« 2024年1月 | トップページ | 2024年3月 »

2024年2月

完成しないダンジョン

●題名は模型友みやまえさんのサイトのコンテンツの丸パクリ。

●特に完成を目指しているわけでもなく、ただ無心に「模型をいじりたい」という衝動に見舞われることがよくあって(特に何かしらの用事で心身が慌ただしい時)、そんなネタの一つとして、現在、エレール 1:72のモラン・ソルニエ225をいじくり中。

キットに関しては、以前に、記事「ポテかポテーズか」でごく簡単に紹介したことがある。以下、若干重複するが、改めて。

Img20240228224125 Img20240228224142

箱は潰れてボロボロ。1980年代の黒箱になるまえのキャラメル箱。キットは、scalematesによれば1967年に初版発売。表左下の「メーカータグ」的な部分に「Heller Echelle 1/72eme」と書かれているのは、1969年の第2版であるらしい。

裏側には「DANS LA MÊME SERIÉ(同一シリーズ)」として当時すでに出ていたキットが並んでいるが、1:75のアルカンシエル、1:40のスパッドVIIなども入っているから、単純に「シリーズ=飛行機キット」くらいの意味しかない。下に書かれた「DE NOMBREUX AUTRE MODÈLES A PARAITRE」は、おおよそ「新製品続々登場予定」といった意味。

ちなみにこのキットは、今世紀に入ってからも、まだチェコのSMĚR(スムニェル)から販売されている(本家エレールの方では、現在では絶版状態のようだ)。

実機は、上の箱のキット名称では「MORANE 225」となっているが、より詳しく書くと「Morane-Saulnier M.S.225」。戦間期のフランスの機体で、当時のフランス式分類記号では「c.1(単座戦闘機)」。第一次大戦末期から戦間期の一時期に掛けて、モラン・ソルニエがこだわっていたパラソル翼の一連の機体のうちのひとつで、1932年に初飛行している。

英語版wikipediaによれば、「開発中のより高度な航空機の導入前の一時しのぎとして作成された」機体だそうで、そのため生産機数は75機と少な目。そんなのを、よくもまあキット化したもんだ。53機が空軍に、16機が海軍航空隊に納入され、3機が中国に輸出されたらしい。3機は行方不明?(普通に考えると、テスト用にメーカー側でキープされたとか、そんなところだろうが)。

……というようなことを聞くと、私としては中国仕様で作ってみたくなるのだが、ネット上には根拠が不明な塗装図は2例ほどあるものの、実際の写真は見当たらない。どなたかこ存じの方がいれば教えて下さい。

●ちまちまいじって、現状、主要パーツ群は以下のような感じ。

Img20240228224342

エレールは自国の誇りに掛けて戦間期のマイナー国産機のキットを精力的に出していたが、このキットは同社72の中でも比較的初期のものとあって大らかというか、再現度も「プラモデルとしての出来」もイマイチ。かといって、カリカリにチューンするほどの資料も気力も足りていないので、「どうしても目に余る」部分を訂正しつつ、若干なりと「シュッとした」状態に持っていく、程度の工作を目標とする。

しっかり製作記等を書くつもりもなかったので、いじったパーツのbefore状態の写真を撮っていないので、どういじったかの比較はできないが、以下、主に手を入れた部分など。

Img20240228224617 Img20240228224601

主翼は外翼部上面が別部品。そのパーツ分割線がエルロンの前辺と外側を兼ねているのだが、内側の切れ目はなく、しかも主翼下面に至ってはエルロンの影も形もない。というわけで、上面の内翼・外翼間の接合線を消すとともに、エルロン内側・外側にエッチングソーで切れ目を入れた。下面はエルロン前辺をスジボリ。下面のエルロン・主翼間は若干リブの山をヤスって、「エルロンと主翼はきちんと別ですよ~」感を若干プラス(どうせ裏なので気持ち程度)。

Img20240228224728

水平尾翼は、安定板と昇降舵の分割線が間違えている。キットでは昇降舵外側分割線が後ろ側(赤矢印部分)にあるのだが、実機は前側(黄色矢印部分)で、要するに昇降舵にデカいバランスホーンがある形状。というわけで、後ろの溝は埋めてリブ表現に。前側には切れ目を入れた。

Img20240228224418 Img20240228224503

コクピット内は、キットのパーツとしては床板、椅子、操縦桿があり、古いキットとしては「まあ、マシ?」な感じ。とはいえ、オープンコクピットで、中を覗いてそれだけだと寂しいので、両側にフレームを付けた。あとは若干の機器類、計器盤、フットペダルくらいは足そうかな。

Img20240228224447 Img20240228224540

カウリングは、キットのパーツのままだと「円筒形+前面」くらいの感じだったが、実機はもうちょっと、前半部で緩やかに絞っている感じなので、適当に削り直した。もともとパーツには変な梨地モールドとかパネル分割表現とかタガとかのモールドがあったが、その辺も一旦全部削り落とした。カウリング前面は排気管で、左右に排気口がある。キットは「ただの穴」状態だったので、プラペーパーを突っ込んで、なんとなくそれらしく。

エンジンは、向きを決めるダボなどなかったので、シリンダーが「Y」状態になるように付けたが、実際は逆(真上にシリンダー1本が来る)かも。

木製2翅のプロペラは、ブレードの片側がほぼ直線、もう片側がゆるくカーブしている。キットは直線側が前縁になっているのだが、実機ではカーブを描いているほうが前縁なので、キットのプロペラの軸部を切り取って、表裏をひっくり返した。

昔々、とある模型誌で、「キットのプロペラのピッチが逆なので、表裏逆にして取り付け」という記事を読んだことがあるようなおぼろげな記憶があるのだが、表裏逆にしても、ピッチは逆にならないよね……。記憶違いかなあ。

●と、いじってはいるものの、そのまま完成まで突き進む気力がいまいち湧かないのは、

  • 前記のように、生産機数があまり多くなく、塗装バリエーションに乏しいこと。
  • そもそも徒然にいじっている古キットに別売デカールなどを奢る気にもなれないこと(かといって、キットのデカールは今でもちゃんと使えるかどうか怪しい)。
  • さらに胴体前半+カウリングは金属地、しかもどうやら胴体前半側面は、細かい三角の整然とした磨き模様付きなので、塗るのが面倒。というよりも、そもそもどう塗ったらいいかも考えたくない感じ。

などによる。

| | コメント (10)

ベッカライ

●1月末日、母死去。

未明、入所している施設からの電話で知らされる。

その何日か前に、脚にチアノーゼが出ていると知らせがあって慌てて面会に行き、それなりに覚悟も出来ていたことではあるけれども、その一方で、頭の片隅では、昨年正月早々に転倒して骨折して手術、入所以来、何度も「いよいよ危ない」的なことを言われて持ち直してきた実績があって、今度もなんとなく乗り越えそうな、みたいなことも思っていた。

この一年は、こちらのこともよく判らない状態で、ほとんど会話もできなかったけれど、とにかく、最後は痛くも苦しくもなかった様子だし(夜半の見回りで死去していることに気付いたそうなので、本当のことは知りようがないけれども)、年齢(101歳)を考えると胸を張って(誰にだ?)大往生と言えると思う。

もう、母の周りの友人と言える人たちや、同年代の親族なども軒並み亡くなっていることもあって、ごく近しい身内――兄・甥と私・妻・娘と三人目の息子扱いのドイツ人P夫婦、母の一番下の叔母夫婦、母方の従弟妹2人だけで小ぢんまりと告別式も済ませた。あとは来月頭の納骨を待つのみ。

●ひとつ文句を言いたいことがある。

母がまだ元気なころに言っていたのだが、戦時中に若くして亡くなった母の母(私の祖母)が、今際の際に「節田からお迎えに来たよ……」と言い残して逝ったらしい。節田というのは現在、奄美空港があるちょっと南あたりの集落。祖母の実家はもともとその節田という集落の出だったらしいというのを、母自身がその言葉で初めて知ったのだとか。

それはそれとして。

母はそれを根拠に、「これから死んでいく人は、必ず何か一言言ってから逝くものだ」と決め込んでいて、父が亡くなった後、しばしば「何も言わないで勝手に逝った。薄情なんだから」とブツブツ文句を言っていた。

そこまで言うからには、きっと本人は、たとえその場にいなくとも、夢枕かなにかで一言知らせてくるだろうと密かに期待していたのだが、何もなかった。機会があれば「ちょっとどうなのよ」と詰問したいが、流石に現実世界の地球上に「魂の眠る地オレオール」は探し出せそうにない。

まあ、実は私が眠りこけていて気付かなかった、などということなら逆に申し訳ないが。

●そんなこんなで、がっつりと模型製作に取り組む精神的余裕もちょっと失くしていたのだが、現在はちょっと持ち直して、「なんとなく漫然と手を動かせるネタ」として、エレール 1:72の古いキット、モラン・ソルニエMS225と、ハセガワ 1:8、ル・ローン・エンジンをいじっている。製作記については、気が向いたらそのうちに。

●プレッツェル行脚、なお続く。

スナック・タイプのハード・プレッツェルについては、身近に確保ルートがあるフーバーのプレッツェル(HUOBER社のSCHWÄBISCHE KNUSPERBREZEL――直訳すると、シュワーベン風さくさくブレッツェル)が私の中ではスタンダード認定されていて、それで満足。

しかしパン・タイプのソフト・プレッツェルは、なかなか「これだ!」というのに出会えない。最初に食べた鎌倉ベルグフェルトのものが結局はイイ、というところで落ち着きかけたが、何度か食べているうち、「もうちょっと身にみっしり/もちもち感が欲しい」と思うようになった。決してドイツ人Pの「穴の大きさが……云々」に流されたわけではない。

もちろん、本場のドイツの「ブレーツェル」を知っているわけではないし、本場のものも店によってあれこれ違いがあるだろうから、当然、私自身の勝手な思い込み基準で探しているだけなのだが、ここ最近は、ついに「どこかに出かけたついでに、近くにプレッツェルを扱っているとネットに出ているパン屋があれば、わざわざ足を延ばしてみる」までにハマってしまった。

ところが、これがなかなか打率が低い。

文京区湯島のドイツパン専門店、「ベッケライ・テューリンガーヴァルト」に行った時には運悪く売り切れ。田園都市線・江田駅近くのオーストリア菓子屋の「ナッシュカッツェ」に行ったら、折悪く店主?が手を怪我していて生地の成形できないとかで生産休止中。新横浜の「シャンドブレ」もこれまた売り切れ。

Img20240208164451 っていうか、あるかどうか確かめてから行けよ!と、我ながら流石に反省して、金沢八景駅前の「ベーカリーハウス・アオキ」には電話。「ありますよ」というので取り置きしてもらって行ったら、

プレッツェルという名前の、プレッツェル型の菓子パン

だった。生地も全然別物のデニッシュ系で、それに大量のアーモンド・スライスと砂糖コーティング。

実際、その手のもの(名前だけプレッツェルの菓子パン)がこの世に存在していることは知っていたのだが、この店に関しては、普通のプレッツェルの写真がネット上に出ていたので油断した。

「あっ……こういう“プレッツェル”ですか……」

と、出されたときに思わず言ってしまい、「え? あの、違いましたか?」「いえいえ、大丈夫です」なんて問答をしていたら、奥から店主?が出て来て、「もしかして、塩味の(正統の)プレッツェルをお求めに?」と尋ねられた。

曰く、「しばらく前まで、正統のプレッツェルも作っていたが、そちらは製造過程で劇薬を使う(焼く前に水酸化ナトリウム溶液にくぐらせる)ため、別に許認可が必要になってしまい、面倒で今は作っていない」由。

「だから、作っているお店があまりないんですよ。プレッツェルをお求めなら、ベッカライという名前の付いているお店に行かれるといいですよ」と教えられ、またその一方で、「わざわざ来ていただいたのに済みません」と謝られた。ちなみに、菓子パンのプレッツェルは、それはそれで普通に美味しかった。

前出の湯島の「ベッケライ・テューリンガーヴァルト」もそうだが、「BÄCKEREI(ベッカライもしくはベッケライ)」はドイツ語で「パン屋」の意(英語でいうベーカリー)。つまり、それが付いているお店はおおよそドイツパンの専門店と判断できる。フランス系のパンを多く扱う店が「ブーランジェリー」を名乗るのと同様。

●もっとも、その後ネットで検索すると、「ベッカライ/ベッケライ」を名乗る店でも、意外にプレッツェルは扱っていなかったりすることも判明。例えば大船の観音さんのちょっと向こうに「ベッカライジーベン」(カンプグルッペかっ!?)というドイツパン屋さんがあるらしいのだが、電話してみたところ「ウチでは扱っていません」と言われた。まあ、何はともあれ「これからはもっとちゃんと調べてから行こ……」と思ったのだった。

というようなこともありつつ、最近の戦績。

(1).鎌倉、御成通りの「ロティガール」のプレッツェル。

Img20240212173430

存在はちょっと前から知っていたものの、以前紹介した鎌倉駅の「Delifrance 鎌倉店」同様、太い部分にバターのフィリングの「ちょっと贅沢」系で結構お高い(500円)ため、試すのは後回しにしていたもの。いやまあ、美味しいけどね。

(2).新橋駅、ecute内の「le petit IMBISS(ル・プティ・インビス)」のプレッツェル。ドイツ風の「ちょい飲み屋」なのだが、なぜか店名はフランス語とドイツ語のちゃんぽん。プレッツェル等はテイクアウトもしていて、しかも(bergfeldほどではないが)お値段も比較的リーズナブル(プレーン:330円)。最も最近(土曜日)に、神保町に行くついでに寄って買ったもの。チーズコーティングのものもあったのでついでにそちらも。

Img20240224103840 Img20240224095800

ラウゲン液(水酸化ナトリウム溶液)処理由来の革靴のような皮の色艶と硬さ、中身のきめ細かなもちっと感など、今まで食べた中では「おお、これが一番オレ的プレッツェル・イメージに近いかも」感あり。

……ロケーション的にも寄りやすいので、今度また食べよ。

●つい最近買って読んだ「ハクメイとミコチ」最新刊(第12巻)に、とある本の中に、まるっきり曖昧な描写で登場する「キュウリ・サンドイッチ」を、ハクメイが味を想像して試行錯誤する話が出てくる。当然、実物がどんなものだかは全く不明で、ハクメイは「自分が想像したソレ」を求めているだけ。ああ、オレのプレッツェル行脚って、まさにこれだなあ、と思った。

| | コメント (10)

« 2024年1月 | トップページ | 2024年3月 »