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2022年12月

勇者

●魔王「勇者よ、この我のものとなれ!」

勇者「断る!」

……一度言ってみたかっただけ。「まおゆう」いいよね。

●モデラー界隈(?)では、とてつもない難物キットにあえて挑戦する(そして完成させる)者をしばしば「勇者」と称える。

我が家にも有名無名の難物キットはそこそこ(いや、かなり?)あるが、基本、それらのキットは作り通す気力を奮い立たせることはできずにストックしているだけなので、私は勇者手前どころか単なる無謀の人というべきかも。

それでも、時折「いやいや、スケールモデラーになってン十年、それなりに経験も積んでいるからには、時には難物キットに正面から立ち向かうべきではないのか」的な身の程を知らない謎意欲が沸き出てくることがあって、そんなキットをわざわざ掘り出してくることがある。

Img20221231125857 しばらく前から、そんなキットの一つ、M(仮称)の1:35、D-8装甲車のキットが自室の椅子のすぐ隣に積まれているのだが、数日前、セータ☆さんがブログ(gizmolog)でこれを記事にしていて、思わずニヤリとしてしまった。

セータ☆さんも書いている通り、乳白色(というより半透明)のデロデロした感じのプラパーツは、見たとたんに製作意欲を削ぐに十分で、実際私も、案の定、取り出してしばらく眺めただけで一切手を付けずに放置してある。まさに「勇者のみが対抗し得る」レベルのキットなのだが、一方で、モデラー仲間のかさぱのす氏はこのキットを、me20さんはバリエーションキットのD-12を完成させている。勇者多いなあ……。

ちなみにセータ☆さんの記事によれば、(全体形状のバランスは抜きにしても)天井板周りの面構成がだいぶ違っているようだ。もしも作るときが来たとしても「とにかく見た目を整えて組み上げる」ことしか考えていなかったので、知らんかったよ……。

●さて、この戦間期のソ連のフォードA型~GAZ-A~GAZ-M1シャーシ・ベースの装甲車は、D-8 → D-12 → FAI → FAI-M → BA-20 → BA-20Mという具合に進化していくのだが、そのFAI-Mのキットも我が家にある(そしてこれまた自席の隣に積んである)。

Img20221231132837 これも「勇者の討伐対象」の代表的レーベルと言えるMAQUETTEのキット(製造を同社で行っていたかは怪しいので、「メーカー」と言っていいかどうか)。

中身は、ソ連・東欧崩壊直後に雨後の筍のように出てきた新興メーカーの一つ、START製のBA-20のパーツ丸ごとに、新造の上部装甲ボディが入ったもの。新造の装甲ボディ・パーツは簡易インジェクションと思しき(これまた)半透明がかったプラ質で、STARTのシャーシに取り付ける際、一部を切り欠くように指示されているので、やはりMAQUETTEで出ていた(前身の)FAI装甲車のキットからの流用であるらしい。

御覧のように、箱の中身は、割合的にはSTART製の流用パーツ(緑と黒)のほうが圧倒的に量が多い。

しかし実際には角ばっているはずのシャーシ後端がBA-20Mのままで丸かったり、車体上部とシャーシとの接合部分の形状がまるで違っていたりするので、ある程度本気でFAI-Mを作るつもりならかなりの改造が必要になる難物キットなのは間違いない。もちろん、新造パーツの出来も大したことはないし、カリッカリにチューンナップしたFAI-Mを作りたい、という場合には、そもそもこのキットの存在など無視したほうがいいかもレベル。

●わざわざこのキットを引っ張り出してきたのは、おととい(29日)の晩、zoomでNIFTY時代の模型仲間(仮称・はるとまん氏を囲む会)と飲んでいて、くまざあ氏が話題に(そして画面に)出してきたため。

このキットはMAQUETTE亡き後(もう無いよね?)、今はMSDレーベルから出ていて、くまざあ氏が持っているのもその「新版」なのだが、なんと同梱のベースキットが、STARTのBA-20MからALANのBA-20に変わっているのだという。なんだそりゃ。

ALANのキットは、その後MSDに流れているので、要するに「自社製品」に挿げ替えたということらしいが、くまざあ氏が言うには、組立説明書(の図解?)はSTARTベースのままだそうだ。なんだそりゃ(再)。

ちなみに、キットの出来についてはSTARTもALANも「どっちもどっち」。ALANのキット(一時ドラゴンで出ていたこともあり)は装甲車体の合わせにかなりの難があったが、このキットの場合は使用しないのでそもそも問題にならない。いずれにしても、前述のように「ちゃんとFAI-Mを作るなら大手術が必要」という点では変わらない。

……いつか挑戦してみたい(無謀な勇者願望)。

●例年通り、本日はこれから川崎の実家に移動し、そこで新年を迎える予定。

皆様よいお年を。

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彫師

Img20221229015336 ●アルビオン燃料補給車の前部フェンダー、左右ともそれなりに「窪んでいる」状態まで彫り込んだ。やれやれ。もっとも、プラが柔らかいので思ったよりは早く片付いた。

シャーシフレームにそれなりにパーツも付けてみて、ここまで組んでの感想いくつか。

▼パーツの位置決め、方向決めがやや曖昧。もちろん、一頃の東欧キットのように「部品をどこに、どう付けたらいいかわからん!」ということは基本ないが、例えば4カ所のリーフスプリングが、シャーシフレームに対してしっかり真っ直ぐになっているかどうかは「部品任せ」では決まらない。ここが歪んでいると、後々4輪がきちんと接地しないことになりかねないので、ピッタリ決まるような何らかの工夫が欲しかった。

▼バリ等はないが、入り組んだ部分のパーティングライン、微妙な型ズレの直しが面倒(ほぼ見えなさそうなところはそもそも本気で直していないが)。

▼近接部位のパーツがあっちの枝、こっちの枝にバラバラに配置されていて、いちいち探すのが面倒。別にタミヤとかでなくても、普通のメーカーなら例えばエンジン周りならひとまとまりで同じ枝になっていそうなものだが、このキットの場合A枝、B枝、C枝、D枝に分散している。なんで!?

▼謎の部品取り付け手順。「絶対、これはこの段階じゃないだろ!」という指示がある。例えばエンジン側面に取り付けるパーツB12が、エンジン本体をシャーシフレームに付けた後に取り付けるよう指示されているが、あらかじめ付けておいたほうが楽。その上に付く排気管D15もエンジン取付前のほうが付けやすいと思う。

▼一方で組立説明図は多色刷りで丁寧。1ステップ前で取り付けたパーツは色を変えて図示し、取付後の姿がはっきりわかるようにしている。それでも見難い部分に関しては、別途向きを変えた別図など添えていて間違えにくいようにしている。

●そういえば、今季はフユイチゴを食べていなかった!といきなり思い出し、日曜日、例年つまみ食いしている某所に出掛ける。

昨年同様、途中で「山歩きのおやつ」として「小倉&マーガリン」のコッペパンを仕入れ、現地でこれでもかとフユイチゴをトッピングして食べる。美味し。

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鎌倉市図書館に「鎌倉・太平洋戦争の痕跡」(鎌倉市中央図書館近代史資料収集室/CPCの会、2004年)という冊子があり、図書館サイトでPDFで閲覧もできるようになっている(興味のある方は図書館サイトで書誌名で検索のこと)。

このなかに西小坪海面砲台のことも出ていて、それによれば、砲の据えられた二つの洞窟は、現在の逗子マリーナ6号棟正面の崖の、ちょうど6号棟の左右端の前あたりにあったらしい。

Img20221220151344 崖に向かって右側の擁壁には、現在上側で通行止めになっている階段があるが、これは上記資料によれば、洞窟の爆発事故で亡くなった子供たちの慰霊の地蔵へのアクセス用に設けられたものだという。

以前の記事に書いたように、この地蔵は現在では小坪海岸トンネル入り口上になるが、もともとは南砲台の洞窟前に置かれていたものだという。その当時の写真も、逗子市役所の写真アーカイブ「逗子フォト」にある(「小坪の洞窟砲台」で検索すると出てくる)。

というわけで、南砲台の洞窟は、この階段を上がってすぐの場所にあったはず。藪が多少は薄くなる(はずの)冬なら、もしかしたら洞口の痕跡くらいは見えるかもしれない――などと考えていたのを、先週通りかかった時に思い出し、ちょっと上まで登ってみた。

階段そのものが草藪と化していて、上るだけでも面倒だったが……結果。冬だろうと藪が濃くて、その向こう側はまったく見通せなかった。

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1枚目は通行止めの鉄棒越しに、ほぼ真っ直ぐ崖方向を向いて撮ったもの。2枚目は飯島方向(崖に向かって左方向)。3枚目は振り返って草ぼーぼーの階段を撮ったもの。

洞口はコンクリートが巻かれていたので、洞窟自体は埋められていても、藪さえなければ痕跡くらいは見えそうなものだが、残念。

●仕事先の神保町の事務所のC社長夫妻がコロナ罹患。ほぼ同時にその事務所での仕事仲間のE君も発症し(家に受験生がいるとのことで)隔離施設入り。一気に身近に迫ってきた感。

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アルビオン燃料補給車 AIRFIX 1:48

Img20221225203015 ●久しぶりにこつこつ模型の手作業中。

ネタは老舗エアフィックスの「アルビオン燃料補給車(ALBION 3-POINT FUELLER)」。

イギリス空軍(RAF)の地上支援車輛で、RAF以外で作りようがない(もしも他国で使っていたとしても知らない)アイテム、しかも48となると、私の通常のアイテム選択範囲からは外れるのだが、そのクラシカルな風貌とタンク上に背負った給油ブームなどの面白さに惹かれて、ついつい飛びついてしまったもの。発売されて割とすぐに買ったような覚えがあるが、SCALEMATEによれば、発売は2015年。そんなに前だったかなあ。

いやいやいや。模型を作るなら、作りかけのアレとかアレとかアレを進めろよ!次から次にお手付き増やすなよ!という自分ツッコミも毎度のことだが、まあ、勘弁しておくれ(誰に謝ってるんだか)。

とにかくこのキット、買ってそのまま仕舞い込んであったのだが、今回わざわざこれを取り出してきた理由は、来年の東京AFVの会のお題が「1930年以降の英語圏のミリタリー物」であるため。

「う~ん、そんなもん、ウチにあったかなあ」としばし悩んだ末、この程度しか思い至らなかった。実際にはイギリス製/アメリカ製AFVのキット・ストック(および作りかけ)はそこそこあるが、み~んな所属がソ連赤軍だったり中国軍だったり自由ポーランド軍だったり。まともに英軍所属の作りかけで「塗りかけのロールスロイス装甲車があった!」と思ったのだが、1930年より前なのでアウト。あっ、SASジープとかデザート・シボレーとかもあったわ(今思い出した)。

もっとも、どうせそのうち他のキットに浮気するので、来年の東京AFVの会までに完成するとは思えないけれど(←今から後ろ向き)。

●とにかくせっかくいじり始めたので簡単に実車とキットの紹介を。

キット名称では「ALBION 3-POINT FUELLER」としか書いていないが(アルビオン3点燃料補給車、とでも訳せばよいか?)、一応、車輛の形式名というのがあって、ALBION AM463という。この形式名は燃料補給車固有のものではなく、1930年代に登場した汎用のトラック車体のもので、他にも通常のトラックとかトレーラーとかバンとか救急車とかクレーン車とか、あれこれあるらしい。

燃料補給車は「3-POINT FUELLER」の名の通り、燃料ホース付きの可動式ブームが3本タンクの上にあって、どうやら同時に3機を相手に給油ができるらしい。

説明書の解説によれば、開戦時には400輌以上が英空軍にあり、大戦初期の燃料補給車の主力として使われたらしい。

とはいっても、地味な裏方車輛のことなので、ネット上で漁ってもそれ以上に詳しい情報も、写真もそれほど出てこない。まあ、そのぶん、ほぼほぼキットを信用して作るしかないかな、という相手ではある。

●キット内容は、透明パーツを含めてプラパーツの枝が5枚。48の小柄なキットの割に、結構ギッシリ感がある。

近年のエアフィックスは、35AFVではアカデミーのOEMが多いが、このキットはエアフィックス・オリジナル(たぶん)で、飛行機キットと同様の「MADE IN INDIA」。プラも飛行機キットなどと共通の淡いライトブルーの柔らかめのもの。

最近のタミヤとかエデュアルドとか、その辺の「ヒケもなければパーティングラインもひと撫ですればOK、パーツのエッジも手が切れそう」的なシャープさはないが、48キットとしては十分な部品割と再現度だと思う(ほとんど資料がないので、実車と比べての正確さなどはよく判らないが)。

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  • 写真1枚目:Aパーツ。車輪、キャビン、燃料ホースなど。ちなみに枝のほぼ中央、燃料ホースが1本、先端部分が折れている(欠損部分は箱の中に転がっていた)。
  • 写真2枚目:Bパーツ。燃料タンク、燃料補給ブームなど。
  • 写真3枚目:Cパーツ。シャーシフレーム、ボンネットなど。
  • 写真4枚目:Dパーツ。ラジエーターグリル、燃料ポンプなど。
  • 写真5枚目:Eパーツ(透明パーツ)。

デカールは1種、塗装例は1940年の英空軍としか書いていないが、バトル・オブ・ブリテン時の英本土基地のものではないかと思う。……ダンケルクで置き去りにされたヤツとかじゃないよね?

燃料補給用ブームは、左右のものはまっすぐ前に畳んだ状態と、45度、90度に展開した状態の選択式。キャビン左ドア、荷台後部のポンプ室?扉も開閉選択式。内部もそれなりに出来ているので、48のスピットやハリケーンなどと合わせて燃料補給中のジオラマも可能。もっともこのキットにフィギュアはまったく入っていないので、別途、同じエアフィックスの「WWII RAF Ground Crew」(04702)とか、ICMの「RAF Pilots and Ground Personnel (1939-1945)」(48081)(レベルで出ているのもたぶん中身はICM)あたりが必要になる。

●細かい点のあれやこれや。

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タイヤのトレッドパターンは、35スケールでもままあるが、本来は溝の部分を段差でなんとなくそれらしく表現しているもの。一発抜きのプラパーツなら仕方ないかな……。そのうちHaulerあたりから、レジンのタイヤとか出そうな気もする(同社からはこのキット用のエッチングパーツは既に出ている)。

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この車輛は何箇所かの平板パネル部分に、強度確保のためにうっすらとピラミッド型の凸プレスがしてあって、キットもそれを再現している。実車写真を見ると、もっとエッジがクッキリ立っている感じなので、カリカリにチューンナップしたい方はプラペーパーを裏からケガいてパネルを新造するなり何なり……。個人的には「わ、面白い車輛!」レベルで手を出しただけなので、これで充分。

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荷台後面のポンプ室(?)の観音開きの扉も凸表現入り。閉状態用の一体パーツと開状態用の分離パーツが入っているが、開状態のほうでは取っ手(ロック?)が捻ってあるのが芸コマ。

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燃料補給ブームは、キットのパーツでは、ラッパ型の先端からアダプターのようなものが飛び出していて、そこへ直角にホースが接続するようになっている。これがちょっと不思議で、ネット上で拾った何枚かの実車写真では(キットの箱絵でも)、ラッパ型の先端から直接ホースが出ている。パーツ割の都合(接続部の設計の都合)でエアフィックスが勝手にこんなふうに変えてしまったのか、それとも生産時期によってはこんな形状のものもあったのか……。しかしそもそも先端がラッパ型なのは、ホースがエッジに当たって切れたりしないように配慮したものという気がする。私自身は、前述のようにホース部品が一本折れていたりもするので、ホース自体も(何か柔らかめのプラか金属のロッドで)作り変え、「ラッパ口」から直接出る形に変えたいと思っている。

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このキット、強度確保のためなのか、前部フェンダー裏は本来窪んでいるものが逆に分厚く盛り上がっている。もちろん、作ってしまえばほとんど目立たなくなる部分なのだが、なんとなくそのままにするのは個人的にキモチワルイので、自作のノミだのヤスリだのでコリコリと削る(鎌倉彫の職人か何かになったような気分)。

左写真が工作前の状態、右写真が削り工作中のもの。現在はまだ片側しか削っていない。ある程度削って「ああ、窪んでるな」という感じになったら縁を尖らせて終了の予定。

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Sultryバラ

Img20221220225653 ●先週、母が100歳を迎え、合わせて土曜日にドイツ人Pも遊びに来るというので、週末に実家に出掛ける。認知症が進んで、直前のことはほぼすぐ忘れて同じ会話を繰り返すものの、とりあえず立ち居はしっかりしているのは有り難い(もちろん、兄が同居してくれて面倒見てくれているのがまず有り難い)。

土曜日はPとあれこれ話しながら飲み食い。日曜日はちょっと買い物に出るという兄と溝の口まで歩き、その後横浜をうろついてから帰宅。

●その横浜のヨドバシで、数回前に書いた、海洋堂の四天王ガシャポンのリベンジ。やったぜ!別のが出たぜ!

一応、現行の名付けに従うと、今回出たのは「増長天」。なお、前回引いた「持国天」に加え、見落としていたがキンキラキン・バージョンの「多聞天」も、すでに我が家にあった。あとは、無いのは「広目天」だけ。しかし、4分の1を引き当てるクジ運の自信はない。

なお、このシリーズの(現行名称)「広目天」は右足に体重をかけ、左手に槍(鉾?)を持った姿で、「持国天」との差異に乏しい。「広目天」なら、巻物を持って目を細めていてほしかったなー(東大寺戒壇院スタイル)。

Img20221219105527●サルトリイバラはこのへんの野山にいくらでも生えているツル草だが、秋に実る赤い実は食べられる、という話は割と最近まで知らなくて、今年はぜひ試してみようと思っていた。

そんなわけで、先月の半ばころ、赤く色づいた実を試しにつまみ食いしてみたのだが、甘くも酸っぱくもなく、ただ単に渋いだけだった(口が曲がりそうに渋いとかではなく、「ありゃ、渋いなこれ」レベルというのが、逆に何だか間が抜けた感じ)。

熟し方が足りないのかもしれないと、その後間を開けて2度ほど試したが(つい数日前も)、結局同じように渋いだけだった。

改めて考えてみれば、検索してみても「食べることができる」「生食できる」とは書いてあっても、きちんと味の説明をしているところはなかった。ちゃんと食べたうえで解説してるのかヲイ。

なお、サルトリイバラは(比較的まばらではあるものの)結構鋭いトゲと、立派な巻き付きヒゲがあり、「猿・捕り・茨」の名はそこから来ている。Sultry(情熱的に抱きつく)バラ、というわけではない(誰も思わないだろうけど)。かつて、「その昔、土佐の猟師はマダガスカルレーザーオオトカゲを捕らえるのに“天狗縛り”なるツル草を用いていた」という話を捏造したことがあるが、その時にイメージしたのがサルトリイバラだった。

●KV戦車に関する小ネタ。いまさらのように誘導輪のサイズについて。

web上にあるwalkaround写真を切り貼りしているので、ここに画像を貼るわけにはいかないのだが、いくつかの博物館車両の誘導輪サイズを比較してみた。

といっても、厳密な計算とが計測とかをしているわけではなく、ほぼ真横から撮った写真を、転輪サイズを揃える形で倍率調整し、その状態で、今度は誘導輪サイズを比較してみる、というもの。

比較対象としたのは、

  • 旧アバディーンに展示の1941年型(prime portal
  • キーロフスクの1940年型、緑色塗装の「061」号車(net-maquettes
  • キーロフスクの1940年型、白色塗装の「レニングラーデッツ」号(net-maquettes
  • ペテルブルクの何かのイベントに出てきた1940年型(DishModels

旧アバディーンの車輛に関しては、以前に仙波さんに教えていただいたが、実測値で直径が680mmであることが判明している。一方、キーロフスクの「レニングラーデッツ号」は、(グムカの高田さんがtwitterでも言及しているが)実際にメジャーを当てている写真もDishModelsに上がっており、それを見ると径は680mmより小さいように見える(誘導輪の中心が目盛のどのあたりかが判りづらいが、半径は320~330mmくらいに見える。ただし、それでもタミヤの新KV-1のパーツの約620mm径(35倍)よりは大きい)。

比較検討の結果。とりあえず、ほぼ直径部分で切り貼りしてみたが、明らかな径の差は認められなかった。

もっとも、「ほぼ真横からの写真」といっても誘導輪は端のほうにあるので若干の角度が付いているうえ、カメラと車輛との距離もそれぞれ違っているはずだから、到底正確な比較はできていない。あくまで「そう見える」程度のものでしかないことはお断りしておく。

●ポーランドのIBG modelsというメーカーは、私好みのアイテムをポコポコ出してくるので、まったくもって気を抜けない存在である。1:35ではTKSや7TP、ミニスケールでもWAWやFTFレーベルで「うぉう、こんなん出しやがった」的なものを製品化してくる。しかしその一方で、技術力が付いていっていない――というよりも、神経の行き届き方が足りていない的なポカがほぼ必ずどこかにあるキットを出してくるので、その意味でも気を抜けない。

そんなIBGが新製品としてII号戦車の初期型(a1/a2/a3型、b型)を出してくるというので、アイテム的には是非ほしいところなのだが、期待と不安半々。発売としてはa1/a2/a3型のほうが早く、同社のサイトによれば「12月発売」になっているので、もしかしたらもう早いところには入荷し始めているかもしれない。

何だかIBGが「やらかしそう」な懸念点を含めて、キットの予想を少々。

  • 一応、a型キットは予告の製品名では「a1/a2/a3」と、3形式の併記になっているが、Armoramaに出た見本写真やメーカー発表のCGを見る限りでは恐らくa3型。
  • a1/a2/a3型は、もともとは後の型よりも履帯幅が狭い、I号戦車と同じものを使っている(Kgs.67 280/90)。ただし、Armoramaの見本写真やCGでは上部転輪がb型以降のものになっているので、履帯も後のII号戦車標準幅(Kgs.67 300/90)のものになっている可能性が高い。実際の車輛でも交換されている例がある(例えばトラクツのp23)。誘導輪基部も(CGによれば)強化改修仕様とのコンパチ、車体前部には追加装備のノテク・ライトも付くようなので、要するに「改修済みの実戦仕様」という感じのようだ。もっとも、「せっかくのa型なのだから、製作当初の姿で作りたい」と思う人にとっては、結構厄介だろうと思う。
  • a型は、エンジンルーム後端が短く車体長も後の型に比べ寸詰まりなのだが、それだけではなく、実は車体前端も後の型より下がっていて、前部上面の傾斜がきつい。しかしこれは同じIBGのミニスケール、WAW1:72のa型、b型でもきちんと違いを表現しているので、まさか35でポカをする可能性は低そう。
  • しかし今後発売されるはずのb型の起動輪が、後のc型以降よりディスク部の盛り上がりが大きい点はきちんと再現されるかなあ……。WAW72では再現していたようには見えなかったので少々不安。

私自身は以前から「b型が欲しいなあ」と思っていたのだが、WAWのa型をいじって以来、寸詰まりでちょっと愛嬌があるうえ、業務用空調の室外機のようなエンジンルームの円形ルーバーがいかにも試作車然としているが気に入ってしまって、どちらを買おうか迷い中(さすがに両方は作らないと思う)。

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KV maniacsメモ(緩衝ゴム内蔵転輪)その2 附:標準型全鋼製転輪

●KV重戦車に使用された緩衝ゴム内蔵転輪の話の続き。緩衝ゴム内蔵転輪のバリエーションを、おおよそ使用時期の早い順に見てみる。

特記のない限りは、基本的なディテールは前回の「構造の概観」の項に記したものに準拠しているものとする。

なお、前回も述べたように、KVの緩衝ゴム内蔵転輪はリム部およびゴム抑え部が別体であり、形状の変遷も「リム部のバリエーション」×「ゴム抑え部のバリエーション」ということになるのだが、当然ながら模型的には全体で一括りなので、以下の変遷も「全体形ベース」で話を進めることにする。「パターンいくつ」という分類は、あくまでここだけの便宜上のもの。

また、各タイプ(車体および転輪)の生産時期については、基本、サイトТяжелые танки КВ-1の記述を参考にしている(google翻訳さん任せなので、意味を取り違えているところもあるかもしれない)。

▼(前史)SMK用転輪

KVの直接の祖先であるSMK多砲塔重戦車は、基本、ほぼそのままKV試作車に受け継がれた足回りを持っている。足回り全般に関する大きな違いは、

  • 片側の転輪数が8つ(KVは6つ)。
  • 履帯はKV標準型とよく似ているが、やや幅が狭い(セータ☆氏によれば660mm幅。KVは700mm幅)。この履帯はKVの試作車・初期生産型の一部でも引き続き使用。
  • 履帯ピッチは同一だが、起動輪はやや小径で、歯数もKVの16枚に対し15枚で1枚少ない。起動輪中央の皿形カバーも周囲が平らになっているなどやや形状が違う。トランぺッターのSMKのキットは、KVの起動輪パーツ(の含まれる枝)がそのまま入っていて、歯数が少ないSMK用はパーツ化されていないような……(少なくともsuper-hobbyの商品紹介ページではそのように見える)。誰かキットをお持ちの方、教えてください。(追記:丞さん情報。足回り丸ごと、KVキットからの流用だそうです。しかも初期型転輪・上部転輪もKV-2初期型のキットでパーツ化されているのに、なぜか標準型のパーツが入っているそうで……。どうしちゃったのトラペ)
  • 誘導輪は、本体はKVと同じもの? ただしハブキャップ形状は違う。

Charsergeimironovitchkirov

転輪に関しては、おおよそ以下のような特徴。

ゴム抑え板は8本リブ・8穴。

  • ハブキャップは、中央のボルト頭(前回「構造の概観」の①)がないように見える(TAKOMのキットのパーツでも表現されていない)。
  • ハブキャップ周囲のリング(前回「構造の概観」の④)に関しては、これまたTAKOMのキットのパーツでは別体表現/刻み目表現がないが、こちらは実車写真(上着色写真の元になった両側面からの写真)では不鮮明ながら周囲の刻み目があるように見える。
  • リム部に関しては、1種類ではなく、「軽め穴がない」「軽め穴が大きい」「軽め穴が小さい」の3種が混ざっている。上写真の元になった、試作完成時?の記録写真によれば、
    左側面: (前方)←無・小・大・小・大・小・大・小
    右側面: 大・小・大・大・大・大・大・無→(前方)
    となっているようだ(写真が不鮮明なので順番はやや不確か)。両側とも第一転輪が穴無しタイプなのは、負荷が掛かる場所には丈夫なものをという判断があったのかも。
  • 冬戦争時、擱座した状態の写真を見ると、左側面第7転輪のみ、ゴム抑え板がリブ無しタイプに替わっているようにも見える。とはいえ、単純に雪が付いていないためにそのように見えている可能性もある。なお、冬戦争時も転輪の穴の「無大小」の配列が上の通りだったかは不明。ただし、少なくとも左側面に関しては、第一転輪は穴無しのままだったように見える。

脱線話。この戦車の名称の元であり、生産工場(キーロフ工場)の名称の元にもなっているのが、1934年に暗殺された共産党幹部セルゲイ・ミロノヴィチ・キーロフで、従来は、その存在を煙たく思っていたスターリンが密かに手を回して暗殺させた――そのうえで、その存在を英雄的に祭り上げ、その暗殺に関与したとの疑惑をでっちあげて政敵大量粛清のネタとして利用した、というのがほぼ定説となっていた。

しかし最近の研究によれば、その死を政敵粛清の理由として大いに利用したのは確かでも、出発点のキーロフ暗殺そのものにはスターリンは関わっておらず、純粋に共産党幹部を狙ったテロだった、という説が浮上しているらしい。詳しくはこちら(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター、「スラブ研究センターニュース」104号 (2006/2)、「キーロフ殺害の鍵は北大図書館の本棚にあり」マシュー・レノー)。

初期型転輪・パターン1

ゴム抑え板の穴が8カ所の初期型転輪。トランぺッターのKV-2初期型でパーツ化されているタイプ。主に試作車に使用。リム部の軽め穴は、上記SMK用の「大きい穴」「小さい穴」の中間くらいに見える。

  • ゴム抑え板は穴が8カ所、放射状のリブが8本。ゴム抑え板の穴は、後の標準型(6穴タイプ)に比べて、やや小さめのようにも見える。
  • ハブキャップ中央のボルトは、KV-1の最初の試作車U-0では、SMK同様に無いようにも見える。その他の使用例では、はっきりと中央のボルトが確認できるものもある。

(実車使用例)

  1. 試作車U-0(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  2. KV-2/U-7:新砲塔搭載の試作車RKKA in World War II
  3. 1939年型(砲塔前後が丸い極初期/増加試作型・1940年前半生産):ハブキャップ中央のボルトあり。(「Тяжелые танки КВ-1」より)

初期型転輪・パターン2

同じくゴム抑え板の穴は8カ所だが、放射状のリブはない。試作車~極初期の生産型に使用。使用例から考えると、リブ付きの後にこのリブ無しタイプが生産されたように思われる。以下写真はwikimedia commonsより、File:Tank Fortepan 93766.jpg(FOTO:FORTEPAN / Mihályi Balázs)。

Tank_fortepan_93766m

  • ゴム抑え板は穴が8カ所、放射状のリブは無し。ゴム抑え板の穴は、上記パターン1同様、後の標準型(6穴タイプ)に比べてやや小さめのようにも見える。
  • フェンダーが「ウィング」タイプの工具箱になっている試作車U-7号車は、このリブ無しタイプを使用しているが、上記U-0号車同様、ハブキャップ中央のボルト頭が無いように見える。なお、その他の使用例では通常、ボルト頭は確認できる。
  • KV-2生産第一ロット(7角砲塔搭載型)では、サイト「Тяжелые танки КВ-1」の当該タイプのページで確認できる限りでは、すべてこの「リブ無しタイプ」の初期型が使われていた。
  • この時期までは、上部転輪はホイールのリム立ち上がり部分に小リブがあるものが使われている(らしい)。

(実車使用例)

  1. 上写真:上の写真には砲塔が写っていないが、一連の別写真から、L-11搭載の1939年型であることが確認できる。
  2. 試作車U-7:ハブキャップ中央のボルトは無いように見える。(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  3. 1939年型:1940年夏頃生産の仕様。ハブキャップ中央のボルトはある。(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  4. KV-2 生産第1ロット(「Тяжелые танки КВ-1」より)

標準型転輪・パターン1

ゴム抑え板がリブ12本、穴6カ所に変わったもので、「Тяжелые танки КВ-1」のL-11搭載型(いわゆる1939年型)のページによれば、1940年9月頃の生産車から用いられるようになったらしい。以後、F-32搭載の1940年型の中途(1941年7月頃?)までの生産車に広く用いられている。写真は前回載せたものの書き込み無し版。wikimedia commons、File:KV-1 1942 Parola.jpgVT1978)より切り出し。

Kvwheel03

  • リム部はおそらく初期型転輪とまったく同一。
  • ゴム抑え板の放射状リブは12本で、丸穴はリブで仕切られた部分の1つおきに開いている。初期型ゴム抑え板に比べ、丸穴はやや大きく浅い(ゴムが表面近くまで出ている)感じがする。
  • 初期――KV-1は1940年型の初期(1941年1~2月頃の生産)まで、KV-2は生産第2ロット(1940年末)までは上部転輪がリブ付き。以降はリブ無しが一般的。ただしリブ無しはなくなったわけではなく、後にチェリャビンスクでの生産分では復活したりしているのでややこしい。

(実車使用例)

  1. 1939年型:1940年秋頃生産の仕様。車体銃がなく(別写真で確認できる)砲塔の手すりがペリスコープより後ろにある。(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  2. 1940年型:1941年前半に生産された、1940年型の初期タイプ。砲塔は溶接線がエッジにある初期型。(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  3. 1940年型エクラナミ(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  4. KV-2 生産第3ロット(「World War Photos」より)

標準型転輪・パターン2

ゴム抑え板は上記の標準型パターン1と同一だが、リム部に軽め穴がまったくない。それほど生産数は多くないものと思われるが、1941年夏(7月頃?)の生産車、1940年型エクラナミや、同時期に生産された増加装甲無しの1940年型(75mmおよび90mm装甲の溶接砲塔型)に使われている例が散見される。上記の標準型パターン1、下記の標準型パターン3と混ぜ履きになっている例もあり。

実物は現存していない……と思っていたのだが、ソミュールにある元RONA(ロシア自由軍)所属車は、下のパターン3を主に装着しているものの、左側第3転輪(?)の内側は穴無しリムになっているように見える(はっきり写っている写真が手元に無い)。

(実車使用例)

  1. 1940年型エクラナミ(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  2. 1940年型エクラナミ(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  3. 1940年型エクラナミ:穴無し転輪と穴あり転輪を混用している例。 (「Тяжелые танки КВ-1」より)
  4. 1940年型:穴あり転輪と混用している例。別写真で右側面も第4転輪のみ穴ありなのが確認できる。(「Тяжелые танки КВ-1」より)

標準型転輪・パターン3

リム部の穴と穴の間に強化リブが設けられたタイプ。上記穴無しのパターン2とほぼ同時期か、その直後に登場。1940年型エクラナミや、同時期に生産された増加装甲無しの1940年型から、キーロフ工場がチェリャビンスクに疎開して以降、主砲がZIS-5に換装された1941年型の初期に至るまで標準的に使用されている。

写真はキーロフスクの短バッスルタイプの溶接砲塔搭載の1940年型。wikimedia commons、File:KV-1.JPGOne half 3544、パブリックドメイン)より切り出し。

Kvwheel05

リム部の強化リブは穴と同数の12個。

  • リム部のリブは穴と穴のちょうど中間ではなく、通常、正面から見て、時計回り方向にずれる。直線的に描き表すと、|〇 |〇 |〇 (↑外周) のような感じ。これは裏面も同様で、つまり、リブ位置は表と裏とでは食い違っている。タミヤの新KVのパーツでは、裏面は鏡写し(つまり表裏でリブが同一位置)になっている。ただし、下記のように前記と逆配列(つまりタミヤの裏面と同じ)になっている例もある(その場合裏面はどうなっているのか?)。リブと穴の間隔がちょっと違う(ように見える)例もあるので、下請け工場による若干の差異があった可能性がある。
  • リム部のリブは緩衝ゴム取付位置外周まで届いており、内側に向けて、緩やかにカーブしながら低くなっている。
  • リブの部分を残してリム部外周が変形し、縁部が円ではなく緩やかな12角形のようになってしまっているものもある。もっとも、現存博物館車両では時々見るものの、戦時中に変形するほど使い込まれる例はそれほど多くなかったのでは、という気がする(当時の写真でも若干は確認できるが)。
  • 組み合わせる上部転輪はリブ無しゴムリム付きが主だが、チェリャビンスクで生産が開始されたZIS-5搭載型(1941年型)では全鋼製上部転輪が使われ始める。

(実車使用例)

  1. 1940年型エクラナミ:穴無し(パターン2)と混用、というだけでなく、よく見ると第5、第6転輪のリム部の穴とリブの位置関係が通常と逆になっているという極レアもの。このタイプの存在についてはセータ☆さんに教えていただいた。(「world war photos」より)
  2. 1940年型エクラナミ:同じく穴とリブの位置関係の変則例。破損した第一転輪内側リムのリブが、通常よりやや「穴と穴の真ん中」に寄っているように見える。(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  3. 1940年型/371工場砲塔搭載型:この仕様の場合、転輪は基本このタイプのみ。(「Тяжелые танки КВ-1」より)

▼標準型転輪・パターン4

パターン3同様にリブ付きリムだが、リブの数が少ない上に形状が違うタイプ。セータ☆氏が以前に記事にまとめていて、それで存在を知った。セータ☆氏は、このタイプの転輪を「ハーフリブ・タイプ」と呼んでいる。同記事を読んでもらえれば「今のところ判っていることは全部判る!」くらいなのだが、以下に簡単にポイントをまとめる。使用例は少なく、主に、チェリャビンスクで生産が本格的に始まった頃(1941年8~9月頃?)に生産された、主砲がF-32・短バッスルの溶接砲塔搭載型に使われている。生産時期はそれよりやや下るが、タミヤが新KV-1で箱絵/デカールに選択した116戦車旅団所属「スターリンの為に」も、少なくとも左側第1転輪にこのタイプを使用している(セータ☆氏の記事に写真あり)。

  • リブの数が通常(パターン3)の半分で、穴の間の一つ置きにしかない。
  • リブの位置が片方に寄っておらず、穴と穴のちょうど中間にある。
  • タイプ3ではリブがゴム抑え板周囲まで届いているのに対し、こちらは短く中ほどまでしかないうえ、傾きも直線的。いわば三角定規を立てたような感じ。何しろ限られた戦時中の写真でしか見たことがないので、裏表のリブの位置関係は不明。パターン3のリブ位置が表裏で食い違っていることを考えると、このタイプでも互い違いの配列になっている可能性もあるかも。
  • 緩衝ゴム内蔵転輪の他のすべてのタイプと違い、リム外周部縁の「巻き込み」がない(ように見える)。そのため、接地面(履帯に当たる面)はより平らで、縁は薄く見える。下図は、この形式の転輪とパターン3の転輪の、リム外周とリブの形状の比較。あくまで「こんな感じ」の比較ポンチ絵で、寸法比率等はいい加減。
  • チェリャビンスクでのKVの生産では、当初はリブ付きの上部転輪が復活使用されていて、この転輪との組み合わせでもそれが主。

Kvwheel06

(実車使用例)

  1. 1940年型チェリャビンスク工場製(「Тяжелые танки КВ-1」より)
  2. 1940年型チェリャビンスク工場製:写っているなかでは第一転輪だけがこのタイプで、第2~4転輪はパターン1、第5転輪はパターン3と3種混用。見比べて、このタイプは縁の回り込みがないらしいことも見て取れる。(「Тяжелые танки КВ-1」より)

オマケ。

標準型・全鋼製転輪

KVの生産がチェリャビンスクに移って以降、当初はそのまま緩衝ゴム内蔵転輪が使用されていたが、1941年型(ZIS-5搭載型)が登場してしばらく後、さらに製造の簡略化が進んだ全鋼製転輪が登場する。転輪それ自体の緩衝機能はなくなってしまうわけだが、それほど高速走行しないはずの重戦車なら許容範囲、ということだろうか。以後、IS重戦車まで(形状は異なるものの)全鋼製転輪が使用される。

Kvwheel02

写真は前々回も使用したもの。wikimedia commons、File:KV-1 front-right 2017 Bovington.jpg(Morio)より切り出し加工。

  • それまでの緩衝ゴム内蔵転輪では、複列のそれぞれの片側も表裏対称だったが、新しい全鋼製転輪は深く窪んだ「片面モールド」状態のものを背中合わせに結合した形状。
  • 表面に放射状に並ぶ強化リブは、ハブ側からリム部まで(徐々に背が低くなって)到達するメインのものは6本。逆にリム側から内側に向け中途まで伸びるサブのリブは、メインのリブの間に2本ずつで12本。
  • 車軸を囲むハブ部分は、単純な円柱状のものと、ごく緩やかな6角柱状のものと2種類がある(セータ☆さんに言われて初めて気付いた……)。6角柱状のものの場合、頂点は前記の1対のサブリブの間に来る。必然的に、メインリブは各辺の真ん中から出ることになる。博物館車両のクローズアップ写真ではなんとか確認できるが、戦時中の写真でははっきり鑑別できるものは少なく、どちらが多数派なのかは不明。上写真のものは六角柱タイプ。改めて確認して、「ありゃ、これもそうだった!」的な。なお、Tankograd - Soviet Special No.2003 "KV-1 Soviet Heavy Tank of WWII - Late Version" の図面では、この部分を8角柱と解釈している。うーん。さすがにそれはないんじゃないかなあ……。
  • 転輪本体の断面形状(片側)は、金だらい状に「底」が平らではなく、中心に向かって浅く窪んだすり鉢状になっている。旧タミヤやトランぺッターの後期型KVのキットでは平らになっている。前々回記事で書いた疑問を、セータ☆さんがスパっと解決してくれた。ありがとうございます。 (追記)その後、現存の転輪を横(軸方向に直交する向き)から写した写真を見つけることができた。LEGION-AFVのwalkaroundアーカイブの、ロプシャの展示車両の写真のなかにあった(KV-1_Ropsha_185.JPG、およびKV-1_Ropsha_595.JPG)。これをみると、窪んでいると言っても極々浅く皿状であることと、転輪の内外は別々に作って中央で結合しているらしいことがわかる(後者に関しては、単純に“パーティングライン”である可能性もある)。
  • 緩衝ゴム内蔵転輪と違い、ハブキャップ周りの別体の刻み目付きリングはなく、ハブキャップは転輪本体中心の(前述の)円筒にやや埋まった格好。
  • 内外の転輪の結合部には、ごく小さな補強リブがある。トランぺッターのパーツでは10本。セータ☆さんに教えて貰ったDT35のアフターパーツでは12本?(ロプシャの上記2枚の写真からはちょっと判断しづらい感じ?)

このタイプの転輪は1942年型まで使用され、KV-1s以降は、さらに数種の全鋼製転輪が使われることになる(1s系の製作にはまだまったく手を付けていないので、何か書けるほど知識の整理もついていない)。

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KV maniacsメモ(緩衝ゴム内蔵転輪)その1

●調べものついでの備忘録。

基本、「今、私がわかっていること」を羅列しているだけなので、あっと驚く新事実の類はない(はず)。むしろ「他にもこんなタイプが確認できる」とか、「触れておいたほうがいいことに触れていない」とか、事実誤認とか、その手の問題があったらビシビシ指摘して頂けると有り難いです。

KV重戦車は、その直接の祖先であるSMK多砲塔戦車時代から、チェリャビンスクに工場が移転して直後のZIS-5搭載型(いわゆる1941年型)の初期(サイト「Тяжелые танки КВ-1」の解説によれば、1941年11月初旬)まで、一貫して緩衝ゴムを内蔵した鋼製リム転輪を使用している。

一般に(第二次大戦直前あたりからの)戦車の転輪は外周にゴムリムを付けて緩衝用とするが、KVのこの転輪は外周(リム)部は鋼製とし、これとハブ部との間に緩衝ゴムを挟み込んでいる。この形式の場合、履帯と転輪の接触音はやかましくなりそうだが、ゴムの損耗は抑えることができる。

緩衝ゴム内蔵転輪はT-34の一部やT-50軽戦車にも使われたほか、敵国ドイツもこれを模倣し、ティーガーIIほかに同様の構造の転輪を導入している。

構造の概観

複列式で外側・内側は同形。ついでにそれぞれ表裏も同形。鋼製のリムを、緩衝ゴムとゴム抑え板で両側からサンドイッチする形になっている。つまり、リム部は1組2枚、ゴム抑え板は片側表裏2枚×2で4枚。リム部とゴム抑え板の間にあるドーナツ状の緩衝ゴムも表裏2枚×2で計4枚。ハブキャップ、ハブキャップ周りのリング(ゴム抑え板をハブキャップに固定するもの?)各1、などという構成になっている。

Tankograd - Soviet Special No.2003 "KV-1 Soviet Heavy Tank of WWII - Late Version" に緩衝ゴム内蔵転輪の簡単な断面図や、ゴム抑え板・リム部それぞれ単体のイラストも出ているので、可能な方はチェックするよろし(p.54)。

生産時期によって形状にはいくつかのバリエーションがあるが、標準型を例に基本ディテールを見てみることにする。写真はフィンランド、パロラ戦車博物館所蔵のKV-1、1942年型。wikimedia commons、File:KV-1 1942 Parola.jpgVT1978)より切り出し加工した。この車両は戦時中にフィンランド軍が鹵獲使用した2両のKV-1のうちのひとつで、損耗部品を撃破車輛から調達しているため、1942年型であるにもかかわらず初期型の緩衝ゴム内蔵転輪を混ぜ履きしている。

Kvwheel04

:ハブキャップの中央には尖頭ボルト(あるいは丸頭ボルト)が1つ。単純にハブキャップ表面にあるのではなく、周囲は軽く一段、丸く窪んでいる。SMK用~極初期にはないようなので、グリースアップ用に追加されたもの?

:ハブキャップ端2か所に小さい平頭ボルト。ハブキャップの固定用? Ⅾ字型の座金?を介していて、土台のハブキャップもU字型に窪み、取付面を平らにしている。ボルト頭自体は①の中央のボルトよりやや小さい。D字型の座金は③で述べる段差と一体化しているように見えるケース(パロラの1940年型エクラナミ)も、まったく独立しているケース(キーロフスクの1940年型後期型)もある。もしかしたら時期的な差もあるかも。上写真のものは……うーん、よくわかんないやー。

:ハブキャップ周囲にわずかな段差。内側の低い段には、miniarmの別売転輪で表現されているように、どうやら一か所に切れ目がある(Cリング状態)。切れ目はおおよそ、②のボルト位置と直交する近辺にあることが多いようだが(90度よりはちょっとずれているのが普通?)、明らかにまるっきりずれているものもある。実は適当? 現存博物館車両でちょっと状態の悪いものだと、この低い段の部分が剥がれて浮き上がっているものが確認できるので、ハブキャップにもともとモールドされているわけではないらしい。

上写真の転輪ではその切れ目がはっきり確認できないが、角度のせいで見えないのか、そもそも切れ目がないのか、ちょっとよくわからない。上写真以外、もっときちんとクローズアップでも、この切れ目がないように見えるものもあって、(1).基本、切れ目は必ずあって、ないように見えるものはたまたそう見えるだけ、(2).実は切れ目があるものと無いもの、バリエーションがある、(3).そもそも切れ目があるように見えるもの自体、破損によるもので、正規の状態ではない――のどれに当たるのか、私自身どうもよくわかっていない。

:ハブキャップ周囲のリング。周囲8カ所に刻み目がある。ハブ部へのゴム抑え板の固定用か何か? ハブキャップ外側がスクリューになっていて、そこにこのリングを取り付けるらしい。リング部が二重に見える内側はハブキャップ外周(たぶん)。タミヤの新KVのパーツでは再現されておらず、単純にリング状に盛り上がっているだけで別体表現も刻み目もない。

:ゴム抑え板。内外、表裏合計4枚同形。タミヤの新KVでは、内側2か所では再現されていない。

:ゴム抑え板には初期型で8カ所、標準型で6カ所の丸穴。穴の中はおそらく緩衝用ゴムが露出している。写真の車両は展示場所にずっと置きっぱなしなので丸穴の中も車体色になっているが、余所の展示車両では伸縮のためかゴム部分は塗装が剥げてゴム色になっているものが散見される。標準型は12本の放射状リブ。初期型では8本のリブがあったりなかったり。

:リム部とゴム抑え板の間には僅かにサンドイッチされた緩衝用ゴムが覗いている。リム部はゴム外周に当たる部分でゴムを受けるようにわずかに盛り上がっている。ゴムが(というよりリム部が)ずれないようにするためか。このため、この「サンドイッチの断面」部分では、ゴム抑え板・緩衝ゴム・リムの立ち上がり部分、の三段重ね構造が見える。緩衝ゴムにパーティングラインが入って四段状態に見えることも。

:一部のタイプを除いて、リム部には12個の軽め穴。リム部は緩衝ゴムを介してハブから独立しているため、ゴム抑え板の穴やリブと、リム部の穴の位置関係は一定しない(はず)。またこの写真では内外のリム部の穴がたまたまほぼ同じ位置にあるが、これも適当にずれているのが普通と思われる。トランぺッターのキットでは内外のリム穴位置が揃うように、またタミヤの新キットでは内外のリム位置に加えてゴム抑え板の位置も一定になるようにパーツにダボが作られているが、むしろかえって不自然ではないかと思う。

:一部のタイプを除いて、リム外周の縁部は僅かに内側に向けて巻いた形状になっており、そのため外周部内側は窪んだ状態になる。既存のインジェクションキットのパーツでこの形状を再現しているものはない。リム外周の接地面(履帯に当たる面)中央には、摩耗が進んでいない場合には製造時のパーティングラインが残っている。

転輪の寸法

転輪の寸法に関しては、ポーランド、PELTAのKV本によれば、緩衝ゴム内蔵転輪の直径は590mm(後期の全鋼製転輪は600mm)だそうだ。青木伸也氏のtwitterに書いてあった(まさにその本を私自身も持っているのだが、今パッと出てこない)。えっ、緩衝ゴム内蔵転輪と全鋼製転輪で直径違うの!?

これに関しては実測データも複数あり、まさに上で触れたフィンランド、パロラ戦車博物館所蔵のKV-1、1942年型の転輪にメジャーを当てて測ってきた値が「困ったときのかさぴー頼み」かさぱのす氏のレポートにある。一応主要なところだけ引用すると、「直径:約570mm、厚み:約300mm、内外転輪各々の厚み:約110mm」(ちなみに後期の全鋼製転輪は直径:約590mm、厚み:約300mm )だそうだ。「約」が付くのは事後変形等々で、「ひとつひとつ、また測るところによっても、わずかながらにいちいち寸法が違う!」 ためである由。

もうひとつ実測データとしては、キーロフスクに現存する371工場製強化砲塔搭載の1940年型後期型の転輪にメジャーを当てた写真が「www.dishmodels.ru」に上がっており、そちらではおおよそ直径590mm、リム部の幅は95mmを指している。うーん。

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えのすい

●10日土曜日。息子一家と新江ノ島水族館に行く。

チビ(4歳)的にはイルカのショーだったようだが、個人的には、「えのすい」といえばやはりクラゲ。

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●ダイオウグソクムシの水槽を見に行ったら、相変わらず「生きてるんだか死んでるんだか」状態で底でじっとしていたが、水槽の展示名称が「オオグソクムシの一種」になっていた。

Img20221210135835

その理由も掲示されていたが、どうやら、過去飼育していた個体(死体)を台湾の専門家が調べたところ、ダイオウグソクムシとは違う新種が混じっていたとのこと。ただし、その新種(エノスイグソクムシという和名が付いた由)はダイオウグソクムシとよく似ていて外見では区別しづらく、現在飼育・展示中のものを生きたままDNA検査等は難しいため、展示名を「~の一種」にしたのだそうだ。えのすいのサイトにある、より詳し解説はこちら

●ゴマフアザラシ(だったかな?)の水槽で、ギリギリ隅っこの鋭角になった部分に一頭が頭を下にしたままきっちりはまり込んでピクリとも動かない。いわば犬神家の助清状態(全体が水没しているが)。

それを見た息子が「あれは死んでるんじゃないか。(いかに海生とはいえ)息をしないといけない哺乳類が、水中で逆さになってピクリともしないのはおかしい」と心配する。しばらく見ていても全く動かないので、とうとう息子嫁が近くの職員に聞きにいったのだが、結果、「アレは何故かあそこに挟まってるのが好き」だというのが判明。

更にしばらく見ていたら、もそもそ動いて海面に浮かんで息継ぎをして(?)、それから再度、先刻よりもさらにぎゅっと角に体を詰め込んで逆立ちをした。

子どもが押し入れの隅っこなどにお気に入りの居場所を見つけるようなものか?

●KVの履帯および転輪の変遷/ディテールのチェック作業のこぼれ話。

生産工場がチェリャビンスクに疎開して以降、ZIS-5搭載型(いわゆる1941年型)の後期からは、KVは緩衝ゴムを内蔵していない全鋼製の転輪が使用されるようになる。タミヤの旧KV-1の最初のキット(キット名称「KV-1C」)にも付けられていた転輪なので、見た目に関しては割とお馴染と感じる人も多いはず。以下写真はボービントン所蔵の鋳造砲塔搭載1941年型のもの。wikimedia commons、File:KV-1 front-right 2017 Bovington.jpg(Morio)より切り出し加工。

Kvwheel02 

この転輪、初期の緩衝ゴム内蔵転輪や、後のJS用転輪とは違って複列のホイールディスクは裏表非対称で、表側は深く窪んで強化リブがあり、これが背中合わせにされた形状となっている(鋳造の場合は、プラモデルのように同形のパーツをくっつけているのではなく内外一体で作られているのかもしれないが)。

タミヤの旧キットのパーツでも、トランぺッターのパーツでも、このホイールの裏面は真っ平ら、つまり断面でみると (ホイール全体で言えば ][ )という形状になっているのだが、実物の写真を見ているうち、「これ、底は平らじゃなくて、中央に向けてちょっと窪んでるんじゃない?」という疑問がわいてきた。これは、同じく平らだと思っていた後期型の全鋼製上部転輪が、実は中心に向けて窪んでいた(タミヤの新KV-1のキットではそうなっている) のが判ってびっくりした、というのも少し手伝っている。

6方向に延びているメインのリブは外側に向けて背が低くなっていて、それもあって「なんとなくそう見えるだけ」という可能性もあるので、上写真をもとに、リブの根本に線を引いてみた。

Kvwheel01

ホイールディスクの底面が真っ平ら(同一平面)だった場合には、正反対の位置にあるリブの根元のラインは一直線になるはず。しかし、写真のように2組のリブ(黄色およびオレンジ)で引いてみた線はどれも若干の角度のズレがある。

これは、やっぱり窪んでたんだ!!――と断定しかけたのだが、改めて考えてみると、このリブは(前述のように)中央で高く、外側で低いので、根元部分の厚みも中央に向けて増しているかもしれない。その場合は、向かい合わせのリブの根元のラインは一直線にならなくても不思議はないことになる(そもそも入隅がビシッと角になっているわけではなく、やや曖昧なところに適当に線を引いているので、線の引き方自体が正確かという問題もある)。

転輪を真横方向(転輪軸に対して直交方向)から撮った写真があるとかでなければ、実物を見てみないことにはよく判らない話なので、現時点では答は出しようがなく、モヤモヤ状態。こんな時(だけ)の神頼み的に、かさぱのす氏に「どう?パロラでじ~っくり写真撮ってない?」と問い合わせてみたが、「知らんわそんなもん(大意)」というお返事であった。

そういえば、どこかの資料にこのタイプの転輪の断面図とか出てないかしらね。

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虫焼け

Img20221203210943 ●前回、海洋堂の四天王のインジェクション・キットについて、値段にビビッて、「これなら(同じ海洋堂の)ガシャポンの四天王でいいや……」と思った話を書いたが、思い立ったらなんとやらで、川崎の実家に行った帰りに横浜のヨドバシのガチャコーナーで一つ引いてきた。

……が。

ピンポイントで、かなり前に引いたものと同じ像を引いてしまった。1/4の確率なのに! なんというクジ運よ……。orz

でも今度行ったらまた引こう。

●さて、この海洋堂の四天王についての疑問。実は私が引いたこの像、初期には「広目天」となっていたのに、現行では「持国天」になっている。というか、宝塔を掲げた多聞天以外の3人は、すべて途中で名前が入れ替わっている。どういうこと?

ちなみに件のインジェクション・キットは、基本、このガシャポンと同一のポーズで、そちらの名前の割り振りはガシャポン現行版と同じになっている。

いやまあ、実際の仏像でも、途中で名前が入れ替わったりして、寺伝の名称と重文・国宝指定の名称が違っていたりすることもあるんだけれど。

●先日書いた通り、目先の仕事が片付いてちょっとヒマになったので、久々に図書館本を数冊読む。

そのなかの一冊が養老孟司「虫の虫」(廣済堂出版)で、たまたま自然科学の書架にあって手に取って、ちょっと面白そうだったのでそのまま借りてきたもの。養老先生は言わずと知れた「解剖学の偉い人」だが、一方で昆虫採集のエライ人(偉い、だけでなく『エライコッチャ』も含む)でもあり、この本はそんな、虫マニアとしての養老先生のエッセイ。養老先生の虫本を読むのはたぶん2冊目。

それにしても、マニアな人のマニアな話というのは、なぜこうワクワクするのだろう。私自身はかなり「虫好き」ではあるものの「虫マニア」までには至っていない(と自分では思う)し、特に養老先生の専門のゾウムシに関して言えば、最近覚えたカシルリオトシブミを含めても、近所で見掛けて判別できるのはたぶん5,6種類止まりだと思う。写真は撮るが、特に虫を捕まえる趣味もない。それでも、「ついて来られない人は結構!」くらいの感じでマニア話に突っ込むほど、逆に我がことに引き寄せて思わず頷いてしまったり、あるいは目からウロコではっとしたりする部分が多いように感じる。

●考えてみれば、模型趣味も似たようなところがある。

例えばAFVの会に行って、ケン太さんに作品を見せて貰って話を聞く。M1エイブラムスのサブタイプはここがこう違うとか、作品のここは(現物が)一度テープを貼って剥がした跡を塗装で再現してみたとか、深く細かい話が(つつくといくらでも)出てくる(ちなみに今回の出品作はM1ではなくてK2だったが)。

個人的にはM1はまったく興味の外であり、今後M1を作る機会もほぼ絶対にない。そこからすれば、M1のウンチク話など「ああそうですか」で終わりかねないのだが、実際にはこれが面白い。もちろん、同じ模型製作の土俵の上なので、「このワザはこっちにも使える」というところもあったりするのだが、それだけでなくてM1(およびその製作)自体の話も十分に面白い。で、一生作らないであろうM1の余計な知識がちょっとだけ付く(が、ほとんど数日で忘れる)。たぶん、たとえ自分とは方向性は違っていても、(世間一般的には)余計なことに果敢に突っ込んでいくその姿勢そのものが面白いのだと思う。

ただ、これは「オタクの心、オタクが知る」的なものなのか。あるいはマニア的素養のない人であってもある種の共感があるのかどうか。それともマニア的素養がないと自他ともに思っているようなひとでも、心のどこかには「マニアのかけら」があったりして、そこに引っかかったりするのかどうか。いまさら何のマニアでもない自分にはなりようがないので、ちょっと判らない。

●養老孟司「虫の虫」の前書き部分で触れられていた話。

夜にも煌々と明かりがついているコンビニには、たくさんの昆虫が引き寄せられてくる。ただ、コンビニが出来た当初はものすごい量が来るものの、そのうち、数が減ってくるのだという。コンビニの殺虫灯で退治されるものもあるだろうが、光に引き寄せられて本来の生息地から引き離され、そのまま帰れなくなって生殖機会が減るという理由もあるかもしれない。

そのため、コンビニのある地域では走光性のある特定の種類の昆虫が減ってしまう現象が起きる。これを虫屋さんは「虫が焼ける」と言うのだそうだ。

身近な昆虫の増減で言うと、「最近、ミヤマクワガタを見なくなったなあ」とか「アカボシゴマダラが増えたなあ」などとは思うが、数ミリの名もない羽虫(単に名前を知らないというだけでなく、その手の虫の場合、研究も進んでいなくて実際に名付けされていない虫もあったりする)はほとんど気にすることはないし、むしろ「小さい羽虫が減って有り難い」とさえ思うかもしれない。しかし実際にはそういう部分も含めて生物多様性は成り立っているわけで。いろいろ考えさせられる。

そんなわけで、その下りで養老先生が紹介していた高橋敬一「昆虫にとってコンビニとは何か?」(朝日新聞社)を、改めて市立図書館で借りてきた。人間のさまざまな活動、産物を取り上げて、「昆虫にとって〇〇とは何か?」を問う28の記事から成り立っている。「コンビニとは何か?」の項まで読んだが、「虫が焼ける」話は出ていなかったので、そちらは養老先生が別ソースで聞いてきた話らしい。

むしろ「昆虫にとってコンビニとは何か?」のなかでは、「結局、コンビニの明かりが、その周辺の昆虫の個体群を壊滅させることはほとんどないと思われる」と書かれている(が、それに続けて「人間活動(コンビニもその一環である)にともなう生息場所の破壊や環境悪化のほうが、その地域の昆虫種を根絶やしにしてしまう可能性が高い」と書いている)。

●ちょっと用事があって、KVの履帯と転輪について改めてちくちくディテール等検証中。

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東京AFVの会の戦利品、などなど

Img20221201145225参加記にも書いたが、東京AFVの会の折に、Kakudouさん(はい人28号さん)、M.Nさんに、あれこれソ連戦車関連パーツを頂いてしまった。

頂いたのは、モデルカステンの可動式T-34 履帯M40(SK-37)と、miniarmのT-34用転輪(#35178、SU-100,SU-85,T-34 Pressed roadwheels set (Sormovo Factry)、それからKV用初期型フェンダーステイの3Dプリント製品。……あっ。それからABERのSU-100用砲身も。これってどなたからでしたっけ。(貰ってばっかり)

T-34履帯は要するに初期型550mmタイプ。このタイプの履帯を使う前提で作りかけているクラスナエ・ソルモヴォ製のピロシキ砲塔搭載初期型はAFVクラブの履帯に合わせて起動輪の間隔をやや広げてしまってあるが、他にもT-34初期型キットはストックがあるので、使用先には困らない。

miniarmは旧ソ連戦車のアフターパーツが豊富で、いろいろ欲しいものがあり、いつか何か買うことになるだろうなあと思っていたのだが、最初のパーツが頂き物になるとは。モノはゴムリムに穴も刻み目もない後期タイプのディスク転輪で、おそらく、ドラゴンのSU-100に入っているものと基本同一のタイプ、ということになると思う。ただし、こちらはハブキャップ中央に突起(ボルト頭?)がある。これって戦後型? しかも転輪自体は10個(1輌分)だが、ハブキャップは20個入っている。あれれ?

改めてよく見ると、ハブキャップのパーツにはD枝とE枝があり、半球状のドームの立ち上がり部分、やや平らになったところの幅が違うようだ。どう使い分ければいいのかの説明等は無し。なお、メーカーのカタログページにある画像では、ハブキャップは中央にボルト頭がない(製品には入っていない)タイプになっている。あれれ?(再)

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KVのステイに関しては、薄さにしてもディテールに関してもイチオシ!製品である旨、M.Nさんが力説していたが、実際、非常に美しい出来。メーカー名も聞いたのだが忘れてしまった。FC MODEL TRENDかな?(追記:Passion ModelsのKV用エッチングパーツのweb販売特別版付属のものだそうです)

写真に撮って拡大するとよくわかるが、キットのモールドでは単純にボルト頭状にしてあるところ、きっちりナットの表現になっているのもポイントが高い。特にトランぺッターの初期型キットを作る際には、フェンダー幅が広いのを修正する必要があり、合わせてフェンダーステイの修正も迫られることになるが、これがあればだいぶ助かる(が、我が家のトラペの初期型に関しては、ほとんどこの部分の工作は終えてしまった。惜しい)。タミヤのKVに使うことにしようっと。

●会場で、M.Nさんからグノーム・ローンAXIIサイドカーの3Dプリント製品を見せて貰った。たぶんFC MODEL TREND製(うろ覚え)。確か、全体で「オートバイ本体」「ハンドル+前輪」「サイドカー」の3パーツくらいしかなく、フレーム、エンジン、タンクあたりのごちゃっとしたところが丸ごと一体成型。3Dプリントの恐ろしさを見せつけるかのような製品。模型として「作る」部分はほとんどない一方で、切り離しにものすごく神経を使いそう。……でもって塗り分けは面倒臭そう。

そんな細かさで、価格は2000円台だったというのがさらにびっくり。エレールのキットが今でも流通しているかどうか判らないが、サイドカー付きなら下手すりゃ同等の値段。さらにエレールのキットにスウォッシュ・デザインのタイヤ&スポークでも奢ろうと思った日には、何倍も掛かってしまう(ただしスウォッシュの軍用パターンのホイールセットは現在品切れ絶版)。……いやもう、エレールのグノーム・ローンは、ディテールアップするにしても、伸ばしランナーとか、その辺の身近な材料だけ使うことにしよう。

さらに、ハンガリーのCSABA装甲車の一冊本(Kagero)も見せて貰う。こここここここここんなものが出ていたとは! KageroはPZLあたりの飛行機のモノグラフで印象に残っているポーランドの出版社だが、またシブイところを突いてくるなあ。

それにしてもM.Nさんは、なぜこうピンポイントでこちらの弱点を攻撃してくるのか(笑)。

●毎回、東京AFVの会の帰りには皆でサニーに寄る。毎度あの魔窟的雰囲気に当てられて何かしら買ってしまうのだが、今年はなんとか我慢した。

●何のはずみでたどり着いたのか覚えていないが、YouTubeに「ヨーロッパで最長の要塞/ポーランド/ロシア帝国」というタイトルの動画が上がっている。

内容は2分半足らずの短い観光案内なのだが、なんとそのサムネイル画面に、TK豆戦車が写っている! 当然動画の中にもあるのだが、「戦車のオブジェ」というテロップ入りで数秒映るだけ。

しかしよく見ると、起動輪が車体の後ろ側にある! TK-3じゃない! 試作車のTK-1だ!

旧「河馬之巣」からサルベージしてきたコンテンツ、「TK豆戦車のバリエーション」にも書いたように、TKシリーズはTK-1、TK-2の2両の試作車が作られ、最終的には、TK-2を改修した形態が量産車のTK-3に引き継がれていくのだが、TK-1はモドリン要塞で高い石積みの台座に載せられてモニュメントになっていた。

これは戦時中に撤去され、戦後は同じ台座上にT-34のミニチュアが置かれたということなのだが、なんとその撤去されたはずのTK-1が、しっかり保存されていた!?

……と、かなり色めき立ってしまったのだが、ネットであれこれ検索して調べてみると、どうも数年前に製作・寄贈されたレプリカであるらしい。それに関する記事は、たとえばこちら。記事に添えられた写真を見ると、戦前、野ざらしのモニュメントになっていたにしては表面が綺麗すぎるのでレプリカとわかるものの、かなりよく出来ている。最近のレプリカは侮れない。というだけでなく、現在の展示品はどこまで信用できるのか、ますます不安になってきた。

●YouTubeからの脱線話。最近YouTubeを観ていると頻繁に、

日本は美しい。

煙がなければ、更に。

実現しよう、煙のない社会を。

という広告が流れる。どうにも禁煙ファシズム的な臭いがして好きになれないのだが、さらに驚くのは、この広告を流しているのがフィリップ モリス ジャパンだということ。フィリップモリス(本体)は世界最大の煙草メーカーだが、主軸を加熱式煙草に移行、近い将来、紙巻き煙草から全面的に撤退する方針を打ち出している、そうだ。

要するにそんな戦略に則ったうえでのこの広告、ということなのだが、今まで散々煙を噴き上げる煙草を売ってきた会社が、方針転換したとたんに「私ら嫌煙派の味方ですよ~。一緒に煙の出る煙草を撲滅しましょうね~」みたいな顔をしているのがさらにキモチワルイ(そもそも加熱式煙草の健康被害等への影響もきちんと検証できていないのに)。

なお、私自身は禁煙して10年を超え、当然、所構わず煙草を吸う人には不快感を覚えるものの、一方で「煙草吸いてぇなあ」という欲求の記憶はまだあるし、分煙に配慮してくれれば、喫煙という「悪癖」(あるいは依存症)をどうするかは個人に判断する権利があると思う。

●私自身がtwitterをやっていないので(一度流したら最後、訂正が出来ないメディアというのは怖くて使う気がしない。当ブログも、一度アップしてからあちこち書き直すことも多い)、他人のつぶやきも見る機会がほとんどないが、ミカンセーキさんが「ハラT」青木氏のtwitterのページにリンクを張っていたので、ひさびさにちょっと覗く。

で、そんな中に、氏が海洋堂1/35の「飼育員とシロサイセット」 を買った話が出ていて、「やつぁいったいなんつーモンを買ってるんだ……」と思いつつ、一方で「海洋堂は今、こんなもん出してるの?」と思って同社のプラキットカタログのページをついつい見てしまう。

うっわ! 海洋堂、四天王のプラモデル出してるよ! これ、欲しい!!

と心の中で思わず叫んでしまったが、よく見ると、台座を含めて16cm程度の小像で、価格は5000円超。4体揃えたら2万円超え……(ちなみに現時点では3体目の発売予告が出たところ)。それならガシャポンの仏像シリーズでいいや……。

将来十二神将とか出たら怖いね(お値段的に)。

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TKS用履帯・改訂版 CHINO MODEL 1:35

●昨年秋、国内の3Dプリント・ガレージ・メーカー、CHINO MODEL製のTKS用連結可動履帯の紹介をしたが(当該記事はこちら)、その後、CHINO MODELさんから、改訂版2種をご提供いただいた――という話をちらりと書いたのは初夏(6月21日付)のことで、その時に「近々、きちんとレビューをアップ予定」と書いたにも関わらず、延々と放置してしまった。情けないやら申し訳ないやら。

というわけで、改めてレビュー記事を。

CHINO MODELさんはfacebookのAFV関連のグループでも活動していて、製品化の要望や改良に関してかなり柔軟に対応している。国内メーカーというだけでなく、3Dプリントという生産方式の強みを発揮しているとは言えるが、そもそもご本人のフットワークが軽くなければここまではできないと思う。

TKSの履帯に関しても、最新キットであるIBGの起動輪とのフィッティングがうまくいかない(これについては後述するが、全面的にIBGが悪い)と連絡したところ、かなりの試行錯誤をしていただいた。今回の改訂版は、そうしたあれこれを踏まえたもの。

改訂版は2種類あり、

(1).連結可動式

連結可動式の履板がびっしりモールドされた1枚のパーツと、起動輪1組およびTOM、MIRAGEキットへの起動輪フィット用アダプター、履帯組立用治具(連結用治具と金属線切断用治具)、20mm機関砲FK-A wz.38砲身のセット。

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(2).足回りが一体成型された「イージー・パーツ」

連結状態の履帯に、起動輪・誘導輪・転輪・上部転輪が丸ごと一体で成型されたもの。各転輪類の間隔や起動輪の取付部はIBGのキットに準拠。つまり、こちらはほぼIBG製キット専用のパーツといえる。

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●それぞれについて、もう少し細かいチェックしてみることにする。まずは(1)の連結可動式について。

初期生産分は連結部の穴が中央で貫通しておらず、連結用の金属線を左右からそれぞれ別々に挿し込む必要があったが、今回の改訂版は一気に挿し込めるようになっている。拡大してよく見ると、穴の詰まりを防ぐため、真ん中のかみ合わせを無理にチューブ状にせず、C字断面にすることでピンを挿しやすくしているようだ。

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もともとこの履板は1:72の中戦車クラスと同等の大きさしかなく、私もこうして写真に撮って拡大して、ようやく「あ、筒じゃないのか!」と分かったくらいなので、こういう工夫は十分「あり」ではないかと思う。とにかく、一つ繋ぐたびに2本金属線を挿すのはなかなか大変で、実を言えば旧版は20コマくらい繋いだところで息切れしてそのままになっている(しばらく模型から遠ざかっていたためもあるが)。

旧版のパーツの取り外しの際は、サポート材を根元から切って、その後ニッパーで1本ずつ切り離していたのだが、新版の説明書には「履帯はサポート材から剥がして外すことが出来ます。爪で引っ掛け、履帯の前後方向へ力を掛けるようにすると破損しにくいです」とある(バラバラにしてなくしてしまうと怖いのでまだ試していない)。

履板は300枚入り。説明書によれば、IBGの場合で片側115枚、RPM/TOMは117枚、Mirageは121枚だそう。Mirageのキットは試作車のTKS-BとTKSのコンパチだが、使用枚数が多いのは、もしかしたらTKS-B仕様でカウントしたものかも。旧版を30コマくらい切り離し、20コマくらい繋ぐ過程で2,3枚破損させてしまったが、これくらい余裕があれば足りなくなることはなさそう。

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起動輪はボルトや歯もシャープでなかなか美しい。IBGのキットにはそのまま、TOM/RPM、Mirageのキットには付属のアダプターを介して取り付けられる由。わざわざ専用の起動輪が必要な理由は、既存のインジェクションキット3種の起動輪が、イマイチ~イマサンくらいの出来だったため。

やや寄り道して、以下、それらの検証を。

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①は、TKSの初のインジェクション・キットだったTOM/RPMのもの。初キットとしてなかなか頑張った!とは言えるが、歯が奥まっていることを筆頭に、起動輪のディテールはあまりよくなく、はっきり言えば「似ていない」。

②はMirage HOBBYのもの。ディテールはやや甘さがあるものの、きちんと「あ、TKSの起動輪だ」とわかる出来。

③は最新のIBGの起動輪。ホイール部のディテール、ボルトのメリハリなどはさすが最新キットで、実物にもよく似ている……のだが、前2者の起動輪と比べ、これだけ歯数が2つも多い! 実車の起動輪の歯数を数えてみたところ、どうやら前2者の30が正解の様子。

このメーカー、アイテム選択等々、(特に私のようなモデラーにとって)絶妙なところを突いてくるのに、どうも詰めが甘いところがあると常々感じていたのだが、今回もやってくれたぜIBG。そりゃCHINO MODELのせっかくの履帯のピッチが合わないわけだよ……。

もちろん、起動輪の歯数が若干違っていたとしてもそのキットに付属の履帯がきっちり使えるのであれば、キットとしては破綻はないし、そもそもパッと見で「あ、歯数が多い/少ない」なんて判ることはまずないと思う。ただ、別途アフターパーツが出てくるとか、他社製パーツと交換したいとかいう場合には、それぞれ正確さがあって初めて「互換性」が成り立つわけなので、やはりこういうところはちゃんと押さえておいてほしいと思う。次出すII号戦車初期型、期待してますよ~IBGさん。

ついでと言っては何だが、wikimedia commonsから、実物の足回り&履帯写真を引用しておく(履帯が掛かっていると歯数は数えづらいが)。

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左は「File:TKS Pict0167.jpg」、1939年戦時のポーランドAFVに関しては虎の巻的なサイト、PIBWLのDerelaさん撮影のもの。右は「File:TK gasienica.jpg」。

こちらのセットのもう一つの目玉は、20mm機関砲身。

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IBGのTKS/20mmのキットには、足回りパーツがバラバラの通常キットと、転輪と履帯が一発成型の「イージーキット」とがあるが、通常版のほうは真鍮挽き物の砲身付き(右写真下側)。当然強度的には金属砲身だが、CHINO MODEL製はフラッシュハイダー根元の穴もしっかり抜けているのがアドバンテージ。3Dプリントならではだが、CHINO MODELのパーツは根元まで砲腔が開いており、中に0.7mm金属線を入れて強度を確保/変形を防止するよう推奨されている。

なお、実物のフラッシュハイダーは、三脚付きの重機型の場合はキット(IBG&CHINO MODEL)のような感じだが(下左)、車載型では穴の部分が太くなっておらず、穴の形状自体も細長いものがみられる(下右)。どちらが一般的だったかはよくわからない。そもそも20mm搭載車輛の実車写真があまり多くないうえ、砲口部にカバーをかけていたりするので。写真はいずれもwikimedia commons(パブリック・ドメイン)。

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●(2)の「イージー・パーツ」版について。

こちらは片側ずつ、履帯はすべて繋がった状態で、起動輪・誘導輪・転輪・上部転輪と一体で成型されている。IBGの「イージーキット」の足回りの当該パーツをそのまま交換する形となっている。

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インジェクションのパーツでこのような構成とした場合、当然ながら、複雑なスライド型でも使わない限り抜きの方向に直交したディテールは再現できないが、3Dプリントパーツの場合は、連結可動式と遜色のないレベルで再現できる。起動輪の歯が噛みあう部分も、単純に「履帯の穴が埋まっている」のではなく、しっかり歯が噛んだ形状が再現されている。

ここまで再現されていれば、わざわざ連結する手間を考えれば、(少なくとも個人的には)連結可動式よりも圧倒的にこちらの製品が魅力的。私はIBGのキットはオチキス機銃型、20mm機関砲型、両方とも通常版を買ってしまったが、このパーツを使うことが前提なら、日本での流通価格で1000円近く安い「イージーキット」で済むというのも魅力。もちろん、連結可動式のほうは塗り分けしやすく、IBG以外のキットにも使いやすいというメリットはある。

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このセットのもうひとつ良いところは、もとのIBGのパーツ(右写真右側)に比べ、誘導輪の華奢さがよりよく再現されていること。IBGのパーツはスポーク部が分厚いだけでなく、私の入手したキットは一部樹脂のショートなどもあり、手を入れる必要を感じていたので、これは有り難い。

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サポート材から取り外し(サポート材との接続部はおそらく200か所くらいあるので、切り離しにはかなり気を使った)、上部転輪と転輪とにキットのビーム(桁)のパーツを合わせてみたもの。間隔はぴったりで、無改造でキットに使用できる。

ただし、通常、インジェクションキットでこういう一体成型の構成になっている場合、一体のパーツはそれなりの強度があるが、このパーツの場合は「ちょっと連結ピンが堅めの可動履帯です」くらいぐにょぐにょ動く。3Dプリントの特徴で、各パーツの隙間まである程度再現されているためで、キットのビーム裏の軸を各転輪に通すのにちょっと手間取った。

しかしそんなことよりも、ここまで繊細な履帯を使うと、今度は、写真にも写っているビームを含め、キットのサスペンション周りのパーツの大味さが逆に気になってしまう。もういっそのこと、サスまでまるごと一体でパーツ化してほしかったような……。

上部転輪のビームやその他細部に関しては、ABERのエッチングパーツ(下)にも含まれているが、このエッチングはそもそもTOM/RPMのキット用なので、どこまで使えるかは未知数。また、パーツの大きさ的にもことに厚みが目立つ転輪部の主桁はエッチングには含まれていない。

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