「る・ろぉん」の続き
●相変わらず、あっちをいじったり、こっちをいじったり、いじらなかったり、の模型製作ライフ。
そんなうちのひとつ、ハセガワ製ル・ローン(キット名称「ル・ローヌ110馬力エンジン(ドイツバージョン オーバーウルゼルUr.II)」が、一応、エンジンらしい形になってきたので、これについて書くことにする。以前の作業についてはこちら。
前回記事以降の進捗点(第一段階)は、おおよそ次のような感じ。
・継ぎ目を消したシリンダーにシリンダーヘッドと、さらにその上のロッカーアーム関連部品を接着。
・各シリンダーをクランクケースに接着。後々の塗装で、クランクケースとシリンダーの色調をちょっと変えたい、というようなことを考えると、ここで接着するより塗ってから着けたいところなのだが、そうなると、インテイクパイプの擦り合わせができないので仕方なく。
・インテイクパイプの整形。結構微妙なカープを描いているパイプに、がっつり入っているパーティングラインと押し出しピン痕を消す。押し出しピン痕はずいぶん昔に埋めるだけはしてあったので、今回は削るだけ。なお、実物はたぶん薄板を丸めてパイプにしているのではと思うが、その場合どこかに接合線があるはず。しかし、現存の実物の写真を見てもどこにあるのかわからないので、とりあえずはそのまま。
写真は、上記工作段階のエンジンを後ろ側から見たところ。ル・ローンの見た目上の大きな特徴であるインテイクパイプは、80馬力のル・ローン9Cまではクランクケースの前側から出るが、110馬力の9Jでは、写真のように後ろ側から出る。なお、写真ではインテイクパイプが5本だけ取り付けてあるが、これは仮組で、この段階では接着していない。
もうここまで来ると、「部分ごとに塗り分けてから組み上げる」ことなど考えずに、全て組み上げてしまって、あとから筆が届く限りでアクセント的に塗り分けたり、スミイレ等々で誤魔化したりというふうにしたほうがいいかなあ、などとも思ったりする(昨今のタミヤのキットのようにパチピタでもないので)。
●ここまで作っての感想は、
「良くも悪くもハセガワのキットだなあ」
というもの。
古いキット(発売は1980年代?)なので部品の精度等も「それなり」。もちろんハセガワ製/日本製のキットとしてある程度の水準には達しているので、「合わない/組めない」という個所はなく、組立説明書に従って部品を付けていけば、製品写真通りにきちんと仕上がってくれる(はず)。
ただしその一方で、(ハセガワのキットにありがちだが)「きっちりと実物のスケールモデルとして、ディテールを再現しよう」という気合のようなものはあまり感じられない。
気付いた差異などを以下に羅列。
各シリンダーのフィンの数は、実物(キットになっているドイツ型のオーバーウーゼルUr.IIも、オリジナルのル・ローン9Jも)は恐らく32枚だが、キットは25枚。細かいフィンなので、「正確に数が合ってないとイヤ!」とは言わないが、やはり約2割も違うとちょっと間引き感はあるかも。もちろん、こういう細かく薄い彫刻が金型代に直結するので略したい、というのも判るけれども(もっともハセガワの場合、金型代節約のために略したいというより、単純に「適当にそれらしくフィンを重ねときゃいいや」だった可能性もありそうな気がする)。
シリンダーが、実物に比べて細め。シリンダーの外側2/3のフィンの径は、実物ではクランクケースへの接続部より太いのだが、キットでは同径くらいになっている。その結果クランクケースよりもシリンダー部分がボリューム不足に感じる。ただし、インテイクパイプが付くとシリンダー間が若干埋まるので、ボリューム不足感は緩和されるかも。
クランクケース外周部のディテールが違う。実物ではシリンダーとシリンダーの間部分には半月型の窪みが設けられているのだが、キットでは直線的な段差になっている。シリンダーの根元のディテールも不足。実際は、シリンダー根元のリング外周には、締付用?の刻みがある。
プッシュロッドは切り揃えられた金属棒のパーツが付属しているが、実物よりやや太目。しかも、シリンダー上部のロッカーアームへの接続部には、実物にはないごついジョイント部品(A8)が付く。このジョイントは、実物の何かを再現しようというものではなく、単純に金属棒をプラパーツに繋げるためだけの目的で入っているらしい。
型抜きのためのパーツのテーパーがややきつめで、そのため、特に後面の補器類の形状がいびつになっていたりする。また、割と目立つ場所に押し出しピン痕があることも多い。
クランクケース後面には、中心軸を取り巻くように大きなギアパーツがあり(上写真中央部)、これが、本来なら補器類に繋がる小ギア(右写真)に噛み合うようになっているらしいのだが、キットには、その小ギアの部品はあるものの、大ギアとは間隔を設けて噛み合わないようになっている。たぶん、噛み合うようにすると可動にしなければならなくなるのを避けたのだと思う。ただし、ここは組んでしまえばほとんど見えない。
それ以外にも、細部ディテールの際現に関しては、随所に「まあ、適当にそれらしくやっときゃいいかな」感がある。
……などなど。そんなわけで、一応、キットはル・ローン(のドイツ版ライセンス生産型)と銘打っているのだが、全体的にパチモンくさいというか、「“ル・ローン(Le Rhône)”じゃなくて、“る・ろぉん”かな?」みたいなイメージ。
●もちろん、「それらしく」は出来ているし、あまり厳しいことを言うと、「それじゃ、プラバンを丸く切り出してシリンダーから全部自分で作れ」なんて話になってしまう。
それでは身も蓋もないし、当然ながら私自身にそんな気力もない。一方で、「じゃあ、まるっきりストレートで作って、塗装でそれらしく」というのも面白くない(私自身に塗装で凝る技量もない)ので、いつもながらの「まあ、キットの素性を活かしながら、『ちょっとだけ手を入れてみましたよ』という形跡だけ残す」というアプローチで行くことにする。
それにしても、「キットの素性を活かす」って便利な言葉だな……。
まず、上にも書いた「シリンダー根元のリング外周に、締付用?の刻みがある」点は、シリンダーをクランクケースに着けてしまってから気付いたのだが、割と「手を加えた感」が出るところのように感じたので、TFマンリーコさん直伝の“秘技エナメルシンナー剥がし”でシリンダーをもぎ取り、付け根に追加工作した。
0.3mmプラバンで帯材を作り、それを細切れにして貼り付けることで刻み目を作成。刻み目の数は、限られた資料写真からはちょっと読み取りづらかったのだが、とりあえず7つと判断した(正解かどうかはちょっと不確か)。
プッシュロッドは、キット付属の金属棒は使わないことにし、プラストラクトのプラ棒(0.9mm径)で代用。ロッカーアームのリンクに直付けした。
というところが、現状工作第二段階。
なお、キットは実物通り、基部と独立してエンジン本体は回転できるようになっている。仮付けして、ぶんぶん回してみた。
今回は以上。
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