RWD-8

RWD-8 DWL / IBG MODELS 1:72

●先々月の横浜AFVの会(仮)の折、ミカンセーキさんに、我が家の不良在庫のAZ model 1:72のビーチクラフト・スタガーウィング(元sword製)を押し付けた進呈したところ、代わりにIBGのRWD-8を頂いた。1個減って1個増えてプラスマイナスゼロ。

いや、実際には横浜AFVの会(仮)の在庫交換会にMIRAGE/RPMのビッカーズ6t系を2つ出して、代わりに貰った別キットはその場で他の方にあげてしまったので、都合、在庫2個減少。

20220505_214056 ●というわけで、ざっとIn Boxのキットレビューを。

いつのまにやらポーランド有数の模型メーカーに成長したIBGだが、RWD-8シリーズは、同社72スケールの飛行機キットとしては最初期のもののはず(あやふや)。

scalematesによれば、シリーズ最初のキット「RWD-8 PWS」(キット番号:72501)と、ここに挙げた「RWD-8 DWL」(72502)が発売されたのは2015年。その後の数年で、デカール替えで「PWS ドイツ/ラトビア/ソ連仕様」「PWS ハンガリー/ルーマニア仕様」「DWL イスラエル仕様」と、バリエーションキットが出ている。

なお、この機は48のインジェクション・キットがスポジニアから出ていて(現在はmirage hobbyから)、大昔に(ほぼストレートで)作ったことがある(たぶん押し入れの奥底あたりにまだ作品が埋まっているのではないかと思う)。当時はまったく知らずに適当に作ったが、スポジニア/ミラージュのキットは、PWS仕様であるらしい。

●実機について。

実機は1930年代初頭、航空機設計チームであるRWD(S.Rogalski、S.Wigura、J.Drzewieckiの3人の航空機設計者の頭文字を繋げたもの。発足時にはワルシャワ工科大学に在籍)により、もともとは軍の練習機として開発されたパラソル翼単葉の複座機。上記キット名称にある「PWS」「DWL」は、それぞれ生産工場を指す。「DWL(Doświadczalne Warsztaty Lotnicz)」はRWDチームが設立した航空機生産会社だが、ここはそれほど生産能力が高くなかったので、国営工場の「PWS(Podlaska Wytwórnia Samolotów)」も生産を請け負うことになり、最終的にはDWLで約80機、PWSでは本家工場の6倍近い約470機が生産されたらしい(主にwikipediaによる)。

両工場の生産機には若干の仕様の差があるのだが、基本、DWL製は民生用に販売され、PWS製は軍に引き渡されている。というわけで、大雑把には「DWLは民間型、PWSは軍用型」と覚えておけば済む。

第二次大戦までの間、RWD-8はポーランド空軍の標準的初等練習機として用いられており、1939年戦役時には多くが地上で破壊されたものの、若干機は連絡機としても用いられている。また、戦役中にある程度の数がルーマニアやラトビア、ハンガリーに逃れ、それぞれの軍に接収されて使用された。またポーランド陥落の後は、ドイツ軍によっても使用されている。

●キット内容はプラパーツが枝3つ(透明部品の小枝含む)とデカール、説明図。

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写真1枚目、A枝は主翼・水平尾翼ほか。ほとんどの小物パーツもこの枝。写真2枚目、B枝は胴体パーツほか。RWD-8の胴体はPWS(軍用型)とDWL(民間型)で若干ディテールが違い、この胴体もキットにより差し替えになっている。写真の胴体は(箱絵で明らかなように)民間型仕様。胴体パーツの脇に付いている小枠は軍用型用の脚柱、集合排気管、前後席間パーツで、この民間型キットでは全て不要パーツ。なぜ胴体が差し替えなのにこの小枠がそのまま入っているのかは謎。小さな風防は(十分とは言えないものの)インジェクションパーツとしてはかなり頑張って薄い。

デカールは東欧キット草創期からお馴染みのテックモッド製、塗装例1例のみに対応。なお、箱絵とデカールは登録記号「SP-AMT」で同一機だが、マーキングに差異がある(箱絵にある機首の機番「6」がデカールにはない、垂直尾翼のマークはデカールのほうが1種多く位置も違う)。ネット上で実機(SP-AMT)の写真を探すと、両方の状態のものがあるので、時期による違いのようだが、普通こういうのってデカールと箱絵は合わせるよね……。

●パーツのクローズアップをいくつか。

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左写真は、Aパーツ側に入っているDWL(民間型)の脚柱と、Bパーツの軍用型(PWS)脚柱。右写真はAパーツの胴体支柱で、左2つがPWS用、右2つがDWL用。見てわかるように、民間型は支柱に翼型フェアリングがかぶせてある。なお、胴体支柱パーツは中間のバッテン部分も支柱然としているが、実機では張り線。

ちなみに胴体パーツのディテールの違いは、おそらく、

  • PWS(軍用型)は左胴体に、コクピット直後、および尾翼直前にパネルがある。DWL(民間型)にはない。
  • コクピット脇下のカマボコ型フットステップは、PWS(軍用型)は左側。DWL(民間型)は右側。
  • PWS(軍用型)は胴体側面(後席下あたり)に斜めの細いリブ。方向舵の操縦索と平行なので、何かそれに関連したものなのだと思うが用途不明。
  • DWL(民間型)は単排気管(4本)、PWS(軍用型)は集合排気管。
  • DWL(民間型)はコクピット縁全周にクッション。PWS(軍用型)は一部のみ?

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胴体パーツ内側には、フレームのモールドがある。一体成型なので、本来は細い棒状のものが板状に厚みがついてしまっているが、組んでしまえばさほど気にならないと思う。幸い、表側にはほとんどヒケを生じていない。

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このキットで一番問題含みなのが主翼。エルロン、フラップと主翼本体の間に大げさに隙間が作ってあって、これはちょっと見栄えが良くない感じ。実機は、フラップ部分はほとんど隙間も段差も無し、エルロン部分は(動翼前縁が丸まっているので)段差はあるが、隙間は流石にこれほど大きくないと思う(クローズアップ写真がほとんど見つからないので印象半分だが)。ちなみに、おそらくプロペラのトルクの関係で、この機にはフラップは右側にしかない。動翼のリブ表現もいまいち。

さらに問題なのは翼断面で、キットの主翼は比較的薄め、かつ翼前縁ライン(r中心ライン)は正面から見てまっすぐだが、実機の主翼はおそらくもっと厚く、しかも前縁ラインは中央翼と外翼とで不連続で、前縁のr中心は外翼内側で中央翼に合わせて斜めに切れ上がる。……と文章で説明しても非常に分かりにくいが、下の実機写真を見ると、なんとも微妙なラインになっているのが見て取れると思う。

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ともにwikimedia commonsより引用(パブリック・ドメイン)。

左:File:Samolot RWD-8 na lotnisku NAC 1-S-1278.jpg (キットのデカールにもなっているSP-AMT)

右:File:Zawody IX lotu południowo-zachodniej Polski w Krakowie.jpg

動翼については修正はそれほど難しくないと思うが、主翼の基本形状が違うのは修正が難しい(それ以前に、どういう形状になっているのかが把握しづらい)。

なお、Attack squadron、およびKARAYAという2メーカーから、キットの主翼を交換するレジンパーツも発売されている(Attack squadronは主翼と方向舵・昇降舵のセット)。

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