Hiroshima, mon amour
●表題はマルグリット・デュラス脚本による映画の題名。邦題は「ヒロシマわが愛」だったり「二十四時間の情事」だったり。
原爆で家族を失った日本人男性と、反戦映画のロケで広島を訪れた、元コラボ(対独協力者)のフランス人女性という、それぞれ戦争で心に傷を負った2人の出会いを描いた映画。……というようなことがwikipediaに書いてある。
実はデュラス(の「破壊しに、と彼女は言う(Détruire, dit-elle)」という小説)は私の大学時代の卒論ネタだったこともあり、デュラスの代表作はだいたい読んでいて(もちろんほとんど邦訳)、当然、「イロシマ・モナムール」の脚本も読んだはずなのだが、さっぱり覚えていない。だめぢゃん。
調べてみたら逗子市立図書館に在庫があったので、早速借りてきた。パラパラとめくって、ほんの文章の断片を目にしただけで、「頭が凝る」ような、いかにもデュラスな面倒臭さが久々に蘇ってきた。わざわざそんな人の作品を卒論テーマに選ぶあたりが、長引いた厨二病の残滓というか何というか。
●そんな「ヒロシマ本」を改めて読もうと思ったきっかけは、9月末の週末3日間、仕事で広島に行ってきたため(単に地名で思い出しただけで特に脈絡はない)。
広島県内に足を踏み入れるのは2009年以来? その時も福山~尾道までで、広島市内は今回が初めてかも。高校の時の修学旅行が「山陰山陽」だったのだが、その時に広島に寄った記憶がない(秋吉台と萩・津和野に行ったこと、松江で一泊したことは覚えている)。
そんな(たぶん)初めての広島市は、とにかく市街地が広くて、一応私も“首都圏住まい”ではあるのだが、その都会ぶりに「お上りさん気分」になってしまった。縦横に路面電車が走っていて、それがすっかり住民の足として溶け込んでいるようなのもポイントが高い。
●その路面電車(広電=広島電鉄)は、いかにも新世代の低床式車輛と、昔懐かしい「チンチン電車」感たっぷりの旧式車輛が入り交じって走っているのがなかなか楽しい。
写真1枚目、2枚目は広電最新(たぶん)の国産超低床車輛5200形。前形である5100形の小改良型? 5車体連接車で台車は両端と中央の3つ。つまり2・4番目の車体は両側から吊り下げている感じ。1枚目はアウディ・ラッピングの5203(原爆ドーム近くの相生橋で)、2枚目は広島駅前高級マンション「ザ・広島フロント」ラッピングの5208(宇品線終点の広島港駅)。私は特に鉄な人ではないので、広電のサイトとかwikiとか見ながら書いてます。
写真3枚目はカエルっぽいダブルの前照灯がお茶目な1900形(原爆ドーム前駅)。元京都市電の車輛を譲り受けたもので、全車に京都にちなんだ固有名が付けられており(FCM 2Cみたい!)、写真の1915は「鞍馬」。広電デビューは1970年代末だが、元をたどると1950年代製らしい。
写真4枚目はさらにベテランの570形。現存は写真の582号車のみ(十日市町駅)。広電デビューは1971年だが、神戸市電の車輛を譲り受けたもので、戦後、外装含めてかなりの改装を経ているものの遡ると大元の車輛完成は1924年だそうな。100年選手!
●「出張先」のイベント会場兼1晩目の宿泊は、平和記念公園のすぐ南側だった。
平和記念公園は「旧太田川」と「本安川」に挟まれた三角州の上流側突端にあり、原爆ドームは本安川の対岸に建っているのだが、(よくテレビなどに映るのでお馴染みの光景ではあるものの)平和記念公園のメインエントランスである南側から慰霊碑等を経て、真っ直ぐ正面に原爆ドームが見える配置になっている。
狭義の「ドーム」部分は、単に外装が失われて骨組みだけになっているとだけ思っていたのだが、近くからよく見ると、爆圧を受け、爆心地から反対方向に(2枚目の写真で見ると左方向に)ややひしゃげているというのに初めて気付いた。
建物それ自体はほとんど外壁のみで、内側に鉄骨を組んで支えている。内部の瓦礫はあえて残してあるが、流石に約80年が過ぎると「焼け落ちた/崩れ落ちた」感は薄れ、むしろ「展示品」感が濃い。
●せっかく遠出をしたので、市内で貰えるマンホールカードを5枚集めた。初めての西日本のカード。
実際には、広島市のマンホールカードは6種類(も!)あるのだが、残りの1種は曜日限定かつ要予約で施設見学をしないと貰えないので断念。
色味的には地味だが、「もみじに鯉」の図柄のものが、なかなかシックで素敵、と思った。
●最終日は午後早めに終了。同行者に「宮島とか行ったらどうですか?」と薦められたが、時間的にも半端だし、「またそのうち……」ということに。もうこの歳になると、「またそのうち」もなさそうな気もするけれど。
広島城は最終日に堀の外側から天守を見た。帰ってから調べてみると、天守は戦後再建の鉄筋コンクリート造であるものの、老朽化のために建て替えの計画があり、来年末には閉館・立ち入りできなくなるとのこと。そう聞くと、入れるうちに入っておけばよかったなあ、と思ったり。
すでに東日本では姿を消してしまった“おやつはカール”が、そのへんのコンビニでも普通に売られていて、嬉しくなって2度も買ってしまった(類似品がないわけでもないので、箱買いするほどではない)。江ノ電の「カールラッピング」も今となっては懐かしい。
●オマケ。
30日、用事があって自由が丘に行ったついでに、大岡山駅前のパン屋「ヒンメル」でプレッツェルを買い食い。「僕ってなんてイケメンなんだろう!」とか言い出しそうな店名。
小ぶりだが1つ300円なので、ややお高め感あり。写真でもわかるように塩の粒は控えめで、しかしその分、細いところも太いところも、おおよそ同じくらいの塩気。中のもっちり感もなかなか良くて美味しかった。さすが勇者の店は違うぜ!
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コメント
マルグリット・デュラス『破壊しに、と彼女は言う』。んぐわっ!20代の頃に読みました。内容は忘却の彼方ですが、かなり手強くて途中何度も挫折しかけた事を覚えています。
あれを卒論とは…大変そう…。
投稿: セータ☆ | 2024年10月 4日 (金) 15時27分
>鉄筋コンクリートの天守
子供の頃に大坂城に行った時(凄い期待していた)に、木で造ってあると思ってガックリした記憶がある。
耐震性とかは良いと思うけど、その時代を感じたいと思うとあれなんですよね・・・
天守閣からの眺めは岐阜城も良かったけど、やはり神奈川県民だと小田原城が好きかなぁ~
>勇者の店
食した感想を店主に
『勇者ヒンメルならこんな感じの美味しいプレッツェルを作ると思う』
とお伝えせねば!
あと東京AFVの会が11月2日なのでお互い完成品頑張りましょう(笑)
投稿: ケン太 | 2024年10月 4日 (金) 23時23分
>セータ☆さん
「愛人/ラマン」がどういうわけかヒットしてデュラスが日本でも注目されたのは、私が卒論を書いてから1、2年経ってからだと思うのですが、「よくもまあ、あんな難しい作家の作品が流行るなあ」と思ったのを覚えています。
タイトルと表紙で「なんとなくオシャレっぽい?」と手に取って読み始めて挫折した人は多いんじゃないかな……。
「破壊しに、と彼女は言う」は、「何か起きそうで、起きなさそうで」「意味がありそうで、結局わけがわからい」ままに話が進んでいく(そしていつのまにやら終わってしまう)のが(当時は)気に入っていたのですが、今アレを読み直すとなると、相当の決意が要りそうです。(同じく「わけわからん」系だと、ベケットの「ゴドーを待ちながら」のセント・ルイス版も、紀伊国屋ホールに見に行ったのも大学の終わりごろだった気が)
そもそも実家にあった邦訳と原書は、たぶんつい先日処分されてしまったはず……。
投稿: かば◎ | 2024年10月 5日 (土) 00時41分
>ケン太さん
うっ、ヤバイ。東京AFVの会、あと一か月しかないじゃないですか。
今年は何か持っていきたい……。
完成直前で止まっているヤツ、1つでもなんとかしたい……。
そもそも今年ってテーマはなんでしたっけ。
>>神奈川県民だと小田原城
上に写真を載せた広島城は、外観はかなり頑張っていて綺麗だと思うんですが、小田原城はな~。外観からして「鉄筋コンクリで建てました」感が強くて、子どもの頃から、今一つピンと来てないんですよね。
子どもがまだ小さい頃行って、その頃はまだゾウがいて、
「あのゾウは、豊臣秀吉の軍勢が、難攻不落の小田原城を攻めるのに、箱根山を越えるために編成したゾウ部隊の子孫だ」
というウソ話を教えたのですが、全然感動してもらえませんでした。
投稿: かば◎ | 2024年10月 5日 (土) 00時47分
>“おやつはカール”
私は関西人なのであまり意識していませんでしたが東日本では売ってないんですよね…。( ̄∇ ̄)
かば◎さんは関東の人だからうすあじよりはチーズあじのほうが好みでしょうか?
>東京AFVの会
今年は土曜日開催なんですね。(なんとか一つぐらい新作を持っていきたいと思います。(;¬_¬)
因みに今回のテーマは″砂漠″でしたよね。
投稿: M.N | 2024年10月 6日 (日) 13時06分
>M.Nさん
東日本では、カールは2017年晩春で発売修了になっちゃったんですよね。
江ノ電がずっとカールラッピング塗装で走っていたので、ご当地ネタとしても馴染み深かったんですが……。
私にとっては、カールと言えばチーズ味とカレー味で、「うす味」はちょっとピンときません。っていうか、食べたことないかも……。
今度西日本に行ったら食べてみたいと思います。
あー。AFVの会のテーマは砂漠でしたっけ……。うーん。作りかけの砂漠ネタ、何にもないや……。
投稿: かば◎ | 2024年10月 6日 (日) 20時50分