ロレーヌ

ロレーヌへの道(7)――続・車体前部

●タミヤ「ドイツ対戦車自走砲 マーダーI」改め「フランス軍ロレーヌ牽引車」の製作記の続き。

●前々回、未工作で残っていた、車体前面ハッチの、裏側の消火器ホルダー(たぶん)に対応する極小リベットを作る。

リベット・ボルト類に関しては、私はもっぱら、「ジャンクパーツから移植する」「MasterClubのレジン製リベットを植える」のどちらかの方法を取っている。しかし、この場所のリベットは小さすぎて、そのどちらも使えない。

  • MasterClubのリベット類は、そもそも0.4mmまでしかない(たぶん)。
  • そぎ取り・移植法の場合、相手が小さすぎ、接着剤で溶けてなくなってしまう可能性が大きい。もちろん「溶けないタイプの糊で付けて、後からサーフェサーか何かで固定しろよ」というツッコミもあろうが、それ以前に目と手が追い付かない。

というわけで、別の方法を考えることにする。

最初は、「針先でつついて、カルデラ状の凹凸を作って塗料で埋めるか」などという方法も考えたのだが(その昔、飛行機模型のリベット再現法/リベットモールド再生法として模型誌で読んだ方法)、あまりうまく行きそうにない気がしたので、伸ばしランナー埋め込み法で行くことにする。

●念のため、ランナータグ部分などで試行した後、何とかなりそうだったのでキットのパーツに手を付ける。

① リベットを植える位置をパーツに書き込む。リベットは8カ所。最初は0.2mmの穴を開けたが、ちょっと小さすぎる感じだったので0.3mmで開け直した。0.2mmと0.3mmでは1.5倍も違うわけで、0.3mmでは逆にやや大きめかも(実はこのために新たに0.2mmのドリル刃を買ってきてまで工作したのだが)。0.25mmのドリル刃などあるといいのかもしれないが、さすがに市販品でそんな半端サイズはまず見ない。

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② 伸ばしランナーを植える。細く伸ばしたランナーを切って、テーパーでしっかり止まるところまで差し込む(というか、裏から引っ張る)。薄いプラバン(下写真の例では0.3mm)の切れ端にU字の切れ込みを入れ、飛び出た伸ばしランナーを切れ込みにはめて高さを揃えて余りを切り飛ばす(切り詰めすぎたり、根元で折れたりしてしまうのを防ぐため)。裏側はしっかり接着して止める(でないと、次の工作ステップでリベットが穴の中に潜り込んでしまったりする。ランナータグでの試験中に一カ所そうなった)。

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③ ペーパー(スポンジベースの「神ヤス」を使った)で高さを低めていく。あまり不揃いにならないよう、削り過ぎないよう注意しつつ削って終了。ちなみに斜め下の逆三角形の内装ヒンジのリベットは移植。だいたいこの大きさくらいが、私が「これなら移植でいいか」と思える限度。ヒンジリベットの下の一個が今回付けたものと同じくらいなのは移植時の失敗で、安定的にこの大きさを移植するのはやはり(私には)困難。

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実を言えば、この方法の場合最もネックになるのは「正しい位置に穴を開けることが出来るか」というところだと思う(これはMasterClubのレジン製リベットを植える際にも言える)。移植の場合、接着時にスライドさせて位置を微調整出来るが、穴開けの場合はそれが出来ない。今回も、向かって一番右上の穴はずれてしまったので、一度伸ばしランナーで埋めて開け直した。

●オマケ。

車体前部、シャーシ内側の一部の穴を埋めた。乗員室内部を作るかどうか、実はまだ決心が付かないのだが、今やっておかないと、「やっぱり前面フラップを開けよう」となった場合に面倒になるため。

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プラ材(キットのパーツのタグなど)を接着。隙間も瞬着で埋めて削る。

個人的には塗装(と、それに関連して工作手順)が面倒になるインテリアはやりたくないが、最前線でドンパチする車輛ではないので、全部締め切っているのも「生きている車輛」感が薄い。アイアンサイドのレジンのトランスミッションもここで有効活用すべきではないか、とも思う。でもやっぱり面倒だなー。

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ロレーヌへの道(6)――貨物室の床

●タミヤ「ドイツ対戦車自走砲 マーダーI」改め「フランス軍ロレーヌ牽引車」の製作記の続き。

●後部貨物室の床がどうなっているのかの考証に関しては、主に初回第4回に書いた通り。結局のところ、いまだに「上げ底の床面があったかどうか」に関して結論は出ていないのだが、とりあえず、なかったという前提で工作を続行中。

第4回に書いて以降、車体側面のもう一枚に関しても、貨物室下部の一段厚くなった部分の切削加工を完了。

上げ底の床板が無くなったために見えてしまうシャーシ床面について、ディテール追加の工作を行った。資料は主にモスクワの10.5cm自走砲の、レストア途中のwalkaround写真。

SCALEMODELS.ru:САУ 10,5 cm LeFH 18-4 auf Geschutzwagen Lr.S. (f) Alkett, музей Моторы Войны, Москва, Россия

●まずは、装甲板の入隅部分にフレームを追加。さらにその部分にリベットも付けていく。リベットを付ける作業というのは、(それなりに数もあるので)面倒なのだが、目に見えて精密感が増すので充足感がある。いやまあ、こればっかりやりたくはないけどね。

ちなみに今回この部分に使用したリベットは、タミヤ48のマーダーIIIの転輪外周からの剥ぎ取り。

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転輪サスに対応したバルジ(外側から見れば窪み)部分は、プラの厚みもあって若干実車より大きい感じなのだが、だからといってちまちま作り直すほどの意味も感じなかったので、立ち上げり部分が丸かったのをやや直線的に削り直した程度。

フレームに関しては、(キットのモールドとの兼ね合いもあり)あまり段差を大げさにしたくなったのと、上記バルジ周りの縁との厚みの差も表現したかったので、0.2mmの透明プラバンを使った。……が、上の写真でもわかるように、透明プラバンを使うと工作個所が見づらく、リベットを付ける際にちょっと面倒だった。

特に左右部分に関しては、側面板の厚みを削った分、床板端に階段状の段差ができてしまい、それを埋めた跡が透明プラバンを通して見えてしまっているのも見づらさの一因になった。薄いし、普通のプラバンより丈夫だし、でも普通のスチレン系接着剤も使えるのでいい素材なんですけどね(タミヤの0.2mm透明プラバン)。

ちなみに、上写真の状態では、側面板は後端までがっちり接着はしていない(接着してしまうと誘導輪基部が邪魔をして後面板がはまらなくなるため)。こまごまといじる場合、指定の組立手順を無視することが多くなるが、その分、「あ、しまった、後からじゃ付かないや」と慌てるケースもしばしば出てくる。今回は事前に気づけて良かった。

話は前後するが、側面板のやや前側にある、サススプリングのストッパーの取付ボルト(リベット?)は、キットでは1つしかないが、実際には(表側のモールドを見ればわかるように)2カ所ないとおかしいので、下にもう一つ追加した。キットでは上げ底の床板に干渉するので省略したのではと思う。写真に撮ったらバレバレだが、追加した下側のリベットが上より明らかに小さかった。どうせ組み上げたら目立たないので作り直さない。

●後端部のリブの工作。おそらく、後面板には牽引具等々が付いているため、通常のフレームだけでは強度的に不安があって付けられたものではないかと思う。タミヤのキットでは、このリブと同一レベルで床板が張られた解釈になっていて、パンダではこのリブとシャーシ底面の間くらいの高さで、やはり別に床板があるという解釈。うーん。どっちも根拠が知りたい。

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もちろん、このままだと床は凸凹しているし足は引っかけそうだし、別途床を張っていた方が使い勝手がよさそうなのは確かだけれど。

上の写真では未工作だった、後面板の「ドイツ軍が追加した牽引具に対応したリベット」の除去と移動を行い、また、下部の(元からある)牽引具基部のリベットを追加した。

床中央の、ドレイン穴とドレインキャップ?と思える丸い窪みについては、周囲にごくごく小さいボルトだかリベットだかがあるような、ないような……。まあ、とにかくあまりよく判らないので放置した。

とりあえず、貨物室の下半分に関しては、(エンジンルームとの間の隔壁を除いては)おおよそ工作終了。

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ロレーヌへの道(5)――車体前部

●ヴェスペからII号戦車を作るとか、マーダーIIIから38(t)戦車を作るとかじゃあるまいし。

車体のレイアウトもいじっていないし砲塔もないんだから、荷台周りをちょっといじればOKだよね。

……と思っていた時代が私にもありました。ええ。

「ちょっと進もうと思うたびに泥沼にはまるタミヤ」症候群、および基礎疾患「そんな細かいところまでいじんなくてもいいだろドイツ軍」に苦闘中。おとなしく、Pandaからベースのロレーヌ牽引車のキットが出るのを待っていればよかった、などと思うことしきり。いや、出るかどうか判らないけれど。

●というわけで、タミヤ「ドイツ対戦車自走砲 マーダーI」改め「フランス軍ロレーヌ牽引車」の製作記の続き。

まずは、上記のように「そんなにいじらなくていいよね?」と思っていた筆頭格の車体前部上面パーツ(キットのパーツ番号、C13)。これが結構な落とし穴だった。

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 キットのハッチのヒンジは外装式だが、これはドイツによる改修の可能性大(後述)。キットのヒンジのモールドは削り取り、きちんと左右と連続するよう筋彫りを追加(これがなかなか面倒)。ハッチ側に、内装式ヒンジの逆三角形のリベットを追加(なぜか車体側にはないが、車体側は装甲板ではなくフレームに接続しているためだろうと思う)。

 この部分のリベットはソミュールのマーダーIにはあり、モスクワの10.5cm自走砲、アバディーンの15cn自走砲にはない。オリジナルのロレーヌでも、どうもあるもの、ないものが混在している感じ。とりあえず、「ドイツが追加したもの」というわけではないようなので残した。

 ノテク・ライトの基部モールドを除去し穴埋め。

 予備履帯パーツの取付穴を埋める。こういう部分、穴ではなくて凸とか、薄い筋とかで指示しておいてくれると手間が少なくて済むのだが、迷いなく穴を開けてしまうところがタミヤ(以前に書いたようにそれがタミヤの強みでもあるのだが)。

 ドイツで追加されたジャッキの受け金具のモールドを除去。

 ジャッキ支持架基部モールドを除去し穴埋め。

 キットは逆Ⅴ字型のホーンガードが付くようになっている。これはドイツで追加したものではなく、オリジナルのロレーヌでも付いているものがあるようだが、それほど一般的ではない感じ。他には「ガード無し仕様」と「ガードが1本だけ仕様」があり、とりあえず1本型にしようかと、片側の穴を埋め、リベットもガードの縁モールドごと削ってから再生した。改めて写真を見てみると、結局ガードのないものが多いような気もするので、この後気が向いたらもう片方も同様に処理するかも。

 ハッチのこの部分の裏には、消火器?と思しき装備が付けられていて、ハッチ表にはそのホルダー用の極小リベットが8つあるはず(モスクワの10.5cm自走砲、アバディーンの15cm自走砲にはあるが、なぜかソミュールのマーダーにはない)。戦時中のオリジナルのロレーヌではそこまで詳細に確認できる写真がないのだが、少なくともハッチを空けた写真では内側の筒形装備はほぼ確実にあるので、リベットもあると考えるのが妥当だと思う。現時点で未工作だが、この後追加の予定。

続いて、操縦席~エンジンルーム上面パーツ(C12)。

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 後半部分は、対戦車砲PaK40の砲架が載るために本車輛で最もイジられている部分なので、ばっさり切り離す。ここは最初から覚悟の新造予定。

 トラベルクランプ保持棒の取付穴を埋める。

 トラベルクランプ取付架の穴を埋め、リベットを再生。

 ルーバー付きの左右パネルは後方にがばっと開く仕組みになっているので、この部分にヒンジ(たぶん内装式のヒンジなので、その取付リベット)が2つずつくらいあるのではとも思うのだが、自走砲型の場合、戦闘室装甲に隠れてよく判らない(そもそもソミュールのマーダー、アバディーンの15cm自走砲では、この部分は失われて鉄板で塞がれているので確認のしようがない)。引き続き要調査。

●車体各部のハッチのヒンジについて。

上のルーバー部分についてはひとまず置くとして、この車輛にはハッチと呼べる場所が3カ所(乗員室の上下2枚のハッチと、車体右側の点検ハッチ)ある。

タミヤのキットでは、3カ所ともにごく単純な蝶番型の外装式ヒンジのモールドとなっているが、改めて実車写真をよく見ると、

・ソミュールのマーダーIは(キットの基本資料となっているようなので当然かもしれないが)3カ所とも外装式。

・アバディーンの15cm自走砲は3カ所とも内装式。

・モスクワの10.5cm自走砲は乗員室上ハッチが外装式、乗員室下ハッチと右点検ハッチは内装式。

戦時中の実車写真を見ると、少なくともマーダーIの場合は外装式の例が多いようだ。

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たとえば以前にも載せたこの写真(Bundesarchiv, Bild 101I-297-1701-21 / Müller, Karl / CC-BY-SA 3.0)だが、跳ね上げた乗員室前面ハッチ部内側の左右三角板にある、本来なら内装式ハッチヒンジのプレート式アームが通る穴がぽっかり開いているので、少なくともこの部分はすでに外装式ヒンジに改められていることが判る。

一方でオリジナルのロレーヌ牽引車の写真を見ると、はっきり内装式であると確認できる写真はあるが、外装式であると断言できる写真は見当たらなかった。というわけで、この外付けヒンジはドイツ軍の手に渡ってからの改修である可能性大。うーん。オリジナルの内装式は破損しやすかったのかしらん。

ちなみに、特に乗員室前面ハッチ(上側ハッチ)について言うと、全開状態のときに、外装式ヒンジの場合は(上写真のように)閉位置に対して180度か、むしろやや立ち気味になるのに対して、内装式ヒンジの場合は180度以上、もっと後ろ側に倒れ込むように開く。いずれにしても、単純に開いたままだと走行時の揺れでバッタンと閉まったりして危ないと思うが、ロック機構のようなものは見当たらない。ただし(ロレーヌでもマーダーIでも)半開状態の写真もあるので、何らかのストッパーは必ず付いているはずで、どうなっているのか謎。

とにかく、そんなわけで、ロレーヌを作る場合は3カ所ともヒンジを作り直す必要がある。まさに「ハッチ大作戦」。ハッジ・ハレフ・オマル・ベン・ハッジ・アル・アッバース・イブン・ハッジ・ダウド・アル・ゴサラ、と一息で言わされるくらい面倒。

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ロレーヌへの道(4)――とりあえずの着手

マーダーじゃなくてロレーヌを作るぞお。

……という不退転の決意(大げさ)を示すために、キットに最初のメス(じゃなくてペンナイフとヤスリ)を入れる。

●そんなわけで、タミヤ「ドイツ対戦車自走砲 マーダーI」改め「フランス軍ロレーヌ牽引車」の(ここでようやく)製作記。

まずはシャーシの後面板。マーダーIは弾薬トレーラーを牽引するため、後面バルジ中央に大きな連結器を増設していて、キットの後面板にもその基部がモールドされている(写真左、初回に出した写真の再掲)。

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ロレーヌに先祖返りさせる場合、これは不要なので削り取る。必要なモールドは消さないように注意しながら、この基部の凸部だけ削るのはひどく難儀な(それなのに地味な)作業で、さらに「二の字」のダボ穴はベースとなる装甲板表面よりさらに窪んでいるので埋める作業も必要になる。

いっそこの面のモールドはすべて削り落としてしまって後から再生するか、あるいはこの面自体を除去してしまってプラバンで作り直すかしたほうがよかったかもしれない(もっとも、オープントップの車輛なので、後者の場合は面の裏側のモールドも作り直す必要が出てくる……それが嫌だったのでちまちま削る道を選んだのだが)。

削り取った後は、牽引基部に隠れていた個所のリベットを再生。ここで悩んだのがリベットの位置。普通に考えれば上辺と同じ間隔・数でいいようにも思うが、もしかしたら、牽引基部下辺のリベットは、元のロレーヌのリベット穴を利用しているかもしれない。

と、一番最初の工作でいきなり行き詰ってしまいそうになったが、幸いなことに、セータ☆さんから、後面のリベット列がしっかり写ったロレーヌの実車写真を教えて貰い、上辺と同じ配置であることが確認できた。さらに、モスクワにある10.5cm自走砲のwalkaroundでも同様の配置であることが判って考証を補強できた。

なお、パーツの裏面にも連結具基部に対応したリベットがモールドしてあるので、そちらも削り取る(一部は位置をずらす)必要がある。

初回にも書いた、貨物室(戦闘室)床板問題。一部繰り返しになるが、簡単にまとめてみると、

  • タミヤのキットの戦闘室(貨物室)床板は、後端部の補強リブとツライチのかさ上げされたものになっており、前端はそのまま砲弾ラック下部になっている。
  • RPM、IRONSIDEのキットはシャーシ底面がそのまま床。
  • PandaのマーダーIは、底面とタミヤの床板の間くらいの位置で、これも別の床板がある解釈。砲弾ラック下部は床板から一段上にある。
  • ソミュールのマーダーIの現存車はシャーシ底面がそのまま床。
  • モスクワの10.5cm自走砲の現存車は、現在はかなり高い位置(左右の張り出しと同一レベル?)くらいに縞板(滑り止め模様付き鉄板)の床板が作ってある感じ(例えばこれ)だが、砲搭載レストア前はシャーシ底面がそのまま床。
  • 15cm自走砲は、戦時中の記録写真によれば、タミヤのキットと同一レベルで床があり、その下が何らかの収納部になっているらしい(シュピールベルガーの鹵獲車輛本に上方から撮った写真あり。ドイツ語版ではp137)。
  • 同じくシュピールベルガー本に出ている、出典不明のVBCP 38Lの透過図では、タミヤのキットと同一レベルに床板?と思われなくもないものが描かれている(char-farancois.netの同一図)。どこかでTRC 37Lの同様の図も見たような……。

悩ましいが、ロレーヌそれ自体の貨物室内の写真が手元にない以上、どう作るにしても想像の域を出ない。

一方で、タミヤのキットの側壁は上げ底の床板があるのが前提のパーツ形状になっていて、床板から下が一段厚くなっている。つまり、床板をなくすと芋づる式に手間が増えてしまうわけで、それが面倒で、とりあえず「タミヤのパーツに準拠した床板あり」設定で行くことにする。

もちろん、前端がPaK40の弾薬ラックのままではまずいので、この部分を切り飛ばし、プラバンで再生する。

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●……という床板工作は、実は、モスクワの10.5cm自走砲のwalkaround写真集を見つける前にやったもの。しかし、同車の砲搭載前のこの写真などを見ると、もともとかさ上げされた床板があったような痕跡すらない(補強リブより前方に、床板を付けてあったようなボルト跡とか、溶接跡とかが存在しない)。これは、ソミュールのマーダーに床板がないのも、元からだったんじゃ……。

そんなこんなで、改めて「床板無し設定」に大きく傾いた結果、今度は車台側面パーツを床板無しに合わせるための工作を始める。

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上がキットパーツママ。下が加工済み。床板パーツに隠れる下の部分は厚くなっているので、これを上側と同じになるまで削り込む。均一に厚みを削り飛ばす電動工具などあると楽そうだが(以前にkunihitoさんがIV号戦車D型の製作でそのような工具を使っているのを同氏のサイトで見た)、そのような文明の利器は我が家にないので、ペンナイフとマイナスドライバーを研いだノミでちまちま削っていく。

すごく面倒くさい。

マシニングセンタの摺動部をキサゲで削る職人になった気分(判りにくい例え)。後端部で少し段差が残っているのは、どうせリブに隠れるため。ああ。もう一枚これをやるのかあ……。

なお、パーツ上端に飛び出している三角形のモールドは、マーダーIの7.5cm砲弾用ラックの上板を支えるものなのでロレーヌには不要。これも綺麗に削り落とす。

●一般に、タミヤのキットは「部品の合いもよいうえ、取付間違いなどもないよう十分に配慮されていて非常に作りやすい」という評価だが、これはあくまで「説明書の指示通りに、指定のタイプ・仕様で作る」範囲であって、ちょっと型を変えてみようとか、考証上違っていると思われる部分を訂正しようと思ったりすると、むしろかなり面倒になることが多い。

これは、前述の「組み立てやすさ」とのバーターで、実物とは違う構造になっていたり、(指定の仕様で作る分には隠れてしまうところに)大穴があったりして、単純に「ここを変えよう」という作業以前に、ベーシック/ベアな状態に戻すための作業が加わってしまうため。結局のところ、普通に作る分にはやや面倒である他のメーカーの製品のほうが、ちょっと改造する場合には格段に楽になったりする。

もちろん、これはキット設計上のメーカーのポリシーの問題だし、それで得られる「ストレートに作る際の容易さ」はタミヤキットの大きなメリットでもあるので、それをことさらにとやかく言うつもりはない。

ただ、「これだけは作ろう」で、AFV模型の「改造する楽しみ」を最初に広めてくれたメーカーであるタミヤが、実は改造のベースとしては結構厄介だというのは、ちょっと皮肉な気もする。

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ロレーヌへの道(3)――タミヤ以外のキットと若干の補足

●タミヤ以外の35のロレーヌのキットについて少々。

▼レジンキット

まずはフランスのAl-By。確か同社の最初期のキットだったと思う。Al-Byのレジンキットは、同社独特のちょっと粘り気のある感じのレジンで出来ており、また「レジンキットはそういうもの」と言ってしまえばそれきりだが、ディテールはかなり一体成型の部分が多い。履帯は車体本体と同質のレジンである程度の長さが一体になったもの。ドライヤーなどで温めて柔らかくして取り付ける方式。確か、まだキヤホビーが青梅街道の北側の古~い建物にあった頃か、ホビースポットUが池袋にあった頃に買ったようなおぼろげな記憶が。

同社製レジンキットの共通の弱点として、平面があまり綺麗に出ていない傾向はあったものの、それなりに精密感のあるよいキットだったように記憶。確か起動輪の片方が行方不明になってしまってお蔵入りしてそのまま。今やストック棚の奥底のカンブリア紀の地層に埋まっている。

ほか、レジンキットとしてはMB modelsとかCommanderとか、割と古(いにしえ)のメーカーのいくつかから出ていたようだが、その辺の内容は未見(もしかしたら、この辺はドイツ軍自走砲型だけかも)。

たぶん最新(そして最良)のレジンキットとしてBrachModelのものがある。これも私は未所持だが、hn-nhさんが15cm sFH 13/1自走砲型キットを製作しているので、詳しくはそちらの製作記を。

RPM

ロレーヌ初のインジェクションキット。今回、比較のために模型棚から発掘しようと思ったのだが(Al-Byのレジンキットよりは浅い白亜紀くらいの地層にある気がするのだが)発見できなかった。

おぼろげな記憶と、かつての「河馬之巣」のフランス軍車輛キットリストの記述を元に書くと、一応、成型状態はカッチリしているものの、ディテールの再現度は今一つ(というか今二つか三つ)。車体は箱組みだが、足回り基部に関して、なぜか床板と側板の位置が合わない。操縦席は簡単な椅子のモールドを除きからっぽ。

履帯は(少なくとも私の手元にあるものは)インジェクションの1リンクずつバラバラのものが入っているが、1リンクあたりゲートが5つもあるので組立は面倒くさそう。版によってはベルト式の履帯が入っているものもあるらしい。

同社からは、最初に37Lのキットが出て、そのあと、ドイツ軍の15cm sFH 13/1自走砲、砲兵観測車、そして兵員輸送型の38Lも発売されているが、同形式のバリエーションの箱替えとかデカール替えとかのリニューアル版もあって、ラインナップはかなり混沌としている。

VBCP 38Lのキットは37Lのキットに、兵員室部分の装甲板を上につぎ足す形で追加パーツが入っているが、そんなふうに装甲板を継ぎ足しているのはおそらく38Lの試作車で、生産型の兵員室側面板は一枚もののはず。また、この追加パーツのリベットは元の37Lキット部分よりかなり大げさで、そのままではかなり違和感のある出来。

一方で、少なくとも私が持っている版の38Lのキットには、かなり大判のエッチングパーツが入っていた。サススプリングの結束具とか、工具受けとか、そういえば兵員室の内側のフレームとかも入っていたような記憶が(あやふや)。

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RPMの37Lからそれほど間を置かずに発売になったもので、発売時には「箱替え?」と思ったのだが、全く別物。このキットはたまたまストック棚の浅いところにあってすぐに発見できた。

中身は簡易インジェクションと思しき基本パーツの枝3枚(車体、および足回り×2)、レジンのトランスミッションとエッチングパーツ、デカールという構成。

ディテールの再現度に関してはRPMより上なのだが、成型状態が甘いので、結局、「まあ、RPMよりはマシかな」程度に止まっている。ただ、運転室がレジンのトランスミッション込みでそれなりの内容で再現されているのはポイントが高い。車体側面パーツにもレバー(スロットル?)と操作ロッドがモールドされていたりする。

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タミヤのマーダーでは潰されたり撤去されたりしている部分、ラジエーターグリルと荷台の後面版は……。

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こんな感じ。前者は幅が合えば流用してもいいかもしれないが、若干寸足らずの可能性あり(ちゃんと測っていない)。後者は工具ラックがモールドされているのはいいのだが、そのため上部リベット列がその部分で飛んでいるのは「流石にそれはないんじゃない?」という感じ。厚みも不満なので、ここは自作かな。

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タミヤで不満のリーフスプリングは、一応、細かく重なった形状を再現しようという意図は感じられるものの、いかんせんモールドが甘くて、これでは代替流用候補には成り得ない。

PANDA hobby

とりあえず現時点ではマーダーI、15 cm sFH 13/1自走砲、10,5 cm LeFH 18/4自走砲と、ドイツ仕様の自走砲3種のみを発売している。実質的に、インジェクションでタミヤのライバルキットと言えるのはこれだけだと思う。といっても、私自身は持っていないのであまり詳しいことは言えない。

履帯はインジェクション非可動の1コマずつの連結式。少なくともサススプリング部分については(ネット上の写真を見る限りでは)パンダのほうがよさそう。操縦席に関してはタミヤ同様に再現されておらずハッチも閉状態。

●タミヤのキットについてのいくつかの補足。

▼たまたまジャンクパーツを漁っていたら、20年以上前に発売されたヴェスペのリーフスプリングのパーツがあったので並べて撮影。

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……なぜ退化しているですか(泣)。ドイツ製車体とフランス製車体の扱いの差?

これに関して、一時、「これ、奥行き削って長さも根元で切り詰めたら流用できるんじゃ……」と思ったのだが、曲がり具合が違うのでちょっと難しそう。先端に向けてしごいて曲がりをきつくすることも可能かもしれないが、12個同じように曲げるのは面倒くさそうだ。

▼履帯の装着方向に関して、説明書では、

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――このように指示されている。しかし実際には、フランス軍においても、ドイツ軍においても、装着方向は割といい加減。ドイツ軍車輛に限ると、装着方向はキットの指示とは逆方向のほうがむしろ多いような気もする。

▼足回り再び。

キットのサスペンション部品を改めてよく見ると、車体左側用のサス列(左写真の上側)、後ろ側の小転輪(右側)の横に、右側用サス列にはない謎の小突起がある。拡大して撮った写真が右。

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ソミュールの現存実車を見ると、確かにこの位置にだけ、このような突起がある(ただし、キットではまん中が単なる窪みだが、実車では穴が貫通している)。エル・アラメイン戦争博物館所蔵、あるいはイラクにあった15cm自走砲でも、同様にこの位置にある。

が、アバディーンの15cm自走砲では付いていない様子。戦時中の実車写真でも、これが確認できるものが見当たらない(奥まった位置にある小さな突起なので、陰になって見えていないだけの可能性もある。……何ナンダコリャ。

▼facebookで話題に上っていて(もともと平野義高さんが書き込んでいて、それが「AFV模型製作研究会」グループでシェアされていた)「ありゃ、ホントだ」とようやく気付いたネタ。

タミヤのリーフレットのソミュールの実車写真で、車両後部左下に、何やらどこかにぶつかってひしゃげたようなラックが写っていて、「これはいったい何なんだ」という話。大きさからすると、ジャッキ台かジェリカン用か?

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とはいえ、戦時中の実車の写真を見ると、ここに何らかの装備をぶら下げていると断言できるものは見当たらず、逆に(右写真のように)明らかに何もついていない例は確認できる(wikimedeia commons、ブンデスアルヒーフ所蔵のBundesarchiv Bild 101I-258-1326-14, Frankreich, "Marder I".jpg)。どうもソミュールの車輛のカスタム装備の可能性が高いのではと思う。

▼タミヤのキットの側面装甲は、運転室部分とエンジンルーム部分の境に装甲板の継ぎ目/段差がある。

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確かにソミュールの実車では確認できる特徴なのだが、他では確認できず(戦時中の実車写真では、そもそも鮮明なクローズアップが少ない)。もしやソミュールのマーダーだけの特殊仕様とか? などと、内心、結構戦々恐々。

なお、側面前下部にある車幅表示灯?(放射状のリブの付いた小ドームのモールド)は、元のロレーヌ由来の部品だが、マーダーIの場合はあったりなかったりなので個別車輛を作りたい場合は注意。

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ロレーヌへの道(2)――実車と資料

●タミヤから発売された「ドイツ対戦車自走砲 マーダーI」改め「フランス軍ロレーヌ牽引車」(の改造ベース)に関するあれこれの続き。

●実車(もちろんロレーヌ牽引車のほう)について。自分自身の頭の整理のために。

フランス軍において、もともと装甲部隊の補給用に開発された軽装甲の全装軌車輛。

1934年に出された装甲部隊随伴車輛の開発要求に基づくもので、ロレーヌ社は同時期に開発が進められていた歩兵用補給車輛の拡大版でこの要求に応えた。ちなみに歩兵用補給車輛は、ルノーUE(Chenillette de revitaillemont d'Infantrie modèle 1931 R:歩兵用補給小型装軌車31R)の後継車輛となるものだが、こちらはほとんど変わり映えのしない小改良型のUE2(Chenillette de revitaillemont d'Infantrie modèle 1937 R:歩兵用補給小型装軌車37R)が採用されている。

ロレーヌ社が装甲部隊用に開発したのは、歩兵用補給車輛の延長版で、歩兵用がリーフスプリング懸架の片側2ボギーだったものを片側3ボギーとし、併せて荷台が後方に拡大されている(このため、車幅に対してかなり縦長な車輛になっている)。これは「Tracteur de ravitaillement pour chars modèle 1937 L(TRC 37L:戦車用補給牽引車1937年型L)」として採用されたが、実際は、テストやら改良やらでもたつき、量産開始は1939年頭までずれ込んだらしい。同年9月1日の大戦勃発までに発注452輌中212輌が生産され、その後も1940年末を目途に560輌が追加発注され、40年6月のフランス陥落までに270輌が生産されている。つまり、フランス陥落までに生産されたTRC 37Lは、500輌弱ということになる。

ちなみに正式名称末尾の「L」について、このサイト(もとはロシア語?の機械翻訳)では、最初の短車体のものがロレーヌ37、長車体がロレーヌ37Lであると、なんだか「長い(long/longue)」の頭文字であるかのように書いているが、上記のルノーUE系の正式名称や「軽戦車35H(オチキスH35)」「軽戦車35R(ルノーR35)」などと同様、単純にメーカー名の頭文字のはず。

メーカーのロレーヌは、装甲車輛としてはこの牽引車1種しか作っていないが、機関車メーカーとして19世紀末に創業、その後自動車や航空機エンジンを製造してきた割と老舗のメーカーだそうな。ロレーヌ・ディートリヒ(1928年までの社名、もっとも正式社名はもっと長ったらしい)の航空機エンジンは戦間期のヒット作であるポテーズ25やブレゲー19などに搭載されているので、その辺の飛行機が好きだとちょっと聞き覚えがあるかも。……なんてことを言いつつ、私自身は割と最近になって、ようやく「えっ、ロレーヌ牽引車のロレーヌって、ロレーヌ・ディートリヒのロレーヌだったのか!」と気付いた。というわけで、1940年戦役時、これの他にも数種のソフトスキンの同社製軍用車輛は使われているようだ。なお、ロレーヌ牽引車の搭載エンジンが自社製ではなく、別の自動車メーカーであるドライエ製なのは謎。

TRC 37L用には、ルノーUE同様、専用の装軌式トレーラーが用意されたが、これは通常の物資輸送の他、燃料タンクを搭載した補給車として多用されたらしい。

主要バリエーションとしては、兵員輸送用の「Voiture blindée de chasseurs portés modèle 1938 L(VBCP 38L: 随伴歩兵装甲車1938年型L」があり、これはTRC 37Lの貨物室装甲を上方に延長、箱型の兵員室としたもので、ここに4名が搭乗。これまた装甲を上方に延長した装軌式トレーラーに6名が搭乗、計10名の兵員を輸送する。VBCP 38Lは、240輌が発注され戦争勃発までに9輌が完成、さらにフランス陥落までに140輌が生産されている。

さすがに車輛本体に兵員が4名しか収容できないのはマズイと思ったらしく、さほど間を置かず改良型の「Voiture blindée de chasseurs portés modèle 1939 L(VBCP 38L: 随伴歩兵装甲車1939年型L」が採用されている。VBCP 38Lが、基本、「TRC 37Lの貨物室が背高になっただけ」の車輛だったのに対し、VBCP 39Lは装甲兵員輸送車として全面的に改設計されており、車体前部の背を高めて操縦手席とエンジンルームを前方に寄せて後部の兵員室を拡大。兵員室のキャパシティは8名となっている。戦争勃発後のVBCPの追加発注200輌は、この39Lに対して行われたらしいが、結局のところ、試作だけに終わった。

1939年後半以降、VBCP 38Lのうち、少なくとも10輌が無線指揮車に改装されている。どうも特別に制式名称等はないようだが、ロレーヌ38L PCなどと呼ばれている。PCはたぶんposte de commandement(英語で言えばコマンドポスト)の略。形状は基本VBCP 38Lのままだが、兵員室内には無線機が置かれ、兵員室前面中央には、大戦中のフランスAFVでお馴染みの大きな蛇腹が根元に付いたアンテナ。他にも数カ所小アンテナが立てられている。

1940年のドイツ侵攻時、対戦車戦力の不足を受け、1輌のTRC 37Lが47mm対戦車砲を搭載した自走砲に改装された。レイアウト的には後のマーダーIとまったく同じで、エンジンデッキ後方に47mm対戦車砲の砲架を載せているが、戦闘室を囲む装甲は(少なくとも製作時点では)無く、まったく「単純に砲を載せてみました」状態のもの。同時期に、やはり即興的に作られた装輪式のラフリーW15 TCCが70輌作られたのに対して、この37L対戦車自走砲は試作のみに終わっている。

――といったところが1940年戦役までのロレーヌの開発/生産の様子だが、その後、ヴィシー政権下で限定的に(「林業用トラクター」の名目で?)生産が行われた模様。それの全部なのか、一部なのかがよく判らないのだが、ボギー2つの短車体型が作られた模様。現存の、ドイツによる自走砲改装物以外のロレーヌは短車体のタイプが多いが、これはそのような理由によるもののようだ。なお、最初に述べた歩兵用補給車輛としての試作型の短車体のタイプは、ルノーUE同様の後方に傾けられるダンプ型の荷台を持つが、戦中生産型は固定式らしい。

以上の内容は、主に以下の資料に拠っている。

* François Vauvillier, Jean-Michel Touraine “L'AUTOMOBILE SOUS L'UNIFORME 1939-40”, MASSIN EDITEUR, 1992
* Chars et Blindés Francais sur le Net (Chars-francais.net)
* 日本語版wikipedia「ロレーヌ37L」
* 英語版wikipedia “Lorraine 37L”

特に37L、38Lの発注数、生産数等については“L'AUTOMOBILE SOUS L'UNIFORM 1939-40”に従っている。ほか、紙資料として大昔の「プロファイル」シリーズのロレーヌ牽引車の号を持っているのだが、積んだ資料のどこにあるのか見つけられなかった。いまさらあっても役に立つのか判らない大昔の薄っぺらい資料だが、まさか車内の写真とか出てないだろうな……。

出版物としては、ほかにシュピールベルガーの鹵獲戦車本にも当然出ているが、原型のロレーヌに関して言えば「うわ、ここにこんなのが出てたかあ!」的な内容は無し。現時点でのフランス軍車輛の虎の巻的な資料シリーズであるパスカル・ダンジューさんの「TRACKSTORY」からは、まだロレーヌは出ていない(出てくれれば「一発解決!」とか行きそうなのに)。

●現存実車に関するネット上の資料。

とりあえずは、どれくらい、どんな状態のものが、どこに残っているのかについては、各国各種AFVの現存実車に関してマメにPDFでまとめてくれている「Shadock's Website」の「Surviving  Panzer」から、

Surviving Lorraine 37L Tractors

ついでにロレーヌを含む鹵獲戦車ベースのドイツの自走砲については、

Surviving German SPGs based on foreign chassis

上のリストで確認できる限り、オリジナルに近い状態で現存しているのは、まずは2000年にベルリン近郊で掘り出され、現在はドレスデンの軍事史博物館に収められている、2輌のVBCP 38L。これのwalkaround写真が出回ってくれるととても嬉しいのだが、現時点ではネット上では見当たらない。

次のフランス国内の個人蔵という1輌は、別角度で別塗装の写真も他で見たことがあるが、側面にラジエーターグリルが付いていることから見て、ドイツの自走砲からの逆改造品である可能性大。これも私はwalkaround写真を見たことがないが、あったとしても荷台内部の状態などは当てにできなそう。

その次の大掛かりなレストア中車輛は、どこまでオリジナルの部品が残っているのか不明。あとはかなり状態が悪そうな2輌が続き、残りは短車体ばかり。同じく補助車輛のルノーUEが30輌以上現存しているのに比べるとかなりお寒い状況だが、これはロレーヌ牽引車の使い勝手が良くて使いつぶされてしまったからという理由もあるかもしれないが、そもそも生産台数の桁が違うことが大きそう。

そんなこんなで、結局のところ、長車体型の現存実車のディテールウォッチについては、主にドイツ軍の自走砲に頼るほかないということになる。以下、現存実車の主なwalkaround。

▼ソミュールのマーダーI

タミヤのキット付属のリーフレットにも10枚ほど写真が掲載されている。エンジンルームの天井が単純に鉄板で塞がれているなどベストコンディションとはいえないが、他はそれなり?

SVSM Gallery:SdKfz 135 Marder I, Musee des Blindes, Saumur, France, by Vladimir Yakubov

各種walkaround写真が豊富なSVSM Galleryより。写真80枚。「net-maquettes.com」に上がっているのも同じ写真。

LEGION AFV:Marder I

写真43枚。

▼アバディーンのSd.Kfz.135/1 sFH13/1(Sf)(おそらく現在Fort Sillにあるもの)

アバディーンの15cm自走砲型。野外展示で戦闘室上も鉄板で塞がれていたり、ちょっと可哀想な状態。

SVSM Gallery:SdKfz 135/1 15cm sFH13/1 (Sf) auf Geschutzwagen Lorraine Schlepper(f), Aberdeen Proving Ground, by Matthew Flegal

写真は7枚のみ。

Prime Portal:Sd.Kfz.135/1 Walk Around

こちらのほうが写真は多めで29枚。「net-maquettes.com」に上がっているのも同じ写真。

▼モスクワの10,5 cm LeFH 18-4 auf Geschutzwagen Lr.S. (f)(12/2追加)

モスクワの大祖国戦争中央博物館所蔵のもの。(上記のPDFによれば)フランス、Trunのスクラップヤードにあったものをレストアした車輛だとのことで、10.5cm自走砲としてのオリジナル度に関しては私にはよく判らないが、少なくとも、ベース車体のロレーヌに関しソミュールの車輛と比較検討するには結構役立つ。

SCALEMODELS.ru:САУ 10,5 cm LeFH 18-4 auf Geschutzwagen Lr.S. (f) Alkett, Моторы Войны 2016, Крокус-Экспо, Москва, Россия

写真159枚と非常に詳細。ソミュールのマーダーとは、改装で隠れた部分/潰れてしまった部分が微妙に違うのも有り難い。

SCALEMODELS.ru:САУ 10,5 cm LeFH 18-4 auf Geschutzwagen Lr.S. (f) Alkett, музей Моторы Войны, Москва, Россия

上記と同じ車両のレストア途中(砲未搭載状態)の写真。97枚。

▼オマケ。短車体型の動画。

La journée de la chenille - Lorraine 37L

短車体型の動画はYouTubeに何本か上がっているが、これはその中で比較的長く、しかも荷台の中のチラ見えシーンもあるもの。長車体型では上面に開いていたラジエーターグリルが後ろ(荷台)側になっていること、荷台後部のディテールも長車体型と全く違うことなどが判る。

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ロレーヌへの道――タミヤのキットチェック

20201124_204604 ●タミヤからロレーヌ牽引車ベースの対戦車自走砲、マーダーIが発売された。いやいやほんとに、こんなものまでタミヤが出すようになるとは。……って、もう何度も同じようなことを言っている気もするけれど。

ちなみに、発売になったという話を聞いて、先週の日曜日、実家からの帰りに買う気充分で横浜のVOLKSとヨドバシカメラに寄ったのだが、そのどちらも品切れ。「ええっ、あんなアイテムが入荷直後に売り切れちゃうなんて、あるの?」と思ったのだが、それは私の頭の中のイメージが、あくまで「マイナーなフランス車輛のロレーヌ牽引車」(マイナーな、は、フランス車輛とロレーヌ牽引車の両方に掛かる)だったからで、改めて考えてみると、発売されたのは曲がりなりにもドイツ軍車輛のマーダーなのだった。

結局、それから数日後、(コンクリート・タワー見物の帰りに)再び横浜に寄ったら、(VOLKSには相変わらずなかったが)ヨドバシでなんとか入手できた。

●さて、「ドイツ車輛」として発売されたこのキットではあるものの、個人的にはフランス軍用のロレーヌ牽引車として作るつもり100%。というわけで、パーツチェックもそれを念頭に。プラパーツはこんな感じ。

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  • Aパーツ:転輪類、履帯、75mm砲弾など。×2。
  • Bパーツ:車台基本パーツ。
  • Cパーツ:車体上部、戦闘室装甲板。
  • Dパーツ:足回りの一部、PaK40、フィギュア。

このほかにポリキャップ、デカール。

上のパーツの枝ごとの組み合わせ状況を見ても、ベース車両であるロレーヌの基本パーツと、マーダーI用のパーツがまったく入り混じっていて、どうやら、タミヤはロレーヌ牽引車の発売は想定していないらしい。また、足回りと75mm砲弾が一緒であることを考えると、ロレーヌ車体の10.5cm自走砲や15cm自走砲への展開の可能性も低そう。もっとも、そのおかげで「本当に発売されるかな~。いつかな~。まだかな~」などと思い悩むことなく、ロレーヌへの先祖返り改造を試みることが出来る。

ロレーヌのキットは、昔のAl.ByのレジンキットにRPM、IRONSIDEの両レジンキットと3つもストックしているのだが、それに比べてもこの新しいタミヤのキットから作った方がマトモなものが出来そうな気がする。

もっとも、元車体をほとんどいじっていないとはいえ、「砲と戦闘室装甲板を取り去ったら、ハイOK」というほどお手軽ではなさそうで、それに関しては以下に。

●パーツの細かいあれこれ。「個人的気になりポイント」的なもので、今後、実際に製作していく段になったら、もうちょっとアレコレあるはず。

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1枚目:車体上部側面、2枚目:エンジンルーム上面、3枚目:シャーシ後面。元のロレーヌ牽引車の車体基本形に関わるパーツだが、それぞれ、対戦車自走砲への改修に伴う変更があり、このパーツのままではロレーヌは組み立てられない。ロレーヌに先祖返りさせる場合は、

  • 上部側面に関しては、戦闘室装甲板を装着するための出っ張りや窪みがある。本来の貨物室側面は単純な平板なので、キットのパーツを「削って埋めて」するか、それとも綺麗さっぱり作り変えるか、ちょっと考えどころ。
  • エンジンルーム上面は、前半はトラベルクランプ基部の取付穴を埋める程度だが、後半の砲架が乗る部分は本来はラジエーターグリルがあるので(マーダーでは左右側面に振り分けていて、側面パーツに三角の大きな出っ張りがあるのはそのダクト)、作り変える必要がある。私自身はIRONSIDEのキットからパーツ流用を検討中だが、IRONSIDEのパーツはタミヤよりやや幅が狭く、そのままでは使えない感じ。
  • シャーシ後面版に関しては、中央の「二の字」のダボがある部分はドイツ側で追加された牽引具基部なので、綺麗に除去する必要あり。

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エンジンルームと戦闘室の隔壁パーツ(上)と戦闘室の床板(下)。床板パーツの前側の穴は砲弾ラック。砲弾の先端がはまる穴と床板がツライチであることから判るように、キットは床板がシャーシ底面から一段上げ底になっている解釈。ソミュールの実車では後端部分にリブがあるだけで(キットパーツのスジボリから下側部分)、上写真の黄緑斜線部分は抜けている。

もっともソミュールの実車はエンジンルーム上面がただの鉄板で塞がれていたり、とても状態がいいとは言えないものなので、もともとあった床板が無くなってしまった、ということも考えられる。昔の戦車マガジン別冊「シュトルム&ドランク ドイツ対戦車自走砲」に、マーダーIの戦闘室内の写真が載っているはずだが(たんくたんくろうさんのブログ記事で見た)、埋もれてしまって出てこない。資料の持ち腐れ。

ちなみに先行のパンダホビーのマーダーIは、これまた悩ましいことに、タミヤの位置よりやや下に、やはり別に床板がある構成になっているようだ。

もちろん、私にとって問題なのは、「マーダーIの戦闘室に上げ底の床板があったかどうか」ではなく、「ロレーヌ牽引車に床板があったかどうか」なのだが、これまたよく判らない。「戦時中の(元々の)ロレーヌの荷台の床が写ってる写真、ここにあるよ~」というのをご存知の方、ぜひご教示ください(もちろんダイレクトに「こうなってるで~」という話でも)。

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操縦席ハッチは閉状態で一体モールド。下部ハッチはまだしも、上部ハッチは通常は開け放っていることのほうが多いので、別パーツにして欲しかった。

上部ハッチの視察スリットは左右2カ所にモールドがあるが、ソミュールの実車では、操縦手側の一カ所(向かって右側)しかない。これに関しては、「また例によっていい加減なレストア?」とも思ったのだが、戦時中のマーダーIの写真を漁ってみると、片目タイプが実在していることが判明。ソミュールさん疑って済みません。なお、オリジナルのロレーヌの場合は、現時点では片目タイプと言い切れる例は発見できなかった。ドイツ専用仕様かなあ(無線機は戦闘室に置いてあるし、ドイツ軍は「助手席」は使用しなかったのかも)。一方で、マーダーIでも両目タイプのものも存在していることは確認できた。以下、ブンデスアルヒーフの写真(wikimedia commons)より

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左が片目タイプ(Bundesarchiv, Bild 101I-297-1701-21 / Müller, Karl / CC-BY-SA 3.0)。一連の写真が多数残されており、単に写真写りの問題でたまたま片側だけに見えているわけではないことは判る。また、塗装パターンが違う別車輛でも片目仕様があり、もしかしたらマーダーIではこちらのほうが多数派の可能性も?

右が両目タイプ(Bundesarchiv, Bild 101I-258-1326-22 / Wegner / CC-BY-SA 3.0)。こちらはタミヤのキットのデカールでも取り上げられている車輛。

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シャーシ前面。ロレーヌ車体の装甲板の接合はリベットではなく、尖頭六角ボルトが使われている。タミヤのキットは、なんとなくそれを表現しているようなしていないような(老眼鏡を掛けてもよく判らないので、それなら、改造の途中で植え替える必要が出てきたときに気にすればいいか、くらいのスタンス)。

なお、特にこのシャーシ前面に関して言えば、実車の場合はボルト周辺に軽くザグリがあるのだが、キットでは再現されていない。

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なんだか無駄に凝っている感じがするロレーヌの足回りだが、サス部は3連のボギーの前面を上部転輪ごと丸々1パーツにするという大胆設計。組み立てやすく、足回りにゆがみも出ないという点ではいいアイデアではないかと思う(もっとも、先行のパンダホビーも似たような処理)。

しかし問題はリーフスプリング。実車はバネ板が10枚程度重ねられているが、キットのパーツは、ご覧のように「ここはリーフスプリングなんですよ」ということを記号的に示すだけ。実車の形状を再現する意思はあまり感じられず、非常に残念。かといって、同じ寸法で6組もリーフスプリングを自作するのは遠慮したいし(その昔、邦人さんはマーダーIのロレーヌ車体を丸々自作していたが)。

長くなったのでロレーヌの実車解説やら資料やらはまた次回。

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