戦うプーさん/「クブシュ」Mirage HOBBY 1:35(6)
●Mirage HOBBY 1:35のクブシュは、ほぼ発売直後(2014年8月)に喜び勇んで買って、その後しばらく放置。数年経って(2019年)ようやく作り始めたものの、装甲ボディをおおよそいじり終えたあたりで中断。長らく放置と相成った。
キットレビューやここまでの製作記に関しては、記事タグ:クブシュを参照のこと。
先日、facebookでコレを作っているという人の書き込みがあって、俄かに「またいじろうか」ゲージが上昇。がさごそと「お手付き山」から掘り出してみた。
現状はこんな感じ。
装甲ボディに関しては、2019年8月15日の前回から僅かに変化があるが、これは前回書き込みの直後にいじった部分で、今回取り出して以降に新たにいじった箇所は無い。それどころか、それほど高さのないキットの箱に何の手当もせずに突っ込んであったので、戦闘室上面の防盾が折れてしまっていた。……退化してるのは情けないなあ。
前回書き込み時との違いは、車体前後のスカート部分。これは両方とも、0.3mmプラバンで作り直した。特に前部スカートに関しては、中央部の継ぎ目は、組立説明図のコメントに従い、三角のリブ材のない状態に。どうやら、実車は工作時に段が出来てしまったものを埋めている感じだったので、そのように工作した。溶接線が左端(向かって右)で幅広く汚いので、そのように再現。全く想像だが、第一回作戦での衝突等でスカート端の溶接にひびが入ってしまったのを補修したとかかもしれない。特に左側スカートが微妙に歪んでいるのは、実車もそんな感じなのを再現したのだが、箱に収めている間に歪みが大きくなってしまったかも。
後部スカートも、中央でピッタリ揃っていないのは、戦後に放置された状態での後方からの写真に倣ったもの。とはいえ、戦時中の稼働状態の時からそうだったかは確証が無い。
後部スカートは蝶番付きで可動のようだが、ヒンジは未工作。シャーシに繋がっているはずのフックが通る穴は、後部スカートには開けたが、前部スカートの分は未工作。
●今回掘り出して、とりあえずいじり始めたのは足回り。
キットレビューにも書いたように、このキットはシャーシの再限度がはなはだプア。シャーシフレームとか駆動系とかに関しては、そもそも「何のシャーシだったのか」時点で説が分かれているし(定説ではシボレー157だが)、そもそも装甲ボディをかぶせてしまうとほぼまったく見えないので、適当で構わないと思う。が、車輪のお粗末さは流石に何とかしたい。タイヤは同じくMirageで出ているwz.34装甲車のものの使いまわしで、径が不足しているうえにトレッドパターンもオモチャじみている。ホイールパーツも情けない出来で、タイヤに合わせて小径なのはもちろん、5つの軽め穴が貫通しておらず単に浅いくぼみになっている。
キットレビュー時点で「TOKO/RODENのGAZトラックのタイヤをホイールごと流用しようか検討中」と書いたが、実際に、シボレー157とGAZ(フォード)-AAのタイヤは同一サイズであるらしいことが判明したので、心おきなく流用を決意する。
なお、TOKO/RODENのGAZトラックは、その後イースタン・エクスプレスやズベズダでも販売され、バリエーションキットも出されている。今回も、パーツはイースタンのBAから持ってきた。
左写真がTOKO/RODENのGAZトラックのタイヤ&ホイール。タイヤは軟質樹脂で、キットは、いくつかメーカーを渡り歩いているうちのどれか、もしくは生産ロットによっては、若干の収縮があり、うまくホイールにはまらないケースもあるようだ。今回流用分に関しては問題なく装着できた。
このTOKO/RODENのGAZの車輪、タイヤのモールドに関しては、トレッド部分については「それなり」程度ではあるが、側面ディテールなどは細かく美しく、そこそこよい感じ。ただし、一方でいくつかの問題もある。
(1).軟質樹脂部品には付き物の問題といえるが、パーティングラインを消す際、ヤスリ掛けをすると削りカスが粉ではなくケバになって表面に残る。
(2).元がソ連製トラックのキットなので、タイヤの片面にキリル文字でメーカーや型名などの文字が入っている。
(3).実車では、前輪・後輪とも同じホイールを使用、後輪ホイールは表裏向かい合わせでダブルになっている。したがって、後輪外側ホイール(左写真の左側)は、本来は前輪用ホイールの裏返し形状で、中心部分は内側にさらに一段窪んでいないといけないのだが、逆に出っ張ってしまっている。
(4).キットの(GAZの)ホイールの軽め穴は比較的三角形に近いが、どうやらクブシュのベースとなっているシボレーのホイールは、穴にもっと丸みがあるようだ。
うち、(1)に関しては、ヤスった後に、布などでこすると、ある程度ケバを落とすことが出来るようだ。したがって(2)に関しても削り落としてもいいのだが、そもそもロゴのある面を内側にしてしまえば完成後は見えなくなる。
(3)(4)についても、クブシュでは外側にスカートが装着されていて車輪はかなり隠れてしまうので、苦労して手を入れてもあまり意味がない。というわけで、今回は以上の問題はほぼまるっと無視することにする。
なお、我が家にはTOKO/RODENのGAZ用の車輪の代替品として、ポーランド・ARMO-JADAR製のレジンパーツもあるのだが、これまた後輪ホイールの形状がキット準拠で間違えている。トレッドパターンはこちらのほうが細かく、上記(1)の毛羽立ち問題も回避できるので、もしかしたら今後そちらに乗り換える可能性もあり。いずれGAZ系を作る気になったら、今はもっと出来が良い、miniartのパーツもあるしね。
とりあえず、GAZの車輪の取り付けに備えて、キットの後輪軸は切り詰め、GAZ系キットのブレーキドラムのパーツを取り付けた。フロントアクスルは、ステアリング機構のスの一文字もない粗末な構成だが、どうせ見えないので追加工作などはしない。確かソ連のBA-6以降は前輪にもブレーキがあるが、原型のGAZ-AAにはなかったのではと思うし、同クラスのシボレーもそうだろうと判断。こちらにはブレーキドラムのパーツは付けなかった。
●若干の考証。
(1).後輪について
改めてネット上でクブシュについて検索していて、こんな記事を見つけた。
ざっくり言うと、クブシュのベース車輛は結局何だったのかという検証。これまでも、「クブシュのベースはシボレー157だった」「実はシボレー155だったという説もある」などと書いてきたが、この記事によれば、「157とか155とかいうのは、単にホイールベースの寸法(インチ)を示しているだけで、正式なモデル名称ではない」とか。まあ、それは興味深くはあっても、直接模型製作には関わりなさそう。
しかしより大きな問題は、それらの記述に加えて、「(定説で言われている車種は)後輪がダブルタイヤだが、クブシュの実車写真では両軸ともシングルタイヤであることが明瞭にわかる」というような一文が書かれていること。
えーーーーーーーー!?
これが本当なら、ちょっとちゃぶ台ひっくり返し系の新知見なんだけれど。
もちろん、元の文章はポーランド語で、それをgoogle翻訳に掛けているので、実際には上のようなスマートな日本語にはなっていない。原文とgoogle翻訳による日本語訳は次の通り。
Tyle, że nie jest to pełna nazwa, a dodatkowo ta seria miała podwójne opony z tyłu, zaś zdjęcia „Kubusia” wyraźnie pokazują pojedyncze koła na obu osiach.
ただしこれは正式名称ではなく、さらにこのシリーズは後輪がダブルタイヤで、「ウィニー」の写真では両軸ともシングルホイールであることがはっきりとわかる。
一応、素直に考えれば、最初に私が書いたような意味になるであろうことは判っていただけると思う。ちなみに「クブシュ」という固有名が「ウィニー」になっているのはgoogle翻訳さんの勇み足で、クブシュを「クブシュ・プハテク=くまのプーさん=ウィニー・ザ・プー」と判断してしまっているため。
さて、「写真では」とは言うものの、戦時中の「生きている」クブシュの写真は極めて少ない。右は、そんなクブシュの写真の中ではおそらく最も有名な1枚(wikimedia commons, File:Warsaw Uprising - Kubuś.jpg)と、そこから後輪部分を切り出してクローズアップしてみたもの。陰になっていて判りづらいが、後輪はダブルの幅になっているように見える。
もちろんディテールは潰れているし、何か別のものが重なって幅広に見えているだけという可能性は皆無ではない。上の記事の根拠はどこにあるのか、いや、そもそも本当に「後輪もシングル」と言いたいのか――など、なお気になってモヤモヤする。が、とりあえずこれをひとまずの安心材料として、「後輪はダブル」のままで作ることにする。
(2).塗装について
ポーランド軍事博物館に所蔵のクブシュの現存実車は、これまで幾度か塗り直されているが、とりあえず現時点では濃淡のグレー2色の迷彩、ワルシャワ蜂起博物館のレプリカはグレーとブラウンの迷彩が施されている。いくつかの資料に掲載された塗装図も、おおよそ「グレー2色」派と「グレーとブラウン」派とに分かれている。
ちなみにMirage HOBBYのキット指定はグレー濃淡2色。キットの大らかさはどうあれ、説明書などからはかなりの入れ込み具合がわかるので、そんなMirageが言うのなら何かそれなりの根拠もあるのだろうとボンヤリ思っていて、近年はグレー2色派が有力なのかなと考えていた。私の模型も、最終的にはグレー2色迷彩で行こうと決めかけていたのだが……。
しかし、ポーランド語版wikipediaの文章を試しにgoogle翻訳に掛けてみると、興味深い記述が。
„Kubuś” został pomalowany przez Stanisława Kopfa ps. Malarz w brązowo-szare łaty.
「クブシュ」はスタニスワフ・コップフの別名によって描かれました。茶色と灰色の斑点を持つ画家。
ピリオド付きの省略単語などが入ると、とたんにgoogle翻訳さんは怪しくなるので、人名等は除いて文章を簡略化して訳させてみる。
„Kubuś” został pomalowany w brązowo-szare łaty.
「Winnie」は茶色と灰色の斑点で塗装されました。
文章を短くしたら「クブシュ」がまたしても「Winnie」(しかも英綴り)になってしまったのが謎だが、文章の意味はスッキリした。
ちなみに省略した人名前後の部分は、おそらく「コードネーム『画家』のスタニスワフ・コップフによって」なのだと思う。googleさんを混乱させた「ps.」は「pseudonim(偽名・仮名)」の略かと思う。文の切り分けはおかしくなっているが、一応「別名」という訳語が出ているのは流石?
なお、スタニスワフ・コップフは当時、クブシュを製作した国内軍「クリバル」部隊の第1中隊第105小隊所属の士官候補伍長で、第1回攻撃の際には実際にクブシュに乗り組んでいるらしい。戦後はワルシャワ蜂起博物館の開設にも関わっているので、レプリカの製作・塗装にもアドバイスを与えている可能性がある(ただし、2004年の博物館の開館直前に逝去している)。(→ワルシャワ蜂起博物館の人物紹介ページ)
さらに、後のほうの段落では現存実車について、
W latach 90. został − niezgodnie z oryginałem − pomalowany w ciemnoszare łaty na jaśniejszym tle.
1990年代には、オリジナルとは反対に、明るい背景に濃いグレーのパッチで塗装されました。
とも書かれていた。灰色・茶色の組合せが灰色2色になっても「反対に」にはならないが、戦中の実車写真では「濃色に淡色の斑点」に見えるので、濃淡の組合せが逆になったという意味か。
いずれにせよ、これらの記述を読む限り、どうやら実車はもともと「ブラウン地に明るいグレーの迷彩」という組み合わせであった可能性が高そう。なんとなく一歩進んだ気分(製作それ自体はほとんど進んでいないが)。
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コメント
ポーランドものクブシュ再開を歓迎します!
こちらはwz.29を少しずつ進めていますのでかば◎さんのwz.29やwz.34も完成させてください。
ところで、wz.29のノーズヘッドにある丸いブランドロゴ:CWSは前に作ろうと思った4輪半軌装の試作装甲車と同じか!?と思ったりしています。
自分のHPを持たないので表明できず困ります。
なんとかブログを開設しようかとも、、。
投稿: hiranuma | 2024年3月28日 (木) 20時06分
>hiranumaさん
>>4輪半軌装の試作装甲車と同じか!?
ってのがよく判りません。wz.28のことかしらん。
投稿: かば◎ | 2024年3月28日 (木) 23時23分
わかりずらくてすみません。
サン・シャモンなどと名称めいた表示が間違いの元ですが。
これです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/サン・シャモン_M21_装輪装軌併用式戦車https://www.weblio.jp/wkpja/content/サン・シャモン+M21+装輪装軌併用式戦車_サン・シャモン+M21+装輪装軌併用式戦車の概要
投稿: hiranuma | 2024年3月29日 (金) 19時53分
クブシュのホイールは Hussar Productions からレジン製が出てますね(Hussar Productions 35129 Kubus wheels)。
このセットでは後輪もダブル仕様になってはいます。
なお、GAZ-AAの前輪にブレーキドラムはあります。戦中の簡易仕様になって廃止されましたが…。
投稿: セータ☆ | 2024年3月29日 (金) 20時09分
フランス製か、、。
投稿: hiranuma | 2024年3月29日 (金) 20時25分
すみません、HPアドレスではなく
サン・シャモン_M21_装輪装軌併用式戦車
サン・シャモン+M21+装輪装軌併用式戦車_サン・シャモン+M21+装輪装軌併用式戦車の概要
で検索していただけたら出てきます。
CWSは同じではなかったですね。何故かそう思えました、。
投稿: hiranuma | 2024年3月29日 (金) 20時33分
>hiranumaさん
サンシャモンのハイブリッド装甲車は覚えてます!
hiranumaさん、スクラッチ計画立てていましたよね。
あの時は、サンシャモンのロゴプレートに関して(もっとずっとポピュラーな、戦車の方に付いている)写真を見つけてお教えしたこともあったような覚えが。
CWSのロゴとの関連はよくわかりませんが。
投稿: かば◎ | 2024年3月30日 (土) 11時08分
>セータ☆さん
我が家と前後してお母様が亡くなられたようで、お悔やみ申し上げます。
>>GAZ-AAの前輪にブレーキドラムはあります。
あう。これは、私が根本的に誤解していたようです。
付いているのが「増設された」のではなく、ついていないのが「省略された」という流れなんですね。
うーん。シボレーもついてるのかなあ(←調べろよ)。
Hussarのクブシュ用ホイール、いいですね!!
しかし、これはキットに比べると完全に過剰クォリティだなあ……。値段もたぶんキット以上……(まあ、そういうものはいくらでもありますが)。
私はGAZのタイヤで我慢します。
投稿: かば◎ | 2024年3月30日 (土) 11時13分
ご丁寧に有難うございます。かば◎さんの御母堂様にもお悔やみ申し上げます。
当方はかば◎さん御母堂様の前日の旅立ちだったので、案外「あちら行き連絡船」の待合室とかですれ違っていたかもしれませんね。
投稿: セータ☆ | 2024年3月30日 (土) 17時10分
>セータ☆さん
あるいは
「ウチの息子はいい年してプラモデルマニアで」
「あらウチも」
みたいな話をしていたり。
gizmologで拝見した「7TPパン」は、「ぜひ食わねば」と思って、7-11にもあるかな?と思ったのですが、ありませんでした。
いや、パンとしては同じものが売っているのだと思いますが、「セブン・ザ・プライス」という“タグ付け”がないのか。
東逗子のヨークマートに行ったらあるかなあ。
投稿: かば◎ | 2024年3月31日 (日) 13時37分
かば◎さん
クブシュの進捗はどうですか?
私の方はwz.29のシャーシーとホイールがほぼでき、装甲車体のパネルを切り出しました。
砲塔はまだですが組み上げながら微調整していく感じです。
投稿: hiranuma | 2024年4月16日 (火) 06時08分