製作記・レビュー

戦うプーさん/「クブシュ」Mirage HOBBY 1:35(5)

●Mirage HOBBY 1:35、ポーランド国内軍の簡易装甲車「クブシュ」(”KUBUŚ” - Improwizowany Samochód Pancerny, Powstanie Warszawskie, Siespień 1944)の製作記。相変わらず、じわじわとしか進んでいない。

改めてチェックしてみたら、8月10日は「本物のクブシュの製作がスタートした記念日」だった。いや、だからどうしたって……。

●若干の考証。

そもそも当初は、「なにしろ博物館に実車があるんだから、どれだけネット上で写真が集められるかという問題はあるにしろ、粛々とそのディテールを反映させていけばいい……」などと思っていたのだが、いざ本腰を入れてチェックしていくと、どうもそれでは済まないということがはっきりしてきた。

最初に「えっ?」と思ったきっかけは、キットの説明書の片隅に書かれた一文。

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車体前面スカート・パーツに対する但し書きで、「戦時中の仕様にするなら、先端のトンガリは削り取ってね」くらいの意味だと思う。右写真がキットパーツと、問題の「トンガリ(bevel)」(矢印)。ここは戦時中の写真では不鮮明で、はっきりと確認しづらく、この但し書きがなかったら、そのまま現状を再現していたかも。

これまでにも数度振れているように、他にも、現存実車ではその後のレストアの結果、戦時中の仕様と異なってしまっている箇所があるようだ。ややこしいのは、その「戦時中」にも変化があることで、実車に何がしかの「いじったあと」があったとして、それが、戦後のレストアによるものなのか、それとも初回作戦と第二回作戦の間に施された改修なのか判別しづらい場合もある。やれやれ。

●以上は前振りとして、今回の進捗その1。エンジンボンネット部分のハッチを付けた。

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どういう理由があるのか、ボンネットハッチは左右非対称で、右側ハッチは前方に長方形の継ぎ足しがあって長い(左側は、この継ぎ足しに相当する部分は車体側固定部となっている。

左右ハッチの継ぎ目には、右側ハッチに固定された、合わせ目にかぶせる縁材がある(専門用語で「定規縁(じょうぎぶち)」と言うらしい)。これは、現存実車では確かに付いているのだが、戦時中の実車に付いていたかどうかは、手元に集めた写真からは判断できなかった。ただし、戦後に講演で放置されてサビサビになっている時期の写真では確認できるので、戦時中にもあったと判断して追加した。なお、現存実車の真っ直ぐ前からの写真で見ると、取付具合はもっとヨレヨレのようで、その辺はきちんと再現し尽くせていない。

工作前段階でちょっと悩んだのがヒンジの処理。この部分は、現存実車でよく見ると、現時点でのヒンジの内側に溶接痕が確認でき、要するに、一度付けたヒンジを外側に移動させているらしい。

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上は比較検証用に、ともにwikimedia commonsの写真から切り出したもの。左がMWPの現存実車で、現在のヒンジ内側に、旧ヒンジ跡であろう溶接痕が確認できる。一方、右は戦時中、クリバル部隊の拠点の公園で整備中のクブシュ(改修後)。これを見ると、左写真よりもヒンジが内側にあることがわかる。なお、wikimedia commonsに上がっている写真の都合上、左右違う側の比較になってしまったが、他で上がっている写真から、現存実車の左側も上右写真より外側にヒンジがあること、その内側に溶接痕が残っていることが確認できる。

キットのヒンジモールドは現存実車に準拠しており、(もともとは溶接線再現の際に邪魔だったので一旦削り落としたのだが)より内側に作り直した。4か所とも、キットのモールドから一つ分内側に寄せる感じにしたのだが、今見直すと、前側のヒンジはさらにもう少し後ろに下げても良かったように見える。

●今回の進捗その2。天井ハッチと防盾を取り付けた。

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天井ハッチの「定規縁」に関しては、キットのパーツにもモールドがあったが、かなり細く、しかも「お行儀が良すぎる」感じだったので、削って作り直した。ただし、後からわずかに写っている実車写真を見ると、前側の天井のリブよりも高く盛り上がっているようで、もう少しメリハリをつけるべきだったかも。

ヒンジは、車体側は溶接痕の作業の邪魔だったので削り落としてあり、0.3mmプラバンで再生。(エンジン部ハッチ同様)ヒンジ周囲には溶接痕を追加した。ヒンジの筒部はエンジン部ハッチで作ったものよりおとなしすぎるので、後々ここも作り替えるかもしれない。

防盾は(キットのパーツは厚過ぎるので)0.3mm板で新造し、天井にイモ付け。取付位置は左右で完全に対象ではなく、後端位置で見ると、左側のほうがやや前に出ているようだったので、そのように工作。防盾の後ろに銃架のようなものがあってもよさそうな感じだが、とりあえず、現存実車ではそのようなものは見当たらず、かつてあったことを示すような溶接痕なども確認できなかったのでクリーンなまま。もちろん、単純に中央の隙間から小火器を突き出して撃つためだけのもので、銃架など最初からなかった可能性も高そう。

●今回の進捗その3。サイドスカートの工作。

前後輪横のサイドスカート部分は実車では別体で、おそらく車輪交換の便のためにボルト止めになっているのだが、キットは装甲車体と一体モールドになっており、段差もボルトも表現されていない。

というわけで、0.3mmプラバンより薄く弾性も高い、タミヤの0.2mm透明プラバンで工作した。

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後々の工作過程での破損を防ぐため、キットのサイドスカート部分は切り落とさず、周囲を薄削りし、わずかに大きさも削り込んで、裏打ちに活用した(どうせひっくり返して見せるつもりもないので)。透明プラバンの表面は目の細かいペーパーを掛けて「すりガラス」状態にしているが、裏打ちとの間に広がった接着剤が透けて雲形迷彩のように見えている。

ボルトは、マスタークラブのレジン製の0.7mmサイズ(低頭)のもの。

サイドスカート上の溶接ラインは装甲車体の裾部を溶接しているものなので、当然、スカート部には掛かっていない。

なお、工作途中に気付いたのだが、左前部スカート上の真ん中のボルトは、実際には、その上の斜めの溶接線が下辺に接する直下にある。これは私がボルトの位置を間違えたわけではなく、本来、斜めの溶接線の角度がもう少し立っていて、下辺との接点が後ろにあるため。右前部は同接点よりボルトが後ろで正しいので、要するに、この部分の溶接線位置自体に左右でズレがあるらしい。今更気付いても遅いのでそのまま(面構成をやり直すなんてまっぴら)。

また、現存実車を見ると、サイドスカートのうち右前部を除く3枚には、継ぎ足しの溶接線がある(右前部は後ろ1/8くらい? 左右後部は下2/3くらいを継いでいる)。しかし、戦後の放置時期の写真を見ると、少なくとも右側前後のスカートは失われている。車体後部の可動式スカートも新造品に交換されていることから見ても、これらはレストア時に新たに作られた可能性が高いと判断し、溶接線は入れなかった。

●今回の進捗その4。車体前面上部の弾痕の追加。

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実車のクブシュには、各部に2度の戦闘で付いた弾痕が残されている。当初は「さすがにそこまでは……」と思っていたのだが、これらの弾痕が一度目と二度目、どちらの戦闘で付いたものか確認できない以上、「二度目の作戦時の仕様なのに、それ以前に付いた弾痕がないのはおかしい」という事態になることも考えられる。とりあえず入れておけば、「二度目の作戦終了時の状態」は再現できていることになる。

なお、上右写真のように、実車の弾痕位置に関してはキットの説明書でも図示されているのだが、下の金尺からもわかるように、図が小さすぎてかなり判読が難しい。そんなわけで、実車写真を参考にちまちまと入れた。もっともキットの図も(一応赤色で図示されているので)、離れた場所にある“はぐれ弾痕”の確認には役立つ。

弾痕には大小があるが、これは当たった角度や、そもそもの口径(拳銃/短機関銃弾と小銃/機関銃弾)の差によるものかと思われる。なお、ほとんどの弾痕は外側装甲を貫通しているが、車内写真を見ると、内側装甲には窪みを作っているだけで食い止められているものが多いようだ。

現時点では上部前面の弾痕しか工作していないが、その他の場所にも若干ある。

●以上の工作を終えた全体写真。

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ハッチ部の大きな穴がふさがったので、だいぶ最終形に近付いてきた。

●脱線話。クブシュの工作をしていると、どうも溶接線が気になって、散歩の途中で思わず撮ってしまったもの。

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よく見ると滑り止めのパターンは溶接線をまたいで連続しているので、まさに、以前hn-nhさんが言った方法、「破線状に溶断して折り曲げて、然る後に溶接して折り曲げ部を補強」の工作をしているらしい。帯材の溶接も、ベタ付けでなく破線状に工作されている。

散歩の途中に、「なるほど~」などと思いつつ、足元の鉄板を眺めているおっさん。怪しすぎる。

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戦うプーさん/「クブシュ」Mirage HOBBY 1:35(4)

●Mirage HOBBY 1:35、ポーランド国内軍の簡易装甲車「クブシュ」(”KUBUŚ” - Improwizowany Samochód Pancerny, Powstanie Warszawskie, Siespień 1944)の製作記の続き。

●前回やり残しの天井部分の溶接線の再現は以下のようになった。

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前回書いたように、この部分はまともに写っている写真がなく、だいぶ想像交じり。ただし、

  • 左右辺は上面ハッチの幅で内側にも溶接線があり、二重になっている。
  • 中央ライン(ハッチの前方のみ?)にはリブテープ状に張り増しがある。

という二点は、ハッチから内部を覗きこんで撮ったような写真にわずかに写っていて確認できたので再現した。

前者に関しては、クブシュがスペースド・アーマー式の二重装甲であることから、内側溶接線は側面の内部装甲の位置を示しているのではないかと思う。

後者については、戦後のレストア時に追加されたものという可能性もあるのだが(例えば前面下部スカート中央のラム状の張り増しは戦後の追加である旨、Mirageのキットの説明書で解説されている)、この部分はさらに上に防盾が付いていて、しかもその防盾は(戦後の遺棄状態時期の写真から見て)オリジナルである可能性が高そうであるため、その下を通るリブテープも最初からあったものと判断した。ただし、実際には防盾の裾部分のそのものズバリの写真はないので、このリブテープが防盾の手前で終わっているとか(その場合、戦後の追加工作である可能性がやや高くなる)もあり得る。

特に天井部前端の溶接ラインに関しては、キットのパーツ分割と面構成に準拠していて、本当にこんな感じかどうかはちょっと怪しい。

●運転席左面の視察スリット。

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もともとキットにあったモールドはエッジが寝惚けていたこともあり、作り直した部分。

  • 貼り増した板はやや斜めになっていて、スリットはその下の溶接ラインとほぼ平行なため、板のなかでスリットは傾いた状態になる。
  • 最初に車体に直接開けたスリットの位置が悪くて塞いだのか、それを塞いだような溶接痕が板の後方にあるので再現。
  • 破損個所を直したようなツギハギの溶接線が上面にかけて走っているので再現。

●運転席正面の視察口。ここも、元のモールドが寝惚けていたので作り直した。右がキットの元々の状態。

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実際に作り終えてから見直すと、現存実車に比べて可動フラップ部分の縦幅がちょっと広く、スリット自体ももっと狭く左右に長かった方がよかったように思う(ちゃんと作る前と作っている最中に確認しろよって感じ)。ただ、実車のフラップ部分は一度失われて作り直してあるようで、現在の状態をあまりシビアに追及する意味も薄い気がしたのでそのままとした。

実際には、戦後、公園に遺棄されている時期の写真で、オリジナルの状態なのではないかと考えられるフラップ付きのものがあるのに今更ながらに気付いたのだが後の祭り(とはいっても、その写真もそれほど鮮明ではない)。

“助手席”側の銃眼に関しては、内側に、一度開けて塞いだ跡を追加した。

●本日のクブシュ考証。

実車の記録によれば、クブシュは1944年8月23日未明まで製作が続けられ、同日早朝、ワルシャワ大学正門への攻撃に参加(一回目の出撃)。

撤退後、天井に機銃架と防盾を増設、さらに視察装置の改修が行われた後、9月2日に再びワルシャワ大学への攻撃に参加している(二回目の出撃)。

現存実車およびそれを参考に作られたキットは、当然ながら、改修(および戦後のレストア)後の姿を基本にしている。

戦時中に撮られたクブシュの写真はごく限られているが、そちらもほとんどは改修後の姿のもの。改修前のものとしては、唯一、一回目の出撃前日(8月22日)にポヴィシュレ地区のザイェンツァ(Zajęcza)通りで撮られたとされる写真があるが(前回記事へのvol de nuitさんのコメントでリンクを張って頂いた写真と同じもの)、これは距離を置いて見下ろした不鮮明な写真で、ディテールもへったくれもない(天井に防盾が付いているかどうかさえはっきりしないので、タルチンスキ本のキャプションにある日付で、ようやく「えっ、これって初出撃よりも前なんだ!?」と思う程度)。

そんなわけで、一回目の出撃時のクブシュの細かいディテールははっきり言って謎だが、タルチンスキ本の記述によれば、どうやら、運転席前面の視察口は、当初はスリットだけで、一回目の出撃のあと、ドイツの兵員輸送車(Sd.Kfz.251か?)から持ってきた防弾ガラス付きに改修されたらしい。その他、上の工作で述べた銃眼の移動や側面視察口の改修も、この時に同時に行われた可能性は高いのではないかと思う。

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戦うプーさん/「クブシュ」Mirage HOBBY 1:35(3)

●7月に入って、なんだかんだですっかり模型製作をサボり気味。当「かばぶ」の更新もだいぶご無沙汰になってしまった。

というわけで、だいぶ久々のクブシュ(”KUBUŚ” - Improwizowany Samochód Pancerny, Powstanie Warszawskie, Siespień 1944, Mirage HOBBY 1:35)の製作記。

●基本は前回の続きで、装甲車体の溶接線工作。

天井部分を除いて、ほぼ全周の溶接線を入れ終えた。

溶接線はオーソドックスに、伸ばしランナーを貼って流し込み接着剤で溶かして潰す方法。潰すための工具は主にペンナイフの背で、ほかに適宜、ピンセットの先、金尺の角、自分の爪の先などを使っている。細い溶接線を除いては、伸ばしランナーを最初に貼った時点で、一度ナイフの刃先で細かく輪切りにし、接着剤がよりしみ込みやすくした。

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以前にも書いたように、実車のクブシュは限られた材料を使い、半ば(あるいは完全に?)素人が溶接工作をしているために、以下のような顕著な特徴がある。

  • 溶接線が不揃いで、場所により太い/細いの差が大きい。同一ライン上でさえ、太さが変化している場合もある。
  • おそらく大面積の鋼板が入手できなかったため、戦闘室左右の1平面の部分も複数の鋼板を接ぎ合せてあり、しかも左右で分割が異なる。
  • 材料不足に加えて鋼板の切り出しも稚拙であるために、継ぎ足しやつじつま合わせの隙間埋めがあちこちにある。

したがって、工作においても、なるべく実車における溶接線の太さの差の再現を心掛けた。太さの差は、例えばこんな感じ。

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もっとも、「ここは太め」「ここは中くらい」「ここは細め」くらいのいい加減な区別で、しかも伸ばしランナーを潰す工作過程でも仕上がりの太さに差が出て来てしまうため、厳密に比較すると「あれ? ここはこっちよりも細いはずなのに……」といった箇所がちらほらある。

●前回、右側面の溶接線工作の報告の際も触れたことだが、操縦席/助手席左右の斜めラインは、途中で角度が変わっている。

ここについては、前回記事へのhn-nhさんのコメントで、「単に線の角度が変わっているだけでなく、溶接線が破線状になっているようだ。この部分は2枚の三角の鋼板を接いだのではなく、1枚の鋼板を破線状に溶断し、折り曲げたうえで、溶断部分を再び溶接で埋めたのでは」(大意)という観察と推論を頂いた。

確かに、特に左側面では溶接線が下端で消えてしまっていることなどを考えても、hn-nhさんの推論はかなり説得力があるように思う(ただし、実際に“折り曲げ工作”だった場合、他にも浅い角度で2面が合わさっている箇所はいくつかあるのに、なぜこの場所だけそのような手法を採ったのか、という疑問は残る)。

というわけで、右側面の当該位置の溶接線は破線状に入れ直し、また、左側面は最初から破線状に工作した。

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●その他、現時点での溶接線工作に関するトピックスその1。

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戦闘室頂部前面装甲板は、切り出し精度が悪かったせいか、中央に継ぎ足しがあって溶接線がV字に二重になっている。これはレプリカ・クブシュにはない大きな特徴。また、操縦席前面の装甲板はきっちり左右対称でなく、中央の溶接線は斜めになってしまっている。

操縦席前面の視察口、助手席側の銃眼の“開け直し”工作痕についてはこの後に工作予定。

●トピックスその2。

ラジエーターグリル部上の三角形の装甲板は、キットと実車で形状がちょっと異なっている。

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キットでは写真のように下辺②よりも中央縦の辺①のほうが短いのだが、実車ではほぼ同じか、むしろ縦線①のほうが長い。溶接線を入れ直すことによって、形状の差が目立つことになってしまった。

もっともここを修正するとなると、前面全てを作り直すことになってしまう(そして細かいことを言い出すと、形状や角度にズレがあるのはこの場所だけではない)。というわけで、ここは見て見ぬふりに徹することにする。

●溶接線について未工作の天井に関しては、(せっかく実車が残っているにも関わらず)しっかり写した写真がネット上に見当たらず、なお調査/考証中。開けた上面ハッチを覗きこむような写真に、その前後がわずかに写っているものしか現時点では発見できておらず、想像交じりの工作を余儀なくされそう。

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戦うプーさん/「クブシュ」Mirage HOBBY 1:35(2)

●Mirage HOBBY 1:35、ポーランドの即席装甲車「クブシュ」(キット番号 no.355026)の製作記。

箱に書かれた(ポーランド語の)キット名称は、「”KUBUŚ” - Improwizowany Samochód Pancerny, Powstanie Warszawskie, Siespień 1944」(直訳すれば、『クブシュ』 ワルシャワ蜂起における即席装甲車、 1944年8月)。……長いよ! メーカー側の(あるいはポーランド人の)思い入れの深さを示しているというか何というか。

●溶接線を入れ始めた。

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とりあえず、右側面から工作スタート。ここはキット評で書いたようにキットの溶接線のモールドが目立ってずれている部分で、中央の縦長の鋼板はやや下すぼまりに、また後ろの辺は銃眼に接しているので、そんな感じに。

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そして現状は、右側面をおおよそ終了。全体の3分の1程度という感じ。

実車は、望む大きさの鋼板が自由に手に入る環境ではなく、また溶接技術の拙さもあって、あちこちにつじつま合わせ、継ぎ足し、試行錯誤の跡がある。今回の溶接線の入れ直し作業も、その辺をできるだけ再現したい、というのをメインテーマとしている。現状終了している右側面部分では、

▼戦闘室右後部下。鋼板の幅が不足していたか、ヒビでも入っていたか、一部、溶接線が二重になっている。

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▼「助手席」側のスリットのある面。上端部分が三角に継ぎ足しになっている。

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▼エンジンルーム右側面。写真中央の2面は、どちらかが歪んでいる(あるいは切り出しが適当だった?)ために、溶接線の角度が途中で変わっている。ちなみに(未工作だが)、左側面のこの部分は、途中で溶接線が消える!という、これまた謎な状態になっている。

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●並行して。

このキットの前面ルーバーは、「ミニスケールか!?」というような階段状一体パーツで、だいぶ情けない。実車のこの部分は、これまた工作が不揃いで、レプリカ・クブシュとの識別点の一つとなっている。

というわけで、作り直しに向けての下工作として、ルーバー下を開口(現状、片側だけ終了)。本来はペラペラの鋼板だが、どのみちルーバーを付けるとほとんど見えない部分なので、薄削り工作などはしない予定。なお、どうやら実車では、弾片等がラジエーターを傷つけるのを防ぐため、ルーバーとラジエーターの間にもう一枚、スリットを開けた鋼板を置いているようだ(少なくとも現存実車ではそうなっている)。

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戦うプーさん/「クブシュ」Mirage HOBBY 1:35

20190517_195009 ●令和に入って作り始めたものが2つ。片方は先日レビューを上げた、THE WORLD AT WARの1:72、II号戦車b型で、これもある程度作業が進んだら再度レポートを上げるつもり。そしてもう一つが、今年の初めに「そろそろ手を付けるか~」と書いた、Mirage HOBBY 1:35のクブシュ(Kubuś)。というわけで、そのクブシュの製作記第1回。

平成年間のお手付きキット多数、場合によっては昭和の頃に手を付けて放置してあるものもあるはずで、「作るならそっちを先にしろよ」というものはいくらでもあるのだけれど。

●これまでにも散々書いているけれども、クブシュ(Kubuś)は、1944年夏のワルシャワ蜂起の際に、市内ポヴィシュレ地区にいたポーランド国内軍の1部隊(「クリバル」部隊)が、ドイツ軍の拠点となっていたワルシャワ大学の攻略用に1輌でっちあげた即席装甲車。より詳細な実車解説は、

wikipediaの日本語記事:とりあえず現時点で、日本語でクブシュの概略を知るにはコレ(のはず)。

Samochód pancerny "Kubuś":ポーランド語の実車解説、作戦解説など。google翻訳さんあたりに頼ろう。

そもそもガレージキットでも出たらスゴイと思うようなネタなのだが、自国ポーランドのMirage HOBBYが、1:35と1:72でまさかのインジェクションキット化を果たしてくれた。愛されてるなあクブシュ。発売されたのは2014年で、私も早速購入した(……だけで、今まで積んだままになっていた)。その頃からの当「かばぶ」の過去記事は、

クブシュ!:Mirageからのキット化を聞いて喜んで書いた記事。ポーランド・ワルシャワに現存している実車とレプリカの話、およびその識別点など。なお、記事内の実車walkaroundへのリンクは切れているので注意。2014年4月19日。

MIRAGE HOBBY 1:35 Kubuś:キット入手時に書いたレビュー。おおよそのキット内容、実車の溶接ラインとキットのモールドの比較、ベース車輛に関する若干の考察など。2014年8月8日。

浮島:今年初めに書いた雑記。後半に、クブシュの資料等について触れている。2019年1月30日。

上に書いたように、過去記事で紹介したウェブ上のクブシュのwalkaround写真はリンク切れになっているので、現時点で閲覧可能な、実車写真が見られるサイトをいくつか。

KUBUŚ - Powstańczy Samochód Opancerzony - MWP / MPW [FOTO](ポーランドの模型関係の掲示板に貼られたもの)

strefa cichego(クブシュ以外にも、結構マイナーな車輛、砲などの写真があるサイト)

MUZEUM WOJSKA POLSKIEGO - Powstańczy samochód pancerny "Kubuś"(写真点数は少ないが、現存実車を所蔵しているポーランド軍事博物館の所蔵品紹介ページ)

Odrestaurowanie wnętrza samochodu pancernego Kubuś(何やらポーランド語の確認窓など出たりするので注意。現存実車の比較的最近のレストア。一応、記事の日付は2015年9月。内部の設備あれこれはたぶんオリジナルと全く違っているが、二重装甲の様子などが観察できる。前面外側装甲を貫通した銃弾が内側装甲で止められていることなどが判って興味深い)

Samochod pancerny Kubuś - ostatni z remontów.(上記事の続編で、記事の日付は2015年11月。同じく確認窓に注意。さらに多数の内部写真)

Ćwiczenia załogi i desantu powstańczego samochodu pancernego "Kubuś"(イベントに引っ張り出されたクブシュの動画。ディテール・ウォッチにはたいして役立たないが、床下にしか出入口がないクブシュの乗降の大変さが判る。他にもyoutubeには、ワルシャワ大学襲撃の再現イベントに引っ張り出されたクブシュ実車の動画などが上がっている)

Samochód pancerny "Kubuś" znowu jeździ (wideo)(走行可能にレストアされたクブシュ実車の動画。自走可能で作ったレプリカの立場が……)

Panzerserra Bunker - Kubuś - Polish armoured car / armoured personal carrier - case report(モデラーによる製作解説ブログ。出所は不明だが寸法・角度データ図などもあり。vol de nuitさんに教えて頂いた)

ただし、現存実車は(車内だけではなく外観上も)若干の戦後の改修が入っており、少なくともワルシャワ蜂起当時のクブシュの再現を目指すのであれば鵜呑みにできない部分もあるので注意が必要。

●表題は、ポーランドで「くまのプーさん」が「クブシュ・プハテク(Kubuś Puchatek)」と呼ばれて親しまれているため。

ただし、この装甲車自体は直接くまのプーさんにちなんで名付けられたわけではなく(一時は日本語版wikipediaにそのような記述がされていたこともあるが、現在は表現を弱めてある)、製作主任であった技術者、ヨゼフ「グロブス」フェルニクの戦死した妻のポーランド国内軍メンバーとしてのコードネームからのもの。クブシュという単語自体はポーランドで一般的な男性名「ヤクブ」の愛称であり、グロブスの妻のコードネームがプーさんをイメージしていたかどうかは定かではない。

もともとコードネームは秘密活動用のものなので、性別が違っているのはそれほど奇異ではないようで、実際に出撃時に運転手を務めたフィヤウコフスキ軍曹は女性名「アナスタシア」のコードネームを持っている。

ただし、指揮官のタデウシュ・ジェリニスキ士官候補軍曹のコードネームは「ミシュ」(熊/テディベア)なので、プーさんとの何らかのイメージのつながりはあったのかもしれない(もちろん、クブシュ以前からずっと「ミシュ」と名乗っていた可能性も大いにある)。

●製作方針。何しろ車外装備品の類はほとんど何もない(ノテク・ライトと車幅表示棒程度)ので、その方面で精密度を手は使えない。

キットは車内もある程度表現されているものの、おそらく実車は長らく放置されている間に車内のアレコレは一度喪失していて、近年の車内写真も撮影時期によって(椅子等が)がらりと変わっていたりするため、それら資料写真は(少なくとも戦時中の状態の再現には)役に立たない。もともと、私自身が「模型は基本、外から見えるところだけでいいや」派であることにもる。

というわけで、基本は表面の装甲板の溶接表現に手を入れることを中心に進める。なお、装甲板の面構成について、一部「実車とちょっと違うナー」と思う場所もあるが、解消しようとすると大幅にプラバンで車体を構成し直す必要が出てくるため、(面倒くさいので)それには目をつぶることにする。要するに具体的には、

  • 位置の修正、強弱(太い細い)を含めた溶接跡の再現
  • 実車の工作の粗さ、微妙な左右非対称の再現

を目指す。

なお、キットは天井に防盾が追加され、操縦手用の視察口が改修された、2回目の出撃以降の姿を再現している。最初の出撃時の姿というのも興味があるが、とりあえず、ネット上や資料本等で見かける当時の写真も改修以後のものばかりで、改修以前の姿は文章で触れたもの以外見つからなかった。また、キットの説明書には出撃で負った弾痕位置の説明なども入っているが、そこまで再現するかどうかは現時点では決めていない(面倒くさいし)。

●1st Step。おおよそ説明書の指示に従って、シャーシから組み立て始める。

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キットにはエンジンも入っているが、総じてだいぶおおらかな出来。一応、エンジンから駆動軸が後輪デフまで繋がってますよーくらいの感じだが、この辺は、組み上がってしまうとほぼ全く見えないので、個人的には気にしない。そもそも、ベース車輛がシボレー155であるのか、シボレー157であるかも(少なくとも現時点で私には)よく判らず、しかもその両者とも詳細資料など手元にないので、こだわりようがない。そんなわけで、この部分は基本、キットの指示に従ってパーツを付けていくだけ(むしろ、いくつか部品を省略)。

なお、前輪もステアリング機構は丸無視。パーツにハンドルは付いているのだが、ハンドルシャフトはなぜかエンジン側面に繋がっているという謎レイアウトになっている。

ただし、キットの車輪だけはレビューで書いた通りあまりにプアな出来なので交換の予定。

ちなみにキャビン内からエンジン部分や前輪ハウジングが筒抜けになっているが、少なくとも実車の現状ではその通りになっている。

●装甲車体基本形は大きく左右分割されている。ただし、位置合わせのダボなどは一切なく、また、若干のバリなどもあって、ズレが発生しないかちょっと気を遣う。私は内部の作り込みはせず、ハッチも閉めてしまう予定ということもあって、分割線上に0.3mmプラバンの切れ端などを貼って位置決め/接着部の補強を行った。

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キャビン前面は別パーツ。本体との合わせは微妙に合っていない感じで、若干の削り合わせを必要とした。

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操縦手前面の視察口、および操縦手左の視察スリット部に貼り増した板、エンジンボンネットおよび車体後端スカートの車体側ヒンジは、どれも寝ぼけたモールドだったので、後々作り直すことにし、この段階ですべて一度削り落とした。

レビューでも書いたようにキットの溶接ラインのモールドは一部で位置がずれており、また、(レプリカと違って)実車では場所によって太かったり細かったり、非常に工作の粗さが目立つ仕上がりになっていて、それがクブシュ実車の特徴ともなっている。これに関しては全面的に入れ直すつもりで、これまたすべて削り落とした。

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以上の作業の過程で、特に車体左側面および後面のピストルポート(あるいは視察口?)の位置がちょっと気になったので、この2か所は開け直すことにして一度埋めた。

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後面に関してはキットよりもやや下に、左側面はやや上に開け直す予定。

溶接跡に関しては、いつも通り、伸ばしランナーを貼って溶かす方式の予定。ランナーの色が違うと溶接線の太さの違いが把握できなくなるので、タミヤの同色のランナーを使って微妙に太さの違う伸ばしランナーを量産した。

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●製作方針の項で触れた、装甲板の面構成自体の「ちょっと違うナー」について。例えばラジエーター用ルーバーのある最前面の上の細長い装甲板だが、この下端の角度が、実車に比べるとかなり開き加減になっている。

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上右写真で黄色で示した部分。下はwikimedia commonsから拝借してきた実車写真。

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その面の後ろに連なる(ボンネット側面にあたる)装甲板の上下幅にも少々関わってくる。

実を言うと、多少なりと問題を改善しようと、上左写真(車体右側面)では、問題の角の上辺に繋がる面を少し削り込んで、わずかではあるが角度を鋭くしている。車幅表示棒取付部の凹を埋めた後がエッジにかかっているか、いないかで削り込みが判ると思うが、角度の変化自体はパッと見て判るほどには変わっていない。というよりも、おいそれと変えられない。

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それも当然で、上写真に黄色で示した2辺によって、上の面の角度はおのずと決まってしまっているわけなので、ここを大胆に削り込むと、この面が明らかな曲面になってしまう。それを防ごうと思うと、このあたり一帯をすべてプラバンで作り直す必要が出てくる。

そんなわけで、これらの点に関しては、「誤魔化せる部分は誤魔化せる範囲で」という、比較的ヌルい姿勢で臨む予定。

なお、工作自体も、気が向いたときにゆるゆると進めていく感じになると思う。

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II号戦車b型 THE WORLD AT WAR 1:72

20190517_195110 ●先日(令和初の購入キットとして)入手した、THE WORLD AT WAR 1:72のII号戦車b型(PANZER KAMPFWAGEN II ausf.b)の簡単なレビュー。

これに先立って発売されているII号戦車a1/a2/a3型についてはこちら

以前にも書いたが、「THE WORLD AT WAR」シリーズはポーランドのメーカー、IBGのミニスケール専門のレーベル。同社では単にIBGレーベルでも1:72のAFVキットを出していて、「THE WORLD AT WAR」シリーズがどういう切り分けになっているのか少々はっきりしないが、とりあえず、今のところこのシリーズでは第二次大戦初期のドイツ戦車しか出ていない。

なお、少し前に書いたが、基本同シリーズは1:72スケールなのだが、IV号戦車系列は、どうやら設計の際に寸法を間違えてしまったらしく、最初のA型は「1:72」表記で出たものの、その後のB型以降は「1:76」表記に改められている。ミニスケールの72と76なんて誤差だよ!なんて開き直ることなく、スケール表示を改めたのは潔いと言えるが、そのため、同一シリーズで2種のスケールが並列するという妙な格好になってしまった。

また、1939年のドイツ・ポーランド戦の1:72両軍AFV/車輛/砲/フィギュアを出している「First to Fight」シリーズは、発売元は違うようだが、キットそのものはIBGが手掛けているようで一部設計データは両シリーズで共通している。

●キット内容。シリーズ共通の構成で、キャラメル箱の中身はプラパーツと、折りたたまれた実車解説の小冊子。小冊子は表紙を含めて16ページ、英語とドイツ語の併記(輸出仕様)。

プラパーツは枝3枚で、デカールが1枚。

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Lパーツ(写真1枚目):車体、足回り。おそらくプラパーツとしては、これのみがこのキット専用のもの。

Mパーツ(写真2枚目):砲塔および装備品類。a1/a2/a3型キットおよびA型キットと共通。

Nパーツ(写真3枚目):マフラー、工具箱、スリットのないクラッペ等の小さな枝。A型キットと共通。

デカール(写真3枚目):塗装例2種に対応。ポーランド戦時の黄十字と、フランス戦以降のものと思われる第10師団第7連隊所属車(ステンシルのバイソンと大きな「5」の砲塔番号)。

●車体形状は前型のa1~3型とも、後のc型とも異なっているので、前述のようにb型専用のパーツ。a1~3型とはエンジンルームのディテールがかなり違い、車体長がa1~3型のほうが短い。b型では車体後部が延長され、後の標準型II号(c、A~C型)とかなり近い形状になるが、エンジン上部の傾斜面が後部でたち切れ、後端グリル部分が独立した形になっていたり、フェンダー後半部が後ろ下がりになっていたりと、なお若干の差がある。戦闘室後ろのハッチも、c初期型までの2分割式。

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写真1枚目:b型の車体形状、特に後部ディテールはかなり頑張って再現している感じ。車体上下パーツの接合線の隙間が後端グリルに掛かっていて、何か方法を工夫して消すか、放置するかちょっと悩ましいところ。

写真2枚目:車体右側面の2つの燃料注入口の小丸ハッチ、その後ろのエンジンルーム側面吸気口は一体モールドの都合でやや不十分な再現度。これはa1~3型キットでも同様だった。右前部クラッペは、a1~3型キットでは別部品だったが、このキットでは一体モールド。なぜか、後の型の特徴であるはずの跳弾リブのようなモールドもある。

写真3枚目:車体前面に一体モールドされている牽引具と点検パネルは、a1~3型キット(右)と比べて位置がかなりずれている。小パネル上のリベットの数・位置が変更になっているのは実車もそうなのだが(a1~3型は7カ所か8カ所、b型は左右2カ所)、このキットのように、位置まで変更になっているのかどうか……。少なくとも、このb型キットの位置は(牽引具も含めて)ちょっと上過ぎる気がする。

●足回りはa1~3型と起動輪の形状が大きく異なり、後の標準型II号(c、A~C型)とよく似た形状になった。

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ただし実際には、c、A~C型と全く同じではなく、おそらくファイナルギアケースの形状が違っているためなのではと思うが、b型の起動輪のほうが、後の型よりもふくらみ方が大きい。キットの起動輪はパッと見、後の型と同じくらいのなだらかさで、膨らみ具合が不足しているように思う。上部転輪はa1~3型よりも小径化されており、その辺はきちんとフォローされている。

ただ、よく見ると、a1~3型キット同様、履帯の巻き方が逆方向になっている。ロコ方式の一体成型なのでそもそも大したディテールもないため、それほどうるさく言うほどのこともないかもしれないが。

●砲塔パーツは、おそらく「THE WORLD AT WAR」シリーズのII号戦車すべてに共通のもの。Mパーツの枝に含まれるクラッペは、a1~3型に合わせてすべてスリット付きのものになっているが、b型以降用に、スリットのないフラットな形状のクラッペが別枝(Nパーツ)で用意されている。なお、私の買ったキットでは、砲塔ハッチ上のダンパーのモールドが、片側が型抜き時の事故で?潰れていた。

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ANF レ・ミュロー117 SMĚR(ex-Heller)1:72

●リニューアルに伴うトラブルと仕様変更もあって更新意欲が削がれ気味なブログだが、かといって書かずにいると「書かないことが常態」化してしまうので、暇ネタ的にキットレビュー。取り上げるのは、前々回の試験投稿、「続・ココログ謎メンテ」で画像を貼った、チェコ、スムニェル(SMĚR)のミュロー117(A.N.F. MUREAUX 117)。

●逗子にはもともと、私が引っ越してきた頃には模型屋が3軒あったのだが、延命寺の斜め向かいにあった老舗の航研堂はもうだいぶ前に閉店。披露山入り口近くにあった八風堂も先日閉店。残るは延命寺前から沼間方面に行く途中のつばさ模型だけだが、こちらも最近は週末だけの限定営業になってしまった。

先月末の日曜日、前を通りかかったら開いていて、知り合いが中にいたので入ってちょっと世間話。このキットは、そのついでに購入したもの。

20190324_200141 ●スムニェル(SMĚR)は、あっちこっちの古キットを箱替え、デカール替えで出しているチェコのレーベルで、1:50のアルティプラストの一連のキットもあるが、1:72は基本、エレールなのかな?

とにかくこのミュローもエレールのキット。そもそもこんな戦前フランスの偵察機なんていうマイナー機種、エレールじゃなきゃ出さないと思う……(もっとも今はAZURという強力なフランス・マイナー機推しレーベルが別にあるが)。実際には私は昔々エレール版も買って持っているのだが、そちらは作りかけてどこかストック棚の奥底に堆積しているはず。もしかしたらスムニェル版も一つ持っていたかも。

こんなマイナー機、いったいいくつ(そしていつ)作るつもりなんだ……。

●実機については、原型機「ANFレ・ミュロー 110」の項目名でwikipediaにも立項されている。一応簡単に記しておくと、レ・ミュロー110シリーズは高翼単葉単発複座の偵察機で、ブレゲー19/ポテーズ25の代替として1930年代半ばにフランス空軍に配備されたもの。117はイスパノ・スイザ12Ybrsエンジンを搭載した後期の主生産型。wikipediaだと、爆撃能力を付加した「117R2B2」ということになっているが、キットの説明書だと、偵察専用の「117R2」と、偵察・爆撃型の「117R2B2」の2通りが生産されたような書き方がなされている。第二次大戦時にもまだ現役だったが、最高速が300キロ台の旧式機でもあり、キットの説明書でも「they were scarcely used and without remarkable success」(ほとんど使われず、目立った活躍もなかった)と、身も蓋もない。

スムニェルのキットでは名称が「MUREAUX」になっているが、本家エレールでは「Les MUREAUX」と冠詞が付いている(wikipediaでも)。mureauxという単語自体は「壁」とかいう意味で(複数形)、「いくらなんでも飛行機に壁なんて名前を付けるか?」と思っていたのだが、改めて検索すると、パリ近郊にレ・ミュロー(Les Mureaux)という工業都市がある(古くは中心部が城壁に囲まれていたのが名前の由来であるらしい)。そして、この機を開発・生産したメーカーがこの街にある「A.N.F. レ・ミュロー社」(フルネームは“Les Ateliers de Construction du Nord de la France et des Mureaux”(desはde+lesの縮約形)で、要するにこの時期の他のフランス機と同様、「メーカー名+型番」の機名だった――というのを、今頃になってようやく知った。それにしてもこの社名、「北フランスおよびレ・ミュロー製作所」くらいの意味かと思うが、なんで北フランスとレ・ミュローが並列(et=英語のand)なんだ?

●キット内容は、ざっと以下のような感じ。前述のようにもともと自国フランスのエレール製で、SCALEMATEの年表を見ると、初版発売はなんと1967年。50年以上前という大ベテランキットということになる。エレールの一連の戦間期~第二次大戦国産機キットのなかでもどちらかといえば古いほうだと思うのだが、これが妙に気合が入っている。

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上下張り合わせの長大な主翼と左右分割の胴体のほかは、小パーツ類の枝が1枚。あとは透明パーツとデカール。デカールは本家エレール版と違って一頃のチェコ製キットお馴染みのPROPACTEAM製。印刷も鮮明、ズレもなく(といってもコケイドの青丸は別印刷だが)クリアニス部も極薄のもので、キットの箱にも何やら誇らしげに「スーパー・デカール」と書いてある(ただし使い勝手のほうはよく知らない)。

「妙に気合が入っている」中身に関しては、とにかく「コリャスゴイ」と思うのが、機体側面の外板の薄さの表現。リベットに囲まれた内側が、ごくわずかに膨らんだ表現が丹念に施されている。もっとも実機のクローズアップ写真(自体、ネットを漁ってもあまり出てこないが)では、それなりに外板のベコベコが見て取れるものはあるものの、こんなふうに全部外側に膨らむということはなく、割とランダムに凹凸があるというのが真相のようだ(与圧胴体ではないのでそれが当然かもしれない)。とはいえ、キットの表現はメーカーの気合に敬意を表して、そのまま生かしたい(そしてそれがなんとなくわかるような塗装にしたい)気がする。

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一方でトホホな部分もあり、水平尾翼は裏面に押し出しピン痕が2か所。幸い裏面なので、削り落として、消えたリベット列は針先でつつく程度で誤魔化せるかな?

コクピットは年代物らしく、床板・壁に一体のプリミティブな椅子がモールドされたL字パーツ(後席も基本同様)。操縦桿もない。計器盤は一応あるが、つんつるてんの半月状の板のみ。当然ながら胴体側面内側のモールドも何もない。

後席の旋回機銃は、説明書の諸元ではルイス機銃と出ていて、キットのパーツもそんな感じだが、実際には、30年代後半には国産のレイベル機銃(MAC 1934)に替わっているらしい。円形弾倉が上部に水平に付くルイス機銃と違い、レイベル機銃は右側面に縦につく独特の形状だが、ネット上で拾ったミュロー117の塗装図等でもレイベルを付けて描かれているものが多いようだ。

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開放式コクピットなので、風防は断面がはっきり出てしまうが、キットのパーツはこれも古めかしく分厚い(ただし透明度は高い)。

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●そこまで来て、「そういえば……」と思い出したのが、昔々買った、ファルコンのクリアヴァックス(CLEARVAX)の別売クリアパーツセット。探したら、珍しくストック棚のすぐ表にあった。

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ファルコン(Falcon Models)はニュージーランドのバキュームフォーム・キットのメーカーで、クリアヴァックス・シリーズは、古くて質のあまりよくない古いキットの透明部品を代替する、バキュームフォームの透明部品セット。実質的に同じ仕立てだが、出版社のsquadron/signalとの提携(?)で一機種ずつバラ売りのものもあった。今はキットの透明部品の質が上がって、好んで古キットに手を出さない限り切実に代替部品が必要ということはあまりないため、この手の物を店頭で見る機会も少なくなった。ただ、「もうファルコンなんてないんだろうなー」と思ったら、一応、会社のサイトがあった。まだ生き残ってたのか!?

今回掘り出したのはフランス機セット第一集で、どういう基準なのかよく判らないが、戦間機から戦後のジェット機まで14機種分(そのうち、モラン・ソルニエ406、ドボアチン520、ブロック152は2機分ずつ)入っている。そして一個も使った形跡がないのがまた……とほほ。

このなかにミュロー117も含まれていて、3枚目の写真、下段中央がミュロー用。

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新霍克!(Curtiss Hawk III 1:48 FREEDOM Model Kits)

●ココログの復旧具合についての様子見を兼ねての投稿。

さすがにあまりに不具合の山積に、ちょっとは“やる気”を見せておかないとマズイと思ったらしく、ココログもお知らせページで「不具合修正状況」をほぼ毎日アップするようになった。

それを見ても「どこがどう改善されたのか」は、実はあまりよく判らないのだが、とにかく、「改行はデフォで一行空き」という仕様は元に戻ったようだ(実際にはこの仕様には最初だいぶ違和感を持っていたのだが、とはいえ、さすがに「リッチテキスト・モードで故意に一行空きを入れても実際の画面に反映されない」のは困る)。

 ●という前置きはこれくらいで、試し書き記事の本題。

今日、久しぶりに秋葉原のVOLKSに行ったら、以前マクタロウさんのところで話題になっていた新興模型メーカー、FREEDOM Model Kitsの1:48、カーチス・ホークIIIが置いてあったので、ついたまらず購入してしまった。以下、ごく簡単にレビュー。

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製品アイテム番号は18009、キット名称は「ROCAF CURTISS HAWK III」。ROCAFは「中華民国空軍(Repbulic of China Air Force)」の略で、箱絵は渡洋爆撃の九六陸攻を迎撃する第四大隊長・高志航乗機。

メインとなるパーツは大きめの枝2枚。

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これにデカールシート2枚、エッチングパーツ、透明パーツ等が付く。

●胴体部の表面ディテールは以下のような感じ。

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2枚目は胴体前半の下面。3枚目は機首上面。

4枚目は先行する同スケールのキット、Classic Air Framesとの比較。布張り表現やパネルのメリハリなどはFREEDOMに一日の長があるのは当然と言えそうだが、それ以外に、この状態だと下翼の翼厚が全然違うのが目立つ(と言っても、組み上げてしまうとあまり判らないかも)。

●細部パーツあれこれ。まずはコクピット内。

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1枚目は床板。2枚目は側壁(こんなふうになっているとは知らなかった)。3枚目は座席だが、シートベルトの類はエッチングパーツにも入っていない。この点はちょっと残念。そもそもどういう形のシートベルトなのかも(私は)ちょっとよく判らない。

エンジンと脚、翼下の爆弾架と爆弾。

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エンジン(ライト・サイクロン)はエッチングでプラグコードが付く。小爆弾はフィンが分厚すぎる気がする。実物もこんなんじゃないよね?

エッチングと透明部品。

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張り線は全てエッチングで用意されている。エッチングパーツの下の小リングはプロペラ軸を止めるポリパーツ(たぶん)。

残念なのが透明部品で、特に天蓋部分は分厚過ぎ、枠も太すぎる感じ。特にこの機の場合は密閉コクピットではなく、風防も天蓋もしっかり厚みが見えてしまう。ここはクラシック・エアフレームスから流用したい気がする(クラエアのキットには予備として2機分入っているので)が、私がストックしているクラエアの物は若干黄ばんでいるのがネック。

中国空軍パイロットのフィギュア一体付き。

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……画像の大きさ指定のやり方がよく判らない。以前の投稿フォームだと画像を投稿するたびに大きさの指定ができたのだが、今度のフォームでは、投稿全体の設定でサムネイルの大きさ指定があるだけ。

●説明書はカラー印刷。

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2枚目は機首部分のパネルの選択を示した部分。武装の違いで、機首右側のバルジの大きさにバリエーションがあるのは知っていたが、その前方の縦長パネルにも仕様(輸出先)によって違いがあるのは今まで気付いていなかった。

3枚目は中国空軍機の塗装/マーキング解説図。中央の第四大隊長機(高志航機)のほか、有名どころの李桂丹機や劉粋剛機など7種類が取り上げられているが、シートには胴体の大きな数字の0~9が別途2つずつ用意されているので、開戦時の第四・第五大隊所属機はどれでも作れそう。

キット名称は「中華民国空軍」だが、デカールはタイ空軍、アルゼンチン空軍所属機のものも(1種ずつ)用意されており、上記説明書の図示にあるように各仕様に合わせて細部パーツは選択式になっている。

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ホルトの鈍牛(12) 改めての完成披露

●SUMICON2018の終了時に、一度完成報告をしたRODEN 1:35のホルト75トラクター(HOLT 75 Artillery Tractor)だが、昨年末の東京AFVの会に出展する際、直前にちょっと“お色直し”的にウェザリングを追加した。

東京AFVの会が終わってから、そのままケースに入れたままにしてあったのだが、改めて取り出して撮影し直したので、写真をUPしておきたい。

なお、前回ひとまず完成披露した時からの変更(追加)点は、

  • 赤茶のパステルを削って、前輪・履帯・排気管に、若干のさび色を乗せた。
  • 履帯接地部分の鉄色をドライブラシ、黒鉛筆で強調。
  • タミヤ「ウェザリングマスター」のサンド系の色で、さらにエッジを明るめに。
  • ごくわずかにチッピング(始めてみてどうも不自然にしか見えなかったので、早々にやめてしまった)。

――など。

●まずは全体形。

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●エンジン部のクローズアップ。屋根は外して、エンジン上部も明るく見えるようにして撮っている。

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●操縦席周辺。このあたりは、手の触れるところを中心に、もうちょっとちゃんとチッピングを入れるべきだったかも。

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●足回り。前輪操向機構の傘歯車部分にカバーを付けなかったのは、改めて見てもちょっと心残り。起動林はやはりちょっと小さい気がする。

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First to Fight 1:72 クルップ・プロッツェ(ポーランド軍仕様)(3)

●そんなん、ちゃっちゃと形にして終わりだろう……という気も(自分でも)しないでもない、FTFの1:72、ポーランド仕様クルップ・プロッツェの続き。

●前回時点で未工作だった細かいディテールを付加。ふと思い立って「ここもちょっと手を入れよう」とか思い始めない限りは、これで工作は終了。

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・プロッツェの車幅表示棒は、先端が球ではなくて円盤状。要するにペロペロキャンディのような形状。そのまま棒の先に円盤を接着しても今後の作業中に取れてしまいそうだし、どうしようかしばし悩んだのだが、結局、次のようにした。

(1).コントレールのプラ丸棒に穴を開け、直交するように0.3mm真鍮線を通す。

(2).真鍮線を接着後、プラ棒を真鍮線の前後で輪切り。さらにやすりがけして、できるだけ(真鍮線から取れてしまわない範囲で)薄くする。

・ウィンドウ左右につく方向指示器についても、似たような方法で、0.5mmプラバンの細切りに0.3mm真鍮線を刺して作成した。

・運転席側の方向指示器の下には、ホーンなのかスポットライトなのか(たぶん後者)、ポーランド仕様独自であるらしい何やらが付いているので、ジャンクパーツを切ったり削ったりで製作し取り付け。

……などなど。

●ちなみにこのネタの初回記事で、キットのデカールについて「車輛登録番号6種に対応。……これって写真で確認できた全番号を入れてるんじゃないだろうか。」と書いたのだが、私がネット漁りをして見つけた写真ストックの中で、しっかりナンバーが確認できるのは「13185」号車だけだった。

キットのデカールに含まれているのは、

13182 13183 13185 13186 13187 13189

の6種。もしこれらがすべて写真で確認できているとすれば、私の知らないポルスキ・プロッツェの(一応番号が確認できるほど鮮明な)写真がまだまだそれなりに眠っている、ということになる。

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