II号戦車a2型 IBG 1:35(2)
●ポーランド、IBG社製の「II号戦車a2型(限定版)」キットレビューの続編。中身をチェックして、個人的に気になったところなど。
●いきなり「足元を見やがって」感があるが、まずは履帯から。
前回述べたように、キットの履帯はII号戦車で標準的に用いられたKgs.67 300/90(ピンを含めた横幅が300mm、ピッチが90mm)を表現している。
左写真はタミヤのII号戦車c、A~C型の部分連結履帯と重ねて撮ったもので、同一幅であることが判る。右写真はT-RexのI号戦車用履帯(Kgs.67 280/90)の初期型と並べてみたもの。
前回も書いたように、II号戦車はa型においては生産時にはI号戦車と同じ、幅が狭いKgs.67 280/90(ピンを含めた横幅が280mm、ピッチは同じ90mm) が用いられていて、Kgs.67 300/90に変更されたのは次のb型からであるらしい。ただし、a型でもその後Kgs.67 300/90に履き替えている例があることは写真で確認でき(例えば「PANZER TRACTS No.2-1 Panzerkampfwagen II Ausf.a/1, a/2, a/3,b, c, A, B, and C」のp22)、これのみを以て直ちに誤りとは言えない。
むしろ開戦時には生産からすでに数年が過ぎており、実戦参加車輛は多くが標準履帯に履き替えていた可能性もありそう。しかし問題は、履帯の見た目自体はKgs.67 300/90もKgs.67 280/90もそっくりで、当時の写真を見ても、どちらを履いているのかなかなか判別できないこと。上記トラクツの写真についても、キャプションに「Kgs.67 300/90だ」と書かれているので「へ~、そうなんだ~」と思うだけで、私自身がきちんど識別できているわけではない。
ただ、ガイドホーンに穴が開いていて三角形に近い形状であればKgs.67 280/90(の初期型)、ガイドホーンに穴がなく台形に近ければKgs.67 300/90の可能性が高そうな気がする(Kgs.67 280/90でも後期型はガイドホーンに穴がなく台形に近いが)。
なお、標準的なKgs.67 300/90としてみると、キットのパーツはちょっとガイドホーンが尖りすぎかも。
●転輪類。
結論から言ってしまうと、転輪、上部転輪、誘導輪はすべて広いKgs.67 300/90に合わせた幅になっている。
転輪(左写真)は、三枚おろしの円盤を貼り合わせる構造で、ゴムリムの縦筋を表現する形式になっている。確かにa~b型の実車写真を見ると、このような縦筋が確認できるものがある。
ただし円盤間の位置決めダボがいまひとつキッチリ行かない。挟み込む中央円盤の凸が明瞭な側はそのままでよいようだが、凸が不明瞭な側は、そのまま付けようとすると円周がズレるので微調整が必要になる。
なお、前述のように転輪幅はKgs.67 300/90準拠なので、もしもI号戦車用履帯に交換することを考えるなら、中央に挟む円盤を薄いプラバン製に替える必要がある。むしろ、スライスして幅を詰めるといった激しく面倒な作業を強いられずに済む分、よいかも。
右写真は上部転輪パーツで、上側がキットのもの。下側はタミヤの主生産型キットのもの。II号戦車の上部転輪はa各型は大径、b型以降は下のような小径のものとなる。というわけで、本来のa型用としては上の大径でよいのだが、ただし、その場合はKgs.67 280/90履帯に合わせて幅が狭くなければおかしいことになる。上部転輪パーツ裏は軸穴以外特にモールドはないので、削るのに不都合はないが、それでも均一な幅で削るのはちょっと面倒?
もう一つ問題なのは、確かにKgs.67 300/90に交換されていると思われるパンツァートラクツのp23の写真では、上部転輪も小径・幅広のものに交換されていること。大径の上部転輪のままで、Kgs.67 300/90履帯を履いている例があるのかどうかは、よくわからない。タミヤのパーツを流用して小径のものに変えるか、それとも「新型履帯を使っていても大径の上部転輪のものもある」と判断して、a型らしさを残すために大径のものを使うか。ちょっと悩ましい。
●サスペンションパーツは下左写真のような形状。一方、a3型のキットでは、右のような形状になっているようだ(IBGサイトにUPされているa3型キットの組立説明図より切り出し引用)。
この増加試作型のボギー式のサスは、だいぶ小刻みに形状が変化している様子。しかしその一方で、実車写真では外側ビームの陰になっていることが多いためもあり、なかなか細かいディテールが確認できない。
PANZER TRACTSにはa2型の4面図が出ているのだが、IBGのキットのサスペンションボギーのスプリング部のディテールは、a2型用も、a3型用も、それぞれ微妙に図面とは異なっている。大雑把に言うと、トラクツの図面のサスは、IBGのキットの2種のものを掛け合わせたような感じ。わざわざ形を違えてパーツ化しているということは、IBGはトラクツ以外の何らかの資料or写真を参考にしている可能性がある。
なお、このサスボギーに関しても、履帯を新型に交換している場合には、幅広の転輪とともにより新しい型に交換されている可能性があるかもしれない。これまたちょっと悩ましい。
ちなみに、トラクツの22ページ上写真の(キャプションを信じるなら)a1型は、IBGのa2・a3型とも、トラクツの図面のa2型とも違い、後のb型のものに似たサススプリングになっている(車軸がスプリングに対して下側にある)。この車輛は幅の狭いKgs.67 280/90の初期型履帯を履いているようだし、上部転輪も初期型なので、b型のサスに交換している可能性は低そう。これはa1型独特のサスなのか?
12/14追記。邦人さんに教えて頂いたのだが、フランス人のjacky PAQUIS氏という方が、II号戦車に特化(!)したサイトを開いている。そのサイトの図説によれば、上記、トラクツの22ページ上写真のサススプリング仕様は、a1型の生産第2シリーズ(?)で用いられた(元のサスから交換装着された?)“第2バージョン”のサスだそうだ(「デッサン」コーナーにある図説27、28)。PAQUIS氏によれば、a2のサスは、基本的に、a1の仕様をそのまま引き継いでいるらしい(図説41)。
また、そもそも第1ボギーと、第2・第3ボギーとでは、最初からわずかな差異(リーフスプリングの枚数とか)があるようだ。
このあたりの仕様(の変遷)に関しては、実際にこのキットを作る際、最後まで悩みの種になりそうだ。一応、トラクツに掲載されているKgs.67 300/90履帯と小径上部転輪装着車の写真(p23上)ではa型用サス形状なので、幅広履帯でもb型サスへの交換まではしなくて済みそうではあるけれど、そもそも「a各型のサスはどういう形状だったのか」がはっきりしないのはもどかしい。
サスボギー外側ビームのエッチングパーツはa1-a2型用。コの字断面の上下の折り返しが、左写真のように、a1-a2型用では左右端まである。一方、a3型用(右、IBGサイトにUPされているa3型キットの組立説明図より切り出し引用)はやや短く、軸穴の中央に達するくらいまでしかない。
ただし、これまた「実車ではどうなのか」というのが今一つよく判らない。後のb型でも「折り返し長いタイプ」が使われていたりするし(トラクツp30)、a1型で「折り返し短いタイプ」だったりする(トラクツp5)。しかしa1型で「長いタイプ」もある(トラクツp22)。
ちなみに、IBGのa2型キットとa3型キットの間のパーツの差異は先述のサスボギー(a2:Eパーツ → a3:Fパーツ)と、エッチングパーツ2枚のみ。エッチングパーツの差は、1枚は上記のビーム形状、もう一枚の小物エッチングシートには強化サスの追加スプリングリーフ?が追加されている。
起動輪はa型独特の形状。径は後のb型用や、c、A~C型用と一緒で歯数も同じ26枚。IBGはTKSで歯数を間違えた前科があるので、「大丈夫かな~」とも思っていたのだが、今回はOK。径もタミヤのc、A~C型用と一致した。
長くなったので、足回り以外はまた次回。
| 固定リンク
「製作記・レビュー」カテゴリの記事
- Char 2C MENG 1:35(の突発的レビュー)(2024.08.17)
- I号戦車B型 アカデミー 1:35(2)(2024.07.12)
- I号戦車B型 アカデミー 1:35(2024.07.08)
- ミニスケール2題(2024.07.04)
- シロマダラ(2024.06.24)
「II号戦車」カテゴリの記事
- II号戦車a2型 IBG 1:35(4)(2024.01.13)
- II号戦車a2型 IBG 1:35(3)(2023.12.15)
- II号戦車a2型 IBG 1:35(2)(2023.12.13)
- II号戦車a2型 IBG 1:35(2023.12.12)
- Sultryバラ(2022.12.22)
コメント