デビュー戦のマチルダさん
●6月の横浜AFVの会の折、閉幕前の不用品処分市(?)で、旧ESCIの1:72 マチルダII を頂いてきたことについては、参加レポート記事にも書いた。
骨折だの何だので転げまわっている間にも、暇ひまにいじってちょっと進んだので、これについて途中経過報告を書いてみることにする。
うーん。久々の模型記事。
●旧ESCIの1:72 マチルダII(現在はイタレリから発売されているはず)はこれまでに何度か作ったことがあり、当「かばぶ」を始めてからも、「マルタの石垣迷彩」で一度製作している(といっても、遡って調べてみたら、もう10数年前のことだった)。
この時はまだ「歩兵戦車マチルダII」のタグを作っておらず、「ミニスケールAFV」にひとまとめだったので、工作完了と塗装終了時の記事のリンクのみ貼っておく。
さて、今回はどんな仕様で作ろうか、と考えて、当初は「ソ連軍仕様かな」とも思ったのだが、同仕様でタミヤの35の作りかけもある。同じ疎遠軍仕様でも、塗装とかマーキングとかで極端に印象が違うものがあれば別だが、基本、塗装・マーキングは地味で、夏季・冬季の違いくらいしかないため、これはヤメに。結局、1940年のフランス戦、マチルダIIにとってのデビュー戦時の仕様(マチルダII Mk.I)に挑戦してみることにした(いやまあ、マチルダIIにとってだけでなく、当時のイギリス軍自体のデビュー戦なのだが)。
この仕様については、まだタミヤの35で新版が出ていなかった頃に、一度挑戦しようと考えたこともある。なぜかタミヤのマチルダIIの旧作には、不要部品として、この初期仕様の防盾が入っていたためもあるが、手は付けてみたものの、他にもあれこれ違いがある(しかもそれがよく判らない)ために挫折した。
今日では、ネット上でフランス戦時のマチルダIIの写真も(決して多くはないが)集められるし、「72なら適当に誤魔化しも効きそう」という思いも。しかし何より、TIGER MODEL DESIGNSから、タミヤの新版キットを1940年の大陸派遣軍仕様にするコンバージョンキットが発売されていて、それのパーツ写真をネット上で見ることができ、だいぶリサーチを横着できた(←ズルい)。
TMDの当該仕様コンバージョンキットの製品ページはこちら。
また、1940年戦役における実車写真がそこそこまとまって見られるサイト/記事ページ(激戦だったアラス戦の記事)はこちら(Mike's Research ~ Arras France 1940)。
●以前にも書いたように、旧ESCIのマチルダは、ほぼ間違いなくタミヤの旧版マチルダの縮小コピーに近い製品で、何となくずんぐりしたスタイルだけでなく、各部の「ちょっと『?』なディテール」もそのまま引き継いでいる。
上写真はその一例で、本来は前後スライド式の誘導輪位置調整装置が、スイングアーム形式になっている(タミヤでは別部品だったものを、そのまま車体側に一体モールドにしている)。このほかにも、「車体前端部の斜めに絞った形状が前後で不連続」とか、「なぜか起動輪軸がファイナルギアハウジングから偏心している(そもそもギアハウジングが大きすぎる?)」なども同一。
もっとも旧版とはいえタミヤキットの縮小なので全体的雰囲気は悪くないし、72としてはなかなか佳作に仕上がっている(倫理的にはどうあれ)。しかし、どうせコピーするなら、タミヤで不要部品として入っていた初期型防盾もついでに入れていてくれれば楽ができたのに……。残念ながら入っていない。
●本格的に改修に入る前の下ごしらえ。
押し出しピン痕が目立つ個所に、前もって穴埋め工作。
●さて、初期型(Mk.I)の大陸派遣軍仕様にするうえで、大きな改修ポイントといえるのは以下。
- 車載機銃(マチルダIIの場合主砲同軸機銃)が、初期のイギリス戦車特有の装甲スリーブ付きヴィッカース.303水冷機銃。上述の「タミヤ旧版の不要部品」がこれ。
- 砲塔上面前部のレイアウトが異なる。
- 転輪サスペンションの取付位置が低く、下部転輪ボギーユニットが装甲スカートから下にはみ出ている。言ってみれば「高下駄を履いたような」状態。
- 後期のタイプ(Mk.III以降?)ではエンジンルーム上面左右から後面に取り回されている排気管が、Mk.Iでは左側は同じだが、右側は車体床面から取り回されている。
- フランス戦車のような超壕用尾橇付き。上記排気管は、この尾橇内に引き込まれる。
……など。
なお、マチルダのプロトタイプとされる写真を見ると、「足回りの下駄履き」「尾橇」はない。Mk.Iが生産時から上記の仕様だったのか、それとも「足回りの下駄履き」「尾橇」はフランス派遣にあたっての特別な改修だったのかは、現時点では私にはよく判らない。どこかの資料にはちゃんと書いてありそう。
(10月21日追記:みやまえさんから情報を頂いた。アルゴノート社刊の資料(何だろう?)によれば、上記2つの仕様は、フランス派遣前に特別に施されたものである由。みやまえさんありがとう)
▼砲塔周りの改修
上述の第一点・第二点、キットの元の状態の防盾と砲塔上面が上写真。
まず砲塔上面前部のディテールはペリスコープを除いて削り取り……。
防盾はランナーから削り出したスリープを継ぎ足したり、あちこち削ったり。なお、キットの砲身は段付きタイプを表現していたが、初期型は段無しが標準だった模様。FTFのA10巡航戦車CSで余っていた段無しテーパーの2ポンド砲砲身を流用した。なお取付の際、キットの取付穴位置だとちょっと砲身が下過ぎる気がしたので、一度埋めて、やや上に穴を開け直した。
ディテールを削った砲塔上面前部にも、横に張り出す謎ディテール(ベンチレーション用ダクト?)を追加した。
操縦手用ハッチが灰色なのは、キットのハッチが小さくて前後に大きく隙間が開くため。
▼足回りの改修
転輪サスの取付位置を下にずらす。1枚目写真では車体下端近くに新たな取付穴を開けているが、この位置で付けて見たところ、まだ移動距離が足りなさそうだったので、さらにもう一度下にずらした。旧タミヤ譲りのディフォルメが入っているせい?で、取付位置の変更も試行錯誤が必要だった。
最終的に組み上げた足回りが2枚目写真。ちなみに、「屋根裏のマチルダさん」の製作記で触れているが、このキットの足回りは、正規位置で組んだ場合、サスの上端が排土板の裏と干渉してしまう欠点がある。今回はサス全体を下方に移動したので、サス上部を削って調整する手間が省けた。なお、足回り前方の補助転輪も、位置をやや下方にずらしている。
▼排気管の取り回しの変更
キットはMk.III/IVの仕様なので排気管がエンジンルーム上部左右を取り回されている。初期型では上面にあるのは左だけなので、排気管が出てくる穴の右を埋め、また車体後端の排気管が通る溝も埋めた。排気管自体の工作はこれから。
▼尾橇の追加
車体後端にはフランス戦車ばりの尾橇が付いているのでプラバンで自作した(なお細かいディテールを追加する必要あり)。
排気管は、この尾橇の左右に引き込まれることになる。引込位置は尾橇のない場合のマフラー位置よりちょっと後方のようなので、この尾橇内にどんな形状のマフラーが収まっているのかは、よく判らない。
なお、エンジンルーム後方パネルのロック機構は、マルタ石垣迷彩仕様を作った時同様にちょっと追加工作(改修)した。
●以上のような改修作業をして、現在のおおよその仮組全体形。




























最近のコメント