ビッカース水陸両用戦車

ビッカース水陸両用戦車、参戦(13)

●いささか仕事が切羽詰まりつつあるのだが、とりあえずこれだけは、ということで、週末戦車親父さんのところの「軽戦車コンペ」(K-CON)のエントリー作、CAMsのビッカース水陸両用戦車(Vickers Carden-Loyd Amphibious Tank A4E12 Early Production)の報告。

K-CONは3月末が締切だが、今回は時間切れリタイアにもならず、締切当日の晩の駆け込みにもならず、「とりあえずこれで完成ってことでいいかな」というところまで持って行くことができた。

製作途中の報告写真ならいざ知らず、さすがにキットの上蓋の裏に置いての写真はみっともないし、我が家に唯一あったそれなりに面積のあるパステルグリーンの紙は、戦車それ自体が非常に発色悪く写ったので、月曜日、都内に仕事に出たついでに、画材屋で半切の色紙(グレーとブラウン)を買ってきた(下の写真でみるように、ブラウンは失敗だった模様)。

ちなみに「半切」は「はんぎり」とか「はんせつ」とか読むのだろうと思っていたのだが、画材屋のおねーちゃんはなんだか珍しい読みをしていた。どう言っていたのか忘れてしまったけれど。

●完成写真。なんとな~くピンボケだったり、なんとな~くナナメだったり、発色が悪かったりもするが、仕上げ同様、「完成品をよく見せる」ことについても圧倒的に経験不足なので勘弁してつかぁさい。もちろんカメラがあれこれ調整できないガラケーだからということもある。

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●クローズアップも数枚。

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●一応、前回からの変化を書くと、

・最初のウォッシング/スミ入れに使ったローアンバーよりも明るい、(油彩の)イエローオーカーを使って車体下部を中心にウォッシング/スミ入れを重ねた。ローアンバーも再度、要所に加えた。

・履帯もかなり暗めだったのが気になっており、イエローオーカーでウォッシング。その上から再度、クロームシルバー+フラットアルミで若干ギラギラを抑えた銀でドライブラシ。だいぶ「黒々感」は薄れてマシになった気がする。どんな戦車でも、モノクロ写真で履帯が暗く写っている例はあまり多くなく、個人的には軽めの色で仕上げたいと思っている(のだが、結局黒っぽくなったりする)。

・前照灯内部を銀で塗り、レンズをはめた。キットの前照灯パーツは薄くくりぬかれているがレンズ部品はない。今回はWAVEの「H-EYES 3ミニ」の2.2mm径のものを使った。最初は2.5mm径でちょうどかなと思ったがわずかに大きくて入らず、2.2mm径はわずかに小さかったものの隙間が目立つというほどでもなかったのでそのまま使った。このWAVEの透明パーツはそれなりに厚みがあるので、場合によってはレンズ面がかなり出っ張った状態になってしまい、かといって斜めに削り込むと汚くなるし――ということで、あまり使いやすいパーツではない印象なのだが、今回はキットの前照灯外周部が薄かったので助かった。

●今回はキット設計者のT.Wongさんからしばしばアドバイスを頂けるという、なんとも贅沢な製作工程だった(いや、ちょっと怖かったけど(^^;))。有難うございます。

以前からずっと作りたかった車種で、自分でスクラッチしかけたこともある。そんなわけで、ストック棚のどこかに基本形だけは組んだ車体や、ミラージュのビッカース双砲塔型から取り分けた砲塔パーツや、カステンの履帯やらが今でも大事にしまってある(でもどこにあるのかはよくわからない)。新興メーカー第一作とあって、若干の作りづらさはあったものの、とにかくHOBBY-BOSSあたりには爪の垢でも煎じて飲んでほしいと思えるような、こだわりと愛情の詰まったキットで、長年の課題だった車種を作ることができたのは純粋に嬉しい。

また、me20さんにはデカールを提供して頂いたほか、折々のコメントで励まして頂いた。もちろん、同じ中国軍所属のルノーUEを、まさにお手本にしたくなる美しさで作っている、というのも大きかった。ほかにもSUMICON掲示板でも、当ブログでも多くの方にあれこれ背中を押して頂いた。どうもありがとうございます。

●一方で、あれこれ反省もある。

・最も悔いが残るのは迷彩パターン。SUMICON掲示板でも多くの方に褒めて頂いたのだが、やはり改めて資料を見返すと、もっと各色の塗り分けが細かく、塗り分けラインも複雑に入り組んでいるほうがよかった。もうちょっとパターンの下書き時点で急がず、チェックを繰り返すべきだった。

・ほかにも(塗装のスキルと経験値が不足していることもあり)塗装にはあれこれ不満が残る。

・パーツ自体の長さが若干不足気味ということもあるが、車体から舵下部に繋がる支柱(C15、C16)の接続が誤っている。キットの説明書ではC17の下側に繋げるよう図示されているが、前述のようにパーツが短めなこと、クビンカの実車では上側に繋がっていることから、上側に変更して組んだ。が、後から広東軍車輌は下側に繋がっていることが確認できた。ううう。

・機銃付け根のドラム状の防盾は、クビンカの実車ではキットのようにむき出しなのだが、広東軍の実車は左右にカバー部がある(下の動画参照)。完成させてから気付いたので、いまさら改修する気にはなれない。

●とにかく鮮明な実車写真が乏しい車輌で(製作途中で、細部が異なる後期型に関しては新資料が出版されたが)、あれこれ判断に迷ったことも多かった。

……のだが、今さら! Youtubeで、まさにこの広東軍車輌が縦横に走り回る動画を見つけた。製作中にしばし悩んだ前照灯コード部分も写っている。というよりも、前照灯コードに関してT.Wongさんが送ってくれた画像が、同じ動画からのスチルだった。さすがだなあ……。


長めの動画だが、ビッカース水陸両用戦車が写っているのは、後半の34:43あたりから。

ちなみに、最初から中央政府軍が輸入した後期型の動画はこちら。

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ビッカース水陸両用戦車、参戦(12)

●締め切り間近の「軽戦車コンペ」(K-CON)。CAMsのビッカース水陸両用戦車(Vickers Carden-Loyd Amphibious Tank A4E12 Early Production)、いよいよウェザリングに入る。

●目指すところとしては、

  • 独特の4色迷彩は極力ぼかすことなく鮮やかに残したい。
  • とはいえ、ハデハデなままではなく、それなりに4色が馴染んだ落ち着いた状態にしたい。
  • 一方で表面ディテールは浮き立たせ、外形や細部が見て取りやすい状態にしたい。

という感じなのだが、かといって、そんな目標に向かって的確に進むことができる腕があるわけではない。塗装の仕上げの経験が圧倒的に不足しているし、ウォッシング/墨入れ用の油彩も、ホルベインのローアンバーしか見つからなかった(あと何色か、茶系の色を買ってこよう……)。

まずは数日、デカール乾燥の期間をじっくり置いて、それからウォッシングかな、などと思っていたのだが、デカールと関係のない足回りでウォッシングを始めておこうと思って手を付けたら、勢いで車輌全体に施してしまった(もちろん、念のためデカール部分にはじゃぶじゃぶ掛けたりしていない)。

F1011466 車体裏で実験した段階では、ファレホ上もタミヤエナメル上もウォッシングで剥げたりしなかったのだが、車体下部で一部、黒線が落ちた。どうも、ファレホ上でのタミヤエナメルの定着が弱い部分があるらしい。M.Nさんの勧め通り、一回コートしてからウォッシングすべきだったかも。

とはいえ、ボロボロ剥げるというわけでもないし、すでに始めてしまっているので、あまりゴシゴシこすらないようにして作業。その後、タミヤのウェザリングマスターで凸部を若干強調する。

どうも上記の目的を達成するというよりも、単に薄汚くなっているだけのような。まったく同じような感想を、me20さんもご自分のルノーUEのウェザリング作業中に書いていたが、もちろんレベルが全然違う(笑)。

もっとも、作業中は「うわー。下手くそだなあ。アカンなあ」とひしひし実感しながら塗っていたのだが、一晩経って見直すと、「まあ、こんなもんかもしれないな」と思うあたり、我ながら妥協点が低い。

 (ちなみに、me20さんのルノーUEは一足先に完成。ブログでも完成披露された。こちらはさすがに素晴らしい)

●あと10日ほどで締め切りだが、ウェザリングをもうちょっと足したり引いたりしつつ、細部塗装を加える予定。

 

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ビッカース水陸両用戦車、参戦(11)

「軽戦車コンペ」(K-CON)参加作品、CAMsのビッカース水陸両用戦車(Vickers Carden-Loyd Amphibious Tank A4E12 Early Production)の製作記、マーキング編。

●まず、キットの塗装とマーキング指示には、3種類が取り上げられている。塗装そのものはすべて同じ迷彩で、マーキングのみが異なる。

(1).第八路軍、戦車中隊、広州 1933年

 車体左右(左は工具箱、右はフロート側面)に番号(白数字)。第1小隊から第2小隊までが続き番号で、第1小隊が1~6番、第2小隊が7~12番。

Vickersnumber (2).第12集団軍、戦車中隊、増城 1938年

 塗装例(1)と同じ場所に車番だが、3桁数字になる。第1小隊が101~106、第2小隊が201~206。右はネットで拾った写真からの切り出し引用。

(3).陸軍機械化学校教練車 洪江 1940年

 マーキング無し。

F1011328キットには、マーキング例(1)と(2)に共通で使うものとして、白数字の小さなデカールシートが付属している。

●「第八路軍」というと、まず想起されるのが、抗日戦争中、体裁上は国民党軍編成化に組み入れられていた時期の共産党軍(紅軍)なのだが、紅軍が八路軍の名称になるのは1937年8月のことで、上の塗装指示の年次とは合わない。

これについては説明書に但し書きがあって、ここでいう第八路軍とは、「鉄軍」とも呼ばれた粤軍(広東軍)第四軍が1927年に再編されて成立したもので、1936年5月まで存続していたらしい。要するに、八路軍という名前が紅軍に割り当てられる以前の、前代の八路軍ということになる。

つまり、マーキング例(1)は広東省政府(この時代は省政府委員会?)がビッカース水陸両用戦車を輸入した当初のもの、(2).は日中本格開戦後、(3).は生き残った車輌が引っ込められて訓練用車として余生を送っている状態、ということになる。

好みの問題として開戦後の状態としたいので、(2)を選択。ちなみに、私があちこちから漁ってきた写真のなかで、マーキング例(2)に該当するものとはっきり判るのは2枚で、片方は上に載せた201号車、もう片方はちょっと読みづらいが、おそらく105号車。もちろん、これらの写真の車輌と迷彩の配色を合わせるようなことはしていないので、車番はこれ以外から選ぶことになる。

F1011334 ●キットのデカールを切り出そうとして、初めて上下段の数字の大きさが違うことに気が付いた(気付くのが遅過ぎ)。フロートの上下幅よりも、工具箱(フタを除く本体)のほうがわずかに幅が大きいので、右側用と左側用とで大きさを変えてあるらしい。うっかり気付かずに混ぜてしまうところだった。

Vickersnumber02 ところが、左側から貼ってみると、どうも実際のイメージに比べて数字が大きい。現存写真の「105号車(?)」は左側面が写っているが、上のデカール写真に一緒に写っている塗装図程度に、ほんの少し上下に余裕がある。どうやら、両側ともに小さいほうの数字のデカールを使ってちょうどいいくらいのようだ。

デカールシートには、大小それぞれ、1~0までの十種の数字があって、1と2だけは2つずつ入っている。つまり、塗装例(1)の場合は、1号車、2号車ならキット付属のデカールで(小数字だけを使って)間に合わせることができる。塗装例(2)の場合、「102」か「201」にするにしても、どうしても2桁目の0が片側分不足する。なお、前述のように「201」号車は現存写真があるので、塗装パターン的にこれは避けたい。

●と、こんな経緯で、都合よく使える代替品探しを考えたのだが、インレタ探しがいきなり頓挫したのは先に書いた通り

F1011403 ●さすがに手書きはハードルが高いし、6や9を切り刻んで0をひとつでっちあげるか(それはそれでものすごく面倒くさそう)、あるいは塗装例(1)で妥協するか、等々考えている時に、me20さんから救いの手が。サイズ的にほぼぴったり同じで、書体もそれなりに似通ったデカールを提供していただけることになったのだった(RCRのものというから、イタリア戦車用なのではないかと思う)。

そんなわけで頂いたのが、右写真の右下側のもの。キットのデカールに比べると太めで、よく見るとステンシルになっている。やや白が黄ばんでいるが、車体裏側を実験場にして試しに貼ってみたところ、並べて貼っても色的にはそう違和感はない感じなのが確認できた。

●というわけで、me20さんから頂いたデカールも混ぜて貼ってみたのが右。全面的にme20さんのデカールに頼ると字体的に違いが目立つのと、せっかくキットのデカールに2つ入っている数字は有効活用したいと思った等々の理由で、車番は「102号車」とした。ただし、

F1011454 ・2の数字の右下のはね上げは、実車写真と見比べると大きすぎるようだったのでわずかに切り詰めた。

・1の数字は、キットのデカールの字体は単純な棒状。実際、(1)のマーキング例の際はそんな書体に見えるのだが、(2)時代は頭と足の飾りが付いているように見えることから、ちょっと太いが、RCRのデカールをそのまま使った。貼った後で、「あ、真ん中から2つに切って詰めて貼ればよかったかも」と思ったが、まあ、失敗すると痛いので、あまり面倒なことはしなくてよかったのかもしれない。

・まんなかの0の数字は、片側はキットのデカールを使用し、写真の側は、RCRのデカールの内側両側を少し切って白の部分を細め、さらに貼った後で上下のステンシルの切れ目部分にタッチアップを施した。

こうしてみると、どうも各文字の軸が安定しておらず、若干ガタガタなのだが、いいんだよ! どうせ実車は手書きなんだし!(もちろん言い訳)

締め切り延長で余裕ができたなあ、なんて思っていたが、ハッと気づくともう約10日。せっぱつまってきた……。

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ビッカース水陸両用戦車、参戦(10)

「軽戦車コンペ」(K-CON)参加作品、CAMsのビッカース水陸両用戦車(Vickers Carden-Loyd Amphibious Tank A4E12 Early Production)の製作記。

前回からは

  • 機銃パーツを差し込んだら内部防盾両側の塗料がこすれてベロリと剥げた(前回の写真でよく見ると判る)ので、その部分をタッチアップした。
  • 排気管を塗って取り付けた(差し込んであるだけ)。
  • 車体前部の製造者銘板のエッチングパーツの塗装を剥がして真鍮の地を出した。

くらいしか進んでいないのだが、手に取って眺めているうち、履帯を履いた姿も久々に見たくなったので、ウェザリング前の記念撮影ということで。

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細部塗装に関していうと、前照灯は、ライト本体は全体が銀色だと思っていたのだが、改めてキットの説明書を見ると、銀色の塗装指示がない。

よくよく実車写真を見直しすと、後期型ではライト全体が銀色である例が多いようなのだが、初期型では(後期型でも一部は)迷彩色が掛かっているらしい、暗色に写っているものもある。ただし、初期型でも銀色らしい写真もあり、模型的にはアクセントになりそうな気もする(ただしオモチャっぽくなりそうな気もする)ので、どうするかちょっと悩み中。

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ビッカース水陸両用戦車、参戦(9)

「軽戦車コンペ」(K-CON)参加作品、CAMsのビッカース水陸両用戦車(Vickers Carden-Loyd Amphibious Tank A4E12 Early Production)の製作記の続き。

迷彩色の境目の黒線を描き入れた。

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使用塗料はタミヤエナメル。あまり真っ黒だとくっきりし過ぎるので、フラットブラックにバフを混ぜて少しグレーに振った。

もっと太さは均一に綺麗に描き込みたかったのだが、細かく見ると不揃いで、全体の雰囲気で何とか誤魔化せているかな、というところ。描き始めは慣れずにうまく引けず、終わり頃は集中力が途切れてきて、特に足回りで隠せる車体下部などは、あちこちヨレヨレ。スクリューや舵があって筆がうまく取回せない車体後面もだいぶいい加減な感じ。

線の平均の太さは、前回紹介したボービントンのビッカース軽戦車の塗り分け線に比べると太めだが、これは中国軍の水陸両用戦車の実車がそんな感じなのでOK。

F1011267 ●3/9追記。

転輪のゴム縁も塗った。ついでに別のものも塗っていたりする。こっちもそのうち完成させんといかんね。使用カラーは上の迷彩輪郭と同様にタミヤエナメルだが、少し茶系の色も混ぜた。といっても、パッと見には判らない程度。

なんだか久しぶりに転輪のゴムを塗ったような気がしたのだが、考えてみれば、昨年のイタレリコンのマウルティアで塗っている。といってもきっかり1年前なので、多作な人から見れば「そりゃ久しぶりだろう」だけれど。

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ビッカース水陸両用戦車、参戦(8)

「軽戦車コンペ」(K-CON)参加作品、CAMsのビッカース水陸両用戦車(Vickers Carden-Loyd Amphibious Tank A4E12 Early Production)の製作記の続き。

前回、全体にサーフェサーを吹いたが、いよいよ本格的に塗装に入る。最近、割と模型の組み立てはよくするようになったが、塗装まで漕ぎつけることはあまりない。というよりも、塗装直前までは行くのだが、塗装の経験値があまりに低いのでそこで足踏みしてしまって、ますます塗装が億劫になるという悪循環。

とはいえ、前回SUMICONでI号戦車BREDA型を投げ出しているし、締め切りも1か月伸びたし、流石に今回もリタイアというわけに行かないので頑張る。未完成で放り出したらT.Wongさんにも叱られそうだ。

●組立説明書によれば、中国で使用されたビッカース水陸両用戦車は、クリームイエロー、チェスナットブラウン、ネイビー・グレー、ダークグリーンの4色迷彩(+細い黒の縁取り)。これは現在私が作っている、広東軍が使った初期型も、最初から中央軍が入手した後期型も変わらず、また、6t戦車も同様の塗装であったらしい。

640pxtank_light_vickers_carden_loyd この塗色とパターンは、おそらくメーカー(ビッカース社)側で施された輸出仕様のもので、ポーランドが購入した6tも輸入当初は同様の塗装だったことが写真で確認できる。ただし、一般には三色迷彩とされることが多く、ボービントン戦車博物館に展示されているビッカース6t、およびビッカース軽戦車は美しく再塗装されているが、これもグレーを除く3色迷彩となっている。右はそのボービントンのビッカース軽戦車(クリエイティブ・コモンズ、WIKIMEDIA COMMONS経由で引用、著作者はSimon Q、出典は Tank Light, Vickers Carden Loyd, Model 1936

もっとも、20年前の“STEEL MASTERS”のビッカース6tの特集記事でもグレー含みの4色迷彩塗装図が出ていたから殊更新しい説というわけではなく、もともと、輸出時のオプションとして3色パターンと4色パターンがあったのかもしれない。

この件についてT.Wongさんにも訊ねたのだが、どうやら戦時中の目撃証言なども根拠にしているらしい。また、上海で鹵獲された6t戦車のクリアな写真でも、濃淡の差が4色ではないかと思わせるものもある。

●前回書いたように、グレー部分は横着をしてサーフェサーをそのまま活かそうかと思わないでもなかったのだが、やはりイメージより明るすぎる気がしたので、濃い目のグレーをエアブラシで重ね塗りした。使用色はタミヤ・アクリルの「呉海軍工廠グレー(日本海軍)」だが、たまたま手近なところにあって「まあ、こんなものかな」と思って使っただけなので、特に意味はない。

その他迷彩色については、いちいちマスキングして吹くことも考えたのだが、製作環境的にちょっとツライ(自室は気軽にエアブラシができるような環境ではない)し、塗り分けもくっきりしているので、筆塗りすることにした。

使用カラーについては、実はこれまで使ったことがないものを試そうと、先日横浜のVOLKSで「水性カラー アクリジョン」を仕入れてきたのだが、四一式山砲にちょっと塗ってみたところ、どうも隠蔽力は強くないし、伸びもよくない感じ。そこで改めて、これまた初めてのファレホを買ってきた。

TFマンリーコさんあたりが愛用しているのを見て、しかも筆塗りでほとんどむらも見えないふうに綺麗に塗れているので、一度は試してみたいと思いつつ、「ちょっと高いよなあ」と二の足を踏んでいたもの。

実際に使ってみると、隠蔽力は高いし、生乾きの上に返し筆をするなどものすごくいい加減な塗り方をしても塗装面が荒れたりもしないし、とにかく非常に楽。ああ、アクリジョンを試そうなんて思わずに最初からファレホを買うんだった!

横浜のVOLKSでは専用のシンナーが品切れで、代わりに「ブラシクリーナー」を勧められて買ってきたのだが、ネットで調べてみると、タミヤのアクリルなどに比べるとこれこそまさに水性塗料という感じで、水で希釈して塗っていたりする。もっとも水道水ではだめのようで、ドラッグストアで売っている精製水を使え、とある。というわけで逗子のセイジョーで500mlのボトルを買ってきた。税抜き価格95円。ぬう。これはお得だ。

●塗装のパターンに関しては、例えばoa.vz.30装甲車のように全車決まったパターンで塗られているなどということはなく、1輌ごとに割と適当であるらしい。まずはグレーの上に、鉛筆で適当にパターンのアウトラインを書き込んだ。

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迷彩色の塗り重ね、まずは1色目。70976バフ。

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2色目、70967オリーブグリーン。

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3色目、70984フラットブラウン。

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グレーは適当だが、その他の3色に関しては、ビン生で塗ったにもかかわらず、比較的ボービントンの車輌と近い色合いで塗れたので一安心。筆が入りにくい足回りや、スクリューや舵の付いた車体後面はちょっと面倒だった。

なお、塗り分けラインに関しては前述のようにおおよそ鉛筆で下書きをしたが、「どの部分に何色を塗る」というところまでは事前に決めず、適当に色を置いて行った。「四色問題」(あるいは四色定理)でよく知られるように、「どんな地図も4色あれば隣り合わないように塗ることができる」わけだが、さすがに適当に塗っているとそううまくはいかず、茶色まで塗ってから、一カ所、緑に「手戻り」した。

迷彩塗装に関しては、この後、黒の輪郭線を描き入れる必要があるが、その黒線が非常に細いのでうまく描けるかちょっと不安。

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ビッカース水陸両用戦車、参戦(7)

●年明け以来、すっかりサボっている感のある、ビッカース水陸両用戦車。感があるどころか、マジでサボってましたが。

さすがにこれを未完成にしてしまうと各方面から叱責を受けそうな気がする、というだけでなく、もちろん自分でも完成させたいので、おっかなびっくり(←?)塗装に入ることにする。

そうこうしている間に、この模型がエントリーしている週末模型親父さんのところの軽戦車コンペ(K-CON)は、締め切りが2月末から3月末へと1か月先送りになることが決まったようなのだが、そこでますますだらけるとそれこそ未完成になってしまいそうだし。

●最近の戦車模型の常識に反して、基本、これまで全体にサーフェサーを吹くという手順は踏んだことがないのだが、今回は砲塔下の垂直面など、比較的面積の大きいエッチングパーツもあるので、念のため、プライマーサーフェサーを吹くことにする。

大雑把に缶スプレーで済ます予定だが(先日、横浜のVOLKSで買ってきた。というか、横浜ビブレにVOLKSが入っているのを今まで知らなかった)、住環境上の理由で室内で吹けないので、玄関脇の塀の陰で作業できる、天気が穏やかな日待ち。なんというか、熟田津で船出を待っている額田王みたいな。

F1014565 塗装の便のため、分解できる足回りはばらしてランナーで作った台に挿して、右のような状態。飴細工屋の店先か、それとも奇抜なオーナメントふう。

最終的にはグリーン、タン、グレー、ブラウンの4色迷彩(に黒の縁取り付き)になるのだが、塗装面と色合いがあまり変でなkれば、グレー部分はサーフェサーをそのまま活かしてしまうかも。

●その一方で、ループに組んである履帯は別途、筆塗りでさっさと塗装してしまう。

下塗りとして、アクリルのフラットアースとジャーマングレーを適当に混ぜ合わせた色で全体を一度塗り、その上から、エナメルのメタリックグレイとハルレッドを混ぜた色をシャブシャブに溶いて塗った。

F1014560 塗装中、片方の履帯の接着が一カ所取れてしまったが、起動輪の歯に掛かる部分なので、最後の組み付け時についでに繋ぎ直す予定。

この後、接地面のリブや内側のガイドホーンにシルバーをドライブラシする。

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ビッカース水陸両用戦車、参戦(6)

「軽戦車コンペ」(K-CON)参加作品、CAMsのビッカース水陸両用戦車(Vickers Carden-Loyd Amphibious Tank A4E12 Early Production)の製作記の続き。

細部の工作を行って、とりあえず、組立は終了させた。

●前回からの進捗部分は、まずは前照灯と尾灯。

F1014025 前照灯はフロート上に付く。ビッカース製戦車に標準的に装備されている前照灯で、パーツはカバー付きのもの、カバー無しのものと両方入っているが、中国軍のビッカース水陸両用戦車の場合はカバー無しのほうを使う。

コードは何の工夫もなく単純にライトの後ろから出ている模様。しかしここで問題は、ライトのコードの車体への引き込み部が何処なのかがわからない!

数少ない写真をためつすがめつしてみても、どうも、「なんだかそのあたりに引き込まれている」程度のことしか読み取れない。困った。

キットはU字金具の直後、右の作例写真だとボルトが植えてあるが、その部分が凹モールドになっていて、もしかしたら、これがコードの引き込み部を表現していたのかも。ただし、クビンカの展示車両ではごく普通にボルトが植わっていて、車体にも他に穴が見当たらない。

とはいえ、付けてしまったコードは何とかしなければならないので、とりあえずフロートと車体の隙間に挟んでおいた。……なんていい加減な!

F1013983 ●尾灯はなんだか小さなランタンのような面白い形状。

これまた、コードが何処に繋がっているのか不明。まあ、だいたい写真で「こんな感じ?」と思える場所に適当に繋いだ。

●昨日も書いたように、秋葉原で「抗戦陸軍武備図誌」を見たときに、パラパラめくってあまりに写真が鮮明だったので、

「やったぜ! これでビッカース水陸両用戦車のディテールも解決だ!」

なんて思ったのだが、さすがにそこまで話はうまくできていなかった。

●後部ボギーのショックアブソーバー?……と言えばいいのだろうか、とにかく後部ボギーの振れ過ぎを抑えるスプリングのロッドも取り付けて、とりあえず、取り付けなければいけない部品は全部付けて、工作終了。

もう一度足回りを仮組みして記念撮影した。

F1013980 F1013982 F1013978

年が明けてから塗装に入る予定。

●追記。

T.Wongさんから、前照灯のコードの接続位置について、証拠写真付きで指導のメールをいただいた。重ね重ね、どうもありがとうございます!

やはり、元から車体パーツにモールドしてあった窪みがコード引き込み部を表していたらしい。

もっとも、車体に穴があって直接コードが引き込まれているのか、それとも何か接続部が飛び出していて、そこにコードが繋がっているのかは、頂いた写真からもよくわからない。まあ、そこであまり引っかかっても何なので、単純に前者の解釈でコードを繋ぎ直した。

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ビッカース水陸両用戦車、参戦(5)

「軽戦車コンペ」(K-CON)参加作品、CAMsのビッカース水陸両用戦車(Vickers Carden-Loyd Amphibious Tank A4E12 Early Production)の製作記の続き。

F1013957 F1013949 ●両サイドのフロートの取り付け。

(実物は)左右3カ所ずつの支持架を介して車体に取り付けるようになっていて、キットでは支持架はエッチングで表現されている。

それ自体は精度もよく、位置決め用ダボもあるので、それほどストレスなくぴったり決まるのだが、車体側、フロート側それぞれ2つずつのボルトを、極小のエッチングパーツで付けろという「いったいこれは何の修行?」みたいな組立指示がなされている。

さすがに手に負えない気がしたので、垂直面(車体側)は、例によってタミヤ48のマーダーIIIの床板から削いできた平頭リベットを接着。それでも数カ所は歪んでついてしまって、削ってやり直したので、数がピッタリしかないエッチングのリベットで成功できた気はしない(もちろんエッチングの場合は瞬着で汚れても、火であぶるなりすれば再利用可能だが)。

水平面(フロート裏側)に関してはどうせひっくり返さなければ見えないので放置の方針に傾き中。

F1013954●エンジンデッキ上の通風孔は、以前に書いた通り、ダクト部を薄く削った結果、付属のエッチングのフラップが使えなくなってしまった。

0.3mmプラバンで新調したが、クビンカの実車を見ると、可動のための軸部らしきものがあるようなので、伸ばしランナーで追加した。

写っているのでついでに説明すると、この戦車唯一の車外装備品である左フロート上の工具箱は、両脇にエッチングの取っ手+クランプが付く。T.Wongさんによれば、このフタは蝶番などはなく、クランプを外すとそのままフタが外れるようにできているそうだ。

砲塔の左後ろ側にある蛇口のようなものは、おそらく車内に入った水を汲み出すためのビルジポンプの排出口。

F1013952 F1013965 ●その他細かいエッチング工作。

車体前端の波切板と車体の接続部は、細かい蝶番を表現するベースと、平頭リベット(ボルト)の表現された表側の帯金と、計4枚を貼り重ねる構成。ピッタリと付けるにはちょっと苦心する。

SUMICON掲示板でme20さんに「あちこちプラ材に置き換えたい衝動に」と言われたが、実際、平頭のボルト頭もちょっと薄い感じがするし(平頭なのは合っているが)、プラバン+マスタークラブなどで作り替えるのもありかも。

帯金の後ろ側の小さな四角はビッカース社の銘板(のはず)。フロート内側にこれまた極小のエッチングパーツが付く。

排気管の前には謎の金具が付く。説明書ではエッチングパーツP3を折り曲げて貼るよう指示されているだけだが、中心に三角の板(P4)を立てるもののようだ。

この際、そのままだとP3は直角に曲げる――つまり、接着位置の車体上面板に対し垂直に立ち上がることになるが、実際には、もう少し「地面から直角」に近い(完全にではない)ようだ。そのため、C4の短い辺を若干削り込んだ。

さて、そもそもこのパーツは何なんだろうと思ったのだが、開けた操縦手ハッチが排気管に激突しないようにするストッパーなのではないだろうか、というのが現時点での私の想像。

実はこのあたり、T.Wongさんにメールで問い合わせて答を頂いているのだが、私の拙い英語だと、どうもその内容がちゃんと掴めているのかどうか心もとない。T.Wongさん曰く、日本軍が鹵獲した204号車ではホーンが付いていて(現存写真で確認可能。ホーンはキットにも不要パーツ扱いで付いている。部品番号B18とB19)、上記パーツはホーンの台座にもなっているらしい。ただし、204号車では、その装着位置はもっと前にある。

Cap ●エンジンデッキ上には、燃料注入口と思われる、丸いパッチが2カ所にある(両方とも燃料注入口なのか、片方は潤滑油なのかは不明)。

この注入口は、周囲にゴムシーリングか何かがあって、フタをがっちり締め付けて防水する構造らしく、それぞれ周囲4カ所で蝶ネジで止めるようになっている。右が実車写真で、TRACK-LINKの掲示板で、T.Wongさんが説明に使っていた画像から切り出し引用させてもらった。もとは英軍もしくはビッカース社の記録写真ではないかと思う。

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さて、この蝶ネジがまた、「ご無体な……」と言いたくなる大きさのエッチングパーツで付属している(右写真の左側)。どうすればうまく取り付けられるかも悩む。web上で海外のレビューや製作記事を見ても、この蝶ネジパーツをちゃんと付けている例を見たことがないので、皆諦めてしまっているのではないかと思う。

もうちょっと作業性のよいパーツはないものかと、ドラゴンのパンターに付属している蝶ネジパーツ(小)を出して来てみたが(写真右側のグレーのパーツ)、これはだいぶ大きさが違う。

ちょっと考えてみた末に、エッチングパーツのゲート部分を細く削って、ある程度の長さを「脚」としてパーツ側に残して切断。車体側は取り付け指示の凹部にドリルで穴を開けて、そこにパーツの脚を差し込んで位置決めをすることにした。

F1013970とりあえず一つだけ作業してみたが、もしピンセットで弾き飛ばしたらほぼ絶対に見つからない大きさだし(しかもピッタリの数しか入っていないし)、その一つだけでかなり(主に精神的に)消耗した。取り付けた結果が右写真だが、しかし、これを実車写真と見比べると、どうもフタに比べて蝶ネジが小さい感じがする。実車写真では、蝶ネジの高さとフタの高さがほぼ同じレベルだが、キットのパーツはだいぶ低め。

そんなわけで、一度は「面接落ち」したドラゴンのパンターの蝶ネジに再登場してもらった。

F1013961これはこれで、逆にちょっと大きめで、回転させると羽の部分がフタの凸部と干渉しそう。拡大すると羽の厚みもちょっと気になる。とはいえ、キットのエッチングパーツよりは上の実車写真に近い感じだし、何しろプラパーツなので作業性もよい(ただし、8つ取り付ける間に1つ紛失した)。

作業結果が右写真。……なにしろこれでも部品が微小すぎるので切り出し時にゲート処理がうまくできていないし、接着時に若干溶けるので、こうして拡大写真にするとあまり綺麗ではないですな。

ブロンコやカステンのインジェクション別売の蝶ネジパーツが使えるかどうかは、手元にパーツがないので未確認。誰かお持ちの方、大きさを教えてください。

●追記。

上記、「ブロンコやカステンの別売の蝶ネジパーツ」に関して、早速、SUMICON掲示板で、me20さん、OTOSHIさんから写真付きで情報を頂いた。持つべきものは模型友だー。

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まずはブロンコのもの。連合軍用(左)とドイツ軍用(右)の2種類が出ている。

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こちらがカステンのもの。

大きさとしてはどれも私が使ったドラゴンのパンター付属の小さいほうとほとんど変わりなく、一応、「若干大き目」くらいの感じで、キットパーツの代替品として使うことは可能ではないかと思う。

パッと見た感じでは、カステンのものが羽の下の切れ上がりの角度が大きいように見え、ビッカース水陸両用に使うにはキャップのでっぱりとの干渉が少なそうだが、一方で、ブロンコのものは脚が長くモールドされているので、作業性ではだいぶこちらに分がある。

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ビッカース水陸両用戦車、参戦(4)

●パソコンも買い換えたし、週末のAFVの会にロールス・ロイス装甲車を持って行きたいし、などなどあって、「軽戦車コンペ」(K-CON)参加作品、CAMsのビッカース水陸両用戦車はペースダウン中。

とはいえ、一応履帯は両方繋いだので、また全体を仮組みして記念撮影した。ううむ。なかなか格好いいじゃないかキミ(手前味噌)。

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●履帯のほか、わずかながら進めた工作は、

▼排気管に穴(というかスリット)を開けた。

▼唯一の車外装備品である左フロート上の工具箱を接着。上面のフロート取付金具の上に乗る形になるが、そのままだと金具のモールドが若干強調してあるせいで、箱がちょっと浮き上がり気味になる(上、一枚目の写真は仮置き時のものなので隙間が開いている)。実際は隙間はごくわずかなので、金具のボルトモールドを削り落とした。

▼車体前端、波切り板の取付金具を工作中。この部分のエッチングパーツは妙に凝っていて、(平板だが)蝶番表現のあるベースを車体側、波切り板側両方に取り付け、その上からまたボルト表現のある帯金を重ねて貼る。

車体側は取り付け位置にボルト列がモールドされていて(波切り板を付けない場合のことを考えているのだと思う)、エッチングのベース板にはそれに対応して穴が開いている。

波切り板側のベースパーツにも2ヵ所の穴があって、波切り板のプラパーツ(C3)にもそれに対応しているらしい凸があるのだが、位置が合わない。

▼車体全部上面のU字金具(A26)の直後に、部品取り付け穴のような凹がある。前照灯のコードの引き込み穴?とも思ったのだが、それにしては穴が大きすぎるので、とりあえず埋めた。

F1013886●おおよそ形になったところで、もう一度実車の話を。

この戦車、右写真で判るように、砲塔も操縦席も左寄りに付いている。一方、排気管が車体中ほどの右端から出ているが、エンジンはこの下、車体右側にあって、要するに、その重量バランスを砲塔と人員で取っていることになる。

試作車ではそのバランスの取り方がうまくいかなかったらしく、左足回りのサスボギー外側に、ガーダービーム形式にバラスト(おもり)を取り付けている。浮くためにとことん軽く作ったために、無理をすると車体がゆがみかねないという逸話もトホホ感が漂うが、そこに今度はバラストを付けるというのがまた何とも。

実際に、試作車の走行/航行シーンを撮った、おそらくVickers社製のプロモーション・フィルムが残っていて、「Tanks Swim Now !」と誇らしげなタイトルが付いているのだが、実際の航行はかなりアップアップな感じで、進むたびにどんどん車体後部が沈んでいっているようにも見える。もうちょっと川幅が広かったら水没しているんじゃなかろうか。危ねえなあ(笑)。ちなみに、動画の20秒前後のところで、足回りのバラストが確認できる。

その後の改良でどうにかなったらしく、生産車ではバラストがなくなっている。先の動画の試作車を見ると、どうも生産車よりも(主に前後方向に)小さいような気もするので、車体を拡大して浮力を稼ぐとともに、内部の機器の配置をいじって対処したのではないかと思う。

それにしても、砲塔(武装)と乗員でエンジンと釣り合いを取るというのもちょっと不安を感じる設計な気がする。乗員の体格によっては、2人分で結構差が出てしまいそうだし、弾薬を消費すると、それもまたバランスに影響しそうだ(あるいは弾薬庫は車体中心線近くにあるのだろうか)。

そもそも、車体後半はかなり薄く切れ上がっているので、エンジンは前後方向で見ると車体中央近くに搭載されているはず。つまり戦闘室の真横にあるはずなので、排熱で居住性もかなり悪そうだ。

後部車内は燃料タンク等になっているのだと思う。上の3枚目写真で、車体後部上面にある2つのキャップの配置が判る。両方とも燃料注入口なのか、あるいは片方はオイル用かもしれない。CAMsのキットで気づかされたが、2つのキャップは蝶番などではなく、3つの蝶ネジで締め付けるようになっている。おそらくゴムシールなどが付いていて、水密性を高めているのだと思う。もしかしたら、燃料を使って重量バランスの微調整が出来るようになっているのかもしれないが……うーん。そんな高級そうな装備が付いてるかなあ。

●上写真でも判るように、この車輌は、車体後部中央にダクト上に上方に延長した開口部(吸気口?)がひとつ、あとは操縦手ハッチと砲塔ハッチがあるだけで、他に開口部やハッチはない。

おそらく、エンジンのオーバーホールなど行う場合には、上面装甲板の周囲にびっしりあるボルトをいちいち全部外して、砲塔だの何だのひっくるめて外さないといけないのだとおもう。うわっ、面倒くせえ。

(おそらく)世界初の水上航行ができる水陸両用戦車という興味深い存在でありながら、ほとんど売れなかったのはそのあたりに問題がありそうだ。

いやまあ、そういうトホホなところが模型的には逆に面白いのだけれど(注:個人差があります。me20さんみたいな但し書き……)。

●CAMsのT.Wongさんからメールで、いよいよ中華民国国民党の中央軍が購入した後期型は発売される旨、案内をいただいた。

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基本、今私が作っている前期型とは砲塔上面とハッチが違うだけ、先に発売されたオランダ東インド軍仕様とはデカールが違うだけ、ではないかと思う。……でも「龍」のマークは格好いいなあ。

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