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II号戦車a2型 IBG 1:35

Img20231210133426 ●久々の大きな買い物。ポーランド、IBG社製のII号戦車a2型。

昨年末~今年の初頭に発売されたキットで、その後、バリエーションとしてa3型とb型も出ている(a1型も予告されている)。

「初期型好き/大戦初期もの好き」の私としては発売予告時から欲しいと思っていたキットなのだが、通常版で7000~8000円台、金属挽き物+3Dプリントの20mm砲身とMG34、minirt製の戦車兵フィギュアの付いた限定版は1万円の大台に乗るという、昨今の高価キットの波の中でもひときわお高い感じで、指をくわえて眺めていたもの。

それが、9日土曜日、仕事で都心に出た帰りに秋葉原の駿河屋に寄ったら、中古品+バーゲンで限定版が税込み6300円で売られていて、つい手を出してしまった。9日は誕生日でもあったので、「自分へのプレゼント」という勝手な言い訳を心の中でしつつ。

●実車は言わずと知れたドイツ戦車の次男坊、II号戦車の初期型、というか増加試作型。a1~a3型まで各25輌、合計75輌が生産されている。後の、リーフスプリング独立懸架の片側5転輪という標準形式に落ち着く前の、I号戦車同様のカーデン=ロイド製トラクター譲りのリーフスプリング付き、小転輪のボギーを並べた足回りを持つ。

次のb型も同様の足回りながら、小改良がくわえられ、車体形状はほぼ後の標準型と同じになる。その次のc型で、ついに足回りが落ち着いて、その後の主生産型(A~C型)に引き継がれていく。

なお、サブタイプがa~cと小文字なのは増加試作型であることを示している、というのが一般に言われていることで、実際、その説明は納得しやすいのだが、改めて考えると、例えば同じく増加試作型扱いで少量生産のIII号戦車A~D型はそのまま主量産型と続きになっているし、他にも「小文字は試作型」の方式を採っているドイツ車輛にはお目にかかったことがないような。そのへんキッチリしていそうなドイツ軍(orドイツ人、ドイツメーカー)なのに、ちょっと不思議。

実車に関しては「PANZER TRACTS No.2-1 Panzerkampfwagen II Ausf.a/1, a/2, a/3,b, c, A, B, and C」や「アハトゥンク・パンツァー(第7集) 1号戦車・2号戦車と派生型編」が詳しい。また、「アハトゥンク・パンツァー」著者の尾藤満さんが、過去、スクラッチに近い工作で完成させたa2型の製作過程をサイト「パンツァーメモ」に載せており、これからa型を作ろうという人にも大いに参考になる。ちなみに尾藤さんは現在、II号戦車の主量産型であるA、B型の工作記事を進行中で、こちらも楽しみ。

●IBGのキットのa2型は、同社の初期型(増加試作型)II号キットの中では最初に出たもので、この後、若干のパーツ替えをしてa3型が発売され、さらに(私はまだ見ていないが)b型も発売された。a1型もアナウンスされているが、これはまだ発売に至っていないようだ。IBG models公式サイトとSCALEMATESによれば、現在判っているラインナップは、

  • 35075 Pz.Kpfw.II Ausf.a1
  • 35076 Pz.Kpfw.II Ausf.a2
  • 35078 Pz.Kpfw.II Ausf.a3
  • 35079 Pz.Kpfw.II Ausf.b
  • 35080 Pz.Kpfw.II Ausf.b with fuel trailer
  • 35083L Pz.Kpfw.II Ausf.a2(LIMITED EDITION)

35077に何が入るのかもちょっと気になる。

なお、発売予定のa1型まで含めれば、おそらく、大戦中に正式採用されたドイツ戦車に関しては、I号戦車からVI号戦車まで、ある程度(10輌以上くらい?)量産されたサブタイプはおおよそ全て1:35でインジェクションキット化されたのではないかと思う。

II号戦車E型はブロンコから火炎放射戦車型しか出ていないが、これはそもそも戦車型として完成したものがなさそうなので対象外。ただ、38(t)の初期型のうち、A型、C~D型は、マケットの初期型キットが大雑把に「A~D型」とひとまとめに銘打っているだけ。しっかりそのタイプを作ろうとするなら、トライスター/ホビーボスのB型から頑張ってちまちま改造する必要がある(ただしこの辺の仕様差はかなり微妙)。

●とりあえずキット内容概観。

35戦車キットとしては標準的な大きさの箱に、パーツは割とぎっしり目。miniart風に、パーツをかなり小分けにした枝構成になっているので、そのぶん容積を食っているのかも。プラパーツの枝は履帯を除いても全部で21枚もある。

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Aパーツ(左写真):戦闘室周囲の装甲板、OVM類など。

Bパーツ(右写真):砲塔下面・前面および砲塔内部パーツ。

Img20231210134824

Dパーツ(写真左):車体上部および前部上面、マッドフラップなど。

Gパーツ(写真右):車台、マフラーなど。

Img20231210135555 Img20231210135300

Pパーツ(左写真):車体前後面、ギアハウジングなど。

右写真はQパーツ:砲塔、O・Rパーツ:クラッペ。

Img20231210135113Img20231210135739

足回りパーツ。Eパーツ:転輪ボギー(×2)、Vパーツ:転輪(×6) Wパーツ:誘導輪(×2) 、Uパーツ:起動輪(×2) 。

履板は枝記号無し。12リンク1綴りのものが20本、計240リンク。軽くパチハメ式になっているようだが、はめ込みの凹凸はあまりなく、あくまで仮止め程度のようだ。説明書には「足回りの組立の最終段階まで接着はするな」と書かれていて、要するに、ハードにいじったり動かしたりしなければ連結が保持されるくらいにはなっているらしい。

履板の横幅は8mm強で、明らかにII号戦車用のKgs.67 300/90(履板のみの幅は285mm、1:35で8.14mm)を再現している。

「II号戦車のキットなんだからII号戦車用の履帯が入っているのは当たり前じゃないか」と言われそうだが、実際には、a型は生産時にはI号戦車と同じKgs.67 280/90(履板のみの幅は260mm)を履いている。ただし、後にII号戦車用に履き替えている例もあるので、誤りとは言い切れない。これに関してはまた回を改めて。

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左写真はTパーツ(透明パーツ)、エッチング(2枚)、限定版のみに付属の20mm機関砲身とMG34。20mmKwKとMG34は、同じポーランドのサードパーティ、「MASTER MODEL」製。20mmKwKはアルミの砲身と3Dプリントのフラッシュハイダー(消炎器)、MG34は真鍮製の銃身・消炎器と3Dプリント製の放熱筒。エッチングは2枚とも、「Pz.II a1-a2」と書かれていて、今後発売されるはずのa1型と共通の模様。a3型用はIBGのサイトの同型用組立説明書で確認できるが、2枚とも若干の差がある。

右、デカールはポーランド戦時の第4師団の2種の砲塔番号(304号車、345号車)と、第5師団の45号車。第5師団の45号車に関しては、国籍の十字と番号は、解釈の違いで白か黄色の選択式。ちなみに実車写真はこちら。一応、下部の菱形の明色部については黄色が定説。番号は菱形と同色のように見えるが、国籍マークは同色のようにも、やや明るいようにも見える……。悩ましいところですな。

ちなみに、箱絵は通常版・限定版ともに国籍マーク、番号ともに黄色の解釈だが、説明書のカラー図では国籍マーク黄色、番号白の解釈。

Img20231210135802 Img20231210133536

左は限定版のみに付属のフィギュア。miniart製のものがそのまま入っている。なぜか付属のリーフレットは「GERMAN TANK CREW (FRANCE 1944)」というトンデモな題名になっているが、実際はベレー帽の初期スタイルの、キット番号35191「GERMAN TANK CREW (FRANCE 1940)」。車輛のマーキングはポーランド戦(1939年)だが、ポーランド戦からフランス戦までに軍装の変更はないはず。……ないよね?

それはそれとして、II号戦車は乗員3名なのに、フィギュアは5体入り。いや、僚車の乗員が遊びに来てるんだよ。

説明書(右写真)は、おおよそいつものIBGスタイル。

●総じて言うと、若干気になる部分はあるものの、なかなか神経の行き届いた良いキットではないかと思う。

これまで、IBGの1:35キットはTKS、7TPを買って持っているが、いずれも、「やる気は感じるものの、どうも詰めが甘い」と感じる出来だった。TKSは、特に足回りがややもっさりした出来だったし、7TPの場合は、リベットが打たれた面にあちこちヒケが出ていたりした。

このキットに関しては、ディテールの細かさに関しては全体に統一感があるし、射出時の温度管理が適切だったのか(あるいは私の手に入れたキットがたまたまアタリだったのか)ヒケはほとんど存在していなかった。「この型式のインジェクションキットとしては初めて/唯一だから」以上の価値は十分にありそう。

考証に関しては、私自身、あまり偉そうなことは言えないが、もう少し細部についての(個人的な)注目点等々については次回に。

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コメント

キットを紹介していただき、また私の記事の宣伝をしていただき、ありがとうございました。

投稿: 尾藤 満 | 2024年1月11日 (木) 19時07分

>尾藤満さん

見て頂いてありがとうございます!

IBGのa2型、その後、とりあえず車体の工作を進めてみましたが、あちこちやや悩ましいところはあるものの、それなりに楽しめる模型だな、という印象です。

投稿: かば◎ | 2024年1月12日 (金) 20時49分

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