ミニスケールAFV

オースチン装甲車Mk.III MASTER BOX 1:72

20201230_154827 ●タミヤの「マーダーI改めロレーヌ」は、ああでもない、こうでもないと頭を悩ませる部分が多く、作業していて悶々としてくるので、箸休め的に浮気する(……と、そんな感じでそのまま放置してしまうことも多いので気を付けたい)。

ネタはあまり悩まずに手っ取り早く形になるミニスケール、ウクライナ・MASTER BOX(MB)1:72のオースチン装甲車Mk.III。MiniArtから最近1:35でのシリーズ展開が始まったばかりのネタで、ネット上でそれを見て「ああ、そういえばミニスケールのヤツを持ってたなあ」と思い出して引っ張り出してきたもの。

●買ったのは数年前。確か、かさぱのす氏達と飲み会をした時に、donjiさんだか誰だったかが買ったのを見せてもらい、出来の良さに惹かれてその後購入したもの。

MBは「第一次大戦100年記念」として、2014年からMk.I/Mk.II菱形戦車のキットを数バリエーション発売。さらにその後追加したのがオースチンのキットで、この「Mk.III」と、後輪がダブルになった「Mk.IV」(ただし、通常はMk.IVという呼称は用いず、1918年型と呼ばれることが多い仕様)の2種が出ている。

実車はオースチンが第一次世界大戦中、帝政ロシア政府の求めに応じて開発・生産したもので、初期の生産型(Mk.I~Mk.III)は主にロシア軍で使われ、さらにロシア革命の混乱期には赤白両陣営で使われただけでなく、革命戦争にちょっかいを出したり巻き込まれたりした周辺諸国も鹵獲使用したりしている。1918年型は革命で輸出が差し止めになったのでイギリス本国が接収したり、他国(日本を含む)に輸出されたりしている。

●出来が良いので、基本、キットのストレート組み。ちなみに同社のMk.I菱形戦車雌型も発売後まもなく買って、組むだけは組んでいるが、これも(ベルト式の履帯がいまいちなのを除けば)非常によいキットだった。

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塗装の便を考えて、現時点では車輪は未接着。車輪まで仮組みして写真を撮りたかったが、取付穴がユルユルだったので断念した。

若干なりと手を入れたのは、

  • フェンダー、機銃防護板を薄削り。
  • ボンネット横の取っ手を金属線(0.2mm径くらいのエナメル線)で作り変え。
  • そのままキットのパーツを使ったら、完成までに必ず折ってしまいそうな右面の乗降ステップを金属支柱に交換。
  • シャーシ前端のフックを金属線製に交換。これも破損が怖かったのはもちろん、キットパーツを片方ピンセット・カタパルトで飛ばしてしまったため。ついでに、キットパーツでは再現されていなかった軽いヒネリも加えた。
  • 銃塔の下の円筒形に膨らんだ部分に、キットは小さなライトの部品が付くが、(塗装例との関係で)取り付けず、基部のモールドも削り落とした。
  • 同じ部分、CADデータに基づく金型切削の際に入ってしまった表面の縦縞状の軽い凹凸を、目立たないように軽くヤスリ掛け。

……など。

●キット指定の塗装例/デカールは、基本、ロシア革命時のあっちこっちの陣営+大戦後のドイツ、オーストリアのもの。ここの塗装例については、箱裏の塗装図に一応国旗が示されているものの、何年何月の何軍といった細かい説明は何も書かれていない。

そのあたりは、このサイトのレビューで解説が載っていて非常に助かる。


●若干の日々の報告。

月曜日、散歩に出て、夕方に鎌倉の大町・小町間にある通称「お妾さんトンネル」を久々に通る。

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このトンネルに関しては以前にもちょろっと紹介したことがあるが、大町の奥の谷戸(しかもその支谷)をずんずん登って行って、もうほとんど尾根目前、というところにある。路面にはタイヤ跡があるが、普通の乗用車は通れるのかなあ。軽自動車でないと無理な気もする。

1枚目は大町側の入り口。もうちょっと早い時季に通っていれば、紅葉がもっと綺麗だったかも。

2枚目も大町側の入り口で、さらに近づいたところ。葉の間に見える空で、尾根のてっぺんからトンネルまでは数mしかないだろうことがわかる。「これなら切通でもよかったんじゃ?」レベル。しかし、鎌倉にはこんなふうに、「登って登って、もう尾根直前」に掘られた古い小トンネルがいくつかある。どれも、「いや、これは地元の人じゃないと知らないよな」という位置にあり、またどれもなかなか雰囲気があってよい。

3,4枚目はトンネル内部。昔懐かしいタイムトンネル風。元はたぶん素掘りのトンネルだったのが、現在ではコルゲート板のライナーで覆われている。

5枚目は小町側の入り口。トンネルを抜けた先は急坂で、それを降りると腹切りやぐら(新田勢の鎌倉攻めの際、北条一門が集団自決したとされるやぐら(横穴))の下あたりに出る。

ちなみに俗称が「お妾さんトンネル」なのは、その昔、地元の有力者がお妾さんのもとに通うために掘らせたためである由。どっちからどっちに通ったのかまでは知らない。

●同日。鎌倉駅前まで出たら、鶴岡八幡宮の狛犬までがマスクをしていた。

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●話は前後するが、先週、披露山から撮った富士山。この季節、晴れていればだいたい夕景の富士山は美しい。

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巡航戦車Mk.I(A9)CS THE WORLD AT WAR 1:72

20201204_193345 ●タミヤのロレーヌ製作記は一回お休み。

数日前に横浜VOLKSで買った、“THE WORLD AT WAR”シリーズの1:72、巡航戦車Mk.Iのキットレビューを。

“THE WORLD AT WAR”シリーズは、ポーランドIBG社による、主に大戦初期のAFVを出しているレーベル。これまではドイツ物ばかりだったが、今回、初めてそれ以外のアイテムとして、巡航戦車Mk.I(A9)を出してきた。2ポンド砲装備の通常型と、3.7インチ榴弾砲装備のCS(近接支援型)の2種の(たぶん)同時発売で、私が入手したのは、そのうちCSのほう(製品番号W-012、キット名称“A9 CS CLOSE SUPPORT BRITISH CRUISER TANK”)。

巡航戦車Mk.Iはポンコツ感あふれる外観が好きで、“THE WORLD AT WAR”から出ると聞いた時から「ぜひ欲しい」と待っていたもの。

Geckoの1:35(ブロンコからも出ているが、Geckoのほうがよさそう)も欲しいと思っていたのだが、私の製作ペースからすると35は買っても持て余しそうだし、キット自体も高いし……。お手軽なミニスケールで、それなりによいキットが出そうなら、それでもいいかな、と。

●実車について。

このA9は、「巡航戦車Mk.I」、つまり巡航戦車の第一弾ということになるが、設計そのものはイギリス陸軍が「巡航戦車」「歩兵戦車」の2本立てで行くと決める以前のもので、若干の紆余曲折はあったものの、中戦車Mk.IIIに替わる主力中戦車として開発が進められていたものだが、試作完成と前後して「2本立て」方針が決定する。

実際には本車輛は「足回りが高速走行には不向き」「エンジンが非力」と、巡航戦車に求められる要件(軽快さ)を満たしていなかったが、「いや、もう作っちゃったし」「装甲、薄いし」という消極的理由で、より本格的な、高速走行に適したクリスティー式の巡航戦車(A13)完成までの繋ぎとして採用された。

ちなみに、このA9をベースに歩兵支援用の「重装甲」の車輛として開発されたA10も、新たに設定された歩兵戦車の基準からすると軽装甲だと判断されて、「巡航戦車Mk.II」として採用されている。なんて場当たり的な。

内容は良くも悪くもメーカーのヴィッカーズ社らしさテンコ盛りな感じで、サスペンションはヴィッカーズ軽戦車やキャリア―系列同様の「スローモーション」タイプ。ただし前端・後端は大転輪とし、対になる内側は2つの小転輪とする特異な構成で、これはそのまま発展形である歩兵戦車バレンタインに引き継がれることになる(が、他にこの方式を真似た車輛は登場しなかった。「まあ、当たり前だよな」という感じ)。

操縦席左右に銃塔を備えた、要するに「多砲塔戦車」形式になったのは、開発者ジョン・カーデンの強硬な主張に基づくものだそうな(ちなみにそのカーデン自身は、開発途中の1935年末に飛行機事故で死亡している)。カーデンと言えば、カーデン・ロイド豆戦車の生みの親として名高いが、一方で、多砲塔の夢に憑りつかれた人でもあったらしい。が、結局はそのぶん乗員も増え、内部も窮屈で居住性・操作性は悪化している。そもそもこの銃塔、給弾ベルトが邪魔をして旋回範囲は見た目よりもっと狭かったらしい。ダメじゃん。

一方で、主砲塔は恐らく世界初の動力旋回式で、これはヴィッカーズ社が手掛けていた爆撃機の動力銃座から技術を応用したもの(時期を考えるとウェリントンか?)。航空機用動力銃座はボールトン・ポール社が開発、同社のオーバーストランドに初搭載され、その後各メーカーの機体に搭載されている。ちなみに巡航戦車Mk.Iの動力砲塔は油圧式だが、後の戦車は電動式に改められている、らしい。

また、対地雷の耐性を高めるための船底型車体も新しく、これは戦中の車輛では採用例は多くないものの、戦後はアメリカのパットン系列で一貫して用いられるなどそれなりに広まっている。

キット付属の小冊子によれば、50輌がヴィッカーズ社で生産され(T3492~T3542)、これらはすべて2ポンド砲搭載型。75輌がハーランド&ウルフ社で生産され(T7196~T7270)、うち39輌が2ポンド砲搭載、残り(前記登録番号のうちT7231~T7270)が3.7インチ榴弾砲(迫撃砲)搭載のCS型。合計で125輌が生産された。

実戦では1940年のフランス戦と、アフリカ戦の初期に用いられたのみで早々に姿を消している。

●キット内容。このシリーズ標準の構成で、いわゆるロコ組みの一体成型の足回りだが、そもそも車輛自体が複雑なのでパーツは多め。同シリーズのII号戦車a1/a2/a3型は枝2枚、II号戦車b型はごく小さな枝を含めて3枚、III号戦車A型はこのキットと同じく枝5枚だったがパーツ枝の大きさが違い、全体のパーツ数ではそれなりに差がありそう。表紙含め全12ページの実車解説/組立説明の小冊子付きで、本文はFIRST TO FIGHTシリーズとは違い、おそらく輸出仕様として英独対訳。

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車体上部は下写真のような感じ。操縦席バルジの左右面は、IBG系キットの常としては一体成型しそうな部分だが、このキットでは別パーツとして細かいリベットやビジョンスリット部分などを表現している。一方でエンジンルーム左右の通風孔は一体で単純な階段状表現。

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主砲塔は側・後面が一体成型。側面のリベットは抜きの関係で涙滴形に、後面は垂直なのでリベットは一切省略されている。このシリーズにしては珍しくメインハッチは別パーツで開閉選択式。砲塔前面/防盾パーツは通常のA9とA9CSとで差し替えている枝。2ポンド砲の砲身はサスペンション他小パーツメインの枝(Kパーツ)に含まれているが、砲塔前面/防盾の形状が違うので、このキットから通常型の組み立ては不可。

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2つの副砲塔(銃塔)は、側面はスライド型を用いた一体成型。モールドはなかなか細かい。車体開口部に引っかけるツメなどはないので、接着しない場合は(何らかの工夫をしない限り)ポロポロ落ちることになる。

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足回り関係。丸ごと一体成型の足回りの弱点は、履帯の接地面のパターンがどうしてもほとんど省略されてしまうこと、転輪が複列である場合には間が埋まってしまうこと、逆に転輪が単列の場合は複列になった履帯のガイドホーンの間が埋まってしまうこと、などがある。このキットの場合は、まさに「履帯のガイドホーンの間が埋まっている」典型例のような状態で、長方形のブロックが続いているような状態はかなり情けない。

最近では足回りが一体成型でもスライド型等を用いて接地面パターンを再現したり、少し前にレビューしたFIRST TO FIGHTのIII号戦車D型のように、一部部品を分けて複列の転輪の間を表現したりするキットもあり、このキットでもちょっと一工夫欲しかったところ。

一方、おそらく船底型車体でサスペンションが車体からかなり浮いている状態のためか、サス関係は車体と一体化しておらず別パーツ化されていて、これがこのキットのパーツ数を増やす主因となっている。もちろんこれ自体はキットの細密度を上げていてよいのだが、このために、それ以上のパーツ数増加を招く履帯部分の分割化はできなかったのかも、とも想像される。

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もうひとつ、このキットで大きな問題と言えるのが、なぜかフェンダーが、大型のサンドシールド付きのアフリカ仕様のものになっていること。しかもその形状が左右で異なっている(左側は大きなサンドシールド付き、右側はほぼオープン)のもよくわからない。GeckoのA10/A10CSのキットもそうなっているようなので、アフリカ型としてはこれはスタンダードなのだろうか? 通風孔の吸気側で砂をなるべく吸い込まないようにするためとか?

いずれにしても、このキット自体は箱絵も付属デカールも1940年戦役時のものだし、キットの塗装図もサンドシールドなしの初期型形状となっている。

不思議なのは、2ポンド砲搭載型のキット(製品番号W-011、キット名称“A9 BRITISH CRUISER TANK MK.I WITH 2PDR. GUN”)では初期標準型形状のフェンダーのパーツが入っていること。そちらの枝記号はJ、このキットのフェンダーパーツの枝記号はE。キットの組み立て説明図のパーツ番号でもE4、E3と書かれているので、たまたま私が入手したキットでパーツを入れ間違えました、ということでもないらしい。謎。ちなみに、“THE WORLD AT WAR”シリーズではこのあとA10(巡航戦車Mk.II)の発売も予定されているらしく、このアフリカ仕様のフェンダーは、もともとはそちら向けにパーツ化されたものかもしれない。

とにかく、キット指定の(そして私が作りたい)1940年戦役時の仕様で作る場合にはフェンダーの改造が必至。面倒な……。

というわけで、フランス戦当時のA9が作りたい場合(特にこだわりがなければ)2ポンド砲型を購入する方が楽ができる。

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そしてデカール。ブンデスアルヒーフにある、まさにこの写真の車輛のもの。第1師団所属、1940年5月27日、カレーにて。いや、だったらなんでアフリカ型のフェンダーのパーツを入れちゃうのか、と。

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●履帯のガイドの問題、フェンダーの問題(これについては2ポンド砲型ならOK)などあるものの、それなりに細かく再現された好キットではないかと思う。

ただし、HENK OF HOLLANDのキット評によれば、全長は1:72としてはややオーバーサイズだそうだ。実際、付属の小冊子に載っている諸元によれば全長は5.79mで、1:72なら80.4mm。キットはフェンダー部分の実測値で85mm弱。アフリカ型で若干フェンダー前後のサイズが大きくなっているとしても、4mm程度は長いことになる。全幅はおおよそOK。

なお、HENK OF HOLLANDの作例では、キットの履帯部分を削り落とし、イタレリ(旧エッシー)のバレンタインの履帯に交換している。エッシーのバレンタインはバンダイ48の縮小コピーで、バレンタインとしては極初期にしか用いられていない履帯が入っている。キット指定のアフリカ戦線仕様で作るには問題があるが、そのおかげで、このキットには流用が可能になっている。とはいっても、 もともとデッドストックで持っているならまだしも、わざわざそのために探し出して買うのもなあ……。

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III号指揮戦車D1型 FIRST TO FIGHT 1:72

20201101_113754 ●先日、FIRST TO FIGHTのIII号戦車D型のキットレビューの最後に「これはぜひ欲しい」と書いた、同シリーズのIII号指揮戦車D1型。行動範囲の模型屋の店頭では見かけなかったが、秋葉原のイエサブで取り寄せてもらうことができた。というわけで組む前のチェックなど。

●実車について簡単に。

III号指揮戦車D1型(本来の名称は「III号」は付かず、単に「指揮戦車D1型」)は、III号戦車ベースの指揮戦車としては最初に作られたもので、「ジャーマン・タンクス」によれば1938年6月から1939年3月にかけて30輌が生産されている。ベースとなったIII号戦車D型は1938年1月から6月の生産なので、基本、戦車型の生産が終了した後に新たに生産されたことになる。

私自身、ちょっと前までは指揮戦車型(D1、E、H)では「砲塔が固定で、戦車型よりも前にある」のは前提として、その他は「無線装備その他のためにちょこちょこと細かいところの仕様が違う」くらいの認識でいたのだが、実際には、特にこのD1型においては、

  • 足回りのコンポーネントと動力系は基本同じものを流用、
  • 車輛全体のレイアウトもよく似ている(似せている)ものの、
  • 車体の装甲は全体的に戦車型より厚く各部の形状にも微妙に差がある全くの別物、
  • 砲塔基本形状も戦車型A~D型のものより前半の厚みが増したE型以降の型に準じたもの。

であるなど、要するに「似ているけれど車体から砲塔から実は全然別物」。これに関しては、しばらく前にはい人28号さんが1:35で、miniartのD型改造で製作された際の記事で教えて貰ってビックリした。

より小型のI号指揮戦車においても、エンジンが強化され車体が延長されたB型車体はもともと指揮戦車専用として開発されたことを見ても、この時代のドイツの戦車開発陣は、「指揮戦車は戦車型からちょろっと中身を改造するようなものではなく、コンポーネントを流用はするけれども全体を作り直すくらいの手間とコストを掛けるべき贅沢車輛」と考えていたらしいことが判る。

●というわけでキット。

上記のように「似ているけれど、いちいち全部違う」ことで二の足を踏んだか、結局miniartも指揮戦車D1型は出していないので、このFTFの1:72キットが、各スケールを通して初のインジェクションキットということになる(はず)。

先に発売されたIII号指揮戦車E型は、以前にレビューしたように、単に戦車型キットにアンテナパーツを足しただけというトンデモキットだったが、このキットは打って変わって、かなりの気合と頑張りが見て取れる。

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パーツ構成は左写真の3つの枝+白十字のみの小さなデカールシートが1枚。パーツ枝のうち、

  • Aパーツ:車体下部ほか
  • Bパーツ:足回り

戦車型キットと共通。

  • Cパーツ:車体上部+砲塔ほか

は指揮戦車型専用に新たに型起こしされている。加えて、このシリーズ共通のものとして戦歴や開発史、組立・塗装説明の書かれた小冊子(表紙含め12ページ、テキストはポーランド語のみ)が付いている。右写真は同小冊子の組立・塗装説明ページ。

●車体上部を先行のD型キットと比較してみた。きちんと同サイズに撮れていないが、上が本キット、下が戦車D型。

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  • エンジンルーム上の点検ハッチの違い。戦車型は左右開き、指揮戦車型は前後開き。ハッチの大きさも異なる。
  • 砲塔位置が指揮戦車型のほうが前。指揮戦車は砲塔が固定式のため、エンジン交換等でエンジンデッキを取り外す際に邪魔にならないよう、砲塔後端がエンジンデッキに掛からない位置にある。
  • 戦闘室部分の延長。指揮戦車型の戦闘室は戦車型より若干前方に長いらしい(実はこのキットでようやく気付いて、確認してみたらトラクツでもそのように描かれていた)。のちの指揮戦車E型、H型では砲塔の前方移動に伴って砲塔前面と戦闘室前面の間が狭く、この位置に乗せた予備履帯が前方にかなりはみ出している写真がよく見られるが、指揮戦車D1の場合は狭くなったように見えないのはそういうわけだったのか!と改めて納得。
  • 車体前部ハッチが操縦手側だけ。
  • フェンダー上のOVM類の配置の違い。とはいえ、指揮戦車型キットのOVM配置はトラクツの図と比べると違いがあり、これが正しいかどうかは検証の必要あり。

――など、戦車型とは異なる車体を再現しようという意図がしっかり感じられるパーツとなっている。ただし、戦闘室上面とエンジンルームとの間に本来あるべき分割線が忘れられているのは戦車型キットと同様。

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車体側面には、一体モールドのため形状はイマイチであるものの、指揮戦車型の配置のクラッペが付いている。

ただし、右フェンダー前方のジャッキ台のモールドは、型抜きのためにしては大げさ過ぎるテーパーが前後に付けられていて、はなはだ見た目がよろしくない(加えて、ジャッキ台の正規の搭載位置は実際にはここではない可能性がある)。ドットのモールドの関係上、削り取るだけでは済まないのが悩ましい。上の比較写真のIII号戦車D型ではジャッキ台はごく普通であることが確認できると思うが、これまで私が買ったFTF、WAWのキットでここまで変な処理は例がなく、なぜこんなことになったのか謎過ぎる。

●砲塔パーツ概観。

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D型までの初期型砲塔とは違い、E型以降の標準型砲塔に準じた外形を持つ砲塔パーツがセットされている。砲塔上面も(以前のナンチャッテ指揮戦車E型キットと異なり)きちんと指揮戦車型のディテールを模したものになっている。

その一方で、抜きの関係で砲塔後面のアンテナ線引込部や(本来円錐形であるべき)ピストルポートはかなり大胆に形状が崩れていて、なんとかしたいところ。実は同じシリーズのIII号戦車E型のキットでは――

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金型をやや傾けているのか、上のようにきれいな形状で一体モールドで抜けており、今回はなぜそうしてくれなかったのか惜しまれる。ただ、E型キットでは側面ハッチが別部品になっているので、そのぶん成型方向に自由がきいたのかも。

指揮戦車キットの砲塔側面ハッチ、クラッペは下辺のエッジの処理もダルいので、この際、(車体の再現度などで)トホホ度が高いE型キットを犠牲にして側面ハッチやピストルポートを移植してしまおうかなどという考えも、ちらちら頭をかすめ中。なお、側面のハッチストッパーのモールドもかなりゴツい。また、本来指揮戦車型の側面クラッペは左右で高さが違うのだが、キットではその点は再現されていない。

なお、キットの砲塔と車体の接合は戦車型同様に回転可能な状態になっているが、実車は固定されており回転しない。

●細かいパーツ類。

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左写真は指揮戦車仕様の戦闘室前面やダミー主砲、フレームアンテナなど。戦闘室前面のピストルポートは、ちょっと枠部分が強調されすぎかも。砲塔前面は実際は一番端の機銃だけが本物だが、本来あるべき、その根元のボールマウントの表現は省略されている(ダミーのものも含め機銃が太すぎる点もマイナス)。フレームアンテナは柱部分も一体成型で、そのため、柱は単なる棒になっている。

右写真は誘導輪。なぜかIII号戦車D型と指揮戦車D1型では誘導輪形状が全く違うのだが、キットではフォローされていて有り難い。

●車体下部と誘導輪を除く足回りはIII号戦車D型キットからまるまる流用。

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実際には前述のように車体は別物で、シャーシ前面のブレーキ点検パネルは指揮戦車D1型にはないので、モールドを削り取る必要がある(加えて、指揮戦車D1型では前面装甲板が組み継ぎになっている)。ちなみにキットの箱絵でもこのパネルが間違って描かれている。

はい人28さんによれば、その他にも上部転輪配置が僅かに違っているそうで、それに付随して、前方の第一転輪ボギーのショックアブソーバーの作動アームは、戦車型では上掲パーツ写真のようにほぼ垂直だが、指揮戦車型ではショックアブソーバー本体が前方に移動しているのでもっと斜めになっている。これは作動アームも含めて一体成型になっているので改修は面倒だし、そもそも履帯と一体成型になっている上部転輪の配置を直すのはなかなか難事となる。……たぶん私は手を付けない。

さらにはい人28さんによればシャーシ幅自体も若干拡幅されているそうなのだが、これは見た目ではよく判らない。

●というわけで若干の問題はあるものの、なかなか興味深いキットであるのは確かで、III号戦車D型と並べて形状の違いを楽しむためにも、とりあえず早々に組んでみたい気も。

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III号戦車D型 FIRST TO FIGHT 1:72

20200829_005947 ●先月末に川崎の実家に行った帰り、横浜のVOLKSで、FIRST TO FIGHTの比較的最近出た製品、III号戦車D型(1:72)を買ったので、そのレビューなど。

以前にも書いているように、「FIRST TO FOGHT / WRSESIEŃ 1939」は、1939年9月(WRSESIEŃ 1939)のドイツのポーランド侵攻当時の両軍の車輛、火砲、兵士などを1:72で展開しているシリーズ。他ではキット化されづらいポーランド軍車輛や、ドイツ軍車輛のなかでもちょっとマイナーな初期の仕様のものを取り上げているうえ、このIII号戦車D型でシリーズの通し番号はすでに73と、なかなか充実したラインナップに成長している。キットの開発・生産はポーランドのIBG社が請け負っているそうで、IBG自体が展開している「THE WORLD AT WAR」シリーズのキットとはパーツ設計上かなりの共通点がある。

関連する先行キットのレビュー。

あれ。THE WORLD AT WARのIII号B型のレビュー書いてないや。

●というわけでキット内容。

構成はシリーズ共通のもので、モノの大小にかかわらず同一サイズの箱に、戦史、実車解説、組立・塗装説明などが書かれた表紙含め全12ページの小冊子付き。もっとも冊子は全編ポーランド語のみの対訳無しなので、基本は絵を見て「ふーん」と思う程度(もちろん、本気で読むつもりがあればスキャンしてOCRソフトにかけてGoogle翻訳さんに助けてもらうという手もないわけでもない)。

パーツは枝三枚、それからデカール。デカールはポーランド戦時の国籍マークの白十字だけで、複数キットで共通のもの。

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8つ転輪の初期型III号としては、THE WORLD AT WARシリーズでしばらく前に出たIII号戦車B型に次ぐもので、前述のように両キットは同じIBG社の手によるもののため、砲塔パーツの基本設計などは共通(ただしディテールはきちんと両型で違えている)、モールドの精密さなども似通っているが、こちらのD型のほうが後発キットであるため、「改良されてるなあ」と思わせる部分もある。

E型以降の「標準型」III号戦車とは基本、何から何まで違うので、むしろ、同じFIRST TO FOGHTのIII号戦車E型/III号指揮戦車E型とは部品設計上共通する部分はない。また、いささかトンデモな部分があったIII号戦車E型/III号指揮戦車E型よりも今回のこのキットのほうがだいぶ出来がいいように思う。

▼足回り

その「改良されてるなあ」と思う新機軸が足回り。このシリーズ、足回りは基本、履帯含めて一体成型のいわゆる「ロコ方式」なのだが、その場合、複列の転輪類は表裏一緒、逆に転輪が単列の場合は履帯の複列のガイドホーンが繋がってしまって、ちょっと斜めから見た時に実感を損ねることになる。

が、このキットでは、転輪・上部転輪は履帯の半分と一緒に別パーツ化され、また起動輪・誘導輪も履帯とは別にして(起動輪は表側のみ)、全体の再現度を上げている。

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  • 転輪のボギーアームが内側転輪のリム部分と一体化していてやや実感を損ねている。
  • 起動輪の歯部分がやや分厚い上、表側と裏側で厚みが違っている。
  • THE WORLD AT WARシリーズを含めての欠点だが、CADデータのコピペのせいか転輪のパターンの向きがすべて揃っているのが不自然。
  • とにかくパーツのゲートが多くて処理・整形が面倒。

などの欠点はあるものの、従来の処理よりはかなり精密度が上がっている感じがする。なお、分割された転輪部分の部品の合いはそれほど悪くなく、若干のすり合わせのみで歪みも隙間もなく接着できる(どのみち、変に曲がったりしなければ多少隙間が出来ても見えないが)。

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上の2枚の写真は、とりあえず組んでみたこのD型キット(左)と、比較用の THE WORLD AT WAR のB型の足回り。B型キットでは起動輪も一体成型のため、表裏の歯が繋がって「厚切りなると」状態になってしまっている。

▼車体

常識的な上下分割。複雑なサスペンションはスライド型を用いた一発抜き。ショックアブソーバーの細いアームなどは「ロッド」ではなく「板」になってしまっているが、どのみち足回りの間からチラ見えする程度なので、(個人的には)これで十分。シャーシの後面はマフラー等一体。オーバーハング下は実車ではルーバーとかメッシュとかになっているのではと思うが、このキットではべったり埋まっている(が、これまたひっくり返さない限りは見えないので、このスケールなら気にしない)。

D型って、こんなにシャーシ後面が鋭くナナメなの? というのが若干気になったが、実車写真では陰になるのでばっちり確認できるものが見当たらない。なお、miniartの35のD型も似たような感じのようだ。

エンジンルーム左右の通風孔は別部品。

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  • OVM類は、ジャッキなど縦に高いもの以外は一体モールド。シリーズ共通ではあるが、消火器が「カマボコ形」になっているのはちょっと寂しい。THE WORLD AT WARシリーズのII号戦車のように別部品だったら嬉しかったが、まあ、この程度は我慢。
  • このシリーズ共通だが、操縦席左側のクラッペは車体上部と一体成型。抜きの方向の関係で形が潰れているのは致し方ないとして、THE WORLD AT WARのB型のクラッペはまだまだクラッペらしく見えなくもない感じだったのが、このキットではもっと崩れた形状。クローズアップで撮っておくのを忘れた。
  • シャーシ前面の四角いブレーキ点検パネルはシャーシと一体成型で、抜きの関係で上辺のエッジが斜めになっている。
  • 本来、B~D型では、主砲のクリーニングロッドはアンテナケース側面に取り付けられているが、キットではアンテナケース横のフェンダー上に取り付けるようになっているうえ、75mmクラスの主砲でないとおかしいくらいに太い。フェンダー上に取付穴が開いているのも困りもの。
  • 戦闘室とエンジンルームの間に本来あるべき分割線がない。
  • 車体前部牽引具上の左右の前照灯、車体後部のスモークキャンドルの取付位置が曖昧。前照灯はもしかしたら牽引具上にポチッと出っ張っている極小の突起の上に接着しろということなのかもしれないが、その場合は接着面が小さすぎてとてもまともに取り付けられない。
  • 車体前部の牽引具のL字ピンの頭が成型の都合で水平になっていて、見た目上もちょっとよくない上に折れやすい。

もっとも、ミニスケールのキットとしてはディテールは比較的細かい方だと思う。

▼砲塔

シリーズは違うものの、同じIBG社の手によるTHE WORLD AT WARシリーズのA型、B型と基本設計は同じパーツ。ただし細部ディテールのモールドは微妙に違っている。キューポラはB型までの単純な円筒形のものではなく、IV号戦車B型以降と同型のがっちりした装甲シャッター付きのもの。パーツは一発抜きだがそれなりの形になっている、と思う。

内部防盾と一体の主砲・同軸機銃のパーツは、明らかにTHE WORLD AT WARシリーズのB型と同じ設計データに基づくものなのだが、THE WORLD AT WARシリーズのB型ではスライド型を用いて砲口に穴のモールドを付けていたのに対して、こちらは単純な2面抜きで砲口部にランナーゲートが来ている。

ちなみにD型までの砲塔は、主砲は同じ37mmKwKでも、E型以降の砲塔とは(側面ハッチが片開きだ、というだけではなくて)基本設計自体が別物。砲塔前半部の傾斜もきつく、その分、砲塔前面はE型以降の砲塔よりも狭いはず。……というのを、最近まで「まあ、何か違うっぽいよね」くらいにしか認識しておらず、改めて資料をひっくり返して再確認した。

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  • 周囲のハッチ/クラッペ類は一体モールドで、そのため、下辺はきちんとエッジが出ておらず、砲塔本体とナナメに接続している。THE WORLD AT WARシリーズのA型、B型でも同様だったのだが、よりパーツを抜きやすくするためか、さらに下辺エッジがダルく感じる。
  • THE WORLD AT WARシリーズのA型、B型同様、同軸機銃が太過ぎ。車体前面機銃も同じMG34だが、そちらのパーツはまだマシ。
  • 主砲の駐退器カバー部分にヒケが出ていた。

●そんなこんなで、とりあえず組み上げてみた。

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8つ転輪の初期型III号戦車は後の6つ転輪の標準型よりも車体が長く、特にD型はB/C型よりも後端オーバーハング部が長いので、さらに間延び感がある(車体長はIV号戦車よりも長い)。

▼気になった箇所のみ、若干手を入れた。

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砲塔クラッペ・ピストルポートは一体モールドのため下辺エッジが斜めになっていて印象が悪かったので削り込んでエッジを立てた。側面ハッチについては、下側にある小リベットを再生するのが面倒くさかったのでそのままとした。砲塔上の手すりは0.3mm金属線に交換。

操縦手席左側のクラッペは、一体モールドでまるっきり形が崩れていたので(一度はそのままにしようと思ったのだが、結局我慢できずに)作り直した。対空機銃架左側に飛び出した部分がクラッペにかぶさるような形になっていて、このままでクラッペが開閉できない格好になってしまっているのだが、そのままとした。ちなみにTHE WORLD AT WARのB型も操縦手席左のクラッペは一体モールドなのだが、本キットほどは形が崩れていなかった。

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クリーニングロッドは作り直し、装着位置もアンテナケース側面に。フェンダーにあったパーツ取付穴は埋めた。気合の入った(そして工作力のある)ミニスケール・モデラーなら、埋めた後のフェンダーパターンも再生するかもしれないが、私はそのまま。ちなみに元パーツは右写真のように巨大。先端どころかロッド部分さえ37mm砲身に入りそうにない。

戦闘室とエンジンデッキの間には筋彫りを追加した。

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主砲と同軸機銃には穴開け加工。同軸機銃はいかにも太く、以前にIII号A型を作った際にはフジミ76のI号戦車のMG15のパーツの銃身と交換したのだが、ストックが尽きてきたのでこのキットに関しては左右から削り込んでほんの少し細くしただけ。

フェンダー先端裏側は削り込んで薄くした(前後とも)。牽引具のL字ピンは0.3mm金属線、前照灯の柄の部分は0.5mm金属線に交換した。

●FIRST TO FIGHT、THE WORLD AT WARの初期型III号戦車勢揃いの図。

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左からA型、B型(ここまでがTHE WORLD AT WARシリーズ)、D型(本キット)、E型(後2者がFIRST TO FIGHT)。E型はキットとしては指揮戦車E型のものだが、以前のレビューで書いたように中身は「通常の戦車型にアンテナを付けただけ」のお手軽キット。しかも履帯、フェンダー、転輪ディテールは40cmm履帯幅仕様になってしまっているなど、出来としては一段落ちる。

なお、FIRST TO FIGHTでは本キットのバリエーションとしてIII号指揮戦車D1型も出ているのだが、これは指揮戦車E型のキットとは大違いで、砲塔や車体上部は戦車型と別に新規にパーツを起こしているらしい。これはぜひ欲しい。

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III号指揮戦車E型 FIRST TO FIGHT 1:72

20191116_185457 ●買ったのは半月くらい前なのだが、バタバタして書いていなかったキット紹介など。

物はIBGが製造を請け負っているらしい、1939年戦役に登場した陸戦兵器に限った小冊子付ミニスケール・シリーズ、「First to Fight / WRSESIEŃ 1939」のIII号指揮戦車E型。

もともとIII号指揮戦車は好きでミニスケールなら比較的気軽に作れそうと思ったこと、このシリーズ自体もそこそこ気に入っていることが、ふらふら購入してしまった理由なのだが……。

結論から書くと、III号戦車(以下「戦車型」)とIII号指揮戦車の車体・砲塔の基本的な違いについては丸っきりフォローされておらず、単純に、戦車型のキットにアンテナ・パーツを追加しただけの、いっそすがすがしいまでのトンデモ・キットだった。

なお、キット内容とは関係ないが、箱絵では、どういうわけかエンジンルーム横の通風孔がD型っぽい形状になっている。IBG系のミニスケールでは、WORLD OF WARのII号戦車a1/a2/a3の箱絵も、何だか各型の特徴が入り混じっていて怪しかった。同じ画家かな……。

●とりあえずキット内容。いつもながら、箱絵と同じ絵の表紙のほぼA4版の解説小冊子(表紙含め12ページ、全編ポーランド語)。プラパーツは枝3つ(大2、小1)、ほかにデカール。

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写真1枚目:基本パーツ1。ロコ方式の足回り、車体上部、砲塔。

写真2枚目:基本パーツ2。車台、ほか小パーツ。

写真3枚目:指揮戦車用追加パーツ。フレームアンテナおよび左右のロッドアンテナ。なお、指揮戦車のロッドアンテナは左右で長さが違うはずだが、このパーツは長さが同じ。

写真4枚目:デカール。ポーランド戦時の白十字(のみ)。もしかしたら他キットとも共通かも。II号D型キットも白十字デカールだけだったはずだが、同じデカールだったかは未確認。

基本パーツ1&2に含まれる各パーツのディテールは戦車型のもので、おそらく、同じくFTFで出ている戦車型(III号戦車E型)のキットは、プラパーツ的には3枚目が付いているか否かだけの違いではないかと思う。いや、「もしかしたら砲塔の位置とかは戦車型と同じになってたりするかもなー。そうしたら移動させてやらんとなー」などとは思っていたのだが、まさかここまでとは……。

果たしてこれを「III号指揮戦車のキット」と考えてよいのかどうか大いに怪しいところで、最も平和的なこのキットの活用法は、通常の戦車型として組み立てることだと思う(戦車型用のアンテナも基本パーツの枝に含まれている)。仮にIII号指揮戦車として制作しようと思えば、アドバンテージは「フレームアンテナと2つのロッドアンテナ&ケースのパーツがある」だけ。もちろん、単純にフレームアンテナを追加するだけで、「わーい、さんごうしきせんしゃだー」と言って楽しむ選択肢もあるが(そもそも、それほど資料がなかった昔の認識はそんなものだった)、私の模型姿勢的には無し。実際には、戦車型と指揮戦車とでは砲塔の位置が違うだけでなく、細部ディテールが大幅に違うので、修正(というよりもう改造)はかなり遠い道のりとなる。しかも見た目はフレームアンテナ以外あまり変わらないので、それら作業の結果はいたって地味。

●そんなわけで、私自身「これはもう、戦車型で組むしかないよな……」と思ったのだが、一方で、「指揮戦車E型が作りたくて買ったのに……」と、諦めきれない部分も少々。以下、その辺も含みつつディテール・ウォッチ。

▼車体

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車体前部。よく見ると、なぜか前端装甲に増加装甲のボルトのモールド付き。なんでや……。また、ブレーキ通風孔の装甲カバーは、戦車型の場合はF型からのはず。指揮戦車E型の場合は(戦車型よりも生産時期がちょっと後ろにずれているせいか)通風孔カバーは付いていた模様。いずれにしtも、単純にモールドを削るだけなので、これの修正は楽。

戦闘室上面前端には、吊下げフックが左右と中央の3カ所にモールドされているが、これは、

  • 戦車型の場合は中央1カ所。
  • 指揮戦車型の場合は左右2カ所。

――のはず。戦車型、指揮戦車型の両方に対応できるように3つモールドでておいた……ということは(その他の箇所から判断すると)なさそうな気がするので、単純にミス?

操縦手側面のクラッペは一体モールド。無線手席側側面にはモールドがないが、戦車型はE型までは右側にはクラッペがないそうなのでOK。指揮戦車のキットとして考えると、右側にはクラッペが2つにピストルポート、左側にもクラッペ1つの他にピストルポートがなければいけないが、その辺は全無視。

戦闘室前面装甲板(写真右)もまるっきり戦車型仕様。ただし、機銃架のワクは何だか装甲板に一段めり込んだような形になっていて、ちょっとおかしい。指揮戦車型としては、機銃架(に見せかけたピストルポート)の枠の下側の切れ込みがないだけでなく、そもそも場所が戦車型よりももっと内側(もちろん、戦車型同様、ワクは埋まり込んだ形状にはなっていない)。

操縦手用の装甲シャッターは、戦車型の場合はキットのようなスライド式でいいのだが、指揮戦車E型では、はい人28号さんによると、ポーランド戦時には側面クラッペのような小型のものが付く妙な仕様になっていたらしい。その後は戦車型G型同様の軸動式のものになるそうで、要するに、戦車型E型のようなスライド式シャッターは用いられていなかったらしい。知らんかったよ……。トラクツによれば、戦車型E~G型、指揮戦車D1~E型、すべて戦闘室前面装甲は30mm厚だったことになっていて、となると、E型でスライド式シャッターが用いられなかった理由がよく判らない(ちなみに指揮戦車D1型ではスライド式シャッターが使われている)。

  • 戦車型D型 → 戦車型E型/指揮戦車型D1型 の段階で一度、
  • 戦車型E型/指揮戦車型D1型 → 戦車型G型/指揮戦車型E型 の段階でもう一度、

というふうに、2段階の装甲増厚があったとするとすんなり理解しやすいのだが……。

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エンジンルーム横の通風孔は一発抜きのため、フェンダーに垂直に一体化している。ロコ方式のキットであれば、これくらいの割り切りは当然かな……。上面はメッシュが貼ってある状態でモールド。そもそもメッシュは標準装備なので、格子になっているよりはこのほうがいい。もちろんメッシュからかすかに格子が透けているような芸コマなモールドならもっとよいが、さすがにそこまで求めるのは贅沢だろう。

フェンダー上のOVM類は、ジャッキを除いて一体成型。

戦車型として作る場合はこれでもいいのだが、指揮戦車の場合、左フェンダーの消火器とジャッキの前後関係が逆だったりと、OVMの配置に若干の違いがある。また右フェンダーには、戦車型のアンテナケースの脚の位置にダボ穴が開いていて、指揮戦車として作るとこの穴がそのまま残ってしまうことになる。根本的に手を入れようと思えば、フェンダーごと作り直す必要が出てくる。……ドットパターンはどうするんだ。

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車体後端は、下縁が一直線になってしまっている。ここは戦車型も指揮戦車型も真ん中辺でもっと上下幅がある形状のはず。また、マッドフラップを跳ね上げた際に尾灯が顔を出すための穴が再現されていない。

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砲塔位置の比較。左はキットの砲塔リング位置通りに砲塔を載せたもので、戦車型標準の砲塔位置。砲塔の後端は戦闘室上面からエンジンルーム側にはみ出す。右は指揮戦車型の砲塔位置で、砲塔後端はエンジンルーム側へははみ出さない。

▼砲塔

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砲塔は戦車型としてはそこそこのレベル、ではないかと思う。指揮戦車型は上面ディテールが大幅に違い、角型のペリスコープなどはない代わり、大型の伸縮式アンテナのためのハッチだの何だのが付いている。キットの天井板には(戦車型の)内部装備に対応した細かなネジ穴モールドが施されているが、これらは指揮戦車型にはない。

側面のクラッペの前方に跳弾リブがあるのは戦車型のみ。ただし、キットのモールドでは両方のクラッペにスリットが彫ってあるが、戦車型の場合スリットは右側面だけのはず。指揮戦車型は両方にスリットがあるが前述のように跳弾リブはなく、また、左右で高さが違い、右側面のクラッペは左側面よりも高い位置にある。

防盾カバーは、戦車型の場合、俯角を取った時に連装の同軸機銃の銃身が入る溝がワクの下縁にあるのだが、キットにはそれがなく、指揮戦車のダミー防盾の形状に近い(が、その程度が近くてもなあ……)。

▼足回り

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足回りは履帯も含めた一発抜きの、いわゆる「ロコ形式」のため、そもそも履帯表面のディテールなど望むべくもないが、接地リブ部分はちょっと左右に突き出し過ぎな感じ。そして起動輪に巻き付く部分だけ、変な横リブ入りで「二」の字の連続みたいになっているが、これは履板から突き出た起動輪の歯をCADで適当に処理した結果かもしれない。余計なことを!(笑)。

起動輪、誘導輪の表現は(一体成型で隙間もないことを除けば)それなりだが、転輪は、リム部との境のリングが立ち上がり過ぎていて後期型転輪っぽい。そしてなぜか、サスアームが転輪に食い込む形でモールドされているのは印象が悪い。

●……と、つらつらチェックしていくと、ますます指揮戦車への道のりの遠さにげんなりしてきて、戦車型のまま組む方向にさらに傾き中。

なお、35の指揮戦車E型に関しては、以前にSUMICONで指揮戦車H型を作った「はい人28号」さんが、最近やはりドラゴンベースで完成させている。

→はい人28号さんのIII号指揮戦車E型

はい人28号さんはIII号指揮戦車系列のコンプリートを目指しているとかで、新たに指揮戦車D1型を製作中。あれ。miniartで発売予定じゃなかったっけ……と思ったら、いつのまにかカタログから消えているらしい。指揮戦車D1型は戦車D型と違って、車体前部ハッチが左側しかないとか、車体前面装甲板の上下が組み継ぎになっているとか、上部転輪の位置も違っていそうとか、車体幅も違うかもしれないとか、なんだか今まで気付いていなかった点がボロボロ出て来て目からウロコ。

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II号戦車b型 THE WORLD AT WAR 1:72 (2)

●前回記事はこちら

キットは、「元号が令和に変わってから、私が初めて買った」もの。クブシュを工作する一方で、こちらも中途半端に形にして、先行の同メーカーのII号a1/a2/a3と並べて見比べたりしていたのだが、ここ最近になって、なんとなく気になって組み上げてしまった。

そのうちこのへんのミニスケールはまとめて塗装したい。

●というわけで、工作完了状態のお披露目。

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前回記事でも書いたが、b型までの特徴、側面の燃料注入口は、a型キット同様、一体モールドで形が潰れてしまっていてみっともないので、ポンチで打ち抜いたプラペーパーと、0.3mmプラバンから削ったヒンジで作り直した。実はここの工作が面倒で、主要パーツだけ組んで放り出してあったというのが真相。

もっとも工作したあとで実車写真をよく見たら、ヒンジの形状がちょっと違っていた(というのがはっきり判るほど工作の精度が高くはないのでそのまま)。また、a型キットでは別部品だった操縦手席右側クラッペも一体モールドだったので、ここも一旦削り落とし、キットの不要パーツで追加工作した。

その他はおおよそ素組み。若干気になった細かな部分は以下の通り。

・同じくIBGが手掛けている「FIRST TO FIGHT」シリーズと違い、こちらは割と細かくOVM具類は別部品化されている。しかし、工具類のパーツには取付ガイドの凸があるのに、フェンダー側は、一部を除いて凹が無い。場所により、フェンダー側に0.5mmのドリルで穴を開けたり、工具側の凸を削り取ったりして対応。

・OVMのうち、右フェンダーに乗るS字シャックル(ワイヤカッター後方)は、a型キットではフェンダーに対し横向きに、このb型キットでは縦向きに付けるよう図示されている。実車でどうなっているか、はっきり写っている写真を見つけられずにちょっとモヤモヤしたが、結局、「フロントバヤ……」のII号戦車の巻に出ていた図を頼りに斜め向きに付けた。

前回記事で書いたように、私の入手したキットでは、砲塔ハッチのダンパーの片側が潰れていたので、削り取って伸ばしランナーで再生した。

・砲塔右側下縁に、わずかにヒケ状の窪みがある(a型キットにもあったので、おそらく金型自体にあるミス)。a型では放置してしまったが、今回はプラ片で埋めて削り直した。

・やはり起動輪はふくらみが足りない感じで、c型以降の標準型起動輪と同じに見える(b型のみふくらみが大きい)。とはいえ、さすがにこの部分は厄介なので放置。

●先行のa型、およびFIRST TO FIGHTのD型と並べて記念撮影してみた。a型の寸詰まり加減が判る。

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II号戦車b型 THE WORLD AT WAR 1:72

20190517_195110 ●先日(令和初の購入キットとして)入手した、THE WORLD AT WAR 1:72のII号戦車b型(PANZER KAMPFWAGEN II ausf.b)の簡単なレビュー。

これに先立って発売されているII号戦車a1/a2/a3型についてはこちら

以前にも書いたが、「THE WORLD AT WAR」シリーズはポーランドのメーカー、IBGのミニスケール専門のレーベル。同社では単にIBGレーベルでも1:72のAFVキットを出していて、「THE WORLD AT WAR」シリーズがどういう切り分けになっているのか少々はっきりしないが、とりあえず、今のところこのシリーズでは第二次大戦初期のドイツ戦車しか出ていない。

なお、少し前に書いたが、基本同シリーズは1:72スケールなのだが、IV号戦車系列は、どうやら設計の際に寸法を間違えてしまったらしく、最初のA型は「1:72」表記で出たものの、その後のB型以降は「1:76」表記に改められている。ミニスケールの72と76なんて誤差だよ!なんて開き直ることなく、スケール表示を改めたのは潔いと言えるが、そのため、同一シリーズで2種のスケールが並列するという妙な格好になってしまった。

また、1939年のドイツ・ポーランド戦の1:72両軍AFV/車輛/砲/フィギュアを出している「First to Fight」シリーズは、発売元は違うようだが、キットそのものはIBGが手掛けているようで一部設計データは両シリーズで共通している。

●キット内容。シリーズ共通の構成で、キャラメル箱の中身はプラパーツと、折りたたまれた実車解説の小冊子。小冊子は表紙を含めて16ページ、英語とドイツ語の併記(輸出仕様)。

プラパーツは枝3枚で、デカールが1枚。

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Lパーツ(写真1枚目):車体、足回り。おそらくプラパーツとしては、これのみがこのキット専用のもの。

Mパーツ(写真2枚目):砲塔および装備品類。a1/a2/a3型キットおよびA型キットと共通。

Nパーツ(写真3枚目):マフラー、工具箱、スリットのないクラッペ等の小さな枝。A型キットと共通。

デカール(写真3枚目):塗装例2種に対応。ポーランド戦時の黄十字と、フランス戦以降のものと思われる第10師団第7連隊所属車(ステンシルのバイソンと大きな「5」の砲塔番号)。

●車体形状は前型のa1~3型とも、後のc型とも異なっているので、前述のようにb型専用のパーツ。a1~3型とはエンジンルームのディテールがかなり違い、車体長がa1~3型のほうが短い。b型では車体後部が延長され、後の標準型II号(c、A~C型)とかなり近い形状になるが、エンジン上部の傾斜面が後部でたち切れ、後端グリル部分が独立した形になっていたり、フェンダー後半部が後ろ下がりになっていたりと、なお若干の差がある。戦闘室後ろのハッチも、c初期型までの2分割式。

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写真1枚目:b型の車体形状、特に後部ディテールはかなり頑張って再現している感じ。車体上下パーツの接合線の隙間が後端グリルに掛かっていて、何か方法を工夫して消すか、放置するかちょっと悩ましいところ。

写真2枚目:車体右側面の2つの燃料注入口の小丸ハッチ、その後ろのエンジンルーム側面吸気口は一体モールドの都合でやや不十分な再現度。これはa1~3型キットでも同様だった。右前部クラッペは、a1~3型キットでは別部品だったが、このキットでは一体モールド。なぜか、後の型の特徴であるはずの跳弾リブのようなモールドもある。

写真3枚目:車体前面に一体モールドされている牽引具と点検パネルは、a1~3型キット(右)と比べて位置がかなりずれている。小パネル上のリベットの数・位置が変更になっているのは実車もそうなのだが(a1~3型は7カ所か8カ所、b型は左右2カ所)、このキットのように、位置まで変更になっているのかどうか……。少なくとも、このb型キットの位置は(牽引具も含めて)ちょっと上過ぎる気がする。

●足回りはa1~3型と起動輪の形状が大きく異なり、後の標準型II号(c、A~C型)とよく似た形状になった。

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ただし実際には、c、A~C型と全く同じではなく、おそらくファイナルギアケースの形状が違っているためなのではと思うが、b型の起動輪のほうが、後の型よりもふくらみ方が大きい。キットの起動輪はパッと見、後の型と同じくらいのなだらかさで、膨らみ具合が不足しているように思う。上部転輪はa1~3型よりも小径化されており、その辺はきちんとフォローされている。

ただ、よく見ると、a1~3型キット同様、履帯の巻き方が逆方向になっている。ロコ方式の一体成型なのでそもそも大したディテールもないため、それほどうるさく言うほどのこともないかもしれないが。

●砲塔パーツは、おそらく「THE WORLD AT WAR」シリーズのII号戦車すべてに共通のもの。Mパーツの枝に含まれるクラッペは、a1~3型に合わせてすべてスリット付きのものになっているが、b型以降用に、スリットのないフラットな形状のクラッペが別枝(Nパーツ)で用意されている。なお、私の買ったキットでは、砲塔ハッチ上のダンパーのモールドが、片側が型抜き時の事故で?潰れていた。

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First to Fight 1:72 クルップ・プロッツェ(ポーランド軍仕様)(3)

●そんなん、ちゃっちゃと形にして終わりだろう……という気も(自分でも)しないでもない、FTFの1:72、ポーランド仕様クルップ・プロッツェの続き。

●前回時点で未工作だった細かいディテールを付加。ふと思い立って「ここもちょっと手を入れよう」とか思い始めない限りは、これで工作は終了。

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・プロッツェの車幅表示棒は、先端が球ではなくて円盤状。要するにペロペロキャンディのような形状。そのまま棒の先に円盤を接着しても今後の作業中に取れてしまいそうだし、どうしようかしばし悩んだのだが、結局、次のようにした。

(1).コントレールのプラ丸棒に穴を開け、直交するように0.3mm真鍮線を通す。

(2).真鍮線を接着後、プラ棒を真鍮線の前後で輪切り。さらにやすりがけして、できるだけ(真鍮線から取れてしまわない範囲で)薄くする。

・ウィンドウ左右につく方向指示器についても、似たような方法で、0.5mmプラバンの細切りに0.3mm真鍮線を刺して作成した。

・運転席側の方向指示器の下には、ホーンなのかスポットライトなのか(たぶん後者)、ポーランド仕様独自であるらしい何やらが付いているので、ジャンクパーツを切ったり削ったりで製作し取り付け。

……などなど。

●ちなみにこのネタの初回記事で、キットのデカールについて「車輛登録番号6種に対応。……これって写真で確認できた全番号を入れてるんじゃないだろうか。」と書いたのだが、私がネット漁りをして見つけた写真ストックの中で、しっかりナンバーが確認できるのは「13185」号車だけだった。

キットのデカールに含まれているのは、

13182 13183 13185 13186 13187 13189

の6種。もしこれらがすべて写真で確認できているとすれば、私の知らないポルスキ・プロッツェの(一応番号が確認できるほど鮮明な)写真がまだまだそれなりに眠っている、ということになる。

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First to Fight 1:72 クルップ・プロッツェ(ポーランド軍仕様)(2)

●年末にレビューを書いた、FTFの1:72、ポーランド仕様クルップ・プロッツェの続き。

仕事が滞って、腰を据えて模型製作をする余裕もないが、そんななかでちまちまいじって、それなりの形になったので途中経過を少々(まだ工作完了ではない)。

●現状全景。

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▼手を入れた個所は以下。

・2列目の席左右のガードを金属線で作り変えた。後ろ側はシートの横に引き込まれる感じにしたが、シートの後ろ側を通って左右が連結している可能性もありそう。なお、シートの背は、キットでは成型の都合で垂直になっているが、実車はナナメ。

20190110_224347 ・後部の折りたたまれた幌は、キットのパーツは「メレンゲを垂らしたの?」みたいな状態だったので(右写真)、なんとか布っぽく見えるように皺を彫り込んだ。そもそも幌骨が何本あるかとか、車体にどう繋がっているかとかもわからず、表現としても不自然だが、とりあえず元パーツよりはマシになったかな? もっとも、畳んだ幌の上からさらにカバーを掛けている状態を示している可能性もあり、その場合は余計な工作をしたことになる。なお、実車では、畳んだ幌がもっと後方にオーバーハングしているかもしれない。

・操縦席のレバー類はキットのモールドを削り落とし、金属線でそれらしく作り直した。ノブ部分は瞬着のダマ。

・前照灯は、後々UVレジンなどでレンズ部分を表現することを考えてくりぬいた。また、バンパーとフックも縁を若干薄削りした。

・運転手側ウィンドウの上下分割フレームを取り除いた。また、前席左右前部にモールドしてある「畳んだシートドア」は削り取った。

▼まだ手を入れていない箇所、手を入れなかった箇所

・車幅表示棒は金属線で作り直す予定。キットのフェンダーにモールドしてある表示棒の接着位置はちょっと下過ぎる感じなので、とりあえずモールドを埋めているところ。

・方向指示器はドイツ仕様とポーランド仕様とでは取付位置が違うので削り取ったが、ポーランド仕様の位置(ウィンドウ枠左右)への新設はまだ。なお、ウィンドウフレームに直接付いているように見えるので、ポーランド仕様ではフロントウィンドウは可倒式になっていない可能性がある。

20190112_233120 ・組み立てたシャーシ裏側は右写真のような感じ。前回触れたように、後輪サスペンションは微妙に形状が違い(L2H43であるはずがL2H143になっている)、部品構成的にも一体モールドで大味だが、組んでしまえば全く見えないのでスルー。前輪もステアリングロッドなどさっぱり省略されているが、これもスルーした。

●先に組み立てたC4P牽引車とのそろい踏み写真。

全長はクルップ・プロッツェのほうがだいぶ長い。C4Pが小さいのか、プロッツェがでかいのか……。

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First to Fight 1:72 クルップ・プロッツェ(ポーランド軍仕様)

●なんと3日続けてFTFネタ。

C4P牽引車の記事を書いたところで、それよりも前に同じくFTFのポーランド型プロッツェを買ってきて、レビューを書こうと思いつつそのままだったことを思い出した。

今年の6月、ローデンのホルト75、IBG(THE WORLD AT WAR)のII号戦車a1~a3型と一緒に、これまた下北沢のサニーで購入したもの。

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製品番号050、製品名は「KRUPP PROTZE W WERSJI POLSKIEJ」(クルップ・プロッツェ ポーランド仕様)。

●実車について。

クルップ・プロッツェ(クルップ・ボクサー)は、ドイツ・クルップ社製の有名な軍用6輪トラック……なのだけれど、キットは珍しいポーランド軍仕様。当然ながら、インジェクションキットとしてはこれまた初のキット化。

プロッツェ自体は超有名車輛だが、ポーランド軍仕様は非常に謎が多く、資料としては、はなはだ不十分な写真が少数あるだけではないかと思う。私が知っている限りでは、それなりにディテールが判る程度に鮮明な写真は、一部が写っているだけの2、3枚。あとは、全体のスタイルが判るものの不鮮明な写真が数枚。なんとか「あ、プロッツェだ」とと分かる程度のボケボケ写真を合わせても、全部で10枚あるかないか程度。……よくそんな車輛をキット化したものだと思う。

上の箱絵を見て貰った方が早いのだが、ポーランド仕様のプロッツェは前向き3列の座席を持つスタッフカー型で、ハンガリー軍仕様のようなドアは無し。ただし、ハンガリー軍仕様と似たマクドナルドのロゴのような後輪フェンダーを持つ。

使われた台数もはっきりしないが、少数が第10騎兵旅団(いわゆる「黒旅団」)に配備されたらしい。第10騎兵旅団はスタニスワフ・マチェク大佐率いるエリート機械化部隊で、軽戦車をはじめとする各種装甲車輛・ソフトスキンを多数装備。軍装も独特で、第一次大戦型のドイツ軍型ヘルメットやベレー帽、黒革のハーフ・コートを着用していた。……ドイツ軍と間違われたりしなかったんだろうか。

なお、マチェク大佐(後に将軍)と第10騎兵旅団は奮戦しつつハンガリーまで後退、その後フランスに逃れて第10装甲旅団としてルノーR35等を装備して戦い、さらにその後はイギリスで編成されたポーランド第1機甲師団の中核となって、ノルマンディーではファレーズで奮戦している。ポーランド人しぶとし。

●キット内容。

パーツ構成は以下の通り。

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写真1枚目の左側の枝(エンジンボンネットとウィンドウ+ダッシュボードなど)と写真2枚目の枝(シャーシとタイヤなど)は、同じくFTFから出ているドイツ軍仕様のプロッツェ(対戦車砲牽引型のSd.Kfz.69と兵員輸送型のSd.Kfz.70)と共通パーツだろうと思う。また、FTFからはプロッツェベースの装甲指揮車、Sd.Kfz.247 ausf.Aも出ていて、シャーシはこちらとも共用のようだ。

私が持っているFTFの車輛キットのなかでは初めてフィギュア付き。また、FTFのポーランド軍車輛のキットとしては珍しくデカール付き。車輛登録番号6種に対応。……これって写真で確認できた全番号を入れてるんじゃないだろうか。

●若干の細部チェック。

エンジンフード部分はスライド型を使って前面グリルを一体モールド。このスケールであれば十分な出来だと思う。ただ、ドラゴンやICMの同スケールのプロッツェと比べてどうか、というのは未確認(もちろん両社のキットはドイツ軍型)。

ウィンドウ+ダッシュボードは、計器類等はそれなりのモールド。ただし、運転席側ウィンドウが2分割されていることと、方向指示器の位置はドイツ軍仕様(ポーランド仕様では方向指示器はウインドウ枠横)。ワイパーは流石にゴツイ……。

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ポーランド型独特のボディはもっさり気味だが、そもそもろくな資料もないので仕方ない面もあるかも。独特の「マクドナルド・フェンダー」(勝手に命名)は予備タイヤと一体の別部品。一体モールドの中列座席横の手すり(というかひじ掛け? 転落防止バー?)は太めのうえに内側が平らで、あまり見栄えが良くないので金属線か伸ばしランナーで作り替えた方が良さそう。

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シャーシはサス部のダブルウィッシュボーンがブロック状に一体成形。後輪の前後を連結するはさみ式サスアーム形状は、プロッツェのなかでもエンジンが強化された後期型、L2H143のものなのだが、ポーランド軍仕様は、“Pojazny w Wojsku Polskim (Polish Army Vehicles) 1918-1939”によれば初期型のL2H43シャーシ。L2H143とL2H43では後輪の間隔も僅かに違うのだが、模型的には誤差の範囲。サスアーム形状も組んでしまえばほぼ見えない。

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フィギュアは第10騎兵旅団のベレー帽&ドイツ軍型ヘルメットのコート姿の兵士が1体ずつ。

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