つれづれSU-100(2)
●つまみ食い的なドラゴンSU-100(初版)製作記の続き。
ちまちま手を加えるところはあちこちあるにしても、今回の製作における改修のなかでも特に重視しているところといえば3点で、
- 戦闘室後面装甲の継ぎ方を初期型標準の組み継ぎにする。
- キューポラを戦中型標準の偏心タイプにする。
- 砲基部カバー右側面のボルト溝を再現する。
このうち1の装甲板の継ぎ方の改修については、前回書いた通り(溶接跡の再現はこれからだが)。
その後キューポラの偏心の工作をして、さらに(一番面倒臭そうだったので後回しにしていた)砲基部カバーの改造もなんとか済ましたので、今回はその報告。
●戦中型のSU-85M/100のキューポラは、おそらく前方からの攻撃に重点的に対抗するために前方が厚く、後方が薄くなっているようで、キューポラ本体に対してハッチが後方にズレている。
ドラゴン初版ではこれが再現されていないので(プレミアム版やズベズダでは偏心キューポラが付属している)、キットのパーツを改造する。
具体的には、キットのキューポラ本体パーツの開口部の前方内側半分にプラ材を貼り増し、後方は逆に削り込んで、開口部自体が後ろにズレるように調整する。ただし、キューポラ本体パーツの上端には若干内向きにrが付いていて、そのまま削ると後部が低くなってしまうため、上端も若干ヤスった後に0.3mm板を貼り増した。前側の厚くなった“縁側”部分はナナメに削ぎ落ちた形状に。
ハッチおよびハッチ枠部は、ほぼ発売当初(20年以上前)に製作したSU-85Mの際には、キットよりわずかに小径に作り直したが(T-34maniacs内の製作記事参照)、今回はキットのパーツをそのまま使うことにした。それにしても、今読み返すと「結構頑張ってるなあ、当時のオレ」と思うと同時に、考証的に迷走している部分もあってちょっと恥ずかしい。
キューポラ表面のテクスチャーやビジョンスリットに関してはこれから。
●砲基部カバーの改修。
プロトタイプを除いて?SU-100の砲基部カバーは右側面に深いボルト逃げの縦溝がある。ドラゴン初版キットではこのパーツはSU-85M、SU-100の両キット共用で、基本はSU-85M用に近い形状をしており、縦溝が再現されていない(正確にはSU-85M用でも本来は薄く溝があるのだが)。
脱線話だが、この縦溝は、大昔のゴムキャタピラ時代のタミヤ「SU-100ジューコフ」の箱絵にも描かれていて、当時それを見て、「何かコレ格好いいなー」と思ったものだった。もちろんキットのパーツでは無視されているが、当時の私は自分で何とか改造してそれを再現する、などとは1ミリも思わなかった(将来そんなことに精魂込める大人になるとも思わなかった)。
閑話休題。
実車は、SU-85用に比べてカバー部本体が右側に増幅されていて、その分、ボルト位置が内側に“食い込んで”しまったものと思われる。どんなふうにこの溝を作るか、あれこれ方策を考えたのだが、結局は愚直に、プラバンで「溝付き板」を作ってキットのパーツ側面に貼り増すことにした。
実際の作業は、おおよそ以下の左写真のような流れ。
0.5mmプラバンの2枚重ねで溝板を作る。2枚重ねにしたのは、表側のプラバンは最初からボルト位置にわずかに隙間を作っておいて、丸ヤスリで溝を作る際のガイドにしたため。キットパーツに張り付け、段差部分はプラバンの小片をレンガ積みするように張り付けて行って埋めた(さらに多少の段差や隙間は瞬着で埋めた)。
「モデラーとしてそれはどうなの?」という感じだが、我が家にはパテの備蓄がない。普段、ちょっとした隙間や窪みはプラ片や瞬着で埋めてしまうことが多く、一方で「パテ使い」のスキルもまったく進歩しないため、パテを買ってもだいたい、ほんのちょっぴり使っただけで残りを引き出しの奥でダメにしてしまう。というわけで、こんなふうにかなり大胆に「盛り・埋め」をする際にも「あ、そういえばパテねーや」という事態になる。まあ、プラ片を使うメリットとして、ベース部分と切削感に大きな差が生じない、というのはあるけれど。
ちなみにme20さんは、キットの平滑部に多少の歪みがある場合も積極的にパテで直していて(ポリパテ?)、何度見ても「スゲー!」と思う。
何はともあれ、そんな埋め/削り作業の後、表面をミカンセーキさんに倣った「瞬着なすりつけ」で鋳造肌表現とし、さらに(プラ色がまだらで判りにくかったので)修正箇所のみビン入りサーフェサーをベタ塗りして表面状態の確認を行った。その状態で、キットの元パーツと比較したのが右写真。溝のある側面と、丸みを帯びた面との境界は、実車では、作例のように割合はっきりエッジが出ているもののほか、かなりなだらかに変化しているものもある。生産時期の差などが関係しているのかどうかは未確認。
ついでに、上面にはキットでは省略されている砲架のカルダン枠の軸受も追加した。
なお、ドラゴンのSU-100プレミアム版のパーツでは、先述のようにこの溝が再現され、カルダン枠の軸パッチも追加されているのだが、少なくとも溝部はちょっと表現がおとなし過ぎる感じがする。
先のキューポラと合わせて戦闘室周りの現状はこんな感じ(もちろん両方とも仮組み)。
●このところドラゴンのT-34系を作る際に、個人的に「お約束工作」にしている、ラジエーターグリルのスライス→透かし工作もついでに済ませた。
実車は枠板はもっと薄いし、仕切りのロッドはもっと細く、むしろあちこち変形しているのが普通というくらいにヤワ感あふれるパーツなのだが、少なくとも、一部のエッチングパーツセットに含まれる平板なグリルよりはマシかな、と個人的には思っている。お金掛からないし。
もちろん、最近では実車通りの見た目に枠を組んで金属線を通すパーツとか、3Dプリント製の繊細なパーツもあるのだが、その辺は懐と工作力に余裕のある方はどうぞ、ということで。
側面グリルは、上辺のヒンジに関して最近の資料では工場別/年代別の位置の変遷などに触れているものもあるのだが、少なくとも私が現存車輛で確認した限りでは(戦時中の写真ではそもそも燃料タンクに隠れてきちんと確認できる例が少ない)個体差が大きく、「これがSU-100の標準」という位置は判断できなかった。
ただし、固定ボルト?とその座金に関しては、どうもSUの場合は真ん中辺にあるのが普通のようだったので、キットのモールドは削り取って、新たに真ん中あたりに付け足した。右写真でデッキの上に乗っているのが元パーツ。
●前回、SU-100用操縦手ハッチの「P.」マークについてちょっと触れたが、これに関してセータ☆さんが、新たに記事をUPしている。最近の資料での記述なども交えて、SU系のハッチについて解説したもの。これについては私が安直につまむより、とにかくSU者(なんだそりゃ)は同記事を直に読むことをお勧めする。
gizmolog「SU-85&SU-100・操縦手ハッチの鋳造刻印文字」
●ドラゴンSU-100の謎。
ドラゴンの1:35のSU-100には、ここで取り上げている初版(通常版、#6075)と、改修パーツが入った「プレミアム版」(#6359)のほかに、さらにその後になって発売された(六日戦争シリーズ)「エジプト陸軍SU-100」(#3572)というのがある。
「エジプト陸軍版」は「プレミアム版」のそのまた若干のパーツ追加版という感じのキットで、エッチングパーツやアルミ挽き物砲身、改修された砲基部カバーなどはプレミアム版のまま、戦後仕様特有の大型工具箱や履帯交換具なども入っているらしい。
superhobbyでパーツや説明書を確認してみると、この「エジプト陸軍版」、両開きハッチの戦中型キューポラも不要パーツで入っているだけでなく、なんと、プレミアム版にはなかった、戦中型の組み継ぎ仕様の戦闘室後面板と側面板も不要部品扱いで入っているらしい。そもそもそんなパーツを使うバリエーションキットは、現時点でドラゴンからは発売されていないはずで、そのパーツの存在自体が謎。
というわけで、ドラゴンのキットで戦中型SU-100を作るなら、「エジプト軍仕様」が実は最適! ――と言いたいところではあるが、ドラゴンの場合、割とこっそりパーツの入れ替えがあったりするし、不要パーツ扱いなので(プレミアム版と同様に)そのパーツ枝の該当部分が除かれてしまう可能性もあるかも。そもそも、superhobbyの当該ページに上がっている説明書のパーツ展開図と実際のパーツ写真との間にも、わずかに齟齬がある感じなので、実際に購入して箱を開けたら、目当てのパーツが「えー!入ってないじゃーん!」となる可能性も無きにしも非ず。どなたか買って確かめてみません?
(3月24日追記)
kunihitoさんが実際に上記「エジプト陸軍版」を購入してみたところ、組み継ぎ式の戦闘室装甲板、初期型キューポラ、溝付き砲基部カバーは全部入っていたそうだ。
なお、上で「そもそもそんなパーツを使うバリエーションキットは、現時点でドラゴンからは発売されていないはずで、そのパーツの存在自体が謎」と書いたのだが、その後さらに調べてみると、「SU-85M」のプレミアム版というのがSU-100プレミアム版とは別に出ていて、そちらは実際には初期型SU-100とのコンパチキットになっており、組み継ぎ式の戦闘室装甲板パーツを使う指定になっていることが判明。
というわけで、今後ドラゴンのキットを(新たに購入して)使って戦時中タイプのSU-100を作るのであれば、「SU-85Mプレミアム版」か「エジプト陸軍SU-100」のいずれかが適、ということになる(もちろんエジプト陸軍版のほうは「パーツが入っている」というだけで、説明書は戦時中仕様で組むようには書かれていないので、自分でパーツ構成を判断できる人に限る)。
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