フランス軍軽戦車オチキスH35~39のメーカー名ロゴについて
以下は、その昔(たぶん2000年秋)に個人HP、旧「河馬之巣」に掲載したもの。転載にあたって、若干の加筆修正を行った(2020年5月13日)。
第二次大戦のフランス軍軽戦車、オチキスH35~H39は、6つの鋳造部分(エンジンデッキ、戦闘室上部、車台前部、車台後部、車台左右)を接合して車体が形成されている(よく似たルノーR35は圧延鋼板のシャーシを持つ)。
シャーシ前面には、ルノーR35の場合はルノー社の銘板が取り付けられているのと異なり、オチキス社のロゴが一緒に鋳込まれている。これには、生産工場、生産ロットによると思われるバリエーションがあり、ざっと確認できるだけを図示してみたのが以下である。
なお、解説中に「~号車」として例示しているものは、すべて「chars-francais.net」のオチキスH35およびオチキスH39のページに掲載されている写真による。
●Type 1
オチキスH35~H39の車体では最も一般的なロゴ・タイプ。シャーシ前面上半部のやや下に、細長く長円形に一段盛り上がった上に「HOTCHKISS」のロゴが入る。最も豊富に見られることから考えて、このロゴのものが本家オチキスの工場の製品ではないか――とずっと思っていたのだが、細かく見ていくと、書体そのもの(太さやと飾りの有無など)や文字に対するバックグラウンドの横方向へのハミダシ具合などには明らかにいくつかのバリエーションがあり、また、ロゴ自体の上下位置に関しても微妙な違いがある気もする。
したがって、そのうちの特定の1種が本家オチキス製であるとか、数種がオチキス製で時期やラインによる差異があるとか、あるいは「いやいや、そもそも鋳造ブロック自体全部下請けだよ」なんてこともあり得なくはない気も……。
エレールのキットは基本的にこれを表現しているのではないかと考えられるが、バックグラウンドが長円でなく長方形になっているという差異がある。
なお、下側中央に鋳造管理番号と思われるものが鋳込まれている場合もある(例えば40093号車や40809号車)。
●Type 2
Type 1に比べてわずかに小さいHOTCHKISSのロゴと、その下にデザイン化された「FAPS」のロゴが入る。これのお陰で、生産工場が特定できる。FAPSは「Forges et Acieries de Paris-Seine」(パリ・セーヌ製鉄製鋼所)の頭文字で、オチキスに対してH35~H39系列の車体を納入していた工場である。
オチキスH35には「40001」以降の登録番号が割り振られているが、FAPSのロゴが鋳込まれたパーツは、40100番台以降で散見されるようになる(とりあえず、確認できる最も若い番号は40110号車)。下のType 3、Type 4がエンジン換装以降の新車体のみに見られるのに対して、FAPSのロゴ入りはH35から確認できる。
後にFAPSは、APX-R砲塔の生産も開始。このため、H39では、砲塔右側面上部に、この同じロゴが入っているものが散見できる。
FAPS製のバリエーション。FAPSのロゴが上記より小さく、四角いバックグラウンドの盛り上がりがある。不鮮明な写真では、FAPSのバックグラウンドの盛り上がりの有無は判断しづらく、どちらがポピュラーなのかはよく判らない。
●Type 3
特大の「HOTCHKISS」のロゴが入るもの。バックグラウンドの盛り上がりはない。それほど例は多くないが、例えば「chars-francais.net」掲載の40614号車、40693号車、40834号車、40858号車など。あるいは「グランド・パワー」95/9、p.28。40981号車や41084号車では、下部にマルに囲まれた鋳造管理記号らしきものが確認できる。
●Type 4
HITCHKISSの文字のバックグラウンドは盛り上がっておらず、代わりに角を丸めた長方形の縁取りがある。その上部、面が切り替わる丸みのあたりに三角形のロゴマーク。これはパリ・ウトロー製鉄所(Aciéries de Paris et d'Outreau)のもの。
「chars-francais.net」で確認できる限り、このタイプの最も若い番号は40572号車。ほか、例えば40585号車、40817号車、40829号車、40846号車、40848号車、40985号車など。クビンカに現存する実車もこのタイプだが、クビンカのものは三角マークとHOTCHKISSのロゴの間と、その向かって右側にも鋳造管理番号が鋳込まれている。
HOTCHKISSのバックグラウンドが盛り上がっていて、かつ、この三角のロゴマークがあるように見えるものもあり(40708?号車)。単にたまたまそう見えているだけか、バリエーションがあるのか、現時点では不明。
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