AH-IV/R-1

「SUMICON 2016」お題変更

週末模型親父さんのところのAFV模型のネットコンペ、SUMICON 2016は5月1日にスタート。先述のように、私はルーマニア軍軽戦車R-1でエントリーしていたのだが、エントリー受付最終日の5月20日、エントリーお題を変更させてもらうことにした。

「なんだよー、R-1じゃないのかよー」と思った方がいたら、まったくもって申し訳ない。いや、あまりいないと思うけれど。

ちなみに、R-1に関しては、「ようやく手を付けたところ」という感じだった。

F1011482 ▼とりあえず製作のガイドとするために、「タンコマステル」2-3/98号掲載の1:35の図面をコピー。鉛筆であれこれラインを描き入れてみる。

その段階で、どうやらあまり正確な図面ではなさそうだ、ということも露呈するのだが、もともとそこまで大きな期待は持っていないので、適当に感覚で修正を加えたりする。

▼転輪基本形の製作。

とにかく足回りがフェアリー企画のパーツはお話にならないレベルなので、少なくとも「ちゃんと丸い転輪」を作ることにする。実のところ、「1:48の38(t)系列のキットが出たら使えるんじゃないだろうか」なんて甘い希望を抱いていたこともあるのだが、実際に出てみたら、48の38(t)系の転輪のほうがだいぶ大きくてアウトだった(もちろん、図面から計算してみればキットが出る以前に判ることなのだが)。

同じくらいの径で流用できそうなパーツを探した結果、1:35のIII号戦車の転輪を使うことにした。実際に使用したのは、YSのばら売りコーナーで入手したタミヤのパーツ。タンコマステルの図面と比べ0.5mmくらい?径が大きいのだが、これ以上探すのが(あるいは1から自作するのが)面倒なので目をつぶることにする。ちなみにIV号の転輪だと逆に小さすぎる。

F1012952 もちろん転輪としての形状は全く違うので、右写真のように工作。

左から、

  • タミヤのIII号戦車のパーツ。
  • 中心部をくり抜く。
  • ナイフでリム部のみ残して丁寧に削る。
  • そのままでは厚みがありすぎるので、治具を作り均一に薄くする。上はタミヤII号戦車の転輪内側パーツ。
  • II号の転輪内側パーツが(なぜか)隙間なくぴったりとはまる。これを転輪の基本形とする。

もちろんこれで終わりではなく、あれこれディテールを加える必要がある。現時点で1輌に必要な8つ分の工作をしてあるが、しっかりディテールを入れたものを1つ作って複製するのが正しいやり方のような気もする……。

●……というふうに、とりあえず作る気で進めてはいたものの、

  • どうやら恒例の夏の季節労働が、特に今夏はだいぶ忙しくなりそうであること。
  • あてにしていたパーツが、サイズ的にうまく合わなかったこと。
  • 必要なパーツの追加購入の目途が立っていないこと。

などの理由で、ちょっとモチベーション・ダウン。昨年、ブレダI号を未完成で終えていることもあって、もうちょっと完成の可能性の高そうなお題に変更することにした。

素直に考えれば、R-1に決める前に候補にしていたBT-2、クブシュ、TACAM R-2の中から選ぶところなのだが、結局は全然関係ない、T-34を引っ張り出してきた。小国もの同様、ソ連もの(特にKVとT-34)は個人的にテーマでもあり、しかしその一方で最近まるっきりこの方面は御無沙汰だったこと、今回のSUMICONで(多くはディオラマの脇役的にだが)T-34を作る方も何人かいて、自分でもちょっと作りたくなってしまったことが理由。

F1014645 F1014644 もちうろん、好きなアイテムなので、我が家にはそこそこの数のT-34キットのストックがある。そのなかで、右のcyber-hobby白箱のどちらかにしようと当日晩まで考えた挙句、キット名称「T-34/76 STZ Mod.1942」を作ることにした。

やはり半年掛かりのSUMICONで作るものなので、「キットをそのまま組んで終わり」ではもったいない。というわけで、より厄介度の高いSTZのほうを選択した次第。

●「T-34/76 STZ Mod.1942」、つまりスターリングラード・トラクター工場製の1941年型(1941年戦時簡易型)の1942年生産型は、生産工場/生産時期による仕様の差が激しいT-34のなかでもひときわ個性的で、それなりにファンも多いタイプではないかと思う。

しかし一方で、このcyber-hobbyの白箱は、期待も大きかった半面、T-34マニアを絶望のどん底に叩き込んだ(←大袈裟)悪名高いキットでもある。

そもそもドラゴンのT-34シリーズは、現時点におけるT-34模型のスタンダードのような存在で、それなりの佳作キットが多いのだが、その中で、このcyberのSTZ1942は“鬼っ子”のようなもの、といえる。そもそもまともに組むこと自体が難しいのだ。

なぜそんなことになってしまったのか自体が大いに謎なのだが、せっかくベースとなる(まともな)T-34車体があるにもかかわらず、車体上部の設計を最初からやり直してある。それが良い方向に振れているなら何も言うことはないのだが、その結果、車体上下がそもそもきちんと合わない。

F1014651 実を言うと、私は発売当初に買ったこのキットは、なんとか上下を合わせようと切り刻んだ挙句に収拾がつかなくなってしまい、仕方なくもう1つ買い直した。「いいお客さん」過ぎる。

キットには、いかに考証にこだわってキット設計を行ったか、砲塔を例に自慢げに解説したパンフレットが入っているのだが、それ以前のところで大コケしているので、まったく悪い冗談だとしか思えない。「キットにどちらを採用するかについて長時間の議論が繰り広げられた」などと書いてあるが、そんな議論をしている時間があるなら、そもそもプラモデルとして組めるかどうか確かめろよって感じ。

●当然ながら、このキットに関しては海外でも「なんだこりゃあ」な評価があふれている。実際の合わせや寸法に関するチェックは次回に回すが、以下のページにも詳しい(というより、ここを見れば済んでしまう感じ?)。

PMMSレビューの車体の合わせに関するページ

また、車体上下の合わせに関する修正の一手法に関しては、以下のページが参考になる。

missing-lynx掲示板のレポート

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R-1の下調べなど(2)

週末模型親父さんのところのAFV模型ウェブコンペ、「SUMICON2016」の出品作に選んだR-1軽戦車の製作準備その2。てなことを言いつつまだ本当にコレにするか迷う気持ちもあるのだが、そろそろちゃんと決めないといかんね。

さて、私の手元には、R-1のキットは3つある。1つはATTACKの1:72。残りはフェアリー企画の1:35の新版と旧版。フェアリーの旧版はパッと出てこないので、ATTACKとフェアリー新版の簡単なレビューを以下に。

F1010887 ●ATTACKの72は、私が知る限りR-1の唯一のインジェクションキット。ミニスケールAFVキットらしい小さいキャラメル箱入りだが、なにしろ小さな車輌なうえ、足回りは一体でパーツも少なく、中身はスカスカ。

右写真では、すでに箱組の車体、前後貼り合わせの砲塔は組んでしまって、その分のランナーは捨ててしまっているのでさらに中身が少ないが、感じは判って頂けるかと。それにしても細部部品の少ないことよ。

F1010881 F1010884 足回りはロコ形式の一体成型で、起動輪・誘導輪の外側だけが別パーツ。履帯の表面ディテールがほとんどないとか、履帯が厚いベルト状だなあとか、別部品の起動輪・誘導輪外側がボッテリしているとか、外側起動輪の歯が一部しかないとか(履帯に穴がないのだから当然だが)、内側起動輪にはそもそも歯が全然ないじゃないかとかいろいろあるが、それよりも最大の問題は、

「本来履帯の中央にあるはずの転輪が、起動輪・誘導輪の内側同様の奥まった位置にある」

ということではないだろうか。根本的な解決を図るには、履帯からいったん転輪部分を切り離して位置を調整する(さらには、いっそ履帯そのものもどこからか適当なものを調達して取り換える)のがよいと思うが、35でも作る計画なので、ちょっとそこまでする気になるかどうか。

F1010883 F1010878 全体のスタイル、およびデカールは右のような感じ。この角度から見ると、転輪が奥まっているのがさらに気になる。全体のスタイルは……うーん。こんなもんなのかなあ。ちょっと砲塔が小さい気もするが、写真によってはこの程度にも見える。タンコマステルの図面(1:35)を72に換算して比べると、砲塔径がやや小さめ(0.5mm程度)、一方で車幅は広め。

デカールのマーキング例は、砲塔に王家の紋章が入った1941年時のものと、各所にラウンデルが入った1942年時のものの2種。ラウンデルは車体前部と右側面に大きなもの、左側面に小さなものを貼るように指示されている。実際そのような塗装図を別の場所でも見た気がするが、本当に右左でそこまでアンバランスな大きさのラウンデルを描いていたのかどうか。

実際に、左側面に小さなラウンデルが描かれている写真、右側面と前部に大きなラウンデルが描かれている写真は存在するのだが、同じ時に、同一車輌を右と左から写した写真ではない。右は装甲板を目いっぱい使って描いていて、左は小ぢんまり描いているというのはちょっと不自然のように思う。

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F1010748 ●2つめはフェアリー企画の1:35レジンキット。海外のレジンキットでも古いものは説明書がお粗末なものは多いが、同社のそれはまた格別。

フェアリー企画はレジンのガレージキットというものがようやく認知されてきたくらいの時代から活動している日本のガレージメーカーの老舗で、(少な くとも私が知る限りでは)AFVと艦船のキットを手掛けていた。現在に至るまで「フェアリー企画からしか出ていない(出ていなかった)」というマイナー車種をい くつもキット化していた一方、技術的進歩がほとんど見られない(多少は進化していたのかもしれないが、海外メーカーがどんどん進歩していったのに比べると だいぶ見劣りがした)、通販を頼んでも平気で数カ月来ないといった悪評もで結構名高かった。

確かFさんという方が個人でやっているメーカーで、通販を頼もうと電話をすると、Fさんの御母堂と思しき方が電話に出るのだが、どうも注文の品名がちゃんと通っているのかどうか不安になるような感じだった覚えがある。

もっとも、当時としても驚くほど価格が低く、また車種によっては当時捌売りされていなかったカステン製の非可動履帯がセットされており(当然ながら 車輌そのものと履帯のクォリティがかなりアンバランス)、口さがない人は「あれは履帯を買うと、オマケでレジンの塊が付いてくるんだよ」なんて言ってい たっけ。

今でもサニー辺りでは製品を見かけるので活動しているらしいのだが、最近は、AFVはミニスケールだけで1:35はもうほとんど出していないのではないかと思う(出していたら済みません)。

前置きが長くなったが、フェアリー企画のR-1には、前述のように新旧の2種がある。旧キットのほうは履帯と、確か転輪類もホワイトメタルだったように記憶しているが、鉛規制か何かでそのままの形では出せなったために、ほとんどをレジンパーツに変えた新版を出したと当時聞いたような気がする。

しかし、実際に新版を入手した時に比較して驚いたのだが、単純に旧版のパーツの素材を置き換えたのではなく、車体・砲塔などの基本パーツ自体、原型からやり直した全然別のキットになっていた。

F1010874 F1010877車体はごろんと一発抜き。中空だが床板は入っておらず、また、床板をはめ込む際に便利なように段差を作ってあったりもしない。車体後端裏側には注型時の湯口があったらしく、荒っぽくゴリゴリとヤスリで削り飛ばしてある。私がやった覚えはないので、購入時からこうだったのではないかと思う。

F1010873 タンコマステルに出ている図面と重ねてみると、(ちょっと意外なことに)基本寸法はほぼピッタリ合う(ハッチの縦横寸法などは違っているので、同一図面を元にしているのではなさそう)。

とはいえ、綺麗に平面が出ていないとか、原型工作時に荒っぽくヤスリ掛けした跡がそのままとか、細かいモールドが「細切りのプラバンを貼っただけ」的なものが多かったりとか、原型段階からの作りが何とも荒っぽい。むしろそれでいて気泡はほとんど見られないのが不思議。

F1010868 レジンに変わった足回りは右のような感じ。

履帯は6枚つづりのものと2枚つづりのものがざらっと入っている。ディテール的にはかなりプアで、ガイドホーンもケシゴムを刻んで並べたような感じ。よく見ると高さも不揃い。起動輪の歯がかみ合う穴も開いていない。もっとも、旧版のメタル製の履帯はもっととろけたようなモールドだったような気がする(うろ覚えなので間違っていたら済みません)。

F1010865 F1010863 起動輪・誘導輪・転輪の出来も五十歩百歩。

前述のように履帯には穴が開いていないので(手っ取り早い方法としては)起動輪の履帯と噛み合う部分の歯を切り飛ばす必要があるが、ガイドホーンが分厚いのでそれだけでははまらず、そちらも削り合わせないといけない。転輪はリム部近くにリベット列がモールドされていて、確かに既存の図面にもたいていこれが書き込まれているのだが、実車は、このリベット列は写真では見えるか見えないかくらいのかすかなもののようだ。

F1010862 新版は鉛規制に伴って金属部品を減らしたもの(らしい)と最初に書いたが、金属部品がまったくなくなったわけではなく、2丁の機銃はメタルキャスト。そのほか、操縦手用照準、フックがエッチング。エンジンルーム吸気口(?)の樹脂メッシュと、べっこう飴のような前照灯部品。

というわけで、ちょっと21世紀にこの出来はツライものがある。もっとも、R-1の1:35キットは、私の知る限りではまだこれしかないはず。

SUMICON2016では1:35のR-1を作るつもりだが、フェアリー企画のパーツはあまり使わずに作ることになりそう。

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R-1の下調べなど

週末模型親父さんのところのAFV模型ウェブコンペ、「SUMICON2016」が5月1日にスタートする。

とりあえず現時点では(←優柔不断な奴)、ルーマニア軍軽戦車R-1でエントリーすることにしていて、その下準備など。

●ルーマニア軍のR-1軽戦車は、チェコČKD社の開発した軽戦車(というより豆戦車に近い?)AH-IVの輸出型で、社内名称はAH-IV-R。M. AXWORTHYほか著、「THIRD AXIS FORTH ALLY」(ARMS & ARMOUR)によれば、ルーマニアは騎兵部隊用にこれを35輌輸入・配備している。ルーマニア国内でライセンス生産する計画もあったらしいが、これは頓挫している。

重量4.2トン(サイト“WorldWar2.ro”だと3.5トン、wikipedia記載のデータだと3.9トンになっている)、機銃2丁装備。1丁は回転砲塔に装備したvz.37重機関銃(イギリスのベサ機銃の原型)、1丁は車体右袖部に装備したZB26軽機関銃。どちらも7.92mm×57弾なので、弾薬そのものは同じなのではと思うが、給弾形式が違う。補給とかメンテとかを考えると、同じ機銃を装備していた方がいいと思うがなあ……。まあ、素人には判らない何か大事な理由があるのかもしれない。

足回りは同じČKD社のLT vz.38(要するにPz.Kpfw.38(t))とそっくり。AH-IVと、LT vz.38の原型であるTNHの設計ほぼ並行していたようなので、同じ原設計で大小2種を作った、という感じかもしれない。ただし、いかにも「大直径転輪」という感じのLt vz.38に比べ、AH-IVのそれは、ドイツ戦車で言うとIII号/IV号程度しかない。その直径で片側4つだから、この戦車の豆さ加減が判る。

F1010895 ●写真だの図面だのに関する手持ちの資料としては、チェコ戦車の資料として手頃かつ信頼性も高いMBIの「Praga Export Tankette」を買って持っていたはずなのだが、今は発掘できない(なんて整理の悪さだ!)。

代わりに当座の比較検討資料として出してきたのが、「タンコ・マステル」誌の1998年No.2-3。手塚治虫のマンガに出てくるわんわんパトカーそっくりの、スペイン内乱時の装甲車が表紙に出ている(関係ない話だが、この装甲車はトラック改造で装甲ボディをかぶせたものなので、別角度から見るとそれほどわんわんパトカーには似ていない)。

F1010892 このなかに8ページの、第二次大戦中のルーマニア軍AFVの記事があり(といっても全部ロシア語だが)、R-1の写真5枚と1:35の図面が出ている。

あとはウェブ上でかき集めた写真が少々。なお、R-1は現存車輌はない(はず)。きっちりルーマニア軍R-1の塗装でキリキリ走り回っている現代の動画などもあるが、レプリカ車輌。それとは別に、スウェーデン向け輸出型のAH-IV(Strv m/37)が残っていて、walkaround写真などもそこそこある(たとえばこことか)。ただし、Strv m/37に関しては細部の仕様がだいぶR-1と異なっているので、あくまで参考に止めておく必要がある。

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