいはB1自体もAPX-1からAPX-4に交換した例もあるから、もともとこの車輌のものだった可能性も否定できない(まあ、その場合一時的ではあれCEを載せる理由もなさそうだが)。

というわけでこれまた不発に終わったのだけれど、ここで新たな疑問。このB1のAPX-4砲塔の信号旗ハッチ、どうやらヒンジ位置が後方にありそうなのだ(ハッチ自体は取れているが)。ちなみにタミヤのB1bisのAPX-4砲塔のパーツは、ソミュア同様、ヒンジは前方にある。フランス、ムーメロンの現存車輌では前方にあるから、誤りではない。しかし改めて資料をひっくり返すと、ボーヴィントンの車輌は後方(後面ハッチの辺方向)にある。当時の写真でも、例えばNo.339/AISNEなどで確認できる。

なんだかますますこんがらかってきた。

●いずれD2用にAPX-1砲塔を作る時のための備忘録。

B1bisのAPX-4砲塔と、ソミュアS35のAPX 1 CE砲塔とでは、主砲と機銃の防盾は基本同じもののようだが、APX-1砲塔では機銃防盾の形状が違う(砲塔上面の傾斜が違うようなので、違っていてアタリマエなのかもしれないが)。

APX-1砲塔の機銃防盾のほうが上半の傾斜はもっと素直な感じで、照準孔が大きい。また、上辺が単純な円弧ではなく切り欠きがある。

主砲防盾はそもそも主砲がSA34かSA35かで違うのは当然なのだが、APX-1砲塔にSA35を載せている場合の防盾はどうなのかはよく判らない。単純に新型砲塔用の砲を防盾ごとくっつけている可能性もありそう。

(以下、4/29追記)

上で機銃防盾につき、APX-1用とAPX-4用/APX 1CE用とでは上部の形状が違うと書いているが、下部の形状もまるっきり違っていた(要するに全体的に違う)。APX-4用/APX 1CE用では下端も平らになっているが、APX-1用ではカマボコ形。

また、APX-1とAPX-4/APX 1CEとでは、キューポラ形状にも違いがある(キューポラくらいはそのまま使えるかと思った!)。APX-4用/APX 1CE用では上方に跳ね上げる形になっている側部のフラップだが、APX-1では、R35やH35用のAPX R砲塔の半球形キューポラに似た、田んぼマークのようなスライドシャッターが付いている。前後幅ももうちょっと詰まっている感じ。

砲塔全体形に関しても、前半上面の傾斜がきつい? ちょっと痩せた感じ?……などとボンヤリ思っていたわけだが、どうも上面の角度の切り替えはもっと前方にあり(つまり後半の水平部が広い)、キューポラがもう少し前にあるような気がしてきた。信号旗用小ハッチもAPX-4用/APX 1CE用のように「おおよそ3時半の方向」ではなく、「5時の方向」くらいにあるようだ。

タミヤのB1bisのパーツから作るのがよさそう、というのは変わらないにしても、その作業は結構しんどいものになりそうだ。うーん。MBのルノーD2、まともに作ろうとする時が来るかな……。

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ソミュア!(深みにはまって補遺その2)

●最初はさらっとエレールとのキットとの比較をして、やっぱり新キットっていいよね~みたいなところで終わろうと思っていたのだけれど、調べ始めると細部ディテールのあれやこれや、よく判らない部分が多々あって、逆に面白くなってついつい深みに。

というわけで、タミヤのソミュアS35、キット・レビューのしつこく3回目。

●SOMUA S35の車輌登録番号について。

例えば、ルノーR35は50001号車から一直線に番号を割り振られている。SOMUA S35もそうであってくれればいいものを、なぜか生産バッチによって(?)番号が飛び飛びで、しかも付け方そのものに一貫性が感じられない。

Pascal Danjouの“TRACKSTORY”によれば、ソミュアの登録番号は以下のようになっているそうだ(左の太字)。

  • 67 200~ (67 209~67 273、一部M付き)
  • 22 330~ (22 317~22 417)
  • M 800~ (M 821~M 898)
  • M 900~ (M 902~M 914、あるいはM 933?)
  • M 10 700~ (M 10634~M 10758)
  • M 55 000~ (M 50210~M 50343)

ただし、網羅されているかどうかワカラン、という但し書き付き。例えば「22 317」と読める写真もあるので、上のリスト2行目は「22 300~」である可能性がある。char-francois.netに掲載された実車写真の登録番号のそれぞれの段の最小・最大を赤字で右に補った。なお、char-francois.netは実車写真から読み取った番号を写真データに書き込んだり、ファイル名に使ったりしているが、なかには本当にその番号なのかアヤシイものも混じっている(たとえばM 933として出ている写真は数字3桁目が隠れて見えない)。

どれが古く、どれが新しいのかも何だかよくわからない番号の付け方である。なお、Mが付いているのは番号体系が違うのかと思ったら、67200番台でもMが付いているものが混じっている(M 67222、M 67264など)。Mはミリテール(Militaire)だろうか? また、M800番台とM900番台はそのまま連続番号なのではないかと思う。

最初の50輌に使われたとされる短ピッチの履帯は、67 200番台の車輌にのみ見られるようだ。67 240番台ですでに長ピッチの履帯の車輌もあるが、これはあとから改修されたものか? しかしその一方で、67270番台でも短ピッチの車輌がある。……実は短ピッチ履帯装着車は50輌以上あったのか、それとも登録番号が生産順ときっちりリンクしていないのか。あるいは番号が飛び飛びなのか。旧アバディーンの展示車は長ピッチだが、初期の60輌に含まれると、「Surviving French WW2 Tanks (PDF)」に書かれている。謎多し。

とはいえ、とにかく最初の段が第1生産シリーズであるらしい、ということくらいは言えそうだ。

なお、「1001619」(?)なんていう長ったらしい番号を背負った実車写真もあるのだが、これは1944年のフランス解放の戦いの際のものなので、元の登録番号と関係なく新たに割り振られたものと考えられる。

●前回、前々回に触れた部分も含めて(また、その訂正も含めて)、タミヤの新キットのディテールチェック。

今後、実際に製作する際の備忘録としてのメモ。

できれば手を加えたい部分、手を加えようか判断に迷う部分、気付きはしたもののスルーするであろう部分が入り混じっているので、参考にする方は各自ご判断を。個人的に「気になり度」が高い部分については太字にした(手を付けるかどうかは別として)。もちろん、以下はあくまで私の見立てなので、間違っている箇所もあるかもあるかもしれない。

新キットの粗をあげつらってケチを付けようという意図は無く、基本的にはよいキットだと思う。そもそも、多少は手の入れどころがなければ面白くないではないか(根本的に間違えていて手の付けようがない、なんて部分があったりすると困るわけだが)。

UP後に判明したこと、追加・訂正等は赤字で追加した(画像リンク追加等は除く)。

F1019039●足回り

(写真はこの後、サスが全部カバーに隠れてしまうので、もったいなくて撮っただけ)

▼起動輪

・表面に鋳造管理番号が入っているものあり(例えばソミュールの実車)。

・ごく薄く短い放射状のリブが確認できるものあり(例えばソミュールの実車)。

・タミヤのキットになく、エレールのキットにある、表面2カ所のアクセスパネルは、当時の実車写真でも(少数だが)確認できるものがある。ボーヴィントンの現存車にもあり。

・キャップ部、対象位置で2カ所、コイン状の薄い凸あり。

スクレーパーが綺麗さっぱり省略されている。形状もなんだか微妙なうえ、足回りの装甲カバー(C8、C9)後端に付けられているので、追加工作の手順的にもちょっと悩ましい。

・車体側、ファイナルギアハウジング内側上部の突起のボルト頭省略。グリース注入口か?(車体下部の項に書くべきだった?)

▼誘導輪

両面ともが同形状(表側の形状?)になってしまっている。詳細は前々回参照。ただし前々回、裏側は六角ボルトの一辺をさらに少し切り落としたものと書いたが、よくよく見ると、丸平頭の一部を切り落としたもののようだ。

・誘導輪表面に関しても、鋳造肌の上に座金とナットが乗っているが、実際には、座金とナットが乗る部分は機械加工で平滑にされている。

・誘導輪基部、特に車体側のディテール。キットは、おそらくそのほうが強度的に都合がいいと考えたのだろうが、誘導輪軸が車体下部前面に接続している。実際にはここは素通しで、軸受けは下側の突起(レール)に乗っている。軸受け上のナット省略。

・軸受けが乗るレールと車体下部との接合。前から見た時の接合部の角度が、実車はもうちょっと寝ているような気がする。

▼装甲カバー

・たまたま私のキットがそうだっただけか、部品形状に起因する一般的問題なのか判らないが、カバー前端の起動輪に掛かる部分がわずかに内側に向けて反りが生じていた。指でグニグニすればなんとかなるレベル。

▼履帯

・前述のように、初期生産型はピッチが短い履帯を使用しているので、当時の写真から特定車輌を作りたいと思った場合などは注意が必要。例えばこの写真では、短ピッチタイプと標準タイプが一緒に写っているので違いが判りやすい。ちなみに写っている車輌は、向こう側の短ピッチの履帯のものが67240号車、手前の標準ピッチはM886号車。基本、短ピッチを履いていれば67200番台の車輌と判断できるが、逆は真ではない。例えば67248号車は番号がはっきり確認できて、標準ピッチ履帯を履いている。

●車体下部

・本来は鋳造の左右2ブロックを中心線で結合している。キットは左右側面と前面が別パーツ。底面の接着ラインはどうせ見えないのでいいとして、前面と後面の左右端にわずかに覗く接着ラインは消したい。

・車体下部左右ブロックの結合は、基本、車内側でボルト結合しているようだが、1カ所、後面の牽引具の真下は、外側にボルト結合用の突起がある。キットではまったく省略されている。ソミュール、ボーヴィントンの車輌で見る限りでは、右がボルト頭で左がナットのようだ。

・車体下部後面、アクセスパネルA31は、キットでは右側のみに付けるよう指示されているが、これは両側に付いている車輌もある。キットにA31は2つ付いていて、取り付け穴開けガイドも左側にもある。写真ではっきり確認できるところでは、M832号車M854号車M886号車M902号車は両側にある。M800~M900は全部そういう仕様、というなら話は楽だが、上記番号の間の車輌(例えばM846号車とか)でも無かったりするので、激しく謎。

・車体下部後面、右中央寄りと左端近く、それぞれ4つ固まったリベット省略。何らかの内部装備に対応したものと思われる。リベットは車体から単純に出っ張っているわけではなく、半埋め込み。

・後面の牽引具は2種類付いていて、初期型、後期型なのかと思ったのだが、char-francois.netの写真でみても登録番号との因果関係がよく判らない。

・牽引具のフック上部の外れ止めは開いた形にモールドされているが、これは、チェーンのリングパーツを入れやすいようにそうしているだけで、実車は通常、閉位置なのではないかと思う。

・制動灯(透明パーツG4)は、実物は左右の上下に小さなフランジがあって、その部分で車体にリベット止めされている。ソミュールの実車等では制動灯が失われているので、逆台形のリベット位置が確認できる。台形のリベットの中にもうひとつ小リベットがあるが、これは電源コードの引き込み部か。

●車体上部

▼前半ブロック

・(パーツの抜きの関係で)操縦席バルジ周りの表現が不十分。(1).前面バイザー上は、もう少し明瞭に庇状に出っ張っている。(2).バルジ右面のバイザーブロックはぼやけた表現だが、実際はスリット上の出っ張りは別体(3カ所のマイナス皿ネジで固定)、さらにその周りに3カ所のリベット。リベット自体は、ポーランド戦車のように2辺を切り欠いた尖頭タイプで、周囲は浅く埋め込み穴が掘られている。タミヤも気を使って、うっすらと位置を示す窪みがある。(3).左右にあるバイザー軸部のディテール不足。軸穴がないだけでなく、車体側の形状もいまひとつ。

・操縦手用前面バイザーは、キットでは開位置がデフォ。透明部品でビジョンヴロックのパーツも用意されているが、内側左に付く角度固定用アームが省略されている。

・アンテナポストの雨水抜き穴の省略。これは後半ブロックも同様。

・フェンダー固定用の小ボルトに対応し、車体ブロック側に(部分的に?)逃げ溝が掘られている。車体後半ブロックも同様。ただし、これはどうやら個体差(生産時期の差?)がある。例えばボーヴィントンの車輌ではかなり顕著かつ明確に掘ってあるが、ソミュールの実車では目立たない。

・操縦席左側バイザー下の車体側面に、鋳造管理番号が付いている車体あり。ボーヴィントンの実車の場合は、「KO S No 57 E」と書かれているようだ(Sの字は重ねて×印)。操縦手用バイザーにも鋳造管理番号(ソミュール、ボーヴィントン)。

・前照灯カバー前面のメッシュが省略されている。いずれ他社から出るであろうエッチングには必ず含まれそう。

・車体側部の手すり状パーツの横棒はロッドではなくパイプ。

▼後半ブロック

上面のグリル(右側)の形状の誤り。実車は4枚のパネルが同一形状だが、キットでは右パーツ(B5)のパターンが鏡写しになってしまっている。

・グリルのパーツ(B5、B6)のうち、枠部分は実際には車体上部ブロックの一部。したがって、継ぎ目はなるべく綺麗に消したい。

・右側面、前後ブロック分割線とエンジンルームアクセスハッチの間に、鋳造管理番号が付いている車体あり。ボーヴィントンの実車の場合は、「KO S No 58 E」と書かれているようだ(Sの字は重ねて×印)。ただし、キット指定の通りに工具箱を付けると隠れる。

・鋳造部品に特有の表面の荒れや歪みに関し、上に被さる形のハッチやアクセスパネル類は周囲に隙間が出来ないよう、実車では周囲を一段高くモールドした上で平らに削る処理が行われている。そのため、(場所によって多少の違いはあるが)ハッチ/パネル周囲は、縁取りをしたように薄く一段盛り上がっていることが多いが、キットではほぼ無視されている。

・車体後面のパネル(C4)ではこの段差が表現されているが、その段差が車体側ではなくパネル側と一体化されている(おそらく抜きの関係で車体側にモールドしづらかった?)。

・もうひとつ関連して。エンジンルーム側面ハッチ下の「ボルト逃げ溝」は、キットではハッチ開口部まで達しているものがあるが、実際にはハッチが被る部分は埋まっているようだ。ただし、そうなっていない(つまりキットのように隙間入りになってしまう)ように見える車輌もある。

・ハッチ類に鋳造管理番号が鋳込まれているものあり。コイン状の凸部確認できるものあり(湯口?)

・エンジンルーム上面、前端右側の小ハッチは、一部が顕著に盛り上がった独特の形状。ただしキットでは、ヒンジ側の辺の微妙な曲面をわずかに表しきれていない感じ。

・車体上下結合用ボルトのフランジは、キットではすべて同じ厚みで表現されているが、車体後部内側2ヶ所は、外側に比べ若干厚いようだ。

・排気管後部の取付具は、キットのパーツ(C22)は若干ゴツイが、実際には薄い鉄板の組み合わせ。この取付具は、いずれどこからかエッチングパーツが出たら必ずパーツ化されていそう。車体上面の、同取付具の接着指示穴のある部分は、実車では円筒形にゲタを履いた形になっている。

●砲塔

・例えばこのあたりの写真と見比べると、右前上部の張り出しが強すぎるような気もするが、一方で、写真写りの問題であるような気もする。

・砲塔下辺には、ほぼキットの接着ラインと同じ位置に鋳造のパーティングラインがあるが、実物は完全に一直線ではない。

・砲耳の軸は砲塔側面に貫通固定されていて、位置は比較的はっきり判る。

・例のコイン状の薄い凸部が砲塔表面にも確認できる(場合がある)。

・砲塔上面前部に鋳造管理番号(一部車輌?)。

・砲塔後面ハッチの車体側軸部も左右に貫通。こちらは溶接固定されていないのでさらに明瞭。

・砲塔ハッチを開位置にした場合、右側の開閉用(?)スクリューが省略されている。また、裏面のコの字のハンドルも省略されているが、どのみちこれは下側に隠れてほとんど見えない。

・後面ハッチ上にある対空機銃架のアタッチメントは、実物はもうちょっと細かいディテールがある。

・砲塔前面はキットでは別パーツ(D5)だが、実車は一体。左側は実車でも段があるのでいいが、右側は継ぎ目をきれいに処理したほうが良い。

車長用キューポラの3カ所の吊り下げフックが省略されている

Cupola01・キューポラが付く砲塔上面は、キットでは一段掘り込んであるが、実車は逆に一段出っ張っている。右側の信号旗用小ハッチの面と同じ高さ。左がキットの状態。右が実車。

・関連して。キューポラの縁は、キットではタガ状に段があるが、実車ではもうちょっと面倒な構成。L字断面の薄板が一周、小リベットで止められている。この縁取りはバルジ部分にもある。リベットはバルジ部分を除き11カ所、バルジ部分に4カ所。

・キューポラ、バルジ前面シャッター下、ちょうど段差に掛かる部分に2カ所のマイナスネジ(ただしB1bisの例では、このネジがないものもあるようだ)。また、Char B1bisの例で見ると、キューポラ上部に6つのネジ穴がある(縦横入れ替えた少林寺のお灸のような)。ソミュアでは未確認。

・キューポラ横の信号旗用小ハッチは、キットではヒンジが12時の方向にモールドされている。実際にソミュールの実車でもそうなっている。しかし、M10664号車の写真見ると、およそ2時の方向くらいにヒンジがあるようだ(みやまえさん発見)。ソミュールの実車で確認できるが、回転するように作られている箇所ではなく、おそらく生産時期による差ではと思われるが、砲塔上面の写真は極端に少なく確認のしようがない。ちなみにボーヴィントン、元アバディーンの実車も未確認。

●装備品等

・キットは後部のアンテナポスト中央に穴を開け、アンテナ基部を取り付けるよう指示されているが、実車では無線機の装備が間に合わず、アンテナは備えていない車輌がほとんどらしい。キット指定の塗装例でも、はっきりアンテナ装備が確認できるのは塗装例A(M885号車)のみ(付いていない写真もあるが、これはある時点で持ち去られてしまったらしい)。ただしC(M843号車)ではアンテナポスト中央から、何か細く短い棒が出ているようにも見える。元はアンテナが付いていたことを示しているのかもしれない(だとしても、それは何?)。

・一方で、前後のアンテナポストにアンテナを立てている車輌もある。“TRACKSTORY”によればによれば、troop commander(小隊長?)車は無線機ER29、squadron commander(航空部隊なら中隊長なのだけれど、ここでは大隊長かも)車はER29とER26 ter、さらに高位の指揮官車はER27を搭載(先の2つのうちどちらかがこれに替わっているという意味?)だそうだ。前側のアンテナの大きさに違いがあるようなのも、この無線機のタイプの違いを示しているものと考えられる(前回書き込み参照)。なお、ソミュアの(あるいはフランス戦車の?)無線機アンテナは、ドイツ軍のそれのようにロッドにテーパーが掛かっておらず、根元も先も同じ太さの棒のようだ。

・右側面に装備されるコンテナは、側部の手すり状パーツに固定される。おそらく、下のパイプに金具(コンテナ下部左右にモールドされている長いツメのようなものの下端)を引っ掛け、上下のパイプ間でベルトで固定するのではないかと思う……のだが、この取り付け法では説明できない、「なんでそんな引っ掛かり方をしてるの?」という写真もあり(例えばこの写真この写真)、なお要検討。ただし、いずれにせよ最終的にパイプ間にベルトを渡しているのは確かだと思う。タミヤの箱絵でもそのように描かれている。

追記:ジジさん、みやまえさんのコメントで判明したこと。またまたM10664号車のこの写真だが、向かって右の人物が足を掛けている落ちたコンテナ上部に、上のパイプに引っ掛けると思しきツメが見える。コンテナ表の下部左右に見えるツメはこれと連続しているようで、要するに「J形」というか、「形」の帯金がコンテナ背部にくっつけてあるらしい。それにしても、アンテナといい信号旗ハッチといいグリルのパターンといい、有益な情報量の多い写真だ。

こちらの写真(M10741号車)では最後尾小コンテナの裏側が写っていて、上記帯金が確認できる。また、同じ車輌の別写真では、立った状態のコンテナと地面の間に間隔が開いていることから、単に「Jもしくは∫」ではなく、下のパイプ(と車体の間)に引っ掛けるツメのようなものがある可能性もある。

なお、コンテナ+フタ固定用の皮ベルトは、上パイプに繋がっているほうが短くバックル付きのようだ。ずいぶんいい加減なベルトの掛け方をしている車輌もある様子(例えばこの車輌)。

・車体後部のシートも、キットでも上面後端にモールドされている金具と、下部のベロ(D13)の金具間に渡したベルトで固定する。これもキットでは接続していないので、シートを付ける場合は工夫したい。

・なお、車体後部左側に大きめの工具箱や、何かのホルダーらしい金具を装着している例もある。例えばこの写真この写真。前者ではシート固定ベルトの様子もわかる。

・車体上面、エンジンルーム前端右の二の字の金具が工具ホルダーで、小さな突起のモールドは実際には細いコの字金具。工具類は、ここにベルトを使って固定される。キットの説明書の指示位置に従うと、ツルハシの柄やシャベルは、どうやら工具箱上の手すりパイプにくくり付けられるもののようだが、はっきり判る写真が見当たらず、いまいちよくわからない。四谷仙波堂の案内に出ていた、ソミュアS35サービスマニュアル(PDFのCD-ROM)あたりに正解が出ていそうだが、さて?

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ソミュア!(補遺)

●前回記事の若干の補足。

F1019011●タミヤとエレールの足回り(転輪ボギー)比較。

写真ではエレール(上)のほうが小さく写っているが、これはカメラが真上からではなく、手前から撮っているためで、実際はほぼ同一幅。

ただし(昨日は「起動輪と誘導輪、転輪は両社とも同サイズ」と書いたが、転輪はエレールがやや小径で、そのため転輪間隔がちょっと広い。転輪幅もタミヤのほうがわずかに広かった。

ディテールはタミヤのほうがずっと解像度が高いが、実際のところ、このへんは全部装甲カバーの陰に隠れてしまう。「あっそうか、隠れちゃうから、せっせとパーティングラインを消さなくてもいいんだ」とほっとする一方で、「こんなにキッチリ出来ているならカバーを外して見せる誘惑に駆られちゃうね」などと矛盾したことを考えたり。

ちなみにこの足周りはドイツが使ったPz.Kpfw.35(t)(チェコ・シュコダ社製のLT vz.35)と兄弟関係にある(設計者が同じ)。トリビア・ネタ。

●タミヤのキットは、エンジンルーム上のラジエーターグリルが枠ごと別部品になっているが、実車では、この枠部分は車体上部後半と一体。おそらく、側面ハッチ上のオーバーハングのために別部品になったのだと思うが、側面前端部分、車体となだらかに繋がっている部分の継ぎ目は綺麗に消す必要がある。

仮に枠部分はスライド金型で一体にし、グリルだけを別部品にすれば、設計時にパターンが全部同一であることに気付いてもらえたかも(くどい)。いや、しかしスライド型で価格が跳ね上がってもいやだしな……。

(追記)タミヤのキットは後々のドイツ軍仕様とのパーツ共通化のため、何ヵ所かに部品取り付け穴を裏から加工するよう指定されている。後部アンテナポストもそうで、穴を開けてパーツP6,7を付けるよう指示されているが、実際には、無線機の生産が追いつかず、アンテナも付いていない車輌が多いようだ。

タミヤの塗装例でも、少なくともchar-francois.netの写真で見る限りでは、はっきりアンテナの所在が確認できるのは、塗装例A(M885号車)のみ。

なお、指揮車の場合は前後ともアンテナを備えている場合がある。例えばこの車輌(写真1写真2

この写真では前後同じくらいのアンテナが付いているように見えるが、明らかに前側のアンテナのほうが基部が大きく、アンテナ自体も太いものも確認できる。例えばこの車輌。後部のアンテナが標準で搭載される(はずだった)部隊内通信用、前部のアンテナが指揮車専用の部隊間通信用と思われる。

●ON THE MARKのエッチングパーツを改めて確認したところ、前照灯前面のメッシュは、タミヤのカバーパーツに比べ一回り小さく、そのまま使用は不能。ON THE MARKにはカバー本体も付いているのだが、薄さは別として、大きさと形状はタミヤのほうがよいようだ。

その他のパーツも形状に疑問があったり、少なくともタミヤのキットには必然性が薄かったりで、結局のところ、「いつかエレールのキットを成仏させようと思ったら(一部を)使おうか」レベルと判明。がっくし。

なお、エレール・SOMUA用のエッチングはEDUARDからも出ているのだが、こちらもパッと見、タミヤのキットには必然性が薄そうな……。

●資料サイトその1。実車解説と当時の写真……となれば当然ここ。記述はフランス語のみだが、解説は概観程度なので特に問題なし。キモは車輌番号順に整理された膨大な写真で、これだけで仕様変遷の研究材料になる。

char-francois.net

ボイテ(ドイツ軍鹵獲仕様)の写真がそこそこ多いのは、

world war photos

定番のbeutepanzerにはそれほど写真は多くないが3ページ。

●資料サイトその2。現存実車のwalkaround。

ソミュアS35は、本国フランスのソミュール(走行可能)、イギリスのボーヴィントン、アメリカのフォート・リー(アバディーンから移管)、ロシアのクビンカに現存していて、それぞれある程度まとまった枚数の写真がネットに上がっている。

ちなみに「Surviving French WW2 Tanks (PDF)」によれば、アメリカにある現存車は最初の60輌の初期生産型、クビンカの車輌はフィンランド(カレリア)で鹵獲されたドイツ軍PzAbt 211所属車(砲塔番号101)、鹵獲時点でツィムメリット・コーティングが施されていた由(つまり、上記beutepanzerの1ページ目一番下の写真の車輌)。

▼ソミュール(Saumur)

タミヤ 実車写真

legion-afv.narod.ru(1)

Net-Maquettes(1)

▼ボーヴィントン(Bovington)

militarymodels.co.nz(2枚だけアバディーン)

Net-Maquettes(2)

Net-Maquettes(3)

▼アバディーン(Aberdeen)

SVSM Gallery

▼クビンカ(Kubinka)

legion-afv.narod.ru(2)

(追記)資料本については、すっかりww2フランスAFVの定番資料となったP.Danjou, “TRACKSTORY”のシリーズ第1冊目がSOMUA S35。また、同シリーズの姉妹編といえるwalkaround写真集、“FOCUS”のNo.2がSOMUA S35。掲載されているのはソミュールの実車。

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ソミュア!

F1018882F1018884●タミヤのSOMUA S35をようやく手に入れたので、手元のエレール(グンゼ版)のキットと主要パーツのいくつかを比較してみた。ちなみに箱の大きさはほぼ同じ(本家エレール版はもっと大きかった)。

まっさらの新製品が出た今、わざわざ大昔のエレールを作ろうという物好きは少なそうだし、両キットを比較することに特に意義があるとは思えない。それより何より、タミヤのキットを直接実車写真と比較しろよって感じ。

――であるのは確かなのだが、何しろ手元にグンゼ版のストックが2つ、在庫をひっくり返すと組立途中で放棄した純正エレール版も出てくるはず、という具合なので、せめて比較対照くらいはしてみようか、というだけの話。ただし、若干の(実車と比較しての)ディテール・チェック話も混じっている。

F1018868F1018881●正確な形状がつかみづらい鋳造パーツが多いフランス戦車だが、特に砲塔は難物。このキットでも、APX 1 CE砲塔の出来はキモだと思う。

これに関しては、(hideさんに倣って)タミヤのB1bisのパーツ(同系のAPX-4砲塔)も引っ張り出して並べてみた。なお、ソミュアのAPX 1 CEとB1bisのAPX-4は、どちらもAPX-1の改良型という関係だが、外形はAPX-4のほうが原型となったAPX-1に近い(はず)。

写真は左から、タミヤB1bis、タミヤ・ソミュア、エレール・ソミュア。印象が悪いと言われ続けてきたエレールのソミュアの砲塔だが、その最大要因は、本来出っ張っているべき右前部が逆に窪んでいるところにあるようだ。

タミヤのB1bisとソミュアの砲塔を見比べると、同系の砲塔とはいえずいぶん大きさが違う(どちらもある程度正しく縮小されているとしてだが)。もっとも、前半部分に大きな違いはなく、主な違いは後半の延長・拡大にある。実車の場合、真上から砲塔を捉えた写真は(少なくとも私は)見たことがないので比較が難しいが、側面からの写真でも、特に右側のバイザーのある面の形状と幅の違いは確認しやすい。

その面の幅が違うだけでなく、(平面形で)角度が違うことまでは認識していなかったが、考えてみれば仮に角度が同じだと後面ハッチの面の幅に大きな差が出来てしまう。ソミュアのハッチがB1bisに比べ極端に狭いという印象はないから、やはり砲塔後半は幅が広がっていて正しいのだろうと思う。

砲塔下部パーツの写真では、より平面形の差が判りやすいが、それだけでなく、砲塔リングの径が大きく違うことが判る(そもそも砲塔形式名のAPX 1 CEのCEは径の拡大を示す)。実物のリング径は、APX 1 CEは1130mm(1:35で32.3mm)、APX 1、4は1022mm(同29.2mm)。モデルアート別冊「スーパーディテール フォトブックVol.2 フランス重戦車シャールB1bis」には、両砲塔の比較で「下部の張り出し具合に注目、B1bisのほうが大きい」と書いてあるが、当然ながらこれはエラの張リ具合の違いではなく、その下の「首」の太さの違いによる。

いずれにせよ、ややこしい形状の砲塔なので、実物と比べてどうなのかは、なお要検討。現時点の印象で言うと、タミヤの砲塔は右前部の角がちょっと出っ張りすぎな気がするが、バリエーションもありそうなので現時点では意見保留。

バイザー部分は四角くくりぬかれていて、そこに別体のブロックをはめ込むのは実車通りだが、四周の隙間が開きすぎな感じ。

F1018850F1018853●キューポラは、タミヤのものはB1bisと基本同一のパーツ。ただ、B1bis同様、キューポラの3方向に付く吊り下げフックを綺麗サッパリ省略している。

写真はエレールの説明書と、フックパーツ(エレールのものも、ご覧のようにそう大した出来のパーツではない)。

このへん、何かかたくななまでに「このフックはパーツ化しない」と決めて掛かっているように感じてしまうのだが、もしかしたら、タミヤには「*ミリ以下のパーツ化はしない」という基準でもあるのだろうか。

F1018879●車体上部の比較。上がエレール、下がタミヤ。全体寸法はほぼぴったり同じで、古いながらエレールもなかなか頑張っていることが判る。

大きな違いは戦闘室上面左右の斜めの削ぎ落とし部分で、エレールはこの部分の幅が狭く、それが戦闘室右前面形状にも影響を与えている。砲塔下左右の円弧状の張り出しもない。

細かいディテールではさすがにタミヤの方に一日の長、というよりも一日以上の長がある。タミヤではエンジンルーム上面前方のハッチが一体成型だが、(特に右側ハッチの)独特の膨らみ加減を表現している(もっとも、表現し尽くしているかというと、ちょっと微妙なところ)。

F1018859 一方、ラジエータグリルはエレールが車体と一体であるのに対し、タミヤは別部品。エレールはハッチの枠と格子が一体化してしまっているのに対し、タミヤはしっかり別体を表現している。しかし、左右の格子が線対称になってしまっているのは同じ。

実際には、この格子パネルは左右とも(というより4枚とも?)同一パーツを使っているために点対象になっている(少なくとも私が写真で確認できた限りでは)。タミヤのパーツでは、左側の格子(B6)が正しく、写真の右パーツ(B5)は格子のパターンが鏡写し。

F1018875F1018857●タミヤの車体前面と、両社の車体裏。

実車の車体下部は、鋳造で左右別々に作られ、それを中央で(内部で)ボルト接合しているため、中心に分割線がある。エレールでは、この分割線は無視されている。

タミヤのパーツも単純に筋彫りが入っているだけで、それはそれでいいのだが、車輌によっては、分割線両側がわずかに盛り上がっているように見えるものもある。また、中央横方向に鋳造のパーティングラインらしきものが入っている例もある。

F1018872床面はおそらく内部の機器の取付架として凹凸がつけられていて、それが外側で模様になっている。車台まで鋳造パーツで作ってしまったソミュアならでは。鋳造多用の丸っこい外見はフランス戦車らしいところだが、車台まで鋳造なのは、量産車ではソミュアS35とオチキスH35系列くらいだと思う。エレールのキット、実は頑張ってたんだなあ……。

写真が寝惚けているので判りづらいが、タミヤは底面にもちゃんと左右の分割線がモールドされている。

車体上下の結合部表現については、さすがに新しいタミヤは綺麗に表現してある。

F1018865 F1018866●足回り。起動輪と誘導輪、転輪は両社とも同サイズ。同じものを同じ縮尺でキット化している以上、当然のことかもしれないが、実はメーカーごとにバラツキが出ることも珍しくない。さすがに最近のタミヤは起動輪の歯数(履帯のピッチ)を適当に済ますことはなくなったようだ。

違いは、起動輪に関しては、エレールのパーツは表面に2カ所、アクセスパネルのようなモールドがあること。これは少なくともソミュールの実車では確認できない(4/14追記。ボーヴィントンの車輌にはあり、旧アバディーンの車輌にはないようだ。生産時期による差異ではないかと思う。なお調査の要あり)

なお、ソミュールの実車の起動輪では、表面に鋳造管理番号と、中心からごく短くかすかな放射状のリブがあるが、これは両キットとも表現されていない(なお、鋳造管理番号は車輌により、車体やハッチ類にも入っている場合があるが、それらも両キットとも一切入っていない)。

誘導輪はボルト列の位置に若干の差があるのに加え、タミヤはボルト2本ごとに座金のモールドがあり、エレールにはそれがない(あるいは、エレールはドーナツ状に全体に座金があるというべきか)。いずれにせよ、両社とも両面同じモールドになっているが、実際には、

  • ナット側(ソミュールの実車では表側)はタミヤのモールドのように、2本ごとに座金がある。
  • ボルト頭側(ソミュールの実車では内側)はちょっと凝った形状で、ボルト列外側にリング状の段差があり、
  • ボルト頭は正六角形ではなく一部が切り欠かれた形状で、その切り欠き部が段差に引っかかり、ボルトが回転しないようになっている。

――という仕組みになっているようだ。

重箱の隅的なことを言えば、タミヤのモールドは両面ともナットになっているという時点でちょっと変なのだけれど。

なお実車に関しては、ボルト頭をそのままの形状とした場合には段差に引っ掛かる辺が短く、「なめて」しまう危険性があると判断してボルト頭を切り欠いたのだと思うが、わざわざ切り欠いて汎用性をなくすより、誘導輪側に六角形の窪みを付けるとかのほうがよかったのではないか、とツッコミを入れたくなる。

F1018862転輪の比較は右写真のような感じ。中心軸部分の径が違い、それに対応してなのか、穴の位置にもズレがある。

穴の位置はタミヤのほうがよさそうだが、ソミュールの実車写真ではもっと穴が小さく見える。ただし、アバディーンのものはタミヤのパーツに近く見えるので、穴の大きさにバリエーションがあるか、あるいはソミュールのものは詰まっているか、という可能性もあるかも。いずれにせよ、組み上がってしまえば隠れてほとんど見えない。

F1018846●履帯は、さすがにエレール純正のものはディテールもプアな上に固くて使いづらいのだが、グンゼ版は独自にインジェクションの非可動式のものが入っている。

ただし、タミヤのものに比べると、表面もちょっとのっぺりしていて、裏面も簡単。

タミヤの履帯は、B1bisのものが縁が分厚くてゴツかったので心配だったが、こちらはそれに比べ繊細な出来。ただし贅沢を言わせて貰えば、表面リブ中央にゲート跡が穴になってしまっていること、裏面窪みに押し出しピン跡が目立つことはちょっと悩ましい。

ちなみにソミュアの履帯は短ピッチのものと長ピッチの標準型との2種類がある(当然、起動輪の歯数も違うはず)。P. Danjou, "TRACKSTORY"によれば、短ピッチタイプは144枚、長ピッチは104枚。短ピッチタイプは最初の50輌に使われた、とあるが、当時の写真を見ると、明解に車輌番号とリンクしていないような気も……。

タミヤの履帯は両側フランジが尖り気味で、若干、短ピッチの外見が紛れ込んでいるような印象もある。

●全体的に見て、タミヤの新しいキットはさすがによく出来ているのだけれど、主にパーツの抜きの関係に起因すると思われる細部ディテールの不足も少々。

  • 砲仰俯軸は砲塔側面に貫通して固定されていて、その跡がうっすら見えているので再現すると吉。
  • 砲塔後部ハッチは、下部左右の出っ張り側部に軸が貫通している。
  • 車体、操縦席右側のスリット周りのディテールが省略されている。
  • 操縦席前面バイザーフラップの軸部ディテール。
  • 車体側面の若干のリベット(4/14追記。これはなぜか、組立説明図にははっきり書込まれている。図14、16、17)
  • 車体上下結合ボルトの「逃げ溝」の、特に車体側面ハッチに掛かる部分の形状。
  • アンテナポストの雨抜き穴。

――など。

F1018848 ●オマケ。グンゼ版はパッケージもドイツ軍仕様だったが、独自パーツとしてメタルの改装キューポラとアンテナポストが入っていた(加えて、レジンのドイツ兵フィギュア)。

しかし、B1bisの例を考えると、タミヤは後々、このソミュアもドイツ軍仕様を別に発売する可能性は高いのではないかと思う。そもそもそれ以外にバリエーションらしいバリエーションもないし(試作の自走砲は除く)。

F1018855 ●デカールシートはグンゼ版は妙に贅沢。タミヤに流用したい感じだが、古いキットなのでちょっとニス部が黄変してしまっていた。

なおソミュアS35は、B1bisあたりに比べると格段に塗装・マーキングの変化に乏しいが、それでも、タミヤの指定塗装のひとつにもあるような「砲塔だけパターン違い」や、最終生産バッチのうにょうにょした2色迷彩など、多少のバリエーションはある。もちろん、ボイテ好きな人はもう少し選択肢が広くなる。

F1019009●タミヤのキットはプラパーツ+金属チェーンだが、前照灯前面のメッシュは純正エッチングを付けてくれてもよかったのでは、と思う。アフターパーツで他社から出ると、必要性の高くないパーツがテンコ盛りで高いものになりそうだし。

ちなみに私の手元には、昔々買ったON THE MARKのエレール用のエッチングがあるが、これのメッシュはちょっと目が粗め。たぶんもったいないので使うと思うけれど。

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