郵便機がらみの脱線話(2)
●前回に続いて押入れの守り神的ストックのレビュー(守り神がやおよろず状態)。フランス製の簡易インジェクション、HiTech 1:48のブレゲー14B2。
武骨で、四角くて、頑丈そうで……およそ「洗練された格好良さ」とは無縁な感じだが、しばらく見ていると、それが逆にちょっと魅力的に見えてくる感じの機体。
フランスお得意の(というか、戦間期までは各国がしきりに開発していた)多座多用途機のハシリにして初期の成功例のひとつで、これの後継機が前回のポテーズ25や、同メーカーのブレゲー19あたり、ということになる。
大昔、オーロラの1:48シリーズにも取り上げられていたくらいなので、第一次大戦機のキット化アイテムとしては最古参の部類ということになる。実は、私は子供時代にオーロラのブレゲーを組み立てたことがある……らしい。「らしい」というのは、おぼろげな記憶で、「やけに角ばった感じの、それなりの大きさがある複葉機のキットだったこと」「主翼を前から押している地上員のフィギュアが付いていたように思うこと」くらいしか覚えていないからだが、該当するキットは、おそらく、オーロラのブレゲー14しかない。
まだプラモデル趣味に目覚める前で、当時の子どもの常として「時々プラモデルを接着剤ベタベタで捏ね上げるだけ」だった私が、なぜ輸入品の第一次大戦機などというマニアックな品を手にすることになったのか、今では確かめようもない謎である。
閑話休題。そんなキット化史を持つブレゲー14だが、その後は長く後継キットに恵まれない時代が続いた。
80年代、悪名高い草創期の簡易インジェクションメーカー、マーリンから72キットが発売され、(よせばいいのに)入手したことがあるが、でろでろのプラパーツ(前回のHITKITの比ではない)というだけでやる気を無くすのに、なんと私の入手したキットは、胴体の同じ側が2つ入っていた。購入した模型店に連絡をしたら、「えっ!? では、すぐに交換します。在庫確認しますんで……。あっ! 申し訳ありません、こっちの在庫も同じ側が2つでした……」と言われた。右左別々で2枚ずつならパーツだけ交換で済んだのに……(これって前にも書いたような気がする)。
そうした前史の末に、ようやく手に入れた比較的まともなキットが、このHiTech製の1:48 ブレゲー14B2ということになる。なお、72ではペガサス、その後AZmodelからもキットが出ている。
ちなみにキット名称末尾の「B2」は(たとえばメッサーシュミットBf109E-4、みたいな)生産順によるサブタイプ記号ではなく、フランス独自の機種識別記号で、爆撃機(Bombardier)で複座(2人乗り)を示す。ニューポール17C1、モランソルニエ406C1とかも同様で、これは戦闘機(Chasseur)で単座。
ブレゲー14の主要生産型としては、他に偵察機型のA2があって、これも「偵察機・2人」の略号だが、Aが何の頭文字なのかはよく判らない。フランス語で偵察機は「Avion de reconnaissance」だが、「Avion」は単純に航空機のことだから略号にするならRを使いそう。Accompagné(随伴)とか、あるいは実際にこのA2機が配属されたCorps d'Armeéを示しているのかも。
ちなみにこの頃のフランスの陸上の航空隊は全体が陸軍に所属していたはずなので、後者のCorps d'Armeé(直訳すれば陸上部隊)は陸軍所属を示すのではなく、爆撃隊とか戦闘機隊とかと並列で、偵察・空撮・弾着観測・リエゾンなどの地上支援を担当する部隊のことであるらしい。
●前置きが長くなったが、そろそろキットの中身を。
中身は簡易インジェクション製の主要プラパーツ、レジンとメタルの小物パーツ、エッチング、デカールとインスト。
単発機とはいえ結構大柄な機体で、2枚目写真にあるように、手のひらと比べても主翼はだいぶ大きい。胴体横・後席脇に窓があるのはたぶん爆撃型の特徴。下翼に出っ張りがあるのも爆撃型の特徴で、この出っ張りは下翼下面に装着されたミシュラン製の爆弾架(小型爆弾なら左右各16個懸架可能)のもの。下翼後縁が、ほぼ全スパンに渡ってフラップになっているのも爆撃機型だけの特徴らしい。ちなみにアエロポスタル社で使用された郵便機は、おそらく窓や爆弾架のないA2仕様をベースにしているのではないかと思う。また郵便機型は(ネット上で作例等見ると)下翼左右(B型で爆弾架のあるあたり)に貨物(郵便袋?)収納用のコンテナをぶら下げているようだ。
胴体表面の布張りの縫い目、翼のリブ表現などはそれなり。簡易インジェクションで第一次大戦機を出し始めたころのエデュアルド並み、くらいか(通じにくい評価)。私の入手したキットでは、下翼の爆弾架部分の表側に、あまり目立たないながらも、わずかにヒケがあった。裏側ならエッチングを貼るので、いくらヒケててもいいのに……。
胴体下面はモールドの方向もあってつんつるてんだが、実機は何かディテールがあるかもしれない(資料不足でよく判らない)。
びっしりとルーバーの入った機首側面は、プラパーツは一段窪んでいて、エッチングパーツを貼る構成。
割と大判のエッチング(横約10センチ)は、前述の機首側面パネル、爆弾架、後席機銃架、窓枠、前面ラジエーターのシャッターなど。機首側面のルーバーがペッタンコ表現なのはちょっと残念な感じがするが、かといって、ここを綺麗に膨らませて、かつ綺麗に形を揃えるというのは非常に面倒くさそうだ。
メタルキャストパーツはペラ、脚柱、機銃。本機に使われたプロペラは数種あるらしいが、キットは最も標準的に用いられたラチエ製。レジンパーツは機首前面のラジエター、車輪、座席と、オカリナのような形の排気管。
デカールシートは、確か今はもう活動停止してしまったエアロマスターデカール製の美しい印刷のもの。縦横13cmちょっと程度あるが、塗装例1種のみに対応。シリアルNo1333はボックスアートの実機写真にある機体で、説明書によれば1918年6月、エスカドリーユBR117所属である由。フランス航空隊の中隊(エスカドリーユ)名は機種別になっていて、BRはブレゲー装備を示す。
たとえばエースとして名高いジョルジュ・ギヌメールの所属は第3戦闘機中隊だが、モラン・ソルニエ装備時代はMS3、ニューポール時代はN3、スパッドに替わってからはSpa3と変遷している。
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コメント
おお。郵便機じゃないか。かば◎さんもいろいろ持ってますねー。屋根裏にどれだけのキットがあるのか(笑)
ブレゲー14のエンジンカウルのルーバーはエッチングパーツを使う構成になってるのですね。スリットはエッチングだとシャープに表現できるメリットあるけど、リブ状のプレス形状が再現できないのが悩ましいですね。といって簡易インジェクションでリブを表現しても期待できないモールドになるでしょうし。。
ずいぶん前にドニエプルモデルのレジンキットでオペルの1tトラックを買ったのですが、エンジンのサイドルーバーが同様にエッチングで用意されていて、どうすべきか悩んだままそれっきりになってしまってます。
いま作ってるAZURのポテーズ25は戦闘機バージョンなので、胴体の下面に機銃用のスリットと覗き窓がついてます。郵便機だとそれも埋めないとなと思案してるところです。アエロポスタルの郵便機も機体によってディテールが違うので、そのあたりをまた書くつもりです。
投稿: hn-nh@ミカンセーキ | 2022年3月 3日 (木) 19時01分
>hn-nhさん
ちなみに3回目でエレールのアルカンシエルを書く予定ですよ~。
HiTechのブレゲー14、果たしてきっちり作る時が来るのかどうか怪しいですが、機首側面のルーバー部分は、素直にキットのエッチングをそのまま使うのが平和的解決だと思います。
オペル1tのレジンキットって、これですかね。
https://www.dnepromodel.com/OPEL_BLITZ_1_ton_SERIES_1_35/cat877257_776896.aspx
ずいぶんいろいろとバリエーションが出ているようで……。
小さいブリッツって、ICMからも出てなかったっけ……と思ったんですが、あちらは1.5tなので、さらに一回り小さいのでしょうか。
投稿: かば◎ | 2022年3月 4日 (金) 00時02分
買ったのはバンタイプのです。
Opel Blitz1t Kastenwargen early version
https://www.dnepromodel.com/Opel_Blitz_1t_Kastenwagen_Early_version_135/p877256_3947051.aspx
秋葉原YSの処分品コーナーで見かけて魔が差しました。ボディにレッドクロスを描いて救急車にしたらカワイイかなと思ってボディの形を整えるべくゴシゴシ削り込んだまでは進んだのですが、ボンネットはエッチングパーツを組み立てないとだし、レジンパーツのタイヤはトレッドパターンが甘いし、ガラスは透明プラ板で自作しないとだし.... いや、俺この車にそこまでの思い入れはないはず、とふと我にかえってそのままお蔵入りになってます。
エレールのアルカンシエルのレビューも楽しみにしてます。
投稿: ミカンセーキ(hn-nh) | 2022年3月 4日 (金) 07時00分
かな~り、お久しぶりです。
前置きもそれは楽しく読んでいるのでこれからも期待しております。
飛行機は詳しくはないですが、馴染の模型店が輸入の飛行機モデルが推しの所で、ここ5~6年店長のお勧めキットを購入するようになったんですよ。
簡易インジェクションじゃないエデュアルドを割と好んで組んでます。
かばさん解説は、なんか作ってみようかな?と一瞬でも考えてしまう怖さある。
あと別件ですが、横浜AFVの会(仮)というAFVの展示会が3月20日にあるのですが、参加しませんか?ミカンセーキさんにも声をかけているのですが如何でしょうか?
投稿: ケン太 | 2022年3月 5日 (土) 20時09分
>ケン太さん
おお。お久しぶりです。
「横浜AFVの会(仮)」については、実はつい数日前(木曜日)に、ハラT青木先生から存在を聞いて、「おお、そんなものがあるなら行ってみようか!」と思っていたところでした。
最近のエデュアルドは本当にいいですね。
部品のキレもいいし、箱を開けてパーツを眺めるだけでもワクワクします。
いや、「もろに簡易」時代のエデュアルドも、あれはあれですごくワクワク感があったんですけれども(←大量に在庫有り)。
>hn-nhさん
というわけで、hn-nhさんもいかがですか。
投稿: かば◎ | 2022年3月 5日 (土) 20時37分
ケン太さん、かば◎さん
横浜AFVの会、こんなご時世だから飲み会もないだろうし持っていけるほどの完成品もないからどうしようかなと思ってましたが、みなさんが参加されるならそれだけで楽しいから、参加する方向でスケジュール調整しますね。
そうそう、私のハンドルネームがTwitter方面でいつの間にか”ミカンセーキ”で流通してしまい、 ”hn-nh”と”ミカンセーキ”のどっちなんだいということになってきたので、発音しやすい”ミカンセーキ”に一本化しようと思ってます。
投稿: ミカンセーキ(hn-nh) | 2022年3月 6日 (日) 07時19分
私も持ってます、ブレゲー14。
でも、後から出た偵察機型の方です。
窓無し胴体のパーツ、爆弾架無しの下翼パーツ、エルロンが追加されています。
爆撃機型の下翼も入っているし、エッチングパーツは共通なのでその気になれば爆撃機型も作れる。
偵察機型下翼と一緒のランナーに脚柱も付いているので、それだけで偵察機型を選んで買った記憶があります。
ホワイトメタルの脚柱って不安ですからね。
でもマーキングは爆撃機型の方が良いですね
投稿: マクタロウ | 2022年3月 6日 (日) 20時42分
かば◎さん
横浜AFVの会、私も仲間に入れてください行きます。
でも作品が、、仕方がないからBA-3にしよう。
投稿: hiranuma | 2022年3月 7日 (月) 12時11分
>hn-nhさん改めミカンセーキさん
前にもちょっと言いましたが、確かに、リアルでお会いした時に「えっちえぬ・えぬえっちさん!」とは呼びかけづらいですもんね(笑)。結局ご本名で呼んでいましたが。
これからは私も「ミカンセーキさん」で行きましょう。
そのうちリアルでは「みかんさん」とか言われるように……。
投稿: かば◎ | 2022年3月 7日 (月) 14時08分
>マクタロウさん
おお。マクタロウさんもHiTechのブレゲー、お持ちでしたか。
爆撃型と偵察型で脚柱パーツが違うのは、ちょっと不思議ですね。私の手元の資料では形状が違うようには見えないんですが、実際には何か違いがあるのかな?
HiTechのメタルパーツは、錫比率が高めなのかな? 割と硬めな感じで、ヘタる心配は少なそうです。こういう場所は、レジンパーツが一番不安ですよね。
HiTechの48一次戦機では、ほかにローラントD.IIを持っています。作る時、あるのかなあ。
投稿: かば◎ | 2022年3月 7日 (月) 14時15分
>hiranumaさん
私はソミュアのハーフトラックかなあ。
持っていくまでに壊れなければいいけれど。(幌の留めベルトとかが結構心配です)
投稿: かば◎ | 2022年3月 7日 (月) 14時16分
>>リアルでは「みかんさん」とか言われるように…
ミカンセーキが、蜜柑の中でも未完という品種だというのは意外と知られてない事実です。
何を持って行こうかな。近作で色まで塗ってあるのはヘッツァーとオチキス車台のマーダー1かしら。未完成で良ければ色々あるぞー。
かば◎さんの未塗装1/72の2号戦車とか見たいですね。
投稿: ミカンセーキ(hn-nh) | 2022年3月 7日 (月) 18時20分
>ミカンセーキさん
>>かば◎さんの未塗装1/72の2号戦車とか見たいですね。
残念。塗ってあります(笑)。
ただし、基本塗装のグレーをぶわっと吹いてあるだけ。
気が向いたら20日までにブラウンの迷彩塗装して持っていこうかなあ。
なんて考えると、完成しないんだよなー。
フファット見たいです! もちろんオチキス自走砲も。
お荷物でなければ是非。
投稿: かば◎ | 2022年3月 7日 (月) 20時54分
>かば◎さん
久々にお会い出来そうで楽しみになってきましたよ~
実は会場の近くは私の元地元で、フランス山の近くに住んでおりました。
コロナ下ですから作品があまり無い様でしたら、周辺観光するのもアリかもしれませんね。ただ周辺はデートのコースでもあり、おっさん達で歩いても何らかのダメージを心に受けて帰る羽目になるかも・・・
>hn-nhさん改めミカンセーキさん
ミカンセーキが先に書いてあったので、そちらをメインにするのかなと思いHNをミカンセーキさんで書かせてもらいましたが、深読みしていたみたいですね・・・申し訳ないです。
今からAFVの会の参加作品で、かばさんと未完成の牽制を始めないでください(笑)某コンペでこいつ完成できるのかよ!?と、いつも周囲をハラハラさせていた私を忘れていませんか?
ボーダーのⅣ号F型、アカデミーのK2、タミヤのM1A2のどれかを頑張って仕上げる予定です・・・・たぶん・・・・・・だと良いな
投稿: ケン太 | 2022年3月 9日 (水) 20時33分
どうやら参加できそうです~
35Mアンサルドとマチルダ持って行こっと。
イースタンのSU-152組んでいたんですが
ロシアが撤退するまでお休みにしました。
代わりにミニアートのTACAM組み始めましたが
絶望的にパーツ数多い。
投稿: めがーぬ | 2022年3月 9日 (水) 23時16分
>ケン太さん
お声がけありがとうございます。コロナで皆さんお会いする機会がなくなっていたもので久しぶりの再開楽しみにしています。ハンドルネームの件はお気遣いなく。年末ぐらいに整理統合しようかなと思ってたのですが、東京AFVの会も流れたしで、話すタイミングがなくて..
>かば◎さん
クブシュも持って行きたいんですけどね。まだベース塗装した段階で、迷彩塗装をどうするか....1/72で実車通りに細かいパターンをエアブラシで吹けるか。まだ1週間あるしやってみようかな。
投稿: ミカンセーキ(hn-nh) | 2022年3月10日 (木) 23時43分
>ケン太さん、めがーぬさん、ミカンセーキさん
おお。なかなか賑やかに。
中華街で安く楽しめる飲茶とかないですかねー。
>めがーぬさん
>>イースタンのSU-152組んでいたんですが
>>ロシアが撤退するまでお休みに
SU-152でなくT-34なら、もともとハリコフ機関車工場製なので「ウクライナの戦車」と言っていいかも。
まあ、主任設計者はロシア人ですが。
>ミカンセーキさん
>>クブシュも持って行きたいんですけどね。
あれは、迷彩パターンをちゃんとトレースするには、35でもエアブラシより筆塗りかなー、なんて思っているのですが、とはいえ、筆塗りできちんとボケ足を付けられるかどうか……。
なお、いまだに「ベース色は何色?」で悩んでいます。
投稿: かば◎ | 2022年3月13日 (日) 13時44分
クブシュを持っていくのは諦めました。エアブラシ の細吹きで1/72スケールの細かいパターンをどうやって再現するか結論が出ません。フリーハンドでラインを引いても太くなってしまいそうです。型紙作って少し浮かせてエアブラシ吹くのも良さそうですが、あの多面体では...
投稿: ミカンセーキ(hn-nh) | 2022年3月17日 (木) 17時56分