ポーランドのペーパークラフト
●ポーランドは(どういう理由でか)ペーパークラフトが盛んで、ミリタリー物も含めて多種のペーパークラフトのキットが出版されている。
有名どころではGPMというメーカー(出版社?)があって、ここは大戦物のポーランド軍車両なども多く出している。私もタトラT18装甲トロッコと、装甲列車編成に含まれるルノーFT搭載貨車を持っている。……が、もったいなくてハサミは入れていない。
ちなみにGPMの陸物は、基本1:25。プラモデル畑の人間から見ると半端なスケールだが、これはやはり、紙のパーツを切ったり折ったりするにあたっては、ある程度の大きさがあったほうがやりやすいから、という理由もありそう。
●と、今回紹介したいメインは上ではなく。
先日、ネット上でふらふらしていて、ポーランドのペーパークラフト・マニアが自作のペーパークラフトのキットを無償公開しているサイトに行きついた。
「Exclusive Models」というサイトで、現在は17作品が公開されている。
ラインナップは大戦中の陸物のみ。ティーガーなどの"有名どころ"も混じっているが、割合的には自国ポーランド物が半数近くを占めている。とりあえず現時点でのラインナップを(新しい順に)並べてみる。最初の作品の公開日は2007年2月、最新は2021年5月。
#017 TK-S(機銃型)
#016 PZInż. 303
#015 ACV ドチェスター
#014 4TP
#013 ウルススA型トラック
#012 PzKpfw VI Ausf.H1 ティーガーI型
#011 SU-85
#010 ウィリス・ジープ
#009 wz.34装甲車
#008 PZInż. 222
#007 SU-122
#006 クロムウェルMk. VI
#005 Sd.Kfz.251/1 Ausf.C
#004 駆逐戦車 IV/70
#003 ポルスキ・フィアット 614
#002 SdKfz 173 ヤクトパンター
#001 7TP
ペーパークラフトの市販のキットには、上のGPMのもののように、塗装やマーキングも再現された状態でパーツが展開されているものが多いが、「Exclusive Models」のキットは、すべて白地図ならぬ「白キット」。
珍しいのは、(最新のTKSを除いて)1:72というペーパークラフトでは珍しいミニスケールであることと、しかも小さいくせに、妙に部品構成が細かく複雑で凝っていること。
初期の作品はまだまだ「いかにもペーパークラフト」な形状の簡略化が目立っていたが、最近のものになるにつれてだんだんと複雑化。
そもそもペーパークラフトというのは、基本的に紙を折ったり曲げたりで立体を出していくのが普通だが(貼り合わせることで厚み/強度を出すことはある)、この「Exclusive Models」の場合は、一部パーツに厚みの指定があったり(1mm厚とか0.5mm厚とか)、さらには単純に厚みだけではなく、端部分をなだらかに丸くするとか、断面形をしているものもある。どうやら、厚みのある紙素材を押しつぶしてそういう断面形に仕上げろということらしい。
そのあたり、ずいぶん通常のペーパークラフトの「作法」と違っていて独自性が高いが、最新の数作を除いては、説明がポーランド語のみ。しかも組立手順は(割と古いペーパークラフトで見られる)平面図にパーツ番号が指示されているだけのものだったりするので、作り方の細かい部分がどうもはっきりしない。
また、(それぞれ太さが指定されている)金属線で作るよう指示されているパーツも結構ある(金属線等の使用はGPMのキットなどでも見られるが、それよりだいぶ割合が多い気がする)。
うーん。なんだか試行錯誤を重ねないと、この“メーカー”のペーパークラフトは、私には組み立てきれない気がする。
●下写真は、最新キットであるTKS(機銃装備型)。これだけはスケールがアップして1:48。なお、我が家のプリンタのカラーインクが切れかけていたので、多色刷りページの印刷がちょっと汚い(キットそのものは、上記のようにモノクロなので関係ない)。
もちろん、実車がミニサイズのタンケッテなので、48とはいっても大戦後半の戦車の72クラスの大きさしかないが、「Exclusive Models」にとってはこれまでにない大スケール(?)ということもあって、一層気合が入っている。
キットはPDFでA4版7ページあるが、パーツそれ自体は1ページ+1/3程度。もっともそれは車輛(=パーツ)が小さいせいで、パーツの細密度はかなり高い。
だいたい、このスケールのペーパークラフトなら、履帯は1枚のベルト式か、せいぜい裏表張り合わせになりそうなものだが、このキットでは裏側は折りを入れて複列のガイドホーンを表現、さらに表側は細かい接地リブ部分を一つ一つ貼っていけ(!)という、なかなか病的な指示が。ちなみに、上右写真の右下あたり、黒く四角く写っているのが接地リブパーツ。一つのパーツの大きさは、0.3mm×3mm程度。うげー。
7ページもあるくせにパーツが1+1/3ページなのは、同社(?)で初めて、組立説明がステップ・バイ・ステップ形式で図示されているため。これに約3ページが費やされている。
なお、上のシリーズ概略で「一部パーツに厚みの指定があったり(1mm厚とか0.5mm厚とか)」と書いたように、このキットでも車体の内部構造材は1mm厚、フェンダーは0.5m厚などの指定がある。その他の基本パーツの厚みはどうなのよ?というのが疑問だったのだが、よくよく印刷結果を眺めまわしていたら、ページの隅に書かれていた(右写真)。
重さ指定なので紙質によっても若干違いが出てきそうだが、おおよそ、0.09~0.1mm程度。通常ペーパークラフトの印刷で推奨される厚紙よりは薄手だが、普通のOA用紙よりは厚手……な感じ?
そもそも0.5mmとか1mmとかの指定のパーツはどうしたらいいんだろう? 厚紙を貼り合わせる?
まあ、そんなこんなで、「フリーのペーパークラフト!? いいね! すぐ作ろう!!」という感じにはならない。……でも、いつか作ってみたい気はする。
最近のコメント