Char 2C MENG 1:35(の突発的レビュー)
●突然思い立って、MENG社、1:35のシャール2C(FCM 2C)を組んでみたので、そのレビュー。
私の好きなフランス軍AFV、しかもこんな珍車両をインジェクションキット化した、というだけで「いつかは買わねばならん」と思っていて、結局、しばらく前にとうとう購入したのだが、買っただけである程度満足してしまって積んであったもの。
とにかくこの戦車に関しては、「でかい・珍しい・ポンコツ」と、ほとんど外連味しかないうえに、キットはモールドもシャープで、組立に変なトラップもない。そのため、ネット上でこのキットのレビューや製作記を漁っても、おおよそは「こんなキットが出たんだぜ! てぇてぇ!」みたいな感じのものばかりだった。私が見た範囲内では、唯一、track-linkの掲示板での議論で、サスペンション部分の表現が簡略化されてレリーフ調になっていることが指摘されていた程度。
実際、私も最初は特に何も考えずにパタパタ組んでしまったのだが、組んでいるうち、若干気になるところも出てきたので、そのへんをちょっとだけ突っ込んでみたい。前述のように、他にはあまりこのキットについて「ディテールがどうのこうの」なんて言っている記事は少ないようなので、そのへんが気になる人には手掛かりにして頂きたい。
……もっとも、このキットも発売されてかれこれ10年経つし、こういうアイテムを前のめり姿勢で作ろうという人は、もうとっくに作ってしまっていそう。
●「模型としての出来(モールドやはめ合わせ)」は前述のようにしっかりしているので、ストレートに作るのであれば、組立自体はあまり大きな問題はなく進む。おおよそ形になった状態が下の写真。
宮崎アニメ感たっぷりというか何というか。
ただ、「説明書通りにパタパタと組んでいく」だけにしても、ムカデ並みに多い転輪にはさすがに閉口する。片側37個(加えてほぼ同形の上部転輪4個)って、なんだそりゃ……。
さらに、これは私が入手したキットだけの問題かもしれないが、エンジンルーム上部(スライド型で一体成型されたワク状の大きなパーツ)の片側側面に若干の反りが出ていた。これに関しては、車体上部に強制接着することで反りを修正した。
また、一部僅かに隙間などできる部分、組立づらい部分もあったが、それらについては後述する。
●で、気になった点をいくつか。もっとも、私自身、この車輛について詳しいまとまった資料など持っているわけでもなく、ネット上で拾い集めた写真等で気づいた点をポツポツ書いているだけなので、あくまで参考程度にどうぞ。
上記写真の丸番号に対応する形で挙げていくことにする。なお、内容は
- 組立上で気になったところ
- ディテール上で気になったところ
の2種があるので、それぞれ下記説明では文頭番号を色分けで示した。
① 主砲塔・副砲塔の両側面には、四角い窪みがある。実車写真を見るに、簡易クレーンの装着部らしいのだが、側面の乗降ハッチ上部の小窓とも形状が似ているので、もしかしたらピストルポートか視察口と兼用かも。いずれにしても、キットは砲塔の大きさに合わせて(?)、主砲塔のもののほうが大きいのだが、実車では主砲塔・副砲塔とも同じ大きさのようだ。というわけで、主砲塔側の窪みはプラ片で三方から狭めた。
なお、番号では示さなかったが、主砲塔・副砲塔とも、スライド型を使ってリベットを潰さないように一体成型されており、そのため、周囲それぞれ4カ所に型の分割線がある。ごく薄いが、丁寧に消しておきたい。
② 縦スリットが細かく並べられた「ストロボスコープ式」キューポラは、そのスリットをモールドするために、筒部が上下分割されていて、スリット上辺に沿って接合線が目立つ。実車はたぶんそんな溝はないと思うので、若干やっつけ仕事ながら埋めてヤスった。そもそもこのスリット自体、実車はもっと細くて目立たないかも。左:before、右:after。
③ エンジンルーム上面は別パーツだが、四周のワクのパーツより僅かに短く、そのままだと隙間ができる。前端に薄いプラバンを挟んで隙間が出ないようにした(⑥下に載せた写真の黄色い部分)。
④ エンジンルーム側面と上面を繋ぐ細パイプ類は細いので破損注意(私は2本折った)。面倒臭がりで無い方は、金属線などで作り替えるのもいいと思う。また、説明書では一緒に図示されているが、側面外側のカバー(Q、R、T、U)は、細パイプ類の後に取り付けるべき。私は先にカバーを付けてしまい、あとから細パイプ類を付けるのにちょっと苦労した。
⑤ マフラーの側面は、キットのままだとちょっと太めの縁取りがあるが、実車では普通にドラム缶とか飲料のスチール缶風。一度組んだ後にくりぬいて作り直した。
⑥ マフラーからは、キットでは何やらフタ状のもの(C5)が飛び出た構成になっているが、実車写真を見ると、どうやら普通に排気口らしいし、形状もちょっと違うので作り直した。下写真は④~⑥について、左:before、右:after。
ちなみに排気管は、マフラーに接続する前に分岐があって、その上に弁付きの開口部がある。箱絵ではここから排気煙が出ていて、となると、「一体マフラーは何のために付いてるの?」状態。実車写真でも半開きになっていたりするので、「閉じて塞いでいるのが常態」というわけでもなさそう。よく判らん構造。上写真では弁のパーツはまだ着けていない。
⑦ エンジンルーム最後部に、補助エンジンのものと思われる小排気管+マフラーがある(wikipediaの記述によれば、主機関を動かしていない時の電源用、およびエンジン始動用であるらしい)。スライド型を多用しているこのキットだが、ここに関しては排気口も開いていないし、マフラーとの接続部に隙間も空いたりするので、排気口は一度削って穴を埋め、金属パイプで作り直した。
それにしても、このエンジンルーム、ほとんで見た目が化学プラントのよう。そもそも、こんなふうにパイプがごっそりむき出しになっていていいのか。流れ弾とか破片が当たって切れたら、それで動かなくなっちゃうとかないだろうなあ。どこぞのモビルスーツだってここまでパイプだらけじゃないぞ。
⑧ 最後尾の上部転輪は、架台の位置決めがやや曖昧で、うっかりするとこの上部転輪のみ、外側に傾いてしまう可能性があるので注意。
⑨ 車体後部上側の斜めになった部分のパネルは別部品だが、車体上部パーツ(特に側面)との接合に、若干の難あり。
実車の装甲板(上面と側面)は、おそらく上図の左のような接合になっていると思うのだが、キットはAのように、わざわざ上面・側面装甲板の接合ラインはスジボリで表現したうえで、実際のパーツは斜めそぎ落としで継ぎ合わせるよう処理されている。が、車体上部パーツの接合部が右写真のようにゆるく波打っているので、そのまま接着するとところどころ隙間が開いてしまう。ここは、Bのような処理にしてほしかったところ。
実際の工作においては、車体上部パーツの側面部分を、接合ラインのモールド部分まで削り取り、一方で上面パネルの淵にはプラバンを貼り増して小口を作った。隙間をパテ埋めなどするよりも綺麗に仕上がる(と、思う)。
⑩ 実車は誘導輪を前後させることで履帯張度を調整しているものと思われ、おそらくそれに関連すると思われるディテールのパーツ(C34、C38)を前端に接着するようになっている。ただし、実車写真を見ると、車両によって(あるいは時期によって?)ここに半月状の出っ張りがあったり、箱型のカバーのようなものが装着されていたりする。前者は、もしかしたら誘導輪位置を動かした結果による形態変化かもしれないが、後者は違いそう。特定の車輛を作る際には注意が必要。
⑪ 誘導輪位置調整装置が収まっているこの部分は、どうも実車とキットでやや縦横比が違っているような気がする。
⑫ スポンソンの下縁にはスカート取付金具が並んでいる。キットでは冒頭に上げた側面写真のように左右8カ所ずつモールドされているのだが、実際には番号を付けた写真で示した赤▼部にもあり(計10カ所)、また最前部の黄緑▼は位置がおかしく、実際はもう少し前方にある。取付金具の形状自体も、キットは縦長、実車は横長なので、エバーグリーンのL字材を利用して作り替えた。
私はスカートを付けない仕様で作ろうと思ったのでこのような工作にしたが、スカートを付ける場合には(そしてこの金具の位置と数を修正するなら)、スカート側の凹部を埋めて、プラペーパーか何かで追加するのが楽かも。
⑬ これは乗降ハッチなのか? とも思ったのだが、どうやら単純に工具箱らしい。実車は前方から見た時に、もっと傾斜がきつい(中央が高く、左右が低い)ようだが、接着してから気付いたので修正していない(エナメルシンナーを使っても、蓋パーツが割れそうな気がしたので)。
⑭ 操縦手用のバイザーフラップは、どうも戦間期は基本的に付いておらず、単純に四角く開口しているだけだったらしい。戦間期の写真では、フラップのヒンジさえ見当たらない。フラップが取り付けられたのは、1940年戦役が始まる直前辺りらしい。また、キットのパーツは比較的単純な板状のパーツだが、実際はスリットが設けられており、また側・下方の三方のエッジは面取りされている。
⑮ 前面左右の何やら手すりのような、ラックのようなパーツは実際は薄板製。私は取り付け後に、上側だけ削り込んだ。
●10輌生産された各車の特徴などについて、改めて書くかも。
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コメント
Char 2Cというと、昔のフジミ1/76・38(t)の箱絵の印象が強いです。あの箱絵で同車を知りました。
MENGのキットが出た時、あの箱絵をディオラマで再現する人が居そうだな〜と思いましたが、割とそうでも無かったな。
フジミ1/76・38(t)は、今知ったんですが箱表記が「PURAGA」と「PRAGA」があるんですね。多分前者の方が古いんでしょう。
投稿: セータ☆ | 2024年8月18日 (日) 15時59分
>セータ☆さん
>>フジミ1/76・38(t)は、今知ったんですが箱表記が「PURAGA」と「PRAGA」がある
ええっ。それは知りませんでした。
確かに、「German light Tank Praga fujimi 76」で画像検索してみたら、「PURAGA」と書かれた箱が……。
うわー。なんだこりゃ。
そうそう、フジミ38(t)の箱絵の脇役が2Cでしたね。
私は長い間、「こんなヘンテコな戦車、実在するんかな?」と思ってました。
何か、頭の中で、いつのまにか「鉄道上で爆破放棄された2Cの横を走る38(t)」の絵柄、というように変質していたんですが、改めて見てみると、いかにも戦場で相まみえた(そして戦う前に降伏した)みたいなシーンになってますね。
投稿: かば◎ | 2024年8月18日 (日) 22時46分