I号戦車

I号戦車B型 アカデミー 1:35(2)

●アカデミー 1:35、I号戦車B型のキットレビューの続き。寸法チェックや他社キットとの比較など。もっとも他社キットとの比較とはいっても、本当に比較してみたい直近新キットのTAKOM製は持っていないので、いまひとつ役立ち度は低めかも。

なお、ドラゴン、イタレリ、トライスターの寸法/パーツ比較については、尾藤満さんの「パンツァーメモ」のI号戦車B型製作記にも詳しい。もちろん、パーツ比較だけではなく製作そのものに関しても大いに助けになる。

●まずは、PANZER TRACTS No.1-1、I号戦車の巻の図面と突き合わせてみることにする。

当然ながら、寸法がどれだけ正確かは実車・実測データと比べるべきもので、本の図面には「それがどれだけ正確なの?」という問題が付きまとうわけだが、一応、PANZER TRACTSは実測データに基づいて作図しているとのこと。実際には、PANZER TRACTS掲載の図面も、部分的には「え、それどうなの?」と感じるところがないわけではないが、とりあえずは、今のところ最も信頼性が高いものと考えて、頼りにしてみる。

PANZER TRACTS I号戦車の巻の図面は1:35ではないので、まずは縮小コピーを取る。

PANZER TRACTSによれば、I号戦車B型の寸法は、

全長:4.42m(126.3mm)
全幅:2.06m(58.9mm)
全高:1.72m(49.1mm)

(カッコ内は1:35の計算結果、小数点2位以下四捨五入)

そもそもこの「全長」とか「全幅」とかが、どこからどこまで?というのがちょっと戸惑うのだが、全長は前後のマッドフラップ、全幅はフェンダー両端間――ではなくて、そこからちょっとだけ横に飛び出す転輪ボギーの補強レールまでを含めた寸法と判断。スキャンデータの印刷倍率を細かく変えて、上記カッコ内寸法の図とした。

で、そんな図面とキットの車体上部を重ねてみたところ。

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マッドフラップ部分を含めないフェンダー長は、PANZER TRACTSを縮尺してみた図面は108.8mmというところ(小数点以下はかなり適当)、キットは108.2mmくらいで、やや短い。上写真はフェンダー後端で合わせてしまったのでやや前側にズレが見られるが、フェンダー前端で合わせると、車体前部装甲板の継ぎ目とか、戦闘室の位置などは、ほぼ図面とぴったり重なる。ちなみに先行他社のキットの寸法は、

イタレリ:109.7mm
ドラゴン:105.7mm

イタレリが最も長く、ドラゴンは最短。尾藤さんによれば、ドラゴンはマッドフラップ部分で全長の帳尻を合わせているらしい。

戦闘室部分の前後長は、

PT図面:32.8mm
アカデミー:32.8mm

イタレリ:33.7mm
ドラゴン:31.7mm
トライスター:33.3mm

で、アカデミーはピッタリ、イタレリとトライスターA型でやや長く、ドラゴンは短かった。

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各社の車体上部と砲塔を並べてみたのが上写真。左からトライスターA型(新)、イタレリ、アカデミー、ドラゴン。PANZER TRACTSの図面によれば、戦闘室前後長と砲塔前後長はほぼピッタリ同じ長さらしいのだが、砲塔はトライスター用が最も大きく、イタレリが次点で、戦闘室の長さと順位が逆。このため、イタレリのキットでは砲塔前側で、やや戦闘室に“余り”が出る。

一方でドラゴンは戦闘室が最も短いが、砲塔前後長はそれよりさらに短い。そのため、砲塔を並べてみても明らかにドラゴン製だけ小さい。ドラゴンは後発のA型キットでは砲塔パーツを改めて大きくしている(実車では細部ディテールは違うものの、A型・B型で砲塔基本形は変わらない)。

なお、本来、砲塔リング中心は前後位置で戦闘室のちょうど真ん中にあるらしく、アカデミーのキットでもそうなっているが、砲塔前半の寸法の違いもあり、イタレリ、トライスターではやや後ろに、ドラゴンではやや前にズレている。

というわけで、とりあえず、ごく大まかに主要部だけ検証してみたが、寸法的にはアカデミーのキットはなかなかスグレモノといえそう。

●細部に関するチェックの続きと比較。

▼フェンダーの滑り止めパターンはこんな感じ。

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上がイタレリ、下左がアカデミー、下右がドラゴン。前回書いたように、アカデミーが最も細かく、実車にも近いようだ(フェンダー幅が、実車では網目15目。アカデミーが14目)。まあ、個人的にはイタレリくらいでもいいかなな、という感じだが、タミヤのII号戦車くらい粗くされるとさすがにちょっと……。

▼各社の転輪を比べてみたのが、以下の写真。

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左から、イタレリ、トライスター(上:改修版、下:旧版)、アカデミー、ドラゴン(上:改修版、下:旧版)。ドラゴンの改修版は、自走砲のキットにセットされているもので、トライスター改修版と同様、リム外側リングが別パーツになっているが、写真はそのパーツを取り付けていない状態。

以前、トライスターのA型旧版でブレダ20mm搭載型を作った際のチェックでも書いたが、トライスター旧版はちょっと“オムスビ穴”の底の角が丸すぎる感じ。各社ともスポーク付け根のグリースポイント?と思われるバルジも表現されているが、イタレリは本来2か所にあるべきバルジが1カ所しかない。また、アカデミーのパーツはグリースポイント?のバルジが、転輪の表裏両方にある(他社は片側にしかない)。これは実車の同一の転輪の表裏を確認したことがないので、正解は不明。

また、リム部外周のディテールに段付き・段無しの2種類あるが、これは実車でも確認できるバリエーション。また、前回書いたように、アカデミーのみ、ゴムリム部およびスポークに刻印が表現されている(TAKOMはスポークの方の刻印のみある模様)。

転輪の厚みは、イタレリのものが最も薄く、アカデミーとドラゴンはほぼ同一。トライスターのものが最も厚い。PANZER TRACTS掲載の諸元表のなかに、「Tires: 530/72 Rubber」という記述があり、この72(mm)が幅だと思われるが、35で割ると2.1mm。トライスターが2.3mmでやや厚め、アカデミーは1.8mmで薄め。アカデミーやドラゴンで薄めなのは、履帯のガイドホーンにそれなりのプラの厚みを持たせたかったからか。

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新しめの転輪3種でのディテール比較。トライスター新版と、ドラゴンの自走砲キットの新パーツは、リム部外周を別部品にすることでポケット状になっていることを表現。ドラゴンのキットは外周パーツを金属パーツで用意しているが、写真では取り付けていない。この部分においては、アカデミーのパーツは一歩譲るが、一方で前述のように刻印のモールドでは勝っている。なお、トライスター新版の転輪はややゴムリム部に軽くテーパーがあること、それもあってエッジの丸さが強調されて見えることも、ちょっと気になるかも。

▼誘導輪は、イタレリとドラゴンのB型(戦車型)ではムクの1パーツだが、アカデミーのキットや、ドラゴンの指揮戦車~自走砲の新パーツではリム部が表裏別パーツになって、空隙部が表現されるようになった。ドラゴンは指揮戦車と自走砲で、これまたパーツが違っている(自走砲のパーツの方が新しく優れている)。写真は、アカデミーと、ドラゴンの自走砲用パーツの比較。

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左がドラゴン(三代目)、右がアカデミー。リム部はドラゴンのものの方が薄く、空隙も広い。……だけではなく、ドラゴンのもののほうがハブ部の突出が大きくメリハリがある。ただ、実車写真と見比べた感じでは、ハブの突出具合はアカデミーの方が近い。

Idler01 なお、空隙間のリブは、両社パーツともスポークとスポークの間にもあって、計12枚となっているが、実車は、スポーク部にしかない(つまり6枚)ものもあるようだ。

ボーヴィントンの指揮戦車もどうやらリブの少ないタイプを装着しているほか、PANZER TRACTS No.1-1の中の写真でも確認できる(p83)。右写真はボーヴィントンの指揮戦車実車、wikimedia commons、File:SdKfz 265 Panzerbefehlswagen I Ausf B rear view at the Bovington Tank Museum.jpg(作者:Mightyhansa/Vauxhall Bridgefoot)より切り出し加工。

▼パーツ状態でフィット具合が気になっていた、戦闘室前・側面装甲板の検証。

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前回書いたように、おそらくクラッペ/ハッチ周りのモールドのツブレを防ぐために、このキットでは戦闘室側面・前面が別パーツ。そのために、接合ラインに隙間など空いてしまわないかが心配なところ。

工作の手順としては、車体上部パーツに、戦闘室左右の装甲板(A22、A23)を先に着け、その後で前面装甲板(A20)を着けた。なお、組立説明書の手順としては、これらのパーツを付けるのはステップ20とだいぶ後半だが、私は当然、間はすっ飛ばしている(こういうことをしていると、たまに、後から着けられないパーツが出てきたりして慌てることになる)。

側面パーツ(A22、A23)は裏側に複数の押し出しピン痕があり、そのため、多少凸凹している。これが接合時に多少の悪さをしそうなので、その辺を中心に、パーツのすり合わせを入念に行う。そこそこ頑張った結果、接着後の様子は写真のようになった。パーツの接合線は、2枚の写真の①③④の部分。若干、「パーツの合わせ目だなあ」感はあるので、この後、極細伸ばしランナーなど貼って整形をしたい。

なお、前述のように側面パーツを貼った後に前面パーツを合わせたが、その際、接合線③の部分に少々隙間が空いたので、側面パーツ前端の④の部分をヤスってやや後退させた。側面パーツ側の溶接線モールドを削り落とすくらいの感じでちょうどよくなった(そこまでの部品の擦り合わせ具合でも変わってきそうだが)。

関連して、戦闘室の後ろに取り付けることになるエンジンデッキは、前端部(写真の②)に溶接線のモールドがある。しかし実車では、戦闘室とエンジンルームは分離しており、かつ各々取り外し可能なはずなので、ここに溶接線はない(はず)。綺麗に削っておきたい。

●とまあ、こんな感じ。

戦闘室周りのパーツの接合など、一部面倒なところはあるが、全体の寸法、個々のパーツの出来などもよく、「アカデミー、やるじゃん!」と言いたい佳作キット。今後、噂の通りタミヤからもI号戦車が出るとして、まあ、まだ何の情報も出ていないキットとの間で優劣は付けようがないが、少なくとも、コストパフォーマンス的にもいい勝負には持ち込めそう。

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I号戦車B型 アカデミー 1:35

Img20240706123838 ●4日木曜日、仕事でつくばに行った帰りに秋葉原に寄り、ヨドバシでアカデミー 1:35、I号戦車B型を購入。

「タミヤからI号戦車が出るよ!」――というウワサ話のその後も気になるが、大戦初期のドイツ軽戦車好きとしてはスルー出来なかった。以下、簡単にレビューを。とりあえず今回は大まかにパーツ構成と、若干の目に付いた特徴など。

話題になっているのでご存じの方も多いと思うが、キットはI号戦車B型と、ツュンダップKS750サイドカーのセット。(主に)大戦初期に使われたI号戦車と、大戦中盤以降に使われたKS750とがセットなのはちぐはぐだし、箱絵のような(ポーランド戦時の塗装の)I号戦車とKS750が隣り合ったシチュエーションなどあり得ないのだが、まあ、そのへんは「突っ込むだけ無駄」みたいな。

もっとも、こういう「ちぐはぐな取り合わせ」は古いキットではよくあったことで、I号戦車に限っても、フジミの1:76は7.5cmPaK40とセットだったし、ニットーの1:76はキューベルワーゲン、BMW R75サイドカーとセットだった。しかし21世紀にもなってこれは……。

なお、箱上面は絵のみで、キット名称(車輛名称)などは無し。右下に小さくメーカーロゴが入っているだけ。比較的最近のアカデミーの箱は、斜めにタスキ掛け的にキット名称が入っていたように思うのだが、また変わったんスかね。

●まずは全体構成。

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パーツのプラ枝は、砲塔基本形のみも1枝と考えて、6種7枚(足回りが、同一枝が2枚)。透明パーツは無し。

Aパーツ(写真1枚目):車体上部関係。基本形以外の砲塔関係パーツもこの枝。戦闘室は前・側面が別パーツで貼り重ねる構成。A型では沈頭ネジ(皿ネジ)だったクラッペ周囲が、B型では尖頭ボルトに変更になっているため、モールドがツブれるのを避けるためと思う。腰上半身の車長フィギュア付き。

Bパーツ(写真2枚目):車台、OVMなど(うっかりOVAと書きそうになった)。シャーシは各面別パーツの箱組。

Cパーツ(写真3枚目):足回り(×2枚)。履帯は部分連結式(いわゆるリンク&レングス式)。

Yパーツ(写真4枚目):ツュンダップKS750サイドカー。この枝だけで完結していて、戦車本体のパーツとの出入りもないので、公出のフィギュアパーツと合わせて、いずれ単発キットでの発売もあるか?

Zパーツ(写真5枚目):オートバイ兵用コート着用、オートバイとサイドカーに搭乗のフィギュア2体。

砲塔基本パーツ&デカール(写真6枚目):砲塔は(あたりまえだが)クラッペ周囲に尖頭ボルトのモールドがあり、フック取り付け個所が上面にあるB型用。テストショット段階ではやたら大きくて「なんだこれ?」状態だったダンパーも適切な大きさに。デカールは、戦車用5種(ポーランド戦線3種、フランス戦線1種、北欧戦線1種)、サイドカー1種(どこのだろう?)、フィギュア用あれこれ。戦車用は全て1939年~40年のものなので、その時期はまだツュンダップKS750は就役していない。

Img20240706124144 エッチングパーツ(写真7枚目):マフラーカバーと菱形のナンバープレート、憲兵用ゴルゲット(首から下げているプレート)。ほか、写真に撮り忘れたパーツとしてワイヤーロープ用ナイロン(?)ひも1本も付属している。

組立説明書類(写真8枚目):組立説明図がカラー塗装図含め3部構成。さらに足回りの訂正組立図(元はサスペンションの向きを間違えている)、注意書き、などなど。やたら紙が多い。ちなみに赤枠の1枚は、「部品不足や破損がないかは、袋を開ける前に確認してね」という注意書き。何それ。微妙に不便なんだけど。

●基本的な寸法がどうの、というような話は次回に送ることにして、ここからはむしろ枝葉のディテールの部分を。個人的に「いいね」と思ったところ、「おや?」と思ったところなど中心に。

▼まずはAパーツから。

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戦闘室周りを中心に、エッジの溶接ラインのモールド表現はややおとなしめ。装甲の薄いI号戦車の溶接ラインとしてはまず適正なところだと思う。ただ、部品の接合線と重なる部分がどうなのかは、実際に組んでみないとよく判らないので、評価保留。

車体上面ハッチ周囲や前部上面の皿ネジは、ネジ頭が全部同一方向になっているのは、細かくて判りづらいとはいえ、少しだけ減点ポイントかな。

側面下部の増加装甲は先行キットと異なり別パーツではなく一体モールドだが、B型ならあるのが当たり前(のはず)だし、より薄い表現になっているので良し。取付ボルトも、ボルト頭ではなくナット表現になっている。

フェンダーは、先行のイタレリやドラゴンではシャーシ側と一体だったが、このキットでは車体上部側と一体。フェンダーの滑り止めのメッシュパターンはイタレリやドラゴン、トライスターのA型よりも細かく好感が持てる。

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エンジンルーム右後端のグリルは、ルーバーがきちんと斜めに表現されていて、しかも隅にぴっちりはまった表現になっているのが良い感じ(ドラゴンのキットは右端・後端からちょっと離れている)。

エンジンルームのハッチは、このキットでは不用部品扱いだが、熱帯地仕様の通気口付きのものもセットされていて、この後のバリエーション展開が期待できる(戦車型自体の熱帯地仕様か、それとも指揮戦車や自走砲か)。

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一部シャーシ関連のパーツも、A枝に入っている。誘導輪基部間の補強バーは、左写真中央のA8を使うよう組立説明書では指示されているが、細いタイプ(右写真、A19)もパーツ化されている。牽引ピントルも(説明書では一択だが)バリエーションパーツ有。

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機銃(MG13k)はスライド型ではなく銃口に穴は開いていないが、放熱筒の表現はプラパーツとしてはなかなか頑張っている感じ。

▼続いて、主に車台関係のBパーツ

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基本、インテリアはカラッポだが、エンジンルーム隔壁にはモールドがあり(左写真)、ファイナルギアハウジングの車内側もパーツがある(右写真)。車内が覗ける自走砲バリエーション展開への布石?

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車台前面装甲(左写真)は、ギアハウジングの出っ張り下に平面部分の表現あり。これは古いイタレリ、ドラゴン(B型)、トライスターA型の旧版では再現されておらず、トライスターA型の改修版や、ドラゴンのA型では表現されるようになった部分。目立たないところだが、きっちり抑えてあるのは嬉しい。

第一転輪用のサスペンション・コイルばね(右写真)は、ドラゴンA型キット用スプリングのように、左右で巻きが逆(鏡写し)なんてマヌケなことにはなっていないが、一方ではドラゴンA型用同様に、裏側でモールドが逆斜めになっていて、要するに「コイル」ではなく、「斜め蛇腹」にしかなっていない。どのみち組んでしまえば裏はほぼ見えないので作り直したりはしない予定だが、ちょっと脱力感。ちなみにドラゴンのもともとのB型用スプリングは、そもそもモールドが斜めにさえなっていない単純な蛇腹。そんなに難しい表現でもない気がするのに、意外にいいパーツがない(なお、実車のコイルスプリングは、A型用と、A最後期~B型用とで、バネ線の太さと巻き数が違う)。

▼足回りのCパーツより。

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転輪、上部転輪のゴムリム部には、社名の「CONTINENTAL」ほかの刻印入り。古いイタレリはもちろん、トライスターA型の新・旧版、ドラゴンのB型系列の新・旧版(戦車型と自走砲型)の転輪でも、ゴムリムの刻印はなかったので、アドバンテージと言えそう(ネット上のレビューを見る限り、TAKAMの転輪にも刻印はないようだ)。

ちなみに、ドラゴンは他のドイツ戦車ではメーカー刻印を入れている場合があるが、その場合、商標に触れるのを避けるため?、わざわざ「コンチネンタ(CONTINENTAU)」にしている。当キットは正しく「CONTINENTAL」になっているが、その後使っても良くなったのか、それとも何かかいくぐる手段を講じたのか、あるいは「知ったこっちゃねぇ」で使っているのか、は不明。

また、このキットでは、ゴムリムだけでなく、スポーク部にも鋳造の刻印が入っている(これはTAKOMの転輪にも入っているようだ)。

一方、トライスター新版とドラゴン新版、そしてTAKOMのキットでは、リム部外側を別パーツにして外周に向けての溝を再現しているが、このキットは旧来のパーツ同様に一体成型。このあたりは残念に思う人も多そうだが、例えば新世代のキットの中でも、TAKOMの転輪は、別部品のリム外周の外側に隙間ができるようで、いちいち埋めるのが面倒くさそう。

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起動輪・誘導輪も出来はなかなかよい感じ。起動輪ハブ部の蓋、外周スプロケットを止めているボルトは、ちゃんと表側がナット表現。さすがにキャッスルナットにはなっていないようだ。誘導輪は内側外周が別部品で空隙を表現。

サスペンションは、スプリング付け根・外側のアームの窪みも、スライド型できちんと表現されている。

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履帯はガイドホーン外側の窪みもきちんと表現されているし、そのまま使用して問題ないレベルだと思う。もちろん、ベースのキットの出来もよいので、予算と労力に余裕があれば可動履帯を奢るのも惜しくはない。

デカール

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シートの中に、何やら注意書きっぽいものがあって(27番)、何なんだろうと思って説明書をよく見たら、OVMの消火器のラベルだった。とはいえ、尾藤満さんが「panzermemo」で考証・自作したデカールのタイプとはディテールが異なっている。デカールのものは、どうもこのページ(掲示板)で、「戦前タイプの消火器ダヨ」として紹介されている写真のものに近い感じだが、果たしてI号戦車の車載用としてふさわしいのかどうかはちょっとよくわからない。

▼ツュンダップKS750のYパーツ

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そもそもこの辺は元から興味の範囲をちょっと外れるので、あまり大したことは言えない。キットの出来は、古いタミヤやイタレリに比べると格段の進歩がありそうなのはぱっと見でわかるが、オートバイ本体の細密さは、スポークが元からエッチングで用意されていたりするライオンロアのキットと比べるとどうなのかなあ。

もっともこのキットのスポークも、一応左右面で別パーツとして板状のモールドになるのを避け、かつ、プラパーツとしてはだいぶ頑張って細くモールドしている。以前からタミヤ/イタレリ用に、最近ではまさにこのキット用にも、スポーク&タイヤほか、3Dプリントやらエッチングやらのアフターパーツもあれこれ出ているようなので、余裕のある人は交換すればよいと思う。

●図面との照らし合わせ、他社パーツとの比較は次回。

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I号戦車の履帯

●15日金曜日。

午前中、パソコンを立ち上げてとりあえず仕事のメールチェックを使用と思ったら、サーバーに繋がらない。

「あれ? メールサーバー不調?」と思ったら、事務所のメールサーバーだけではなく、JCOMのメールも開けない。あれれ? ネット自体繋がってないじゃん!!

とりあえず、モデムの電源を引っこ抜いて、しばらくして繋ぎ直してみたり、パソコン自体を立ち上げ直してみたりと、お約束の一通りをやってみたが復旧の気配はまるでなし。スマホであれこれ検索してみようと試みるも、スマホもうまくネットに繋がらない。あれ?wi-fiもおかしい? JCOMの回線自体トラブってる?

なんだかんだジタバタして、結局どうにもならず、JCOMのサポートに電話しようと、固定電話の子機を取り上げたら、親機がダウンしている旨の表示。あれ? 電話もダメ? ……ってことは!

階下に降りて確認してみたら、かみさんがカーペットを干すだか何だかでテレビその他を動かしていて、その過程で、我が家の回線関係の大本のコンセントが引っこ抜かれていた。

四苦八苦していた小一時間を返せ!

――久々にコンセント一つ、回線一本で仕事も何も立ち行かなくなってしまう恐怖を味わった。

いざというときに代替で仕事できる環境をそれなりに身近に確保しておかないとなあ。

20211011_182436 ●数日前の夜。

近所の公園にタヌキがおったぞな。

しばらく前にも同じ公園で目撃していて、その時は、体中の毛が抜けてゴワゴワの肌がむき出しになった謎生物姿だった(ダニ疥癬症によるもの)。今回はそれよりだいぶ毛があるが、同じ個体が若干回復したのか、それとも別個体なのかはよくわからない。

ちなみに中央右上のカエルの水飲み台脇に、もう一匹目が光っている!と、ラインで写真を見せた知り合いが言っていたが、実際には「もう一匹」ではなくて、カエルのお腹から突き出ている水道の蛇口が反射しているだけ。

去年、一つ向こうの山で(昼間に)遭遇したタヌキの話と動画はこちら

●基本、模型は模型屋で買うことが多い。

今の世の中、ネット通販で買った方が欲しいキットの買いそびれはないし、むしろ通販のほうが安かったりもするのだが、それだけに、通販に慣れすぎるとあれもこれもとタガが外れてしまいそうで怖い、というのが理由の一つ。いやまあ、それだけの小遣いの元手もないけれど。

もう一つは、やはり店頭でキットの山を前にして物色するのが好き、というのが二つ目。地元逗子の模型屋は壊滅状態ではあるけれども、仕事で街へ出たついでに大きな模型屋に寄れるのは、首都圏在住者の贅沢でもある。

――なんていう建前でいつつ、ついつい(そしてたぶんものすごく久しぶりに)amazonで買い物。

購入したのは、T-Rex Studioの「Pz.Kpfw.I TRACKS Early type(I号戦車用初期型履帯)」。私としては、先日入手したCHINO MODELSのTKS用履帯に続いて、モデラー人生2度目の3Dプリント製品。

実は先日、下北沢のサニーに行ったときに(前回記事)、あれば買おうと思っていたのだが、残念ながら扱っていない由。(「TAKOMの後期型履帯ならあります」と勧められたのだが、それも中身はT-Rex製らしい)。

そのうち、秋葉原にでも行ったときにあれば買うかなあ、くらいに思っていたのだが、「そもそも、どこか扱っている模型店はあるんだろうか」とネットで検索してみたら、通販のM.S modelsに一つだけ!在庫があった。この時点で「どこかで見掛けたら買おうかな」が「これを買い逃したらもう入手できないかも」に意識が切り替わってしまい、“ショッピングカート”に放り込んで……どうせ滅多にしない通販を頼むなら、ついでに何か頼もうかと物色している何分かの間に……在庫切れに!

うっわ。

これでますます「今買わねば」スイッチが入ってしまって、ちょっと探してみたら、amazon上にまだ残っていた。というわけで、あわてて注文した次第。踊らされてるなあ。

なお、品物は水曜日に注文して、「お届け予定」は15日金曜日だったが、翌日の木曜日にはもう届いた。ちなみに製品の箱は7×7×4cmで、手のひらにすっぽり入るくらいの小さいものだが、届けられたamazonの箱は、タミヤの小さ目な1:35戦車・車両のキットが3つは収まりそうな感じ。その昔、

「♪あ~あ~、無駄にでかいボール箱~。
あ~あ~、横にアマゾンの~、マーク~♪」 ((c)ワンカップP)

と、メイコ姐さんが歌っていた通り。

さて、モノはこんな感じ。

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モデルカステンの可動式I号履帯と似たような、「クリッカブル」と「ピン挿し」の折衷型のような形式で、片方は履板にモールドされている突起に引っ掛けて繋ぎ、反対側はピンを挿すというもの。どちら側にピンを挿すかで、履板は右用・左用に分かれており、別々の袋に入っている。挿すピンはカステンのものよりずっと長く、履板中央のかみ合わせを超える長さがある。ピンそれ自体も3Dプリント製品。履板の成形そのものはシャープで美しい。

それにしても、そもそもI号戦車用の連結履帯なんて、別売の履帯製品の中ではかなり小さい部類なのだが、CHINO MODELのTKS用履帯を苦労して繋いだ(と言ってもまだせいぜい20リンク弱)あとでは、「うわ~デケぇ~。扱うの楽~」と感じる。

試しに何枚か繋いでみた。

連結時の精度については、噛み合わせがすんなり入る場合と、ちょっとヒネリを利かせてねじ込まないといけない場合あり。若干の(見た目では判らないほどの)変形や誤差はありそう。ピンも素直に奥まで入る場合と、途中で引っかかってなかなか入らない場合があった。箱には「2時間で完成」と誇らしげに書かれているが、本当かよ……。ちょっと不安。また、ピンはMaster Clubのレジンピン/リベット類のような、「最後のテーパーでキュっと締まる」感はなく、接着無しでは場合によっては抜け落ちも発生しそうな不安も少々。

●ちなみに、I号戦車用履帯は、モデルカステンの可動式でもガイドホーンの形の違いでA型用、B型用の2酒類が出ているが、これは確か、ガイドホーンの形状(アウトライン)の違いによるもの。

今回私が買った「初期型履帯」はさらにそれ以前のもので、ガイドホーンにおむすび型の穴が開いている。T-Rexのほかには、Master Clubのメタル製のものが出ているらしい。

すでにポーランド戦の頃には穴無し履帯が用いられているので、普通に作る分にはキット付属の履帯とかカステンの履帯とかで十分なのだが、中国陸軍が輸入使用したものは、輸入時点ママの穴開き履帯なので、このタイプがぜひ1両分は欲しかった。存在を知った頃はまだMaster Clubの製品もT Rexもなく、「履帯の1枚ごとに穴開け加工するなんて無理~」と、げんなりしていたのだった。

とはいっても、中国軍のI号戦車A型、いったいいつ作るんだ……。

●仕事の締切山盛りセール中であり、模型製作はまるっきり停滞中。

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Spanish Panzer I (18)

●ブレダ20mm搭載I号戦車A型改(Panzer IA Breda とか、Modificado とか、web上でも呼び名が一定していない)、新しい鮮明な写真が出てきたことに伴う改修工作。

砲塔前面の傷を補修した際にだいぶ削れてしまった周囲の溶接跡を再生。カバー部を作り直した防盾を取り付け、上下のボルト/リベット列、砲耳軸部などを工作。

また、砲身途中にある小防盾に関しては、下辺をまっすぐ切り欠いたような形状になっていることが判ったので作り直した。砲身先端の照星部分は接着してあったのだが、あまり苦労なく抜けたのがラッキー。

というわけで、改修前と改修後を写真で比較。

before(再再掲)

F1011285 F1011286

after

F1014285 F1014289

なお、先の実車写真をよくよく見ると、砲塔前面の右側に、皿ネジが上下2本あるようにも見える(下画像、黄枠で囲ったあたり)。左側にもあるかもしれないがこちらは写っていない。汚れか何かのようにも見え、悩ましいところで、作例では(今のところ)表現していない。

F1014289b

また、砲身根元の箱状パーツの再現に関しては、作例と新写真とでは差異があるが、これは作例のようにカバー?か何かを付けた写真が別にあるのでそのままとした。

●一応、これで新資料に基づく改修は終了したので、以下に再度全体写真を。今後はビッカース水陸両用戦車の製作(塗装)に戻ることにする。

F1014279 F1014284


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Spanish Panzer I (17)

●第一に作業を進めるべきは軽戦車コン(K-con)参加作のビッカース水陸両用戦車なのだが、仕事は滞っているし、塗装は何かと(個人的に)ハードルが高いので停滞中。

そもそも表面のエッチング面積がそれなりにあるので、今回は珍しくサーフェサーを吹こうと思っているので、まずサーフェサーを仕入れてこないといけない。

●そんな傍らで、I号戦車ブレダ搭載型の改修作業はちまちまと続行中。

F1014207 砲の基部は、「なんとなくそれらしく作ってあったものの、微妙に全部違う」といった体のものだったので、まったく作り直しをする。これまでなかった、防盾部を鮮明に撮った写真が出てきたとはいっても、流石に現代の博物館車両のwalkaround写真のようにはいかないので、なおある程度は想像(妄想)を働かせる必要はある。

そんなわけで、作り直したものが右。きっちりノギスなどで精度を出しつつ作業をしているわけではなく、多分に目分量の工作なので、これだけじっくり見るとだいぶ「有機的」な出来。特に砲身とロッド、2カ所の穴の間のディテールが、新しい写真でも微妙にはっきり判らない部分。

砲身の上、照準口にかかる部分には窪みが付けられているようにも見えるが、多少迷ったものの(少なくとも現段階では)窪みを付けていない。

F1014204●防盾は、外部のカバー(特に開口部の四隅)形状が違っていたこと、照準口形状が違っていたことで、まずはモールドを一度全部削り落として作り直した。

防盾外部カバーは例によって0.3mmプラバンの細切りを四周に接着。照準口部分は一度大き目に穴を開け、プラバンで塞いで表面処理をしたのちに小さく四角く穴を開けた。

照準口の左右には、非対称位置にネジがあるようなので、穴を開け、エバーグリーンのロッドを加工して植えこんだ。一応、マイナスのネジ頭の溝は切ったが、眼鏡をかけてもよく見えていないので、自分でもどこまで再現できているかよく判らない。

F1014200 ●そして現在の主要パーツ群。砲塔前面は、分解作業によって若干傷がついたので、サーフェサーや(部分的に)瞬間接着剤などで傷を埋めてやすってある。その際、エッジの溶接跡再現がだいぶ落ちたので、今後若干の補修が必要。

あとは防盾を砲塔前面に取り付け、上下のリベット/ボルト列の工作と、砲耳軸/フランジの追加など。

前面左右に埋め込みネジが2カ所ずつ(写真に写っているのは右側のみ)あるようにも見えるのだが、これは確証がないので反映するかどうか未定。

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Spanish Panzer I (16)

●すでに工作的には一段落ついたと思っていた、ブレダ20mm搭載のI号戦車A型(この車両を何と呼んでいいのかいつもちょっと悩む)だが、セータ☆氏から、

「ミシリン(Axis)に、スパニッシュ・ブレダI号の、防盾周りのクリアな写真が」

という驚愕情報が(セータ☆さん、どうも有難うございます)。

というわけで問題の写真はコレ(そのうちリンクが切れるかもしれないが)。

うぎゃーー。なんじゃこりゃー!

●ちなみにこの写真は、David Doyle著、「German Panzer I -- A Visual History of the German Army’s WWII Early Light Tank」(Ampersand Group刊)という新刊に掲載されているものらしい。出版元の案内ページはこちら

それにしても、80年も経って、出てくるもんは出てくるもんなんですなあ……。

●というわけで、以前、「工作終了」とした段階の防盾周りの形状は以下のような感じ(再掲)なのだが……。

F1011285 F1011286

一応、少ない写真資料から作ったにしては「大外れはしていなかった」と言っていいのではないかと思うが(自画自賛)、それでも新たに発掘された写真と比べると、いくつも差異が見つかる。

  • 防盾周りは四周にフランジがあるように工作したが、実際には上側にしかなかった。またそのフランジも、外部防盾からつながっているというより、L字材をくっつけたような感じにも見える。
  • 上側フランジは作例よりも幅が狭く、砲塔上面エッジに達していない。
  • 防盾取り付けボルトは上辺が4つ(一応数は合っていた)、下辺が5つ。下辺は砲塔前面に直接ボルト頭があるようで、幅もほぼ前面一杯。
  • 砲耳軸(軸カバー?)の突起はもう少し小さかった。
  • 砲基部の形状が微妙に違う。逆さ盾形のベース(左右対称なら4カ所にボルト)に、小判型の凸部。さらにその表面にも微妙なディテールがあるようだ。
  • 砲の直上に照準口(たぶん)が開いているのは合っていたが、断面形状が四角い。
  • その左右、非対称にネジ頭。
  • 砲身中央に付いている小防盾の下辺が平らに処理されている。ただし、ここも丸いように見える写真もあり、個体差があるかもしれない。

ちなみに砲身の上の箱状のものは、私の工作したものはおそらくカバーのかかった状態で、カバー無しに見える新たな写真のものとは大きさその他に差があって問題はない(はず)。

●これがもう塗装も終えてしまったなら、「いや、まあ、ギリギリでこの新しい写真が出てくる前に作ったんでねえ。はっはっは」で済ましてしまうところだが、幸か不幸か塗装前。

まあ、塗装後に出てきたとしたら「なんでもうちょっと早く出てこなかった!」と悔しがったと思うので、幸か不幸かと言えば「幸」なんだけれど。

というわけで、この新情報をいち早く反映すべく、再工作に取り掛かることにした。

可動部などもなく、割とがっちり接着してしまったので、もしかしたら砲塔前面をざっくり切り刻む必要も出てくるかと思ったのだが、意外なことに、それほど損傷させずに防盾部をはがすことができた。

F1014146

もちろん、「K-CON(軽戦車コンペ)」の最中なので、ビッカース水陸両用戦車の完成が第一目標なのだが、それと並行してこちらもこつこつ作業したい。

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Spanish Panzer I (15)

SUMICON2015、本日締切。

案の定というか何というか、数度の中断の遅れは取り戻せず、未完成で終了。とりあえず塗装前の工作のみ完了、ということに。

●前回からの続きの細部工作最終局面について書くと、車体前面がホーン周りの工作、前面フックへの外れ止めの片蝶ネジの追加、および前部マッドフラップの取付架の工作の3点。

F1011284 F1011283 F1011278 F1011263

ホーンは基本、キットのパーツ(本体+らっぱ部分)で、取付架部分を削ってプラバンで新造。コードを追加した。コードの取り回しは割といい加減。

前面フックの外れ止めはモデルカステンのインジェクションパーツだが、ただでさえ部品が小さいのに取付箇所が面倒でちょっとてこずった。ちなみにこの外れ止めは、戦時中の実車写真を見ると、紛失してしまっている例もそこそこあるようだ。

マッドフラップ取付架は、たぶんアベールあたりは割とまともなパーツが用意されているのではないかと思うが、例によってプラバンで工作。0.3mm板でベースを作り、前面に伸ばしランナーで突起(1枚目が製作途中写真)。上側にプラ材を削ったヒンジ(に見立てた単なる突起)。

Pz101実物を図解すると、右のようになる(各部バランスは適当)。

黄緑:取付架ベース
青:固定用小ボルト(3箇所)
紫:マッドフラップ位置決め突起
緑:レバーヒンジ
黄色:マッドフラップ固定用レバー(可動)
オレンジ:マッドフラップのツノに掛ける輪(可動)

一応実物の仕組みを説明すると、マッドフラップ側の受け金具を先端の突起(紫)にはめ込み、かつ、車体前端ギアバルジにあるボルト頭に金具を止めて位置固定。さらに、黄色のレバーを起こし、オレンジの輪をマッドフラップ側のツノに引っ掛けて、再度レバーを倒せばパチンと固定される(はず)。

作例では、(実車でもここが取れてしまっている例がままあるようなので)レバー周りは潔く省略した(自作でこれを作るのはかなり面倒なので)。ボルトも小さすぎるので付けていない。結局、きっちり取付架のディテールを再現することはできず、全体として「なんとなくそれらしいものがある」程度の表現になってしまった。

●砲塔前面の追加工作は、ハッチダンパーと砲基部の若干のディテール追加。

ダンパーはコントレールのプラ棒とプラパイプ。砲基部は、もともと鮮明な写真がなくほとんど妄想の産物なのだが、なんとなくそれらしく工作。照準口がどこかにないとおかしいので、砲の直上に穴を開けた。

F1011285 F1011286

ここに照準口があるように見えなくもない写真がある、程度の根拠であって、実際のところは、もっと鮮明な写真が発見されない限り判らない。なお、この場所に照準口があった場合、直前の箱に視野を遮られてしまいそうだが、これは、何らかの照準用器具にカバーが掛かっている状態なのではないかと考えることにした。

「ことにした」、というのがなんとも加減。そもそもここに何か付いているのはブレダ20mmM35の特徴なので、よく調べれば用途は判明しそう。

●そんなこんなで、工作完了写真を以下に。最後の数枚は、ここ何年か、塗装前段階で放置してあるルーマニアのR-35駆逐戦車(Vanatorul de Care R-35)で、魔改造軽戦車の揃い踏み。

F1011280 F1011279 F1011277 F1011275 F1011273 F1011270 F1011272 F1011260 F1011259 F1011269 F1011268 F1011266

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Spanish Panzer I (14)

●いつまでもちまちました工作が終わらない、I号戦車(スペイン改造型)製作記。SUMICON締切まであと約1週間。仕事もだいぶ切羽詰ってきたので、完成は無理っぽい感じ。あうう。

F1013829●車幅表示灯の工作。尾藤満氏によると、これは初期ドイツ戦車共通の規格品であるらしい。

エッチングの切れっ端で取付架を作成、ライト本体はキットパーツをくり抜き加工(最終的にネイルのジェル(光硬化樹脂)でライトを入れる予定)、0.6mm真鍮パイプと細いエナメル線でコード部を付けた。

本来、この取付架は2つのビスだかボルトだかでフェンダーに固定されていて、ABERあたりのエッチングでは当然それも表現されているのだが、どのみちライトに隠れてあまり見えないので手を抜いた。

F1011141実際の取付はこのような感じ。

コードの引き込み部は車体の端よりも若干内側にある。正確な位置はなかなか掴みづらいが、実際にはもうちょっと上側かもしれない。コードはぴったり車体表面に這わせてあるわけではなく、意外にいい加減な処理。

車体中央に付く前照灯もベースはキットのパーツだが、ちょっと前後に浅過ぎる感じなので、前面にリングを貼り増した。リング状の追加部は、タミヤ48のマーダーIIIの足回りパーツの枝に入っていた筒状のパーツ(A-16)がちょうど径が都合よかったので、スライスして使った。

車体前部の電装品ではホーンが未工作。

F1011161●アンテナはどのみち畳むつもりでいたのでお手軽に伸ばしランナーでもよかったのだが、なんだか弾みで真鍮線から削り出してしまった。

モーターツールが手元にないので、サンドペーパーとサンドべらで真鍮線を挟んで、指で真鍮線をしごいて製作。ちょっと太いかも。

アンテナ基部は、キットのパーツを元にプラ材を貼って長さを増したり、プラパイプの輪切りでリング状のパーツを付けたり。

●車体後部のディテール工作。

ジャッキ台は装甲板の曲げ部あたりに付けられた架台に載せられていて、上部の取っ手をスプリング付きフックで止める仕組みになっているらしい。

F1011156 ジャッキ台そのものはキットのパーツを元に一度表面ディテールを削って、裏側に0.3mm板を張って厚みを増した。「たが」の部分はショウモデリングのIV号戦車OVMエッチングパーツから。

架台は0.3mmプラバン。上部のフックは細いエナメル線、エッチングの切れっ端、プラペーパーなどで工作したが、細かすぎてとてもその通りの再現などはできず、結局、「なんだか適当にそんなようなものがある」レベルにしかならなかった。

ピントルのチェーンはいつものように、エナメル細線を撚ってつぶしたもの。フェンダー後端には、後部マッドフラップは付けない予定なので、その取付用のベロだけを追加した。穴がちゃんと横一直線に揃っていないのがちょっと恥ずかしい。

尾灯はキットパーツのまま。新しい知見だと、カバー透明部は盛り上がっているのが正しいそうだが、手元にパッと使える正しい形状のパーツがないし、あとあと気が向いたらジェルでも盛り上げればいいか、くらいの感じ。

●足回りの後部ボギーの両側には、作動範囲を押さえるためのダンパー(ストッパー?)がある。トライスターのキットにもパーツが入っているのだが(D-15、旧版・新版共通)、なぜかこれが、外側のビームに付く分しかない。

F1011139 本当は車体側にも同じパーツが付いているはずで、しかも不思議なことにトライスターの車体下部パーツ側面にはその取付穴がモールドされているにもかかわらず、部品は不足していて、(当然ながら)説明図にも描かれていない。

仕方がないので、キットパーツを参考にプラ材でほぼ同じ形状の部品を2つ作成し、車体側面に貼り付けた。

●前後ボギーを外側で連結するビームは、本来、かなり薄い鋼板で作ったコの字断面のパーツなのだが、トライスターのキットのパーツは分厚く彫が浅くて印象が悪い。

より精度を求めるなら専用のエッチングパーツを投入すべきところだが、もともと今回の製作は旧版キットベースでもあるし、お手軽にイタレリのパーツを流用することにした。イタレリのパーツも彫が深いとはいえないがトライスターよりはだいぶマシ。

F1011162実際には、トライスターのボギー軸間隔とイタレリのビームとでは僅かにズレがあるのだが、接着固定してしまうのであれば誤魔化し可能な範囲。軸部ディテールは、もともとトライスターはパーツ化されておらず、イタレリは本来は8角ナットであるところが6角ナットだったりするので、プラ材・プラバンで追加工作した。

前述のダンパーパーツに関しては、ビームに付く側はキットパーツを使ったが、使用に際して削り直して形状を多少いじった。そのため、元形状に合わせて作った車体側と不揃いになってしまった。反省。もっとも、車体側パーツは転輪に隠れてあまりよく見えないので、作り直しはしない。

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Spanish Panzer I (13)

●すっかりご無沙汰続きのSUMICONネタ、I号戦車(スペイン改造型)製作記の続編。

五十肩で右肩が痛だるく、仕事も盛大に滞っているので、I号戦車の製作も半月以上ストップしてしまった。SUMICONの締切である10月末日に間に合うかどうか、大いに怪しくなってきた。とりあえず、工作だけでも終わらせようと、製作を再開して努力中。

前回の時点で、なんとか車体の全体形を仮組できるところまで進んでいるので、あとはやり残しているあれこれ細部を詰めていく作業となる。

F1013740F1013725●アンテナケースを製作。キットのパーツはなんとなくそれらしく出来ているのだが、脚部の間隔が実車と違い、重なって置かれる長いバールとの位置関係がおかしくなる。なお、スウェーデンの博物館に現存するA型にはアンテナケースが付いているが、よく見ると形がおかしく、レストア時の新造パーツであるらしい。

この博物館車輌のアンテナケースは裏表がどうも同形のようだが、当時の実車写真では、少なくとも一番後ろの脚は表側しかないことが確認できる。長バールを装着する際、アンテナケースの裏側から差し込むようにできていると判断、裏側はキットパーツに準じた形にした。0.5mmプラバンで製作。

F1013734●フェンダー上に装着する工具類は、キットのパーツはどれも微妙に形が違っていて悩ましい。

・長バール:アンテナケースの下に装着するもの。キットパーツは基本丸棒状だが、実際には、途中から四角断面になっているらしい。タミヤ48マーダーに付属の角バールにプラバンを貼って厚みを増し、それぞれ長さを調整して、キットパーツと継ぎ合わせた。

・短バール:尾藤満氏の製作記事ではこれも角断面に作り変えているが、当時の写真で見ると丸断面でよいようだったのでキットパーツを使用することにした。しかし、実際にジャッキと並べて装着してみると、中央の止め具位置が後ろ過ぎるようだったので、削って留め具を新たに作った。

・シャベル:キットパーツを使用したが、先端の半月形カバーの形状を手直し。また、柄の先端がタガがはまったような形になっていたので削り直し、ダマ状にした。

・オノ:上の写真に写っているのキットのパーツの柄を若干切り詰め、刃先のカバー部にベロを加えたものなのだが、実際にフェンダー上に並べてみると、刃の長さ(高さ?)がだいぶ不足していた。結局、タミヤのII号から流用することにした。

F1013741F1013742●ジャッキは、キットのパーツを元に少し手を加えた。

後期型の大型ジャッキには、取っ手が折り畳み式のものもあるが、この型は、収納時には取っ手を一度外してひっくり返し、邪魔にならないようにしているらしい。

取っ手はキットパーツが単純なL字型になっているものを、ちょっとそれらしく曲げてみたのだが、もしかしたら実物はこんな曲がり方ではないかもしれない……。

F1013782●消火器は、尾藤満氏の「Panzer Memorandum」の「資料室」に記事があり、実物の寸法が出ていて、それによれば、このタイプ(K3)は「直径11cm、高さ(長さ)54cm」だったらしい。

それに従えば、キットのパーツは心持ち細く、長さは明らかに不足している。尾藤氏はB型製作記でタミヤのパーツを元に太めに作り直しているが、私的には太さは許容範囲だったのでキットパーツを利用。お尻(頭?)の部分を作り変えて延長した。

●そんなこんなで、フェンダーに乗る工具類は用意できたので装着。

しかしここでまた問題発生で、ジャッキと抱き合わせ装備されるワイヤーカッター(タミヤII号戦車から流用)とジャッキの長さが合わない。どうもトライスターのジャッキが短めなのが原因のようで、結局、上の状態からまたもう一度、端部分を削って1mm延長した。取っ手のある面のリングも、一度モールドを削り取ってずらしてある。

F1013788F1013787抱き合わせ装備のややこしい形状の留め具を工作して装着したのがこの状態。

キットにも、ジャッキ中央の留め具はパーツ化されているのだが、本来一体のワイヤーカッターの留め具は付いていない。ジャッキの両端の留め具は自作、中央の留め具はキットパーツを半分使った。片蝶ネジはモデルカステン。厳密にすり合わせせずに工作したので、短バールのクランプとジャッキの留め具が干渉してしまった。

●左フェンダーはシャベル、オノ、消火器が付く。消火器はちょっと凝った土台の上に装着されるのだが、どうもよく形が判らなかった。シャベルは一段浮いた状態で、その下にオノが付く。クランプの取っ手は、たまたま手近にあったショウモデリングの「PANZER IV vol.1 OVM」エッチングセットに入っていたものを使用。ただし、そのままでは大きすぎてバランスがおかしくなるので切り詰めた。

F1013778 もっと凝るならジェニーのクランプなど投入すべきところなのだが、その他の場所の解像度を考えれば、個人的には「取っ手が付いてりゃ充分」な感じがする。土台となるフェンダーもキットのままだし。

そんなこんなで、再び仮組して全体形の記念撮影をした(順番が前後していて、全体写真の状態ではまだ右フェンダーの工具が載っていない)。解説もなしにいきなり砲が砲塔にくっついているが、その辺はまた後ほど。

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Spanish Panzer I (12)

SUMICONネタ、I号戦車(スペイン改造型)製作記の続き。砲の製作。

●この改造型は、イタリア製ブレダ20mm砲(Breda 20/65 Mod. 1935)を搭載している。もともとは軽対空機関砲だが、スペイン内乱当時の軽装甲の戦車相手なら、十分強力な武装だったはず。なお、wikipediaによれば、ドイツの20mm機関砲、FlaK30や38とは弾薬が共通だそうだ(ゾロトゥルン系の20mm砲弾)。

L6やAB41の主砲として使われている……といっても、模型製作上、砲身の先が共通なだけなので流用対象外だが、機関部まであるベアなタイプがイタレリのAS42サハリアーナに入っているほか、ロバだか馬だかが牽引する単体キットもある(ただし、そちらは店頭で見たことはない気がする)。

もっとも、そこから砲身周りだけ流用するとごっそりパーツが余ってしまうし、そうまでして使いたいほどシャープなパーツではないので、コツコツ自作することにする。

●単純に「きれいな丸棒」を使いたい場合はエバーグリーンかプラストラクトがいいのだが、砲身に使うには柔らかすぎて曲げてしまいそう。適当な細さでテーパー加工しやすそうなパーツを探して、結局、フジミ76のPaK40の砲身を削ることにした。

ただし、最初はイタレリのパーツを参考に1本まるっとテーパーをつけて削ればいいのかと思っていたのだが、実物写真を見ると明らかに途中で太さが違うので、結局前後分け、後ろ側は別材(たぶんカステンのランナー)て作って接いだ。

砲身下のロッド(というかガスパイプ?)はコントレールのプラ棒。フラッシュハイダーとその後ろのリングもやはりコントレールのプラパイプを削ったもの。

F1012922 F1012924

と、ここまで作って、I号戦車改に搭載のものは中途に小さい防盾が付けなければいけないことを思い出す。フラッシュハイダーとリングが未接着で差し込んであるだけだったので助かった。

F1012991小防盾は円筒の表面を切り取った形状をしていて、最初は0.3mmプラバンを熱して型押ししようと思ったのだがシワシワになって上手くいかず、エッチングの切れ端も面倒くさそうで、結局、ドラゴンのM10パンターの不要部品(おそらく元のG型の排気管カバー)を切り抜いて縁を薄く加工した。

砲身後半の上部に変な箱状のものが付くのはブレダ20mmの特徴だが、I号改に搭載のものは、ある程度鮮明に写っている写真で見る限り、現存の砲や、イタレリのパーツのそれとちょっとディテールが異なっている。もしかしたら、カバーをかぶせた状態なのかもしれない。

ひとまず加工の終わった砲身と、イタレリのパーツの比較は以下。

F1012988 F1012987

●1枚目の写真にあるように、カステンの履帯の整形と繋ぎも並行。トライスターのI号A型は、旧版キットはカステン製、新版キットは(契約が切れたのか、それともバルクで仕入れたパーツがなくなったのか)自社製の履帯が入っている。

F1012923ディテールそのものには特に優劣はない感じだが、塗装の手間を考えると、非可動のトライスター製より可動式のカステンのほうがありがたい。

製作中、やけにプラがパキパキと硬くもろいのが気になった。以前にもカステンの何かの履帯のランナーを加工していてそう思った。もともと硬くもろいプラを使っているのか、それともプラが劣化しやすいのか、ちょっと気になる。

キット指定の枚数は87~88枚だが、87枚だとちょっときつすぎる感じ。つなぎ終わった記念に、足回りを仮組して全体形の写真を撮ってみた。

F1012950 F1012953

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