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2025年2月

オチキスのトリビア

●facebookに先に投稿した話の焼き直し。

「タミヤからオチキスが出る!」という話をした後に、邦人さんから「前の(ルノーR35)とどう違うの?」と言われた。積んでいる砲塔はまったく同じ、車格も同等、車体も同じように鋳造で丸っこく、実際、フランス戦車マニアでなければそう思ってしまうくらいに“キャラ被り”なのは確かだと思う。

そんなわけで、蛇足ながら、ルノーR35とオチキスH35/38/39との簡単な識別点や、「実はここが大きく違う」点、ほかオチキスの特徴など、「オチキスのうんちく」をまとめてみた。これまで書いてきたことの繰り返しもあり、フランス戦車好きなら「そんなん知ってるわい」ということも多いと思うので、まあ、生温い目で見て頂ければ。

ということで、つらつらと。

●オチキス軽戦車概説

▼オチキス製軽戦車はもともと、フランス軍の軽歩兵戦車に対するオチキス社の自主案としてスタートしたもの。戦車開発諮問委員会に計画案が提出されたが、政治的配慮で、改めて要目が示されて国内メーカー数社で競作されることに。結局、この競作のなかから、ルノーR35、オチキスH35、FCM36の3種が採用されることに。このうちFCM36は将来性が買われての採用で、制式化も生産も遅れたうえ、生産量も多くない。

▼オチキス製の最初の試作車は、無砲塔・ケースメート式で機銃装備。後の量産車とは大きく形が異なっていた。その後、装甲増厚が指示され、さらにルノーと共通の砲塔を搭載することになって量産車のスタイルに。

▼オチキスH35はとりあえず採用され200+200輌が発注されたものの、量産車の試験で不整地での操縦性能に著しく難があることが判り、歩兵科は最初の100輌以上の受け取りを拒否。これまた政治的配慮で、残りは騎兵科に押し付けられることに。歩兵科の軽戦車の主力はルノーR35に。その後エンジンが強化され操縦性能も改善されたが、こちらは再び歩兵科での使用がメインに。

▼一般に、エンジン強化前の旧車体のものをH35、エンジン強化された新車体で短砲身37mmSA18装備のものをH38、新車体で長砲身37mmSA38装備をH39と呼ぶことが多いが、これは(戦時中からすでに使われ始めていたらしい)通称。正式名称は、Char léger modèle 1935 H(オチキス製軽戦車1935年型、Hはオチキス社略号)、新車体はChar léger modèle 1935 H modifié 39(オチキス製軽戦車1935年型、39年改型)で、武装による呼び方の別はない。なお、少数ながら旧車体で長砲身に換装されたものも存在する。

▼昔々のエレールのオチキスのキットはH35、H38、H39が選べる贅沢なキットだったが、実際には旧車体のH35はエンジンルームが違うだけでなく、履帯も若干狭いなど細かい違いが多いようで、今日的な目で見るとちょっと無理がある。

●オチキスH35/38/39とルノーR35の違いなど

National_museum_of_military_history_bulg ▼ルノーR35の転輪は片側5つ。オチキスは片側6つ。ルノーの転輪は一貫してゴムリム付き。オチキスは初期はゴムリム付きだが、新車体になってからは全鋼製に。(写真はブルガリア、ソフィアにある現存車。wikimedia commons、File:National Museum of Military History, Bulgaria, Sofia 2012 PD 072.jpg、Bin im Garten氏による)

▼両車種とも似通ったはさみ式ボギー・サスペンションだが、ルノーはゴムスプリングで片側2.5組、オチキスはコイルスプリングで片側3組。ちなみにオチキスのコイルスプリングは、ソミュールの展示車のクローズアップ写真を見るに、巻きが逆方向の2重式になっているらしい。

▼両車種とも鋳造の丸っこさが目に付くが、実際の構成は異なっており、ルノーのシャーシは圧延鋼板製(車体前端と後端は鋳造パーツ。なお、車体前端上面も圧延鋼板)。オチキスはシャーシを含め基本パーツ全てが鋳造。オチキスの車体構成は、車体前部、車台中部右、車台中部左、車台後部、戦闘室、エンジンルーム上部の6パーツ。上掲のソフィアの写真で確認できるように、車体上部の張り出しの下端に、シャーシパーツとの継ぎ目が来る。

▼前述のように、オチキスは試作段階では無砲塔。ルノーは連装機銃装備のものだったが、後に国営ピュトー工場でルノー向けに37mm砲装備の新砲塔が設計され、オチキスも同一の砲塔を積むことに。

▼ルノーの操縦席は左寄り。オチキスの操縦席は右寄り。駆動系の配置の問題によるものと思われるが、なぜ逆?

▼両車種とも追加装備で尾橇があるが、形状は別々。ルノーは車体後面にエンジン点検ハッチがあるため、尾橇はそれを避けて基部がちょっと凝った形状。オチキスはもうちょっと素直な形状。尾橇の支持部はルノーは鉄骨の組合せ、オチキスは板材。

Hnose ▼ルノーは車体前端に楕円のメーカー銘板がねじ止めされている。オチキスは前面にデカデカと社名が鋳込んである。オチキスは下請け工場の別や、おそらく生産時期によって、ロゴに何種かのバリエーションがある。詳しくは別記事参照のこと。鮮明な写真で詳細に確認できるなら、もっとバリエーションは増えそう。

なお、記事中、出典として「chars-francais.net」の写真にたびたび言及、リンクを張っているが、記事中のリンクは全て切れているので注意。サイト、「chars-francais.net」自体は復活しているが、オチキスH35~39の大量の写真は現在はサムネイルしか見られない模様。

オマケ

オチキスは第一次大戦前からの大手軍需メーカーで、1897年型~1914年型重機関銃が特に有名(日本も採用)。創業者はアメリカ人のベンジャミン・ホチキス。

なお、(以前にも一度書いたことがあるが)文房具の米ホチキス社の創業者とは親戚(or兄弟or従兄弟)で、ステープラー(いわゆるホチキス)は機関銃の装弾機構を参考に作られたという話があって、私も昔は「へー、そうなんだー」と思っていたのだが、これは俗説。両社創業者はともに米コネチカット州出身ではあるものの、血縁だったかどうかも確認できないとのこと(wikipediaのステープラーの項に記述あり)。

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