歩兵戦車バレンタイン

バレンタイン復活の日(4)

●オチキスだのルノーだのにちょっと気を取られている――のは否定しないが、バレンタインもじわじわ進行中。

というか、前回の段階から、車体前後のライト類と配線を済ませてしまえば、基本、工作は終了! 塗装を除くと、製作記は珍しくもたった4回! ヤッター!……という具合になるのではと考えていたのだが、ここまで来たところで、細かい"引っ掛かり"がいくつか出てきてしまった。面倒臭いなーこの戦車(面倒臭くしているのはお前だろう、というツッコミは置くとして)。

●とりあえず多少なりと進んだ部分。

車体後部に尾灯類?(パーツC45とC5)を付けて、引込部から配線を付けた。

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もっとも、この部分がこのようなパーツ配置になっていて、それが綺麗に残っている現存車輛が見当たらず、ディテールはいまいちよく判らない(ただし、このC45とC5の形状のものがくっついている戦時中の実車写真は、とりあえずある)。

一応、キットではC45の筒状のものの先を赤で塗るよう指示されているので、これが尾灯であるのは確かなような(ただし、実車ではこの部分は本当に「筒」で、ライトそのものはその奥にあるようなので、ドリルで開口した)。

もう一つの、ちょっと後ろ側にあるC5は何なのか謎だが、後ろ向きのホーン?……とにかく、単純な板ではなく奥行きのある部品なので電装品だろうと判断して配線した。

引込部のポッチは現存車輛でも確認できるので、線が後ろ側から出ているのは確かだろうが、それが尾灯?とホーン?のどこに繋がるのかはわからず、結局、見切り発車的に真後ろのど真ん中に穴を開けて繋げた。

●車体前側の電装品でまず引っ掛かったのが、左フェンダー上に載っているホーンと思しきパーツとそのカバー(C6とC42)。

とりあえず、最初はキットの指定通り付けるつもりでいて、配線用のパイプが通るようにカバーに溝など彫っていたりしたのだが……。

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改めて戦時中の実車写真を見直すと、このカバー(とホーン)は付いていたりいなかったり、付いているとしてももう少し小さめで縦長のカバーが内側寄りに付いていたり。

実際、キットのような大きさと配置(フェンダー中央)のものもあるのは確認できたが、防盾の機銃部が引っ込んだ初期型形質のものに限られているような。また、キット指定のソ連軍の「35-51」号車、「スターリンのために 52号車」のいずれもこのカバー(とホーン)が付いていないように見えるので、結局付けない(あるいは付けるとしても位置と形状を直す)ことにした。

そこで厄介なのが、キットのフェンダーにはカバーの取付位置に大きな凹部が設けられていることで、単なる穴なら埋めるだけで済むが、この場合、フェンダーの補強リブもその部分で途切れてしまっているのが悩ましい。

最終的には、穴を埋めて、その部分にかかる2本のリブも一度削り落としてしまい、プラペーパーの細切りを貼ってヤスってエッジを落として再生した。モールドにどれだけ近付けているかは塗装してみるまで不明(サーフェサーを塗って確かめるのが面倒)。どのみち予備履帯で隠れてしまうため、リブの後端の工作は適当で長さがまちまち。

予備履帯に関しては、前回、「まだ残っている電気系統の配線の工作の邪魔になりそうなので、現段階では取り付けない」と書いたのだが、車幅表示灯を後ろ側にずらして取り付けることにしようと思ったので、その位置決めの目安にする意味もあって、結局取り付けた。行き当たりばったり……。

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●前述の車幅表示灯、車体前端左右に付く前照灯(そしてもしも付ける場合には前述のホーン)には、車体の引込部から電源コードが接続しているのだが、これがご丁寧に、フェンダーに這わせた保護パイプの中を通っている。なんでわざわざこんな妙に凝ったものを付けるかなあ。ドイツ戦車みたいに単純にコードを這わせたらいいじゃん!

AFVクラブのキットでは別パーツとして付属しているが、タミヤのキットではあっさり省略されているので、気になる場合は追加する必要がある。が、これまた現存実車ではあれこれ差があって、どんな状態がMk.II/IVの場合に標準なのかがよく判らない(ちなみにソミュールの実車は、一見2ポンド砲砲塔装備の初期型だが、実際には「MkIII架橋戦車の車体にMk.Iの砲塔を載せたハイブリッド再生車」だそうだ)。

まあ、あれこれ悩んでも仕方がないので、これも見切り発車で工作開始。とりあえず、現段階ではパイプのメイン部分を作成したところ。

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フェンダー上への分岐になる円筒形部分は、丸棒に溝を彫ってパイプ本体の白いプラ棒をはめ込んで接着、それから両側を切って削って薄くして……ああ、面倒くさい!

●さらにここまで来て発覚した、もう一つの面倒臭い部分。

アフリカ型のサンドシールドでなく、"ヨーロッパ型"として組む場合は、ゴム製フラップ付きの丸いフェンダー前後と、前側にだけ小さな側面の"垂れ"(B12、B13)が付く。これを付けてしまうと後から誘導輪が取り付けられなくなってしまう……足回りを塗装してから取り付けるのは面倒くさいな、などと思っていたのだが、"垂れ"接着後でも、どうやら斜めにヒネるように差し込むと誘導輪を取り付けられる様子。

というわけで取り付けて見て、実際に誘導輪も後付け可能であることも確認……したまではよかったのだが、今度は、履帯がこの"垂れ"の内側に干渉してしまうことが発覚。

キットの履帯とブロンコの可動履帯は幅自体はほぼピッタリ同じなので、ストレートに作れば干渉することはないはずなのだが、とにかくうまく入らない。一部憶測交じりだが、どうも次のような感じ。

・そもそもこの"垂れ"は、フェンダーに対して垂直ではなく、裾広がりに(前から見てハの字に)斜めに付く。

・タミヤのキットは本来、足回りを組み終えてからこの"垂れ"を取り付けるように指示されている。また"垂れ"(B12、B13)パーツ裏側の履帯に当たる部分はもともとえぐれてモールドされていて、どうも、足回りを組んだ上からこの"垂れ"を履帯に触れるか触れないかくらいで接着すると、適正な「ハの字」具合に取り付けられるようになっている。なお、履帯自体がフェンダーに対してギリギリ外側に位置しているのは実車通りの位置関係。

・私は足回り組み上げ前に"垂れ"を付けてしまったので、適正な角度よりも若干垂直に近くなってしまっていたらしい。加えて、誘導輪のゴムリム部を外側に膨らませる工作をしているために(もともとキットのゴムリム部とガイドホーンの間には隙間があったので、履帯の位置自体そうズレていないはずだが)、ますます余裕がなくなったらしい。

結局のところ、私がきちんと立て付けを確認していなかったのが悪いのかもしれないが、とにかく、タミヤのバレンタインに別売の履帯を交換装着しようとしている方はお気を付けを(ほとんどhn-nhさんへの私信?)。

なにはともあれ、そんなわけで、キットの"垂れ"パーツの内側をゴリゴリと削って薄くすることで対処した。

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左写真がキットのままの"垂れ"裏側。履帯に当たる部分の溝が判る。右は裏をさらって薄くする工作中。主に、一緒に写っている自作のチゼル(というかノミ?)を使用。これは確か100円ショップ由来のマイクロドライバーのマイナスを自分で研いだもの。安直な工具だが、なぜかとても重宝している。

取り付けた状態。

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"垂れ"部分と前面部分のゴムには、実車では継ぎ目はないので、このあと削って消している。また、ちょっとゴムらしい柔らかさを出そうと、若干波打ったようなふうに削ってあるが……効果のほどはちょっと微妙かな?

実際に履帯を取り付けてみて、様子をみたのが次の写真。

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●次回には「工作終了!」といきたい。

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バレンタイン復活の日(3)

●結局、バレンタインの製作を続行中。

T-34-85は、「新型コロナのせいで履帯も買いに行けないじゃないか!」なんてヤキモキしていたのだが、MiniArtがリブの多い500mmワッフルを出しそうな雰囲気になっているので、「それを待ってもいいかな」なんて思い始めていたり。……MiniArtのD-5T搭載初期型発売にも追いつかれてしまいそう。

●転輪の改修は楽に数をこなせる方法が思いつかず、結局、一個一個「うが~面倒臭ぇ~」と唸りつつ手作業で直す「苦悶式工作法」を採らざるを得なかったが、たぶん、あれをやらなかったら、いつまでも「転輪、直した方がよかったかなあ」とウジウジ心に引っかかっていたはず。済ませたおかげで、「あとはもうオマケの工作のようなもの」という楽な気分で作業を進めることができる。やっててよかった苦悶式。

実際、車体上部に関して言えば(買って早々にやっつけた防盾以外は)ちょっと気になった細部ディテールをつまみ食い的に工作しているだけで、切った貼ったの大掛かりな工作はしていない、というのもあるけれど。

●というわけで、重箱の隅的工作の進捗報告。まずは砲塔工作。

すでに発売直後の様子見の延長で、

  • 防盾の形状修正と「同軸機銃部張り出しタイプ」への改造
  • 防盾カバー部の擲弾発射部の形状修正
  • 砲塔後部のバラストを兼ねていると思われる通風孔付き鋳造パーツ部分の継ぎ目消しと形状修正

等については工作済み。

改めてその続きということで、上面ディテールをいじりつつ取り付けていく。

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①、防盾カバー部上面左右には、実物にない分割ラインが出来てしまう。何かの取付部かと思われるフチ付きボルト穴のモールドを横切っているので、構わず消してしまって後から再生。

②、直接照準用のツノは強度的にも薄さ的にも金属板で作り替えた方がいいのだが、下部の二股の処理や取付が面倒臭そうなので、キットのパーツの二股をくり抜くとともに薄削りして使うことにした。

③、ハッチ前側には、開閉補助用かと思われる謎のシャクトリムシ機構があるようだ。あるいはこれを引っ張ってハッチを開けるのか? (AFVクラブやMiniArtのキットには含まれているが)タミヤのキットではさっぱり省略されているので適当に追加。

④、右後部のアンテナベース台座を薄削り。

⑤、左側のアンテナベースは、柄の部分をエッチングパーツの切れ端で薄く作り替えようと思って一度は切り出したのだが、よくよく現存実車の写真を見たら、実物でも結構厚みがあったのでキットのまま。裏面にコードを追加した。なお、この付け根部分は、AFVクラブのキットのように丸く一段盛り上がっているものもあるが、タミヤのように割と薄くベタ付けになっているように見えるものもある。ちょっと混乱したが、結局キットのままとした(単に面倒くさかった、というのもある)。

⑥、中央後方には、ハッチを開状態にしたときにロックするためのものだろうか? 三角形のベロが立っている。キットのモールドは低く厚いので、金属板で作り直した。三角のパーツを立てて貼るだけでは強度的に不安なので、0.3mmドリルで連続して穴を開けてから繋げてスリットを作り、“根っこ”を深く差し込んだ。

●操縦手用バイザーは開閉選択式。キットのパーツの裏側は、おそらくヒケを防ぐために彫り込んだ形状になっているが、実物はどうやら鋼鉄のムクなので、そのように修正。ついでに軸の表現も追加。

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なお、この写真ではちょうど開いたバイザーに隠れる位置に、丸いポッチがある。当初、「何か内側にある機構の取付ボルトかな?」などとボンヤリ思っていたのだが、バイザーを取り付けてみて、開いたバイザーのダンパー(というかストッパー?)らしいと判明。

●すでにフェンダーを車体に接着してしまってから、最後部のフェンダーステイが、車体側にモールドされたステイのベロと前後方向にズレが発生していることに気付いた。ふんがー!

一度気付くと気になるし、気になりだすとみっともないので、ステイの前側ラインで一度フェンダーを切断。わずかにフェンダーを削って長さを詰め、ステイの位置とベロの位置が合うように調整した。

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また、前後のズレだけではなく、横方向にも隙間ができていたので、車体側のベロのモールドも作り直した。なお、車体側のボルト等との位置関係もあるので、「ベロを作り直すなら、フェンダーを切り詰める必要はなかったんじゃ?」とは行かない。

●エンジンルーム右側後部には、エンジンルームパネルの開閉ロック用……なのかどうかよく判らないが、謎の機構のモールドがある。キットでは省略されているが、直角に曲がったハンドルが突き出ているので、金属線で追加した。

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●装備品類の工作の続き。右側の大型工具箱上に載せられた「くの字」上の工具は、履帯張度を調整するため誘導輪位置をスイングさせるための「てこ棒」で、同じヴィッカーズ社の6t戦車にも似た工具が搭載されている。

キットパーツの同工具の先端は、それだけ見ればなんだかもっともらしい形状に作られているものの、本来、誘導輪基部にある薄い長方形の穴に差し込んで使うものなので、先端はもっと単純な板状でないとおかしい。というわけで、プラバン片を使って修正。また、工具の取付け具も若干形状修正し、蝶ネジを追加した。蝶ネジは数年前にme20さんに一枝分けて頂いたブロンコの脚付きインジェクション・パーツ。これって今でも売っているのかしらん……。

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蝶ネジは、最初はドラゴンのパンターの予備履帯の枝に入っているものを使おうと思っていたのだが、予備履帯の留め具部分に使うには脚付きの方が望ましく、そこに使うと他の箇所も形状を揃える必要があるので、このパーツで統一した。まあ、使えるパーツがあるのに(そしてこの先いくつ模型を完成させられるかもわからないのに)出し惜しみしていても仕方ないし。

なお、上記工具を実際にどのように使うかは、以下の写真が判りやすい。インペリアル・ウォー・ミュージアム(Imperial War Museum/IWM)のアーカイブより引用。

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おじさんたちはヴィッカーズ社の工員だろうか?

とにかく、足回りの調整のデモンストレーションっぽい写真で、中央のハンチングの小太りおじさんは、おそらく、前回触れたフェンダー内側に突き出た誘導輪スイング機構のロックを緩めているか締めているかしているところ。右端のエプロンおじさんが件の「くの字」工具でスイング機構を動作中。向かって左端のしゃがんだオーバーオールおじさんは、おそらく履帯ピンを打ち込んでいるのだと思う。

●左側フェンダーの工具。シャベルは、ドイツ戦車によくあるようなポケットタイプではなく、枠状の薄板に開いた平たい三角の穴にブレードを突っ込んで固定するようになっている。

この三角穴のあるホルダーは、キットでは、下部がフェンダーと一体成型、上部はシャベルと一体成型になっているが、どちらも見た目が分厚過ぎる。当然、パッションのバレンタイン用エッチングセットなどにも含まれているが、今回はケチって買っていないので、ちまちまと薄削りした。なお、前方のツルハシの頭とともに、こちら側の留め具にも蝶ネジを追加した。

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●左側フェンダー前方には、予備履帯4リンクが付く。ちょうど足回り用に繋いだブロンコの履帯で4リンク「おしゃか」が出たので、これを予備履帯に回す。キットのパーツとの比較は下のような感じ。なお、この後で連結部分にはピン孔を開け直した。

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作り直したホルダーの右端のスリット部分に、固定用の蝶ネジが付く。これについては、まだ残っている電気系統の配線の工作の邪魔になりそうなので、現段階では取り付けない。なお予備履帯は、どうやら初期は装着位置が縦方向、Mk.II/IVの途中から横方向に変わるらしい。私は一応、キットの指示に従って横方向に付けるつもり。

●車幅表示灯と思われるパーツは、キットのものはカバーが分厚くライトが埋まったような状態になっていてあまり見栄えがよくないので、削り込んで薄くし、中のライトを改めて(適当な丸棒を輪切りにして)入れた。左がbefore、右がafter。

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これも現時点では形状修正だけ終えて取り付けていない。なお、この車幅表示灯?は、写真のようにフェンダー水平部の前端にあるもの(キットの指示通り)と、もっと後ろ寄りにある場合とがあるようだ。おそらく後者の方がより初期の仕様で、より見えやすくするために前側に移動させたのではないかと想像(ただししっかり検証はしていない)。

●とりあえず、あとは電気系統を工作すれば組立終了、というところまで漕ぎつけた。製作記事の本数が他キットに比べて少ない!!

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バレンタイン復活の日(2)

●タミヤのバレンタイン工作。履帯をつなぎ終わった惰性で、車体側の細部工作進行中。

なんとなく続き物っぽく書いてはいるが、いつまたT-34-85やルノーR35に戻るかわからない。いやでも、面倒な足回りを済ませてしまったからには、ストレートにMk.II/IVで作るつもりなのであとは大掛かりな改修作業もないし(←Mk.VIIへの改修作業を見たいなあ、というhn-nhさんへの密かな催促)、このまま工作を全部終わらせちゃった方がいいのか?

●繋ぎ終わったブロンコの履帯はこんな感じ。

ちなみに、上部転輪は下部の転輪と違って、ゴムリムが横方向に膨らんでいないので追加工作はしていない。

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必要枚数は片側99枚。実車が、ではなく、あくまでタミヤのキットにブロンコの履帯を履かせる場合の枚数で、実車は(きちんと数えていないが)あと1,2枚多いようだ。とりあえず、ゆる過ぎずきつ過ぎず、ちょうどいい具合にはまる。

ブロンコのバレンタイン後期型履帯(AB3536)は、12枚綴りの枝が18枚入りなので、失敗なく組めれば1枝半余る。前回、(クリッカブル履帯にしては)比較的きっちり止まると書いたのだが、それでも、両側分繋ぐ間に、連結部がつぶれてしまったリンクが4枚出た。ちょうど予備履帯に回す感じ?

なお、はめてみてからわかったことだが、ブロンコの履帯はタミヤの起動輪に対してわずかにピッチが大きく、若干のダブ付きが出る。PMMSのAFVクラブ、MiniArtのバレンタインの比較レビューによると、MiniArtのバレンタインの起動輪はやや大径で、ブロンコの履帯はもともとMiniArt用のためピッチがズレているらしい。もっとも起動輪の歯はとりあえず合うし、ダブつくといっても、よほど注視しないと判らない程度。「AFVクラブの履帯の方がよかったかな……」とも思うが、あちらはあちらで、リンク同士のハメ合わせがどうだか判らないし……。

●なお、PMMSのレビューに関連してもう一つ。バレンタインの転輪は、大径のほうが24インチ。小径のほうが19.5インチだそうだ。1:35に換算すると、前者が約17.4mm、後者が約14.2mm。これが正しければ、タミヤの転輪はやや小径ということになる。私は外周に0.1mmプラペーパーを巻いたが、0.3mmプラバンを巻いてもよかったかも(その方が、ゴムリムとリムベース部分のバランスもよくなったはず)。

まあ、「今さら言うても」という話ではあるけれども。

●フェンダーを取り付けるに際しての些末工作。

バレンタインは誘導輪をスイングさせることで履帯張度を調整する、T-34あたりと同じ仕組みをもっているが、そのロック機構と思われる六角ロッドがフェンダー内側を突き抜けて顔を出している。

タミヤのキットではこれが再現されておらず、ロッドが通る穴の部分が浅い凹モールドになっているだけなので、この穴を開けるとともにロッドを追加することにする。なお、このロッドの下部、レバーをまたぐ部分もフェンダーの穴の位置と微妙にずれているので、ここもついでに作り直した(これは誘導輪基部のスイング用の“てこ”を突っ込む穴の掘り込みや、2カ所のボルト追加と合わせて、2年前にすでに工作した部分)。

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六角ロッドに関しては、プラストラクトあたりにちょうどいい素材がないかと思っていたのだが、新型コロナ騒ぎで模型屋にも行けなくなってしまったため、自分で丸棒から削った……のだが、ちゃんと六角断面になっていない気がする。

●右フェンダー前部にはジャッキ台と思われる木製ブロック収納部がある。本来は、薄板で組んだ箱型枠の中に木製ブロックが2段重ねで入っているのだが、キットパーツは抜きの関係で2段に分かれていないうえ、枠の底部分は台状のモールドで上に乗るブロックのパーツもエッジが立っていないため、「枠に収まっている」のではなく、どうしても(パーツ構成通りに)「台に乗っている」ようにしか見えない。

ブロックと一体の枠や止めベルト、ブロック自体の木目モールドも実感に欠けるので、そのあたりを若干いじった。

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上横の枠は他のキットのエッチングパーツの枠から。止めベルトはプラペーパーで作り直そうと思ったが、結局手を抜いて、ドラゴンのT-34のグローサー取り付けベルトのパーツを加工。下枠は、フェンダーからリブ分浮いて見えるように、見える所だけ少し彫り込み、留め具を4カ所追加した。

もちろん、この辺は、フェンダーステイあたりも含めて別売のエッチングパーツを使えば一挙解決な部分なのだけれど、そこまで張り込む気にはなれなかったというか(ちなみにタミヤのキット用エッチングでは、パッションのものが要所を抑えた手ごろなものでよさそう)。

●左フェンダー上には大きなマフラーが付く。排気口は元パーツの掘り込みが浅く、2分割のパーツを貼り合わせたらますます埋まってしまったので、改めて深く掘り込み、2カ所の仕切りも入れ直した。が、そこまでやったところで、「そもそもパーツを貼り合わせる前に内側を彫り込んでおけばもっと楽だったんじゃ……」と気付いた。迂闊。

マフラーカバーの前端には、フェンダーステイへの取付ボルトを追加。なお、このボルトの位置や数はじめ、この戦車の細部ディテールは現存車輛のwalkaround写真を見ると車輛ごとに結構違いがあって、そもそもMk.II/Iだとどんな形状がスタンダードなのかがいまいちよく判らない。

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●左フェンダー上、エンジンルーム横には何やら四角い枠状のパーツが2つ付く(キットパーツP3、写真のオレンジ矢印)。最初は何かの工具のホルダーかとも思ったのだが、そうではなく、エンジンルーム上面を左右に開いた際の受け金具なのではないかと思う。右フェンダーは工具箱があるので金具の意味がないためか付いていない(工具箱が付いていない車輛だと、右フェンダーにもこの金具が付いている例が確認できる)。

キットのパーツは単なる四角い枠だが、実車では薄板によるL字材の枠のようで、プラバンで枠を作り直すことも考えたのだが、あまり目立つ部分でもないし……と思って、適当に内側を彫り込んだ。こうして拡大して写真に撮ると仕上げが汚いなあ。ちなみに、窪んだ側が前なのか後ろなのかは、これまた現存車輛ごとに違いがあったりしてよく判らない。私は一応、両方後ろ向きにした。

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追加工作とは関係ないが、左右フェンダー後部の謎のツノ部品は、どうやら水色矢印方向に起こして、エンジンルーム後部パネルハッチを開いたときに、縦黄緑矢印のダンパーを受けるパーツであるらしい。無駄に凝っているなあ。みやまえさんあたり、バレンタインを作るときには可動にしそう。

なお、ツノを倒したとき、その先端部分(横黄緑矢印)を受ける金具がフェンダー側に付いている車輛もある。形式によるものか?

●フェンダー最後部は一段高くなっているが、その間は明瞭な段差ではなく、下の入隅部分は緩やかにrが付いている。で、右フェンダーの小さいほうの工具箱の後ろ側は、そのrに合わせて角が丸くなっている。

タミヤのキットは、フェンダーの入隅のrはなんとなく表現してあるものの、工具箱の角は丸くなっていない。

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というのに後から気付いて、いちど接着した工具箱を引っぺがして再工作。入隅のrはキットの状態よりもう少し丸みがあるように思うのだが、そこまで直すのは面倒くさいので、工具箱の隅を丸めるほうを控えめにした。

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バレンタイン復活の日

●なんとなく無理矢理時流に乗せてきたかのようなタイトルですが、小松左京さんも草刈正雄さんも関係ありません。

●前々回の書き込みで、

昨今の状況下で、なんとなく精神的にも浮足立ってしまったこともあって、今はなんとなく、難しいことは考えずにひたすら手だけ動かし、面倒な作業の消化をしたい気分。

と触れたネタ、タミヤのバレンタインの工作。このキットの工作についての前回記事はこちらで、2017年の5月10日。ほぼまる2年前になる。

工作がストップしてしまった最も大きな理由が転輪のゴムリム形状で、そもそもヴィッカースのMk.I巡航戦車からバレンタインに至るまでの一連のシリーズは、転輪のゴムリムが(他の戦車ではおおよそ長方形の断面であるのが普通であるのに対して)ふっくらと丸くなっているという大きな特徴がある。これについては、購入してすぐのレビューでも言及しているが、間も開いてしまったことだし、再度検証。

下は、ボーヴィントンにあるMk.IIの足回り。Wikimedia Commons、Makizox による Infantry Tank Mark III Valentine Mark II.jpg より切り出し。

Valentine

履帯もやや独特で、ガイドホーンの内側根元は緩やかにカーブしていて、転輪がはまる部分の断面形状はフィヨルドのU字谷――というとちょっと言い過ぎだが、とにかく他の普通の戦車に比べると丸みを帯びていて、転輪がフィットするようになっている。なんでこんな形状にしたのかなあ。地面の細かな凹凸に合わせて履帯が(横方向に)斜めになった時に、転輪エッジに強い力が掛からないようにするとか?

これに対し、タミヤの転輪(写真は誘導輪)と、さらには履帯との関係は以下のような感じ。

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ゴムリムは他の通常の戦車のように角ばった形状で、履帯と合わせてみると、ガイドホーンとの間にはかなりの隙間が開く。先行するAFVクラブやMiniartのバレンタインのキットではちゃんと「ふくらみリム」が表現されていたので、これは「タミヤのキットはちょっと神経が行き届いていなかった」と言われても仕方がない部分かなと思う。

●対処法としては、3年前、1つだけ試験的に、ゴムリムの表側に0.3mmプラバンを貼り増して丸みを付けるという工作をしてみた(記事はこちら)。

これに対して、hn-nhさんは、プラバンを貼り増したりせずにキットのパーツを直接彫り込むという工作を試みている。もともと転輪の厚みまで本格的に直そうとは思っていないので、であるなら、hn-nhさん方式のほうがすっとスマートなのだが、私自身の工作力だと、フリーハンドでゴムリムとリムベースの間を綺麗に彫り込める自信がまったくなく、リムベースがガタガタになる未来しか見えてこない。

というわけで、結局、「面倒だなあ」とは思いつつ、プラバン貼り増し工作を誘導輪合わせて全14個分やることにした。

当初は試作品と同じく、表側の側面にだけ0.3mm板を貼り増すことにしようと思っていたが、工作途中でさらに面倒くさい方向に方針転換し、外周にもプラペーパーをひと巻きすることにした。きわめていい加減な図解だが、工作手順は以下の通り(断面図)。

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①.リム内側にぴったり合うよう、ドーナツ状に切り抜いた0.3mmプラバンを用意。なかなかサイズぴったりに切り抜くのが面倒くさく、微妙に穴が大きくなってしまった失敗作ドーナツも複数出た。

②.プラバンの内周を、あらかじめなだらかに削ってから、キットの転輪パーツに接着。

③.キットパーツのゴムリムエッジとの間にわずかに隙間(というか溝)ができるので、瞬着で埋める。

④.0.3mmプラバンの余った外周を削ったのち、接地面にプラペーパー(0.1mm?)をひと巻きする。

⑤.エッジ部分を丸く削り込む。本来ならば転輪の裏面側にも0.3mm板を貼り増すべきだが、面倒なので試作版同様に省略した。

工作途上の実際のパーツ写真は以下。左は表側にドーナツ・プラバンを貼った段階。右はドーナツ・プラバンの余りを削ってプラペーパーを巻き、最終的な削り作業を待っている段階。

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削り終わったものはこんな感じになった。左写真は、キットパーツ、表側にだけ0.3mmを貼り増して丸みを付けた試作品、今回工作したものの比較。右写真は、ボギー1つぶんだけ仕上げて仮に装着してみたもの。こうしてみると、やはり転輪リムに丸みがついて、非常に雰囲気が良くなった……ようにも見えるし、別にそう大して変わらないようにも見えるし。いいんだよ! 所詮は自己満足なんだから!

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そしてその後、転輪+誘導輪のすべてを何とか削り終えた。サスも組んで装着してみたのが以下。

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さすがにこういうのは、「あえて面倒な作業を、無心にやりたい」などと発作的に思った時にやっておかないと。

●なお、サスペンション支持架に関しては、キットのパーツは抜き方向に対して垂直になるボルト類はきれいさっぱり省略されている。「どうせほとんど見えなくなるし、いいかな……」とも思ったのだが、せっかくゴムリムに手を加えたことでもあり、結局追加することにした。

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左がキットパーツのママ、右がボルトを追加したもの。V字の“つば”の部分の両面(各5個×4)と、両側面下部の水平部分(各3個×2)。左右前後の4つで、104個。V字のつばの部分は両面が対応しているので、本来は片方がボルト頭ならもう片方はナットでないといけないのだが、こんな部分にマスタークラブを投入するのはもったいないと感じたので、すべてジャンクパーツ(タミヤのM60A1リアクティブアーマー)からのボルト頭の移植で済ませた。

●タミヤのキットの履帯は、ガイドホーン付け根外側の穴が貫通していない。これはおそらく、金型の耐久性を上げるための措置。II号戦車の履帯はちゃんとスケルトンだったのに対して、このバレンタインやSU-76Mの履帯で開いていないのは、やはりそれなりに売れるドイツ戦車と、採算をとるのが難しい連合軍戦車の差かなあ、と思うとちょっと侘しい。

もちろん、以上のような理由だとするとタミヤを責めるのは酷というもので、それでもこの手のキットを出してくれたことを感謝すべきかと思う。

などと言いつつも、私自身としてはやはり穴は開いていて欲しいので、ここはブロンコの別売履帯を奢る予定。タミヤの履帯との比較は以下のような感じ。

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それぞれ下がタミヤで上がブロンコ。この写真では見づらいが、ブロンコは接地面両側に鋳造ナンバー?もモールドしてある。ブロンコの履帯は可動式だが、別部品のピン止め式ではなく、クリッカブル(はめ込み式)。硬質スチレン樹脂のクリッカブル履帯の場合、ハメコミ時にピンが折れるとか、あるいは逆に穴側の縁がつぶれてつないだ後にポロポロ外れるとかのトラブルが多い気がするが、このバレンタインの履帯の場合は比較的きっちり止まって動きも軽快。

●話は変わるが、めがーぬさんから、「CAMsから、フィンランド軍仕様のヴィッカース6t後期型が遂に発売される!」という情報を頂いた(めがーぬさんありがとうございます)。検索してみたら、TRACK-LINKにボックスアートの画像入りで話題が上っていた。

先日発売された「フィンランド仕様」は1輌だけ試験用に輸入された通常型だったので、これは嬉しい。でも、インテリア無しの廉価版も出てくれたらもっと嬉しいな……。

それにしても、模型屋に新製品を見に行ける日はいつ来るのやら。

●追記。

ひとつ余った旧型誘導輪で、hn-nhさん方式(プラバンを貼り増しせずにキットパーツを削り込む)を試してみた。

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結論から言うと、「思ったよりうまく仕上がった」ものの、hn-nhさんのように「1個5〜10分くらいで加工」はとてもできず、上の1個を削るのに1時間くらい掛かってしまった。いやもう、なんだか伝統工芸品の職人になったような気がしましたよ。

原因は――。

hn-nhさんはつまようじを挿してくるくる回しながら削る、ドリルレースならぬ「楊枝レース」で作業したそうだが、私はそれがうまくできず、そのまま転輪パーツを手に持ってナイフの先でコリコリする羽目になったため。

また、hn-nhさんはホイールディスクのリム部分(ゴムリムのベースになっている金属部分)の縁もついでに薄くなるよう削ったとのことだが、私はそれもうまくできずに基本キットのままになってしまったので、タミヤの「リムベース部分が厚くゴムリム部分が薄い」形状が強調されることになってしまった。うーん。やっぱり私はスマートじゃなくてもプラバン貼り増しの愚直な工作で正解だったか……。

もちろん、モーターツールなどに噛ませて一気に削れる人であれば、全く事情は異なるはず。

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バレンタインの日(4)

●恒例、週末戦車親父さんのところの「SUMICON2017」もスタートしているのだが、そちらは数日前にエントリーだけはしたものの、まだまったく手を付けていないので、また今度。

●その一方で、すぐに完成させるつもりもないバレンタインは相変わらずちまちまいじっている。

タミヤのバレンタインの“鼻先”(防盾)がどうやら前後方向にだいぶ寸詰まりっぽい点については以前にも書いたが、同軸機銃基部の仕様変更の結果、さらにそれが強調されてしまった。基本、放置の方針でいたのだが、見るたびにどうにも気になって来て、結局、(すでに俯仰軸パーツに接着してあったのをもぎ取って)手直しすることにした。

下面に関してはエッチングソーで切り離してプラバンをサンドイッチ(写真右)。上面は縦に伸びている部分を削り取って鼻の延長とし、改めて縦部分をプラバンで新調(写真左)。防盾カバーに掛かる左右の円部分は削り取り、プラバンで新調した半円を後ろにずらして貼った。

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実際に砲塔にセットしてみた感じは以下。目分量での適当な作業なのだが、キットパーツに比べて1mm強前進している。

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この後、もう少し形状をいじったり表面処理をしたりするかも。また、この工作の結果、当然ながら砲身も前進することになるが、そのままでよいのか、防盾のぶん切り詰める必要があるのかは未検証。

カナディアン・バレンタインへの挑戦をしているhnさんも防盾の寸詰まり解消工作をしていて、砲付け根正面の楕円平面部分の強調など、形状修正がさらに本格的。AFVクラブの防盾パーツとの比較もあるので、ぜひ参照されたし。

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バレンタインの日(3)

●タミヤのバレンタインのその後。

キット評的にちょっと書いて、ちらっとお手付きレベルでいじってそれっきり――になるような気もしていたのだけれど、なんとなく、箱に仕舞い込まずにちまちま埋めたり削ったりしている。

せっかくのタミヤの新キットなんだからパッパカ作れよ!……と、自分でもちょっとツッコミたい感じですが。

●とういわけで、今回は、おそらく組み上げるとフェンダーと履帯の陰に隠れてほとんど見えなくなりそうな、誘導輪基部の工作。

バレンタインは、履帯張度を変えるための誘導輪位置調整機構が車体外にむき出しになっていて、どこをどう動かすかがなんとなく判る感じになっている。

誘導輪基部上側には基部の回転をロックするツメと、そのロックを解除するレバー(キットのパーツのD7、D8)が付いている。本来、このレバーからは垂直にロッドが立っていて、フェンダー内側の穴から上に突き出ているのだが、キットはこのロッドが省略されていて、フェンダーの穴も浅い窪みのモールドだけとなっている。

20170427_233834 最初は、「このモールド位置に穴を開け直して、ロッドを立てればいいよね」と簡単に思っていたのだが、いざ穴を開けて仮組みしてみると、D7、D8パーツのレバーを挟んでいる垂直のフォーク部分と、フェンダーの穴との位置が合わない。

フェンダーの穴の位置は、フェンダーの段差との位置関係はおおよそ適正な感じなので(もちろん全体的にずれている可能性はあるのだが)、D7、D8パーツのモールドの方を、一度削り落として(基部側の「受け」のモールドと合わせて)作り直した。位置はフェンダーパーツとの現物合わせだが、約1mmの前進。

誘導輪基部の前面にも若干のディテールアップ。

20170427_233910 まず、誘導輪の受け(D13、D14)には、誘導輪調整用のバー(後々工具箱の上に取り付けるC21)を差し込む穴が開いていないので、ドリルやナイフの先を使ってコリコリ削り込んだ。穴は2カ所に開いていて、そのこと自体は位置によってはバーが差し込みづらくなってしまうからだと思うのだが、なぜその形状に差があるのかがよく判らない。

加えて、基部側の上下2カ所に、グリスポイントではないかと思わっる円筒形の突起と、その先端の小ボルトを追加した。

初回にも書いたように、この誘導輪基部にはリブ付きのものがある。IIやIVの途中でリブ付きが一般的になるようで、クビンカやソミュールの現存車輌ではそれが確認できる。ちょっと「追加したいな~」という気もあったのだが、上記グリスポイント(?)との位置関係も調整する必要があり、ややこしいので諦めることにした。PMMSの比較レビューを見ると、AFVクラブのMk.IIはリブ無し、MiniartのMk.IIはリブ付きを再現しているらしい。

ちなみにMk.II/IVなどの初期型バレンタインと、後期のバレンタインでは、この誘導輪基部のリブの位置に違いがあるようだ。

●豆考証~。

この形式のバレンタインでは、操縦席上に2カ所、砲塔上に2カ所、「ヴィッカース・ペリスコープMk.IV」が装着されている。もとはポーランドの技術士官、ルドルフ・グンドラフ設計のもので、TKSに(たぶん)初めて搭載・実用化されたもの。

20170427_234202 キットのペリスコープのパーツは、車体側のものは向きが自由に選べるようになっている。実物も回転式なのでそれでいいのだが、実車写真を見ると、(少なくともイギリス軍の場合は)直前方は覗き窓があるので、ペリスコープはそれを補う形で、斜め左右に振っていることが比較的多いようだ。というわけでそんな形に接着したが、レンドリースのソ連軍車両の場合は、あまりそんなことには気を使っていないような気もする。そもそも細かく左右を気にしなければいけない場所を走っていないから?(そもそも撃破後の写真が多かったりするのでよくわからないが)。

ちなみに、砲塔上面用はパーツの取り付けベロにダボがあり、真っ直ぐ前方に固定されるようになっているが、実車写真を見る限り、「使わない時はまっすぐ前を向けておけ」みたいな規定があるわけでもないようだ。

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バレンタインの日(2)

●タミヤのバレンタインMkII/IVに関する、あるいはバレンタインそのものに関するアレコレ。前回の若干の補足というか続きというか。

●タミヤのバレンタインの転輪、もうちょっと“ふっくら”していてほしいよー問題に関して若干の試行。

20170413_000045 0.3mmプラバンをゴムリム内径で丸く切り抜き、内側をサンドペーパーで緩やかに薄くしてキットのゴムリム部に接着。さらに外径部分もヤスって丸めてみた(あくまで試行ということで、誘導輪の、おそらく使わないであろうタイプを実験台にしている)。ちなみに裏側は面倒くさいのでキットのままで角だけ丸めている。

うーん、履帯に接する面自体にも、もうちょっと丸みが欲しいなかあ……。

もっとも、これを全転輪でやる気になれるかどうかが、まず問題。

●誘導輪基部のリブについて。

下は1942年、ジブラルタル防衛に配備されたバレンタインで、誘導輪基部はリブ付き。写真はインペリアル・ウォー・ミュージアム(Imperial War Museum/IWM)より。車体番号「T27632」は、NEW VANGUARD 233「VALENTINE INFANTRY TANK 1938-45」に従えば、メトロポリタン・キャンメル社製で1941年5~11月間に引き渡されたMk.IIの1輌。

前回書いたように、リブ無しは比較的初期の形質と考えられるのだが、どうやらリブの有無でMk.IIとMk.IVは分けられなさそうだ。

車輌番号と対応できる例が他に探し当てられなかったので、ヴィッカース社製、メトロポリタン・キャンメル社製、バーミンガム・レイルウェイ・キャリッジ&ワゴン社(BRCWC)製での導入時期の差などはよく判らない。

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●もうひとつややこしい問題。Mk.I/II/IVの防盾には2種類の形があるそうだ。Britmodeller.comのこのトピックに詳しい。

簡単に言うと、同軸機銃の部分が防盾カバー部より窪んでいるか(キットのパーツの形状)、出っ張っているか(上写真、または下のカナディアン・ウォー・ミュージアムの実車写真参照)の違いで、窪んでいる方がより初期の仕様であるらしい。また、窪んでいる方のタイプの場合、2ポンド砲は付け根部分に明瞭な段がなくスムーズに繋がっているタイプ、出っ張っている方では明瞭な段差があるタイプが一般的であるらしい。

ただし、比較的有名な、ソ連に向けてのバレンタイン送り出しセレモニーの際の写真で、窪みタイプの防盾で段付き砲身のMk.IIも確認できる(リンクページの最初の写真、BRCWC製のMk.II、BRCWCのスメジック(Smethwick)の工場における撮影、1941年9月28日)。したがって、マーキングとの整合性はさておき、キットの状態が仕様として間違いであるとは言えない。

20170413_142442 私はより一般的なタイプとしたかったので、防盾にプラ材を貼り付けて削り中。「プラ材」というとそれなりのものを使っていそうに聞こえるが、何のことはない、単にキットのランナータグ。

なお、どうもキットの防盾は前後方向にと寸詰まり傾向にあるようで、砲身基部の高さに合わせると、機銃部バルジの高さはちょっと足りない感じがする。

●ついでに。インペリアル・ウォー・ミュージアムの写真で「あれ?」と思ったのが以下の写真。

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キャプションには次のようにある。

Troops attack a 'German' tank (in reality a Valentine) with 'sticky bombs' during training at No. 3 GHQ Home Guard School at Onibury near Craven Arms in Shropshire, 20 May 1943.

要するに、バレンタインがドイツ戦車に扮して国内で対戦車訓練中の写真なのだが、よく見ると、スプロケットが複列になっていて、非常に珍しい履帯を履いている。

wikipediaのバレンタインの項を見ると、カナダ製のMk.VIIAで新型履帯が使われたとあるが、この写真の車輌番号、「T15963」は、NEW VANGUARD 233によればMk.Iのもの。またMk.VIIAに使われた新型履帯というのは、これもNEW VANGUARD 233の記述によれば「ice-studs on tracks」とのことなので、カナディアン・ウォー・ミュージアムに展示されている車輌が履いている、1リンク置きに接地リブにトゲの生えているヤツのことだろうと思われる(下写真はwikimedia commonsより)。

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というわけで、上のMk.Iが履いているのは、テストされたものの採用されずに終わった新型履帯、という感じのものか?

ちなみに車体前部が鋳造になったカナダ生産型はMiniartからもキットが出ていないようなので(Mk.Iとほとんど同じMk.VIは出ている)、ちょっと惹かれなくもない(ほとんどがソ連に行っている、という点でも)。もっとも、砲塔前後面も一体鋳造というのが面倒かな……。

●追記。wikimedia commonsに、もう一枚、上記の「変な履帯」を履いた車輌の写真があった(これももともとはIWMの写真らしい)。むう。1輌だけじゃなかったのか。後からそれなりの数が交換装備されたものか? グランパあたりに「この履帯は……」って出てるかな?

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「T16357」は(NEW VANGUARD 233によれば)メトロポリタン・キャンメル社製の生産第一ロット。T16221に始まる125輌のうちMk.Iが44輌、Mk.IIが81輌だったらしいから、番号順になっていればMk.IIということになる。ただし、エンジンルーム後部ハッチは左側だけだったりと、初期生産車の特徴を残している。(以下、2018/08/16訂正)BRCWC製、1939年6月29日に始まる生産第一ロット(Mk.I:67輌、Mk.II:133輌)。同ロットは「T16356」から始まるので、番号通りに生産されているなら同社製Mk.Iの生産第二号車ということになる。

起動輪との噛み合い方、外側形状はクルセーダーの履帯にそっくりだが、ガイドホーンが複列なので当然別物。

ちなみに、上で紹介したBritmodeller.comのトピックでもこの写真は紹介されていて、そこに載っている写真はnarrow tracks云々というキャプション付き。すでにこのタイプを取り上げている資料本もあるようだ。

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バレンタインの日

●前回書いたように、珍しく、おそらく発売日当日(?)にタミヤの新製品、バレンタインを買ってきた(MM352、イギリス歩兵戦車バレンタインMk.II/IV~BRITISH INFANTRY TANK Mk.III VALENTINE Mk.II/IV)。

以下、ネタバレ(旬のネタであるタミヤのバレンタインの紹介、の略)。

20170411_024518 箱絵は北アフリカのサンド(ライトストーン)単色のイギリス英軍所属車。バレンタインと言えば、本家イギリス軍の戦車としてはほぼ「北アフリカ用」「本国での訓練用」というイメージだから、これは妥当なところかと思う。

箱を開けてパーツをざっと見て最初の印象は、「うわ、バレンタインて、小せえ……」というもの(Miniart、AFVクラブのキットは持っていないが、VMのキットは持っているので「1:35のバレンタイン」は初見でないはずなのに)。

デカールは箱絵になっているイギリス軍1種と、レンドリースのソ連軍2種。もともとレンドリースのソ連軍車両を作りたい私としてはそれでもいいのだが、「バレンタインはイギリス戦車なのに!」と思う派にとってはちょっと不満の出そうな構成。選ばれたイギリス軍車両も、右側面にのみ大きく「3」と書かれているだけで目立つマーキングは他になしという地味な例で、2色以上の迷彩塗装だとか、目立つ部隊マークや識別帯入りとか、もう1,2例あってもよかったんじゃないかと(そっちでは作らない私でも)思う。

20170409_015746 プラパーツは枝が5枚。うち2枚は同一の足回りのパーツだが、実際にはそれぞれさらに2つの枝が合体した形になっている(Aパーツ+Pパーツ)。転輪部分(Pパーツ、写真左側)を差し替え可能にしてあるのは、いずれ後期型転輪のキットも出せるようにという含みだと思う。タミヤがミニアートのように小刻みにバレンタインの各形式を出すようにも思えないので、最有力候補はアーチャーかな? ちなみにビショップはこのキットと同じ中期型転輪が普通のはず。

20170409_015229 車体上部+フェンダーパーツの枝(Bパーツ)は、ランナー裏に大きくリブがくっついていて、車体上部やフェンダー、サイドスカートのパーツに反りが生じづらいようになっている。

ちなみに車体床面・側面パーツ(Dパーツ)のほうにはリブが入っていないが、こちらは形状的に反りが生じづらいか、それとも箱組で修正可能レベルという判断なのではと思う。

ちなみに車体箱組に関しては、車体前面・後面は側面に挟み込む形状になっているが、わざわざ接着の手順をややこしくしてまで(説明書でも注意喚起されている)挟み込み式にした意味はいまいちよくわからない(前面は上下ラインが違うので間違える可能性は低いし、後面は両側ダボ以外にも工夫のしようはあったはず)。

ほか、ちょっと組んでみた感じでは、タミヤらしく丹念な削り合わせなどなくてもピタピタと部品が組み合わさり、「買って、切り離して、組み立てる」プラモデルという工業製品の完成度の高さではやはり他の追随を許さない感じ。もちろん、それだけがプラモデルじゃない、というところにタミヤのツラさもあると思うのだけれど。

●このように「流石はタミヤの新製品!」という感じのキットであり、ささっと組んで旬のネタを楽しむ、というのも十分ありだと思うが、やはり私自身のスタンスとしては、それなりに手を加えられる部分があるなら加えたい。というわけで、現時点でちょっと気になる/気付いたポイントを以下に。

なお、私自身はバレンタインに関しては「う~ん、タミヤから出るなら作るか~」くらいの入れ込み度。タイプの変遷・細部の特徴に関してもほぼ付け焼刃の知識なので、以下も、そんな「割といい加減な知識ベース」であり、思い込みで適当なことを書いてしまっている可能性もあるかもしれない。ご了承いただきたい。

また、前述のようにAFVクラブ、Miniartのキットは持っていないので比較もできない。どなたか詳細レポートしてくれないかしらん。

砲塔

20170409_010919 ▼パーツの抜きの関係で、前面下の「ベロ」部分のボルト頭(4つ)が省略されている。

右写真では、トライスターのIV号戦車で大量に余るサスペンション基部パーツのボルトを削ぎ取って移植した(割と使い勝手のいいサイズのボルト頭なので、結構重宝している)。

それにしても、このバレンタイン初期型砲塔もそうだが、どうしてイギリス軍AFVというのは、こんなふうに砲耳を奥まった位置に持ってきているものが多いのだろう。バレンタインもMk.IIIでは砲塔容積を稼ぐために砲耳位置を前進させているが、初期の巡航戦車や軽戦車Mk.VI、ダイムラー装甲車、コメットなども奥まった感じだから、何かそうしたい理由が(しかも、たぶん「えー。内部容積を狭めてまで、そこにそんなにこだわる必要ないじゃん」と思うような“イギリスらしい”理由が)あったのではないかと思う。

20170411_021022 ▼主砲の照準口と思われるものは防盾左側にあるが、防盾カバー部の右側に、もう一つ穴がある。クルセーダーMk.I/IIの砲塔も形状は違うが同様の配置で、車長用の前方視察装置か何かではないかと思う。(追記。ラヴァさんよりコメントを頂きました。この穴は擲弾(発煙弾)発射機だそうです。情報ありがとうございます。)

この部分、キットのパーツでは防盾カバー外側と同心円(同心円筒)状に窪んでモールドされているのだが、実際には、窪んだ内側の円筒面の中心は砲耳中心よりもちょっと前寄りになっていて、内側円筒面は下部よりも上部でより深くなっている(キットでは同じ深さ)。

そこで、窪みを彫り直し、さらに、この部分の軸線に対応するボルト(キットでは省略されている)を側面に追加した。ちなみにこの尖頭ボルトは六角ではなく四角なので、手近に流用できるものがなく、プラ材から削り出した(おかげでいびつ)。

掘り直した結果、長円の穴の底も深さが不均等になってしまったので穴を貫通させ、ほぼ同じ深さになるように裏側から削り込んだ。内側の工作は未完。

なお、この防盾カバー部分(パーツD19)に関しては、砲塔上面部分は実車と分割線が異なっている(本来一体であるところに分割線が来る)ので注意。天井板(パーツD23)側の前端左右にモールドされているパイプ断面のようなものはボルト穴。最初は、タミヤが取材した車輌で欠損していたのをそのまま再現してしまったのかと思ったが、戦時中の実車写真でもボルトがないように見えるものもあるので、何か外付け装備用のボルト穴なのかも。

20170411_005900 ▼砲塔後部の通風孔部分は、本来一体の鋳造部品であるところがいくつかのパーツに分割されているので、丁寧に接合線を消す必要がある。また、通風孔のヒサシ下は、実車ではちょっとエグレたような形状になっているようだったので、そのように加工した。小さなボルト頭はいったん削り落とし、後で再生した。なお、この鋳造の通風孔張り出しの上面左右にも(砲耳カバーパーツ同様に)本来はボルト穴があるようだ(本体側のふくらみは表現されている)。砲耳カバー部分同様、ボルトが植わっているのがデフォなのかどうかはよく判らない。

足回り

20170409_015628 ▼キットの転輪のゴム縁部分は、他の戦車と同様の角ばった形状をしている(いわば長方形断面)。しかし、実際のバレンタインの転輪のゴム縁は、側面が丸く膨らんだ(いわば角丸長方形断面)独特の形状をしている。

このゴム縁形状は、履帯のガイドホーン内側がゆるやかに曲線で立ち上がっていることにも対応しているのではないかと思う。キットの転輪は上記のように単純な角ばったゴム縁を持つため、ガイドホーンとの間隔も開き気味になる。これは単純に「ゴム縁の角をやすって丸くする」では対応できない問題で(ゴム縁全体の幅が足りないので)、修正するとなるとかなり面倒くさそう(というか、いい対処法が思い付かない)。個人的にはだいぶ残念。

20170409_015444 ▼履帯は、実際にはガイドホーン外側の窪みと対応して表から裏に貫通する穴が開いているのだが、キットでは埋まった状態になっている。これは先に発売されたSU-76Mも同様だったので、最近のタミヤ・スタンダードの処理なのだろうか? II号戦車では開いていたので、やってできない処理じゃないと思うんだがなあ……。箱を開けてチェックして、「ああ、ついでにAFVクラブかブロンコの別売履帯があったら一緒に買ってくればよかったな……」と思った(ピッチは合うのか、またAFVクラブとブロンコのどちらの出来が良いかなど未チェック)。

20170409_015656 ▼ごっついサスペンション基部は、パーツの抜き方向の都合で、フランジの横方向のボルトは省略されている。ちなみに、V字のフランジの内側がボルト頭、外側がナットのようだ。

そもそも奥まっていてそれほど目立つ部分でもないと思うので、追加するかどうかはお好み次第という感じではないかと思う。裏側とか内側とかにもボルトがたくさん植わっているようなのだが、さすがにそこまでは知らん。

20170409_015959 ▼誘導輪基部は、車体から突き出た部分が、キットのようにつんつるてんのものと、リブ付きのものとがあるようで、特定車輌を作る時には注意が必要ではと思う。Mk.Iとされる現存車輌ではリブがなく、Mk.VやMk。IXではリブ付きなので、前者が初期仕様のようだ。誘導輪の変更とリンクしてたりしないといいなあ……。

またリブ付き、リブ無しに関わらず、グリース注入口なのか、本来はボルト頭付きの突起が数カ所にある。

写真の起動輪基部上部の四角く欠けた部分には、誘導輪位置調整装置のロックレバーのパーツ(D7、D8)が付くが、本来は、そのレバー中途から垂直に伸びたロッドが、フェンダーの穴を通して上に突き出ている(キットは、フェンダーの穴が浅いくぼみで表現されているのみ)。

また、誘導輪基部(D13、D14)には、本来、回転用のバー(工具箱上に装着されるパーツC21)を差し込む長四角の穴が2箇所にあるが、キットのパーツは抜きの都合で穴が埋まっている。

●資料など。

▼現存車輌のwalkaround(主なもの)。

REGION AFV

形式的にキットと合致するのは上2つ。ソミュール、クビンカともに誘導輪基部にリブあり。クビンカの車輌は、車体前面・操縦席前面に、増加装甲を貼り増し、砲塔リングガードもある。

SVSM Gallery

Mk.VIはカナダ生産型で、基本はMk.IVと同仕様。外形的特徴に関しては、この写真で見る限り、転輪は初期型、砲塔左に小ハッチはなく、Mk.II/IVというよりむしろMk.I仕様に近い。このMk,VIの写真集はDishModelsにもUPされている。

DishModels

カナダ製車輌。レンドリースでソ連に渡り、ウクライナで発掘されたもの(Dishmodels表紙からの検索で探し出せなかったが、セータ☆さんのところからリンクが張ってあったので再び行き着けた。セータ☆さんどうもありがとー)。Mk.VIよりさらにカナダ独自の仕様が加わったもの。

Primeportal

ダックスフォードのジオラマ仕立ての展示品の写真はあまり点数もなく、妙にスッキリとレストアされているが、とりあえず、誘導輪基部がつんつるてんタイプなのは判る。

Surviving Panzers website

▼大戦中の写真

鳥飼行博研究室

IWM由来の写真が多数。

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