75mmM1897野砲

1897年式75mm野砲 IBG 1:35

20191001_100524 ●先日購入した、IBG 1:35 「75mm Field Gun Mle 1897 Polish Forces in the West」(IBG 35057)の簡単なレビュー。

前回も書いたように、キット名称の「Polish Forces in the West」は、イギリスで再編成された(亡命)ポーランド軍を指すらしい。この仕様自体については後述。今のところ、同社からはバリエーションとして、このポーランド軍仕様の改修型のキットと、フランス軍仕様のゴムタイヤ付き改修型のキット(IBG 35056)の2種が出ている。IBGのこれまでの製品ラインナップ傾向から考えると、この後、木製スポーク車輪付きのオリジナル状態のものや、1939年戦役時のポーランド軍仕様の改修型(フランス軍仕様とは異なるホイール形状の大径ゴムタイヤ付き)なども、ほぼ確実に出るものと思われる。

さすがに対空砲型まで出るかどうかは判らないが、個人的には、ぜひIBGにはハッチャけてもらって、ド・ディオン・ブトンに搭載した対空自走砲まで行って欲しい。無理かなー。

●実物について。

「1897年式75mm砲(Canon de 75 modèle 1897)」は、フランス国営工廠製の野砲で、名称にある通り、登場は第一次大戦前に遡る(実際に正式採用されたのは翌年の1898年だったようだ)。世界初の油気圧式駐退復座機を持った、近代火砲の祖と呼べる砲で、戦車におけるルノーFT、レシプロ戦闘機におけるポリカルポフI-16のような存在(判りにくい例え)。しばしば「シュナイダーの75mm」と呼ばれるが(昔のTOMのキットのように、模型でもその名前で出ていることがある)、これはシュナイダー製であるという誤解に基づくもので正しくない。

第一次大戦ではフランス軍に多数使われたほか、サン・シャモン戦車の搭載砲にもなった(後期型のみ)。アメリカ軍にも供与され、その後、アメリカでは独自の発展も遂げて、M3ハーフトラックに搭載された対戦車自走砲も作られた。M3リーに搭載されたM2 75mm戦車砲もこの砲の流れを汲むものという話もあるが、そちらはどうやらガセらしい。

ポーランドは戦間期に多数を入手、第二次大戦勃発時には1000門を超えるこの砲を保有していたらしい。1939年戦役におけるポーランド軍の本砲に関しては、毎度のことながら、PIBWL military siteを参照のこと。フランス本国でも1940年当時多数が現役で、結果、ドイツ軍もごっそりとこの砲を入手し、以前に私が作った「ぼいて75mm対戦車砲」、PaK97/38に化けることになる。ちなみに私が作ったPaK97/38は、この状態のまま放置されている。しょうがねーなー。

上記の通り、この砲の最大の特徴は「世界初の油気圧式駐退復座機」装備にある。それに付随した、この砲独自の見た目上のポイントが、砲口近くの下側に付いている“エラ”のような突起。PaK97/38作成時に調べて判明したことだが、この突起は、砲身が最大に後退した際、複座レールに入り込むガイドで、模型のパーツを使った解説はPaK97/38作成時の記事を参照して欲しい。ほか、“リボルバー”式の尾栓も、他の砲ではあまり見ないような気がする。砲架はこの時代にはオーソドックスな単脚式。

●キット内容は、プラパーツの枝が5枚と、小さなエッチングシート、デカールが各1枚。カラー印刷8ページの組立説明書。

……というのが私が買ったキットの箱の中身だったのだが、組立説明書には、プラパーツは3種4枚分しか図示されていない。どうも、本来入っているはずのない他バリエーション用のパーツが間違えて紛れ込んでいたらしい。とりあえず、私が買ったキットの中身は以下の通り。

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パーツA(写真1枚目):大きめの枝で、砲の基本パーツ一揃い。一応、それなりのディテールの細かさを持った、今風の火砲のキットという感じ。この砲の1:35インジェクションの先行キットとしてはTOM/RPMのものがあるが、砲身と駐退レールが一体で非常に大味だった同キットよりは格段に優れる。

パーツD(写真2枚目):防盾と照準器。当然ながら、実物はペラペラの鋼板だが、キットのパーツは厚みが0.7mm程度ある。このあたりは、インジェクションキットとしては仕方のない部分といえそう。

パーツG(写真3枚目):このキットの仕様独自の部分で、本来の位置からクランク状に一段低められている車軸と、他の仕様よりも小径のゴムタイヤ。

パーツB(写真4枚目):もともとの木製スポーク車輪や、それと同径のゴムタイヤ用の車軸、ブレーキ、ブレーキ用ロッドなどなど。一部使う部品があってセットされているのかと思ったが、どうやら単純に入れ間違いだったらしい。

エッチング&デカール(写真5枚目):デカールは個別の砲の愛称?と思われる女性名が3種。説明書の塗装解説によれば、1942年英本土、ポーランド第一装甲師団第一機械化砲兵連隊。

説明書(写真6枚目):組立の図説は割と細かくステップ分けされていて、それなりに判りやすそうな感じ。

●細部について少々。

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砲身は(砲口部分を除いて)PaK97/38と同じだが、イタレリでも無視されていた、砲尾部分の左右非対称がちゃんと表現されていて好感が持てる。砲尾は右下部分が左下に比べ余計に外側に膨らんでいる(オレンジ矢印部分)。

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防盾上端には、細かいリベットが並んでいる。キットのパーツは表側(左)も裏側(右)も同じ表現で、そもそもこのリベット列が何のためにあるのかもわからない具合になっているが、実際には、このリベット列は防盾裏側に細いL字材を止めるためのもの。もしもどこからか、このキット用のエッチングのアフターパーツが出るようなことがあればセットされそうだが、出るかなあ……。

また、表側の中央に縦に帯材がモールドしてあって、中央にリベット列がある。しかし実際には、この帯材は、左右分割された防盾の隙間をカバーするため、右側防盾にリベット止めされたものなので、当然ながら、リベット列もそちら側に(表側から見れば左側に)寄っていなければおかしい。

なお、キットは砲本体だけで、砲弾も弾薬箱もセットされていない。個人的には、弾薬リンバーも追加でキット化して欲しいところ。

●前回書いたように、私は「ポーランド」という単語だけに反応して、1939年戦役時のものだと思い込んで買ってしまったのだが、それはそれとして、この「亡命ポーランド軍仕様」というのが、(前回、hn-nhさんにもコメントで聞かれたのだが)いまひとつよく判らない。

キットの説明書は上記のように組立説明は丁寧だが、砲自体の解説は一切なく、手掛かりは塗装図の「1942年英本土、ポーランド第一装甲師団第一機械化砲兵連隊」しかない。

もちろん、ポーランド本国から持って逃げたわけはなく、フランス軍下で再編成されたポーランド軍は本砲を使っていそうだが、それもまた、ダンケルクから持って逃げる余裕があったとは思えない。

PIBWL military siteも1939年より後のことには触れていないのではっきりしたことは判らないのだが、英語版wikipediaの「Canon de 75 modèle 1897」の項に若干のヒントがあった。

これによれば、イギリスは第一次大戦時、対空砲仕様の本砲をフランスから購入、また通常型(?)の本砲も追加で輸入したが、これもまた対空砲架に載せた仕様に改装されたらしい。というわけで、これが亡命ポーランド軍に渡った可能性はなさそう。しかし1940年、ダンケルクで大量の装備を失った穴埋めに、アメリカから1897年式75mm野砲を、ある程度まとまった数(wikipediaによれば895門)、輸入したらしい。ただし、アメリカ製の本砲は、1930年代にほとんどが開脚砲架付きに改修されたようなことが「US Service」の段に書かれているし、そもそもアメリカ製の砲は、後期の型は(M3自走砲に見られるように)外観自体が大きく違うので、「1940年にイギリスが買った」ものが、ほぼオリジナルのままだったのかどうか、という疑問もないわけではない。が、とりあえず現時点では、

「イギリスがダンケルクの損失を補う目的でアメリカから購入した旧式砲を、亡命ポーランド軍の装備として一定量下げ渡した」

という可能性が最も高そう。独特の小径タイヤに関しては、(1).アメリカにおける改修、(2).イギリスにおける改修、(3).自由ポーランド軍独自の改修、という3つの可能性があるが、とにかく現時点では情報が少なすぎて何とも言えない。

なお、この仕様の本砲に関しては、あれこれ検索した結果、IWM(Imperial War Museum)由来の写真をようやく一枚見つけることができた。wikimedia commonsより引用。

Allied_forces_in_the_united_kingdom_1939

牽引車の後面に掲げられた「PL」で、イギリス軍下のポーランド軍であることが判る。キャプションによれば、キットの塗装例と同じく第一機械化砲兵連隊の所属。時期はキットの塗装例より若干早く1941年、スコットランドのセント・アンドリュース近郊における撮影。牽引車はモーリスC8 FATであるらしい。

というわけで、由来はどうあれこの仕様の砲が実在することは確認できたが、補給等々の問題を考えても、ノルマンディ上陸以降の実戦では25ポンド砲あたりが使われて、この砲はイギリス本土での訓練用だけだったのではないか、という気がする。

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ぼいて75mm資料写真+α

●前回予告の通り、“かさぴー”こと、かさぱのす氏から頂いたフィンランド土産写真を何枚か。

最近、フィンランドでは、戦時中に使用されたダグラスDC-2「ハンシン・ユッカ」号が美しくレストアされて公開され、かさぱのす氏は遠路それを見に行ったのだそう(うらやましい)。ハンシン・ユッカ号とはどんな飛行機だったのかというエピソードも面白いのだが、ここでは割愛する(興味のある方は「北欧空戦史」を読んでいただきたい)。

さて、氏曰く、「今回もやたらあちこちでPaK97/38に出くわし」たのだそうで、モデラー視点の思わずウヒウヒ言ってしまうような(←キモチワルイ)写真を撮ってきてくれた。実際は頂いた分だけでももっと数があるが、今回はそのなかから、個人的にこれは面白いと思うものをいくつかピックアップした。

全部見たい!という人は、いずれ、かさぱのす氏のサイト「あんてーくし」に載ることを期待しよう。

●まずはミッケリ歩兵博物館にある屋外展示品。

Gedc9260b▼写真右下隅に見える車体後端でわかるように、T-20コムソモレッツに牽引された状態で展示されている。wikimedia commonsに何枚か写真が上げられているものと同一個体だが、commonsでは牽引状態になっていないので、その後展示状態が変更になったのだと思う。

車輪はスポークが凹凸交互になった穴開きタイプで、基本、イタレリのキットに入っているのと同じもの(ただし、イタレリのパーツはリムの取付が表裏逆のようだ)。フィンランド軍が使用したPaK97/38は、写真で確認できる限りどれも穴開きタイプを使っている。このタイプは、穴なしタイプに比べ、ゴムリムの幅が増しているようだ。

Measureedgedc9260b▼そしてこういうのがモデラー視点の有難いところで、かさぴー氏は、わざわざ砲身の主要寸法を計ってきた由。私自身はPaK97/38をもう一度は作らないと思うが(さすがにあれを再度やるのはちょっと……)、今後作る方は参考にしてほしい。

写真に示された部分はそれぞれ、

A:マズルブレーキ先端(謎突起の手前まで)の長さ=305mm
B:マズルブレーキから謎突起後端までの全長=405mm
C:マズルブレーキから砲身前端中央(第一の窪み)までの全長=1110mm
D:中央の窪みから砲身前端後部(砲盾手前、第二の窪み)までの長さ=870mm

なお、謎突起とあるのは、実際には、砲身が後座した際に駐退復座レールにはまり込むローラー(これについての考察は、過去記事を参照のこと)。また、砲身前端(マズルブレーキから砲盾手前まで)の全長は1980mmだそうだ。数値には若干の測定誤差もありえるのであくまで参考に、とのこと。

現行2種あるPaK97/38の1:35インジェクションキットだが、ドラゴンは各部バランスがだいぶおかしく、イタレリ製のほうがスタイルがよいが、寸法的にもイタレリが近いのが確認できると思う(ただしイタレリのものはマズルブレーキが大きすぎ?)。

Gedc9270b▼防盾正面。

防盾は50mmPaK38からの流用なのだが、PaK38より砲身が太いので、開口部上部の形状は修正されている。この写真を見ると、開口部上端のカーブはなんだかちょっとガタガタしているので、PaK38用としてすでに生産されていた装甲板を削り直して使っているのかもしれない。

砲身が一段太くなり、駐退複座レールにかかっている部分には、左右2カ所の突起とボルト頭がある。この写真ではボルト頭が突起の上に付いているが、私は突起の横に付けてしまった。うわあ、間違えた!?……と思ったのだが、横に付いている個体も確かにあった。謎。

謎といえば、下部防盾の上下に付いている、ちょっとつぶれた筒状の突起も用途不明。下の小さいほうの筒は、表裏両方に付いているらしい。

なお、これを1:35の模型で再現するのは難しそうだが、防盾の尖頭ボルトにはすべて横穴が開いている。ゆるみ止めの針金通し用? それともスパナ無しで棒で締緩できるように?

Gedc9262b▼砲尾。砲身それ自体は、もともとフランス製のM1978 75mm野砲のものなので、フランスの工廠の刻印、製造番号が入っている。写真ではちょっと見づらいが、この個体の製造年は1915年。メーカー名は、この「A.BS」が最もよく見られるが、他にも何種類か確認できるようだ。

尾栓は隔螺式でも鎖栓式でもない独特の形式(円形であるという点では隔螺式に似ているが、スライドさせて開閉する機構的には鎖栓式に近い)。

尾栓中央にある撃針をハンマーでパッチンと叩いて発射するのは拳銃などと同じ。右写真では頭が見切れているが、ハンマーが起きた状態になっている。撃針部分は安全装置が掛かった状態になっている。意外だったのは、安全装置のノッチ上に刻まれているのがドイツ語であることで、左はSICHER(安全)、右はおそらくFEUER(発射)。つまり、砲身はフランス製でも尾栓はドイツ製ということになる。尾栓は発射の圧力を受け止めるので、砲身より寿命が短い?

砲身上のブロック状の部品はオリジナルのM1978 75mm野砲には見られず、また、一部製造番号を削って取付られているので、ドイツで付けられたものらしい。この写真には写っていないが、左側にある照準器の台座と同形のように見える。もっとも、繊細な光学機器をこんな場所には取り付けないように思うし、防盾も邪魔になる。何に使われるのか謎。この部分にカバーが被せられていることも多い。

Gedc9268b▼脚後端の駐鋤。ちなみに脚は50mmPaK38と基本同一。

開閉用(?)の取っ手は、向こう側が畳んだ状態、手前側が起こした状態になっているので、それぞれ、どのようにロックされるのかがよく判って興味深い。

牽引用のリングは手前側の脚の駐鋤に取り付けられていて、リング基部は駐鋤上端で3カ所、面部分で左右3カ所ずつ、計9カ所でボルト止めされている(右写真では面部分の3カ所と上端の1カ所だけ確認できる)。別個体では面部分のボルト頭がキャッスルナットのものも確認できる(単純に方向が逆になっているだけかも)。手前側の脚だけ、駐鋤付け根部分が一段太くなっているのは牽引時に力が掛かるための補強かと思われるが、拡大型のPaK40では両方同じ太さになっているようだ。

Gedc9272b▼右脚中ほどに付いているトラベルロック。左右の脚を閉じ、砲に若干の仰角をかけ、このロックアームの前面にある2つのくさびを駐退複座レール後端の穴(写真右上にわずかに見える)に差し込み、ロックアーム左側は左脚に固定する。

2つのくさびは、この写真では右が縦、左が横になっているが、自由回転してこんなふうになっているのか、もともとこういう形に固定されているのか不明。なお、私は左右同形に作ってしまった。

脚上に付いている可倒式のツメは、駐鋤部に取り付ける、人力移動用補助車輪用。補助車輪も砲の車輪と同形なのだが、(このツメの寸法から考えて)穴なしホイールの薄いタイプしか使えないようだ。

●パロラ所蔵のもの。

Gedc8653b▼駐退複座器前面や、砲身先端のローラー部分のディテールがよく判る。このローラーはオリジナルのM1978 75mm野砲にもあって、この砲の特徴になっている。

ただし、オリジナルのM1897 75mm野砲ではローラー基部は砲身から直接出ているのに対して、PaK38/97では、マズルブレーキを取り付けるための都合なのかどうかよく判らないが、砲身とは別体の基部が新造されている。この写真でよく判るように、新造されたローラー基部の円筒は、砲身よりも下方に偏心している。いい加減に取り付けられているわけではなく、最初からそのような形状。

なお、上で触れたように、下部防盾に付いている筒状の突起(小)が、防盾裏にもあるのがこの写真で確認できる。

Gedc8656b▼同一個体の車輪。

よく見ると、ミッケリ歩兵博物館所蔵の砲とはリム部分の形状が違っていて、スポークにボルト止めする部分だけがフランジになっている。

画像検索すると、カナダのバーデン基地博物館で保存されている個体もこの車輪を付けているようなので、これももともとドイツ製なのは確かなようだ。

Gedc8778b●最後の1枚はハメーンリンナのもの。砲身先端の上面。

前述の、砲身前端ローラー部の別体で、

Lose ←→ Fest

と刻まれているが、大体想像が付くとおり、「緩め」「締め」の意味だそうで、ここは新造部品なので当然ドイツ語。後方の溝がちょっと食い違っているが、これを合わせると前方に抜けるとか、そんな感じなのだろうか?(その後他の写真を見ていたら、後ろ側のリングの溝は結構位置がいい加減だということが判った。前後の溝位置を合わせるものではなさそう) 前方に刻まれているのは製造番号とメーカー名?

●そして「+α」。オマケで頂いたミッケリ歩兵博物館所蔵の75mmPaK40の写真。

Gedc9277b▼まずは全景。PaK40も、継続戦争終盤に大量に供与されたので、フィンランド国内にはだいぶ残っているらしい。PaK40は、PaK97/38(というよりPaK38)よりもさらに車輪にバリエーションがあるようなのだが、この個体は、8本スポーク穴開きタイプを付け、さらにゴムリムも側面に穴のあるタイプを使っている。

どうもPaK40というとタミヤのキットの刷り込みのせいか、穴のない、リブが凹凸交互になった車輪が普通のような気がしてしまうのだが、少なくともフィンランドに渡ったものに関しては、穴無しホイールは一般的ではないようだ。

なお、かさぱのす氏によれば、「マズルブレーキから第一のクビレ(駐退器に載る手前まで)の長さは2190mm」だそうな。

Gedc9289b▼車輪クローズアップ。

ゴムリムの穴が向こう側にしっかり貫通しているのが確認できる。おそらく、空気入りではないソリッドなゴムリムの柔軟性を上げるためのもので、ソ連のBTやT-34のゴムリムの穴と同じものなのだと思う。BTやT-34のゴムリムの穴も貫通している。

ホイール部は、スポーク間の「水かき」状のヒレが、小穴つきのものは大きく、無しのものは小さく、交互になっているタイプだが、これが全部同じ大きさになっているものもある。スポーク裏側は窪んでいるがプレス製ではなく、リブなどもあって鋳造部品であることが別写真で確認できる。

ほか、車輪形状としては、リブ(スポーク)が凹凸交互になっていて穴開きのもの(上に写真がある、同じくミッケリのPaK97/38のものとよく似た形状)もある。

車軸部外側のリングは、人力移動時に牽引用ロープを掛けるためのもの(野砲には一般的な装備)。

Gedc9280b▼さらにゴムリムをクローズアップ。単純な長円形断面ではなく、まず上下に2つ穴を開けて、その間を後から切り欠いたような形状。おそらくゴムリムのための木型をそんなふうに作ったのではないだろうか。

ちなみに、ドラゴンのPaK40のキットには3種のホイールが入っていて、そのうちひとつは(少なくとも一番最初に出たキットでは)このタイプを表現しているものになっている。ただし、ゴムリム側ではなく、ホイール側の外周側面に穴(というか窪み)があるような、妙な表現になっているようだ(現行のキットでは別タイプのホイールに差し替えになっている可能性がある)。

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ぼいて75mm(7)

F1018000●前々回にちらっと書いたように、週末模型親父さんのところの「イタレリ作せり」コンの締切が1ヶ月延びたので、一度は「組立完了」としたPaK97/38をまた分解してしまった。

組立後に形状が判ったスライド小防盾のリンク機構を改めて再現するのがその主目的。

接着してあった防盾を無理矢理剥がし、この際に支柱も多少ダメになるかと思ったが、特に曲げたり折ったりもせず外すことができた。

F1017891F1018001●リンク機構は、揺架左右からアームが出ていて、これがスライド小防盾内側に突き出しているヒンジに接続している。

キットの防盾は(それからそれを真似た私のもともとの工作も)内側も外側も同じ形に開口しているが、実際には、小防盾のヒンジをクリアするため、内側は上端のL字材の直下まで、直線的に開口している。右が当初工作した際の形状、左が内側防盾を切って、ヒンジを工作した状態。

F1018003bここで問題は、防盾を付けてしまうと狭くてリンクアームの工作ができず、かといって防盾を付ける前だとリンクアームの長さと角度がうまく決まらない、という点。

結局、ある程度形状を作ったアームをヒンジに接着せずに挟み込んだ状態で防盾を接着し、その後角度を調整して、アーム下部を揺架に接着した。しかし、下端はほぼ見えないので救われているものの、やはり事前の調節不足で、アームが長過ぎたかも。

●加えて、付け忘れていた拉縄(りゅうじょう)も追加した。

普通、拉縄というのは野砲・榴弾砲の撃発装置のうち、いわば「引き金」にあたる部分なのだが、この砲の場合は、撃鉄(ハンマー)を引き起こすためのもので、そのため、そもそも拉縄と呼んで正しいのかどうかも実はよくわからない。

ドラゴンの尾栓パーツはそこそこ細かくハンマーや、そのスプリングの入ったシリンダーなどのディテールがモールドしてある。拉縄は、錨形のハンマーの端に小さなリンクを介して繋がっていて、さらに、シリンダーの端のリング状の突起を通って砲の右側に垂れている。

F1018033これをどう追加するのかいささか悩んだのだが、結局はほぼ実物通りに作るしかないと判断。

ハンマーの端にエッチングソーで切れ込みを入れ、ソクウで余った、小穴の開いたエッチングパーツを切り詰めてリンクアームを再現。これにミシン糸を結んだ。シリンダー端の小リングは、エバーグリーンの0.75mm丸棒の輪切りを接着した後に0.4mmドリルで開口した。

ところで、現存のPaK97/38では、この拉縄が付いているものはほとんどなく、長さがどうもよく判らない(ここのものは付いているのだが、端まで写っていないので、やはり長さが判らない)。

結局、原型のm1897野砲の写真から判断したのだが、これまた、個体によって長さが違っていたりして、最終的には「まあ、だいたいこんなものならOK?」くらいのいい加減な決め方をした。いずれにせよ、ハンマーを起こすだけのヒモなので、一般的な拉縄に比べると非常に短い。

●改修作業を終えて、再び「組立完了」とした状態が以下。

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ぼいて75mm(6)

●75mm対戦車砲PaK97/38製作記の続き。最終ターンの防盾工作。

本来ならこういう“薄物”はエッチングに交換が望ましいのだが、

  • 市販のエッチングパーツは防盾の他に、(すでに工作が終わってしまった部分の)いろいろ余計なパーツがテンコ盛りでコストパフォーマンスが悪い。
  • そもそも防盾の他にエッチングパーでなければならない必然性のある部分が少ない(気がする)。
  • この砲にそこまで投資する気が起きない。
  • ウェブ上でパッと見た限りでは、いくつか出ているパーツも、防盾形状がなんだか怪しい気がする(きちんと確認したわけではなく、「あのブドウは酸っぱいに違いない」的)。

等々の理由により、防盾もキットパーツをベースに工作を進めることにする。最初のパーツ比較で検証したように、上部メイン防盾はドラゴンのもののほうが形状がよさそうなのでそちらを利用。下部防順はイタレリを使用した。

F1017806 ●下部防盾は一重で平板なので、単純に薄くする。イタレリの濃いプラ色のパーツが透けるまでヤスる。

素直に押し出しピン跡がある側を削り込んだのだが、なんと下側は押し出しピン跡がある方が表側だった。なぜだ!

右写真、下側はヤスった側がこちらを向いていて、モールドは向こう側のにあるものの影。表側のディテールは最後に再生した。なお、シャベルのブレードの受けは、キットのモールドの位置にあるものと、もっと端に寄っていて、ヒンジ下に付いているものとの2種があるようだ。

F1017890b●上部防盾は、外側はドラゴンのパーツを元に薄々に削ったうえに形状修正した。

右上が元パーツだが、これは50mm対戦車砲PaK38のパーツをそのまま流用しているため、砲身が通る中央スリットの形状が違い、頂部の補強板も、PaK97/38はリベットが上下2列のところ、PaK38と同じ3列で幅があり過ぎる。スリットは削り込み、補強板はイタレリのモールドを切り取って貼り付けた。

また、照準窓は位置、形状共にちょっとおかしい(平行四辺形になっていない)ので、やや外側に移動する感じで埋めたり削ったり。

さて、防盾工作手前で足踏みしていた最大の理由が、この二重のメイン防盾の内側をどうするかということ。表側を薄くした結果、元の内側パーツはサイズが合わず、自作が必要なのだが、それが面倒臭い、というよりも、うまい工作法がイメージできなかったため。

F1017895b 結局は、力技というか、中央部・曲面部・さらに外側の翼部と5パーツに分け、外側防盾の裏にスペーサーとして0.3mm板を噛ませた上に、順に貼り付けていった。中央部と曲面部は0.3mmプラバン、両翼部はドラゴンの内側防盾パーツのものを切り離して薄く削り直して使用。全体として、元パーツの2枚重ねのおよそ半分の厚みになっている。

なお、裏側のナット列は(両翼部はそのまま使っているので当然だが)すべてドラゴンのもの。ただしこれはだいぶオーバースケールなうえ、本来はキャッスルナットが使用されているようだ。

F1017891付属品の収納箱等々は、形状がよりよい(ように思われる)イタレリのものを使用。また、ここで白状しておくと、イタレリ、ドラゴンとも、砲身の通る中央スリット形状は表側・内側とも同一で、私も無批判にそうしてしまったのだが、実際には2枚の防盾に挟まれた小防盾と揺架を繋ぐリンク機構をクリアするため、内側は上端が四角く、照準器収納箱?が乗っているアングル材の直下まで開いている。砲架への取り付けが終わってからディテールが判る写真を見つけたので、後の祭り。

●こうして工作の終わった防盾を砲架に取り付けることになるのだが、この期に及んで、照準窓と照準器架の高さがうまく合わないことが判明。再度写真とにらめっこした結果、照準器架の基部のレベルが違いそうだということが判り、またまた照準器架パーツを切り刻んで微調整することに。

さらには、上部メイン防盾と下部防盾の位置関係もどうもうまくないことが判り、下部防盾の上部左右を削り込んだり、上部メイン防盾の下端を少々切り詰めたり。

改めてチェックすると、どうもドラゴンの上部メイン防盾は上下に間延びしすぎているらしい(とはいえ、イタレリでは寸詰まり過ぎのようだ)。発覚が遅かったので根本的な修正はできず、適当なところでお茶を濁すことにする。

●そんなこんなで、なんとか防盾を砲架に取り付け、ひと通りの工作が終わった状態を以下に。……拉縄(りゅうじょう)を付け忘れているが、これはそのうち追加の予定。

なお、下部防盾の上下に付いている謎の筒状突起の用途は不明。コントレールのプラパイプの内径をさらって薄くしたものをつぶし、長円形断面にして使用。上側の径の大きいほうは、両側面に丸穴が開いている。

フィンランドで展示されている個体にはどれも付いているようで、もしかしたらフィンランドで追加したものかもしれない(戦後の追加だったりしなければいいけれど……)。

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週末模型親父さんのところの「イタレリ作せり」コン・エントリー作としてはマウルティア完成を第一にしたいこと、これについては工作の様子をもうちょっと愛でていたいこともあって、この段階でひとまず休止。いずれ気が向いたときにフィンランドの3色迷彩で仕上げるつもり。

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ぼいて75mm(5)

●いつのまにやら、製作記も本命だったはずのマウルティアを追い抜いてしまった。

というわけで、イタレリベースで進めている75mm対戦車砲PaK97/38の下部砲架・脚部の工作あれこれ。

脚は初回に比較写真を載せたが、イタレリとドラゴンとで一見大差ないように見えるものの、細部ディテールの位置に細かいズレがある。イタレリのほうが実物に近い感じなのでそちらを使用したが、内側に結構大胆に押し出しピンの痕があり、その修正の手間が掛かる。

F1017715●駐鋤周辺。ほぼ左右対称に作られている脚だが、実際には、牽引具が付く左脚は駐鋤付け根が補強されていて、一段太くなっている。プラペーパーを巻いて表現した。

また、脚の内側にモールドされている連結具は、それぞれ脚から直角に出ていて、そのまま閉じると「へ」の字に角度が付いてしまう。基部も脚にガッチリとブロック状にくっついてモールドされているので、一度エッチングソーで切り離し、基部を工作し直した。ここも、右と左とで形状に差があり、左のほうが丈夫に出来ている。

F1017757 駐鋤は、左側は牽引具が付くのであれこれディテールが加わっている。牽引具はイタレリのパーツを使ったが、形がイマイチで、そのまま付けると変に斜め上に角度が付く。多少いじって少なくとも角度は修正したが、形状まではきちんと直せなかった。

牽引具を駐鋤に止めているキャッスルナットは(ここだけ解像度が高いのもちょっと変だが)マスタークラブの0.7mm。先日、I号戦車の起動輪用に買ったもの。まあ、I号戦車を、今後、山ほど作ったりはしないだろうし。実際には上辺にもボルト/ナットがあるのだが、牽引具の形状を直しきれなかった影響もあって、付ける余地がなかった。

F1017783 工作終了状態(左脚)はこんな感じ。

連結具上に付くクランプのパーツ、および折り畳み式の取っ手はドラゴンのパーツ。両者とも、イタレリのパーツもそう大差はないのだが、ほんのちょっと、ドラゴンのものがいい感じだった。

前側にある台形の突起は、取っ手を畳んだ時に留め金が噛み合うところ。厚みから考えて金属板が似つかわしいところだが、綺麗に切り出すのが面倒だったのでプラバンで。

F1017775F1017781●脚中央部。それぞれ、左側から見た左脚と右脚。

外側には手すりが2ヶ所付くのだが、キットの指定(というか、取り付け穴)は、両方とも真横にある(イタレリもドラゴンも)。

しかし、キットではロッド(クリーニングロッド?)も真横に付くようになっていて、説明図ではさらりと図示してあるのだが、そのままではもろに干渉してしまうはず。

実際には、中央部の手すりは斜め上向きについており、ロッドは外側の若干下に付くのが正しい。また、キットではロッドが右に1本、左に2本付くようになっているが、これは50mmPaK38の場合で、PaK97/38では両側1本ずつが正しいようだ。また、ロッドの止め具の形状も、PaK38とPaK97/38とでは違いがあるようだ。PaK97/38では、後ろ側は単純なカップ状の受け、前側がクランプになっている。なお、キットは前側の留め具位置が若干後ろ過ぎているようだったので修正した。

作例では、手すりの位置を修正するとともに、パーツ自体、若干細めのドラゴンのものを使用。ロッドはコントレールの丸棒から。

F1017778脚上面には、人力移動用補助車輪のホルダーが付く。可倒式のツメ部分は、ドラゴンの脚のモールドを削り取って来て加工。倒れた状態にした。後ろ側の固定のツメには三角の補強板が付く。また、前後のツメの内側には、出っ張った押し出しピン跡のような丸い突起がある。これは車輪のゴム部分が当たるところで、この突起を付けることで、ホイールリムの立ち上がり部分が脚に直接当たって塗料が剥げたりしないようにしているらしい。

ツメの位置自体にちょっとズレがあるせいでもあるのだが、作例のこの丸突起の位置は正しくなく、実際には、前側の可倒式のツメにほとんど隠れてしまうくらい、もっとツメ寄りにある。

右側脚の内側には、トラベルクランプが付く。イタレリのパーツを使用。前面2ヶ所の白いツメが、揺架後端の穴にはまって固定するらしい。パーツでは単純なリベットのようなモールドだったので、プラ材で修正。また、後面に小さな十字ハンドル、上面に小リベットを追加。

F1017779 ●脚前端部と下部砲架。ロッドのクランプは、プラパイプとプラ材とプラペーパーで何となくそれらしくごにょごにょと。

下部砲架は、ウルサイことを言い出すとだいぶあちこち形状が違うのだが、上部砲架や防盾にそこそこ隠れるので、手を入れるのは最小限とした。サスの後端部分を削ってドラゴンのパーツに交換。また、射撃時にサスにロックをかけている状態にモールドされているロック機構に若干のディテールを彫り込んだり盛ったり。

さらに、脚は開状態で固定し、脚と、サスロック機構との間のチェーンを、縒って潰した銅線で追加した。ただし、実際の射撃時には、このチェーンのどちらかの端はこの場所ではなく、ロック機構をロックする穴に挿し替えている可能性がある。

●車輪は、ドイツの対戦車砲のソリッドゴムタイヤではお馴染み、2本の溝で分割されたトレッド・パターン。キットのパーツは中央が盛り上がったモールドでお茶を濁している。

帯状のプラバンを貼って表現するか、溝を彫り込むかしばし悩んだが、結局彫り込むことにして、写真のような簡易工具を作った。

F1017770 F1017773当初、彫る刃はハセガワ・トライツールのエッチングソーを使おうかと思ったが、ちょっと薄過ぎる感じだったので、ペンナイフの刃の背中側に変更。土台にニットー76のIII号戦車の車体を使っているのは特に意味はなく、平らで、車輪の軸部がクリアできる穴が開いていればOK。単にたまたま部品取りで余ったパーツがすぐそこにあったため。

あとは、プラ材で適当な間隔を開けて瞬着で刃をがっちり接着、車輪をセットしてグルグル回すと所定位置に溝が彫れる。

●脚周りはこれで終了。あとは難関の防盾。

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ぼいて75mm(4)

●相変わらずネタも作業も地味な、イタレリ1:35、7.5cmPaK97/38製作記の続き。

砲本体と上部砲架の作業を進める。

●ここで(今さら)重大事実発覚。

前から、どうも上部砲架に揺架の後ろ側が隠れすぎる気がしていて、かといって、揺架を後ろにずらすと前側のバランスがおかしくなるし、単純に後ろを延長すると、ただでさえ長めの砲身がますます長くなってしまう。

結局、全体にバランスがおかしいのだろう、というような納得の仕方をしてスルーすることにしたのだが……。

上部砲架に揺架を取り付けかけて(というよりも一度は取り付けてしまってから)、初めて砲耳(というか、揺架についた仰俯軸受け?)の上下位置がおかしいことに気付いた。

97f1017320_2初回の主要パーツ比較で載せた写真なのだが、揺架に対する砲耳の位置はイタレリ、ドラゴンともにご覧の通り(下がイタレリ)。揺架にベロが付いた形になっているのだが、軸穴下に4つ並んでいるボルトは、揺架側面よりも上にある。

しかし実際には、ベロはこのボルトで揺架に固定されているものらしく、要するに、このボルトが揺架側面に来ていないとおかしいのである。

F10177462というわけで、イタレリの揺架からベロを削り取り、それにドラゴンのベロを削ぎ取ってきて高さを低めて接着した。ドラゴンのベロを使ったのは、単に、イタレリのベロを補修無しで使えるほど綺麗に削ぎ取るのが面倒だっただけの話。位置的には、ちょうど、ベロの角が斜めになっている部分が揺架から上に出る感じになるようだ。

別設計のキットが両社とも同じように間違えているというのも変な話だが、後追いのイタレリが、寸法的には手直ししつつ、この部分の位置関係はうっかりそのまま、先行のドラゴンを真似した可能性はあるかもしれない。

とりあえず、これで上部砲架と揺架・砲身の位置関係は改善されたが、キットそのものは、砲架に対し砲身が低まった位置関係でまとめられているわけで、今後防盾の取り付けで齟齬が出てこないかちょっと心配。

●と、ひと悶着あったものの、上部砲架に砲身・揺架を取り付けた。前回書いたように、ギア部のディテールの関係で、仰俯可動は諦めて固定。

F1017749 F1017751

仰俯ハンドルの中心には、砲手用の撃発ノブを追加。根元のボックスから、揺架後方に向け、撃発機構に繋がるケーブルが付く。ちなみにイタレリの揺架パーツには、左右にケーブル引き込み穴のモールドがあるが(窪み表現だけで貫通していない)、当然、実際には左側にしかない。

2つのハンドルのパーツそのものはドラゴンから。ハンドルの輪の部分に両社で大きな差はないのだが、イタレリのハンドルは取っ手が短く作り直しが必要だったので、手っ取り早くドラゴンから流用した。

照準器架もドラゴンから。イタレリのパーツはディテールがだいぶ貧相で、ここに関してはドラゴンのほうがしっかりした出来。ただし、内側部分の高さが低く、そのまま付けると砲手用ガードと干渉して、仰俯ができない位置関係になってしまう。一度内側上部を切り取ってかさ上げ。この時、後ろ側の長さも切り詰めた。また、外側の実際に照準器のスコープを付ける部分は、前方にベロだかフタだか、薄いモールドが伸びているのだが、現存品で確認できなかったのと、行く行く防盾を取り付ける際に干渉しそうだったので切り取った。

ちなみに、両社ともパーツは照準器架だけで、スコープはパーツ化されていないため、射撃状態の情景にするなら、スコープを自作する必要がある。

砲架右のシリンダー上部は、小キャップと小穴が並んだ状態に作ってある。これは現存品のwalkaround写真を参考にしたのだが、どうやら、小穴のほうは本来あったキャップが外れてしまった状態らしい。うがー。

前回作った仰俯ギアのカバーは意外にそれらしく出来ている気がしてお気に入り。ただし、先述の砲耳部の位置変更もあって、砲耳から等距離の円弧になっていない。砲架側の接続部が外に出っ張り過ぎているようだ。今さら直さないけれど。

●工作的にはようやく折り返し点。次回以降は下部砲架/脚。

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ぼいて75mm(3)

●仕事が煮詰まっていてヤヴァイ状況なりけり。

●そんななか(だからこそ)、PaK97/38に時折逃避中。なお、週末模型親父さんのところの「イタレリ作せり」コンへのエントリーは、マウルティアが本命、こっちはオマケなのに、マウルティアは工具ホルダーを作るのが面倒で放置中。いかんね。

F1017727 ●砲尾は、(砲腔から偏心して尾栓が付いているので)下側に向けて太くなっている。キットも一応はそうなっているのだが、特徴的な段差が表現されておらず、また、右下方向に偏って下ぶくれになっているのも無視されているので、プラバンを貼り増して削った。

上部に付くブロック状のディテールは、キットのモールドは前過ぎたので削り落として新造。

尾栓は、なぜかドラゴンのパーツが、イタレリの砲尾の穴にあつらえたようにピッタリはまる。純正のイタレリのパーツは径が足りずガタガタ。開閉回転用のレバーやハンマーなど、付随したモールドも(少なくともこの部分だけは)ドラゴンのもののほうが出来がよい。イタレリのものは貧弱すぎる。

F1017722 揺架にもあれこれ追加工作をして、砲身を載せてみたのが右の状態。

オリジナルのM1897野砲の拉縄(りゅうじょう)、と言っていいのかどうか、とにかくハンマーを引っ張る紐も残っているのだが、PaK97/38では、左側のハンドルから撃発装置に繋がるコードと、その先の“引き金”が追加されている。コードはまだ付けていないが、揺架後部左に小さく開いているのが、そのコードが通る穴。

F1017716F1017719●上部砲架・左側面は、仰俯ハンドルからの縦軸・ウォームギアのカバーがカマボコ型に一体モールドされていたので、一旦削り落として、ランナーやプラバンで作り直し。

右側面は、砲耳軸から繋がるシリンダー(ダンパー?)が、イタレリ、ドラゴンともにY字フォークまで含めて一体成型で実感に乏しかったので、これも作り直し。フォーク部はドラゴンのパーツから切り取って大幅に削り直し、シリンダー下のシャフト/蛇腹はイタレリのパーツから持ってきた。

●揺架後部下には仰俯用の弧状のギアが付いていて、イタレリのキットでも揺架に一体にモールドされているのだが、位置も後ろ過ぎ、どこにも繋がっていないのが丸見えになってしまう(ドラゴンも基本的には同様)。

F1017730というわけで、まずは上部砲架側にギアの接続部を工作。ドラゴンのキットには、この接続部の一部と思しき、何だか中途半端なパーツが1つあって、それを元に削ったり貼り増したり。

一方、揺架側のギアはイタレリもドラゴンもむき出しなのだが、実際にはホコリよけのカバーが掛かっているようなので、曲線のランナーにシワを彫り込んでカバーを製作中。伸縮が利かないので、揺架はそのまま上部砲架に接着し、長さを調整してギアの付け根とカバーを取り付ける予定。

前回の続き。

砲口直後の「謎突起」は一体何のためにあるのか、という話だが、その後、みやまえさんからのコメントで、

米軍によるM1897およびその米改良型のマニュアル

ウェブ上の記事、「フランスの“ななじゅうご”について語ろう」

を教えていただき、おおよそ疑問は解決した。何かに砲身を固定するとか、何かを固定するとかに使うイメージでいたのだが、あれは、砲身が後座した際にレールに収まるローラー(もしくはガイド)なのだそうだ。

F10177353703 なんでそんなところにローラーが?――と思わなくもないが、上記マニュアルの中の図解から考えるに、復座レールに通常接しているローラーは砲身側面のボルト位置、つまり右写真の①と②にあるらしい(写真上)。

発射時に、砲身が最大位置まで後座すると(写真下)、①の後部ローラーはレールからはみ出してしまうのだが、それに代わって③の先端部ローラー(部品はまだ付けていないが)がレールに収まって、②だけになってしまうことを防ぐ、という仕組みであるらしい。場合によってはレールにゴミとかホコリとか入りやすそうだし、頭がいいのか間が抜けているのか、どちらにも取れそうな機構。

ちなみにM3ハーフトラックの対戦車自走砲にも搭載されている米改良型では先端部ローラーがないが、代わって、砲身側のガイドレールが前方に延長されている。アメリカ型は、オリジナルに比べ砲身にやたらにタガがはまっているが、そのタガの部分の下にローラーがあるようだ。

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冬の虫

F1017705 ●12日月曜日。家人が皆出掛ける用事があり、半日、チビの相手をする。午前中は家で粘土細工などして、昼からは散歩。

晴れて見晴らしがよく、ハイランド手前のパノラマ台からの富士山が綺麗だった。相変わらず写真はお粗末だが、鎌倉中心市街と富士山。左端、岬の向こうに江ノ島。

●その後、ハイランドを抜けて、久しぶりに久木大池公園に行った。

池の周りのコンクリートの手すりにいた冬の虫あれこれ。

F1017691 F1017697 F1017688

左上から。

▼成虫で越冬中のツヤアオカメムシ。

▼二番目は、越冬中というよりも、わざわざ冬に成虫になる「フユシャク」のひとつ、ナミスジフユナミシャクのメス。名前に「ナミ」が2回も出てくるのが、なんだかくどい。フユシャクは幼虫がシャクトリムシの蛾、シャクガのうち、冬季に羽化するものの総称(複数の亜科にまたがる)。どれも皆、メスは翅が退化して飛べない。冬に羽化するのは、そのぶん天敵がいないからとか、メスの翅がないのは冬の寒さに対応して体温を奪う翅をなくし、そのぶんのエネルギーを産卵に回すためだとか言われている。いろいろな点で興味深い。

▼コンクリートに張り付いたカエデの葉の陰にいた何かの幼虫。写真も少々ボケており、正体特定できず。陸棲のホタルの仲間の幼虫にも似ているし、クサカゲロウの類の幼虫にも似ているし。

●年末に流れた「タミヤがソミュアを発売する」という噂に何か続報がないか検索してみたが、特にその後の動きはないようだ。

ところで、「TRACK-LINK」の掲示板での、この噂に関する書き込みで、

Many Bothans died to bring us this information.

というのがあった。決まり文句っぽいが、何なんだろうと思って検索してみたら、比較的簡単にたどり着いた。「スター・ウォーズ」ネタで、多少の情報を補って和訳すると、

「我々に(デス・スターの)情報をもたらすために、大勢のボサン(という種族)が命を落としました」

という感じ。ここに出てくるデス・スターは2番目のものらしいので、このセリフのシーンは3作目?

しかし、これでソミュアが発売されなかったら、ボサンは無駄死にだなあ……。

●PaK97/38に関連して、みやまえさんから、その原型、M1897野砲の(アメリカにおける)マニュアルがネット上にあるのを教えていただいた。

おっと。そういえば、砲口近くの謎突起について、その用途などが説明されているんじゃないか?

と思って、頑張ってそれらしき場所を探してみた。……というわけで、ここがそうだという箇所を見つけたのだが、私の英語力ではほとんど理解できなかった。当該箇所の説明は以下の通り。

Muzzle hoop.— On the bottom of the hoop a projecting lug extends from the right and left sides. A round hole in each at right angles to the bore of gun receives the two muzzle roller trunnions,which are secured on the inner side of the projections with the trunnion nuts. These are pinned in position permanently with the trunnion nut pins. Directly above the trunnions a rectangular hole passes through the hoop into each end of which a muzzle roller cover, 12A (fig. 3, sec. G-H), is inserted. Between the two covers a muzzle roller cover spring guide is placed with a roller cover spring on each end. The springs act to force the covers apart and the latter are retained in the hoop by a muzzle roller with its assembled bushing placed on the outer end of each trunnion. The rollers in turn are retained by a muzzle roller side plate placed on the end of each trunnion and secured with a muzzle roller center screw. The rectangular hole which passes through the hoop, being open on the under side between the two projecting lugs, is covered with the muzzle hoop bottom plate, secured with six muzzle hoop bottom plate screws, to hold the covers in position.

(WAR DEPARTMENT, "TECHNICAL MANUAL -- GUN AND CARRIAGE, 75-MM, M1897, ALL TYPES, AND SPECIAL FIELD ARTILLERY VEHICLES", April 20, 1942)

むー。わからん。

ところでこの謎突起、PaK97/38のものは、もとのM1897野砲からそのまま引き継がれているものなのだと単純に思っていたのだが、改めてよく見てみると、PaK97/38の場合は前回アップしたwikimedia commonsの写真にあるように、砲口近くにいくつかリングがはまったようになっていて、突起も別体。しかしM1897では砲身と一体に作られているように見え、しかも突起の形状自体もわずかに異なっている。

つまり、PaK97/38に改修する際に、この突起もわざわざ作り直しているわけで、それだけ必然性のある部位らしい。ますます謎。ちなみにアメリカ製の改良型、例えばM3 75mm対戦車自走砲に載せられたタイプ(A4)では、この突起はなくなっている。

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ぼいて75mm(2)

●マウルティアも停滞しているのに、75mm対戦車砲PaK97/38の続き。

前回はイタレリとドラゴンのパーツを比較、少なくとも砲身に関しては、イタレリのほうがまともそうだというところまで行き着いた。

F1017493 その後、イタレリのマズルブレーキに、モールドをガイドにしてちまちま穴を開けるという内職じみた作業もしてみたが、東京AFVの会の折、サニーでRB models製の金属砲身を見かけて、結局、ついつい購入してしまった。マズルブレーキに、エッチングパーツも付いて1100円。RBはこの円安時代でもコストパフォーマンスが高い。

砲身丸ごとではなく、太さが三段になったうちの、最前部のみを(キットのパーツを切断して)挿げ替えるという構成。イタレリのパーツとのプロポーション比較は右のような感じ。下のRBの仮組みは、マズルブレーキ先端部品は取り付けていない状態。

イタレリのパーツが、穴が片側7列しかないのに対し、RBは実物と同じく9列ある。とはいえ、プロポーション的にはちょっと疑問な部分もある。

●そもそも、実物の砲身先端部およびマズルブレーキがどうなっているかは、この写真が判りやすい。出所はwikimedia commons。フィンランド、ミッケリの歩兵博物館の展示品。

800px75_pak_9738_mikkeli_7

●さて、RB modelsのものは、せっかくの別売金属砲身なのだから、ぱっと挿げ替えて、それで問題解決! といってほしいのだけれど、部分的には(特にマズルブレーキ後ろの段差ごとのプロポーションなど)イタレリの砲身のほうがいい部分もあるのが悩ましいところ。

F1017680c結局、放置できなくなって、多少いじった。その結果と、当初仮組みとの比較が右。手を入れた箇所は、

①マズルブレーキ本体が、長さに比べて太すぎる気がしたのでヤスった。ただし、適当にペーパーがけしただけなので、実際にどれだけ細くなっているかは未知数。

②マズルブレーキのエラが角張り過ぎている感じだったので、若干ヤスって丸めた。

③長さバランス調整その1。マズルブレーキ基部を切り詰めた。パイプ切断工具などは持っていないので、適当なプラバンにカッターの刃を付けたジグで均等幅にケガキ線を入れ、そのラインまでヤスリで削り込んだ。

④謎突起の付く部分のリングは、実物では偏心しており、上部ではほとんど段差がない。RBのパーツでもリングのパーツの内径が少し大きいので、そのままずらして接着した。もっともこうして見ると、あまり偏心が目立たず、もう少し太いパイプに交換すべきだったかも。

⑤長さバランス調整その2。最後部のリング部分を1.5倍ほど?(適当)延長。汚く灰色になっているのは、継ぎ目が消えているかどうかサーフェサーを塗って確認したため。

⑥砲身本体先端の段差との間に、ほんの少し隙間を開けた。実物でも細く隙間があるため。

これらの作業の結果、プロポーション的にはよくなったが、もともとイタレリに比べ長かったRBの砲身が、また僅かに長くなってしまった。何らかの対処をするか放置するか思案中。

F1017683 ●砲身先端下に付く謎突起の3社比較。左からドラゴン、イタレリ、RB models。

上の実物写真で判るように、謎突起は、これが付くリング部と同じ前後幅なので、ドラゴンのパーツは(少なくともRBの砲身には)狭すぎて使いようがない。RBのエッチングパーツはだいぶ厚い板材を使っているが、それでも実物に比べ「単に板を曲げました」という外見で(実際にその通りなのでしょうがないが)、実物の金属ブロック風の感じに欠ける。

というわけで、ここもイタレリのパーツを採用することになるが、ちょっと左右幅がありすぎるかもしれない。

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ぼいて75mm

●唐突だが、イタレリとドラゴンの1:35、75mm対戦車砲PaK97/38の比較検討。

週末模型親父さんの「イタレリ作せり」コンのおかわりネタに選択したため。しかし完成品が数年に1作ペース(それでも以前より回復基調)の私が数ヶ月で2作も出来るのか?

●社名だけ併記すると、ドラゴン製キットのほうが新しいような気がしてしまうが、ドラゴンのPaK97/38は2000年リリース、イタレリのものは2007年リリース(たぶん)で、イタレリのほうがだいぶ新しい。

にもかかわらず、モールドの切れ等々で、「こちらのほうが新しい!」と思える部分はなく、イタレリの凋落ぶりを示しているようでちょっと寂しい。

古きよき時代のイタレリからそのまま技術進化すると、ブロンコのようなメーカーになるんじゃないかと思ったがなあ……。

●それはそれとして。

実物は、wikipediaにもそこそこ詳しく出ているが、世界で初めて液気圧式駐退復座機を搭載したフランス製野砲、75mmM1897を、鹵獲したドイツでごにょごにょした対戦車砲。5cm対戦車砲PaK38の開脚式砲架に載せ、多孔式マズルブレーキを装着している。

新鋭の75mmPaK40が揃う前のピンチヒッターだが、PaK40登場後も二線級部隊に回されて使われたほか、ルーマニア、フィンランドなどにも供与された。そんな経緯から、フィンランドにはそこそこの数が残っていて、展示されている砲も複数あるようだ。

なお、元になった75mmM1897は、時折誤ってシュナイダー製とされることがあり、昔のTOMのキット名称もそうなっていた(そのため、私も以前は「シュナイダーの75mm野砲」などと言っていた)が、実際にはシュナイダーとは無関係。後に出てきたまったく別設計のM1912やM1914などがシュナイダー製で、それと混同されているだけである由。

97f1017318●ドラゴン、イタレリのキットの仕様の差として目に付くのは、主車輪の形式が違うこと。写真は左からドラゴン、イタレリ、イタレリの人力移動用補助車輪。補助車輪のみ、ドラゴンの主車輪と同一タイプの車輪が入っている。

ちなみに、人力移動用補助車輪は、陣地内での移動等の際に、閉じた脚の先に装着するもの。ドラゴンのキットは私の持っている初版には補助車輪が入っていないが、その後出たPremuim Editionには入っているようだ。

主車輪の2タイプは、どちらも砲架の流用元である50mmPaK38で使われているもので、生産時期の差(あるいは下請工場の差)ではないかと思われるが、当方、資料不足でよくわからない。PaK97/38でも両方使用例が確認できる。

もともとドラゴンのキットを持っていて、そちらをストレートに作ろうと思っていた私が改めてイタレリを買ったそもそものきっかけがこの車輪で、フィンランドが使ったPaK97/38が、写真で確認できる限りすべてイタレリがパーツ化した穴開きタイプだったため。

もっとも、フィンランド軍のPaK38でドラゴンと同タイプの車輪のものもあるので、フィンランドのPaK97/38でもそちらのタイプが絶対になかった、とは言い切れない。

パーツの再現度としてはどっこいどっこいで、トレッド部の2本の溝は、ドラゴン、イタレリともに単純な段差表現で誤魔化している。ドラゴンのパーツは、ゴムリム部にダメージ表現あり。ただし側面が若干ヒケていた。イタレリのパーツは、ゴムリム根元の、ホイールディスク部の縁表現がない。

なお、ドラゴンの車輪とイタレリの車輪ではゴムリムの厚みも違っており、ドラゴンは約2.5mm、イタレリは約3mm。ただし、現存品の写真を比べると、両タイプで実際にゴムリムの厚みが違うようにも見える(パッと見の印象なのでなお検討の要あり)。ただし、イタレリは主車輪も補助車輪も同じ厚み。

97barrel01●単なる仕様の差ではない、決定的な両キットの差は砲身。ご覧のように長さが大きく違う。

実物はどうなのかだが、wikipediaで見る限りでは、元のM1897野砲の砲身長が2700mm、PaK97/38の砲身長が2722mmと書いてある。

もともと同一の砲身だし、PaK97/38の数字がマズルブレーキ込みとは考えにくいから(さすがにマズルブレーキ長が2.2cmということはあるまい)、少なくともどちらかは間違いなのだと思うが、とりあえず、1:35での誤差は0.5mm程度しかないので、この際深くは追求しないことにする。

計算結果は、1:35で77~78mmというところだが、イタレリの砲身長(A'+B+'C')は77.5mmで、ほぼ合致する。

ドラゴンはマズルブレーキ付け根で74mm、マズルブレーキ先端までで81mm。いずれにしても上記数字とは合わない。

砲身全体の長さと共に大きく違うのが、砲身の段差ごとの長さの比率で、イタレリはおおよそ3等分に近いのに対し、ドラゴンは中間部分(B)が極端に短く、根元(A)が長い。

97barrel02ほぼ横から取った実物写真と見比べると、イタレリのプロポーションのほうが近い。ただし、マズルブレーキは、イタレリのものはやや大きめのようだ。

ちなみに、両キット以前に出たTOM modelbau/RPMのM1897野砲のキットはかなりプリミティブな出来だが、砲身長およびに段差間のバランスは、ほぼイタレリのキットに等しい。

97f1017320_2 ●上記砲身の長さと関係しているが、揺架はドラゴンのものが短く、各部のプロポーションも若干違う。

モールドに関してはどっちもどっちな感じ。

97leg_2 ●脚に関しては、わずかにイタレリが長いものの、それほど目立った差はない。

最も顕著な差は、架台に接続する軸の角度が違っていることだが、これが最終的にスタイルにどれだけ影響するかは、若干組み進めてみないとよく判らない。もしかしたら、架台に対する車軸位置が両者で違っていて、それと関係して脚の角度が違うなんてこともあり得るかもしれない(思いつきでテキトーなことを言っています)。

中途に立ち上がっているツメは、人力移動用補助車輪の収納用ホルダー。両社でツメの高さが違うのは、前述の車輪の厚みの違いが影響しているものらしい。

ただし、穴無し車輪(実際には小さな穴が5つあるが)のほうは穴開き車輪より実際に薄い可能性があり、このホルダーは薄い穴無し車輪にしか対応していない可能性がある(現存砲のディテール写真でもそれほど高く見えないので)。なお、両社とも立ててモールドしてあるが、実際はこのツメは折り畳める。

参考までに、実物写真での補助車輪装着状態はこちら。また、脚を閉じて補助車輪をホルダーに留めた状態がこちら。後者の写真は、主車輪が穴開き、補助車輪が穴無しのイタレリと同じ組み合わせで、この写真でも、穴無しのゴムリムのほうが薄いように見える。

なお、イタレリの脚は、内側に数箇所の押し出しピン痕が窪んでいて、埋める必要がある。

97shield_2●防盾は、パッと見、似て見えるが、並べて比較すると明らかに形状に差がある。

縦幅に差があるだけでなく、大きな違いは、上辺が、真横から見た際にイタレリは前面からほぼ直角であるのに対し、ドラゴンは上方に切れ上がっていること。

また、照準窓の大きさ、砲身が通る開口部形状にも違いがある。

まず全体に関して。寸法的には、市川方面某氏がハメーンリンナの砲兵博物館でメジャーを当てて測ってきてくれていないかな、などと無茶な期待を抱きつつも、とにかく現状では判断材料がなく何とも言えない。ただし、先の実物写真などからプロポーションを見る限り、ドラゴンのほうが近い感じがする。少なくとも、上辺に関しては、前面に直角でなく切れ上がっているほうが正しいようだ。

照準窓に関しては、イタレリは明らかに大き過ぎ。しかしドラゴンでもまだ大きい感じ。ドラゴンの場合、内側の辺はちょうど側部のカーブが始まったあたりにあるが、実物はもっと外側にある。

砲身用のスリットは、特に上部の形状が違うが、ドラゴンのものが尖った形になっているのは、50mm対戦車砲PaK38用のパーツを改修せずに流用したためではと思う。PaK97/38では砲身が太いので、この形状だとスリットの頂点まで仰角を掛けられない。

●そんなこんなで、実際に製作する場合には、イタレリをベースに、細かいパーツはその都度比較して、使えそうなものをドラゴンから流用するプチ贅沢をしようなどと構想(妄想)中。

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