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2022年2月

KV-2「ドレッドノート」(3)

20220213_220809 ●相変わらずのKV三昧。

1940年型・第371砲塔搭載型のフェンダーをL字材溶接タイプに変更した一方で、ついでにもう一つ作りかけのKV-2初期型のフェンダーをいじる。こちらは幅詰め工作が未成(キットの縁を切り取っただけ)だったので、改めてリベット付きの縁を工作する。

なお、「どうせリベット付きのフェンダーを作るなら、1940年型のほうの(工作済みの)フェンダーをこっちに使って、改めて作る方を溶接タイプにすれば手間がひとつ減るのでは」というのは、前回記事の工作前にも思ったのだが、1940年型のほうのフェンダーはすでに車体に接着済みだったこと、さらに右フェンダーはダメージ工作をしてあったことなどから断念した。

●というわけで、改めてリベット付きの縁を作る。

幅詰めは、もともとのL字材部分のモールドを切り離して、断面をちょっとヤスってやると、だいたい求める幅になる(適当)。ここまではすでに作業してあったので、フェンダー支持架のベース部分を、一番外側のボルト頭のモールド(本当はナット)ギリギリあたりまで削って、L字材の水平部分を取り付けるスペースを稼ぐ。

リベット付きのL字材水平部分は、タミヤの2mm厚プラペーパーの細切りに、ちょっと先端を鈍らせた針でつついて表現した。以前に作ったときは、もっと薄いプラペーパー/もっと細い針の組み合わせだったが、今回は若干改良。リベットも以前よりやや目立つ感じに出来た。

縁を工作したら、フェンダー支持架のボルト頭のモールド(しつこいようだが本当はナット)も、一番内側だけは残して、後は少しずつ内側にずらすように移植する。

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左写真はこの段階まで工作したもの。L字材の縦に立ち上がった部分はまだ付けていない。

なお、リベット止めタイプのフェンダーの場合、前部フェンダー内側にも本来はリベットがあるのではないだろうか……ということで追加した(右写真の左側)。なお、位置等は(リベットタイプが復活した)1941年型の、アバディーンに展示されていた車輛のwalkaroundを参照したが、初期型のKV(KV-2およびKV-1の1940年型前期型まで)でも本当にこの部分にリベットがあったかどうかは、当時の写真ではきちんと確認できていない。

また、最前部フェンダー支持架部分は、パーツの取付穴が後々ちょっと目立つので(というのが1940年型で作業して分かった。KV-2量産型を作ったときにはそもそも気にもしていなかった模様)、この段階で埋めておいた。

●フェンダーのパーツに合わせて、その上に載る工具箱も幅広なので、こちらも幅詰め工作が必要になる。

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トラペのKVでは、工具箱は初期型(H1)・後期型(D20)の2種がパーツ化されている。左写真、箱横に被るナナメのベロがなく、正面に取っ手もないのが初期型(左)、あるのが後期型(右)。

キットによっては両方のパーツが入っていて(例えばKV-2後期型)「どっちを使ってもいいヨー」みたいな扱いになっていたりするのだが、前にも書いたように、この工具箱は生産時期によってどちらが使われたか、はっきり決まっている(KV-2後期型なら後期型の工具箱)。また搭載位置も、初期型は右1・左2であるのに対し、後期型は右2・左1が標準。トラペのKV-2後期型の説明書ではどちらも右1・左2で付けるよう間違えて指示されているので注意。

1940年型のほうはすでに工作済みだったので、今回はKV-2初期型用の初期タイプの工具箱3つのみ工作。奥側の上面が水平になった部分でエッチングソーを使って切断。フェンダーに合うよう、こちらも幅詰めを行う。右写真がbefore(左)/After(右)。

KV-2ディテールチェック記事にも書いたが、KV-2初期型の主砲身は、主量産型と形状に差がある。

顕著な違いは砲口部分の“たが”状の段差がないということだが、キットには主量産型と同じ砲身パーツしか入っていないうえ、「そもそもトラペのKV-2砲身は短い」という難点も抱えている。

(なお、アフターパーツの金属挽き物砲身で出ているのは、当然、主量産型用のものが主なのだが、実はこの初期型砲身もMagic Modelsというメーカーから出ている、というのを後から知った)

幸いなことにKV-2の砲身はテーパーが掛かっておらず、waveのプラパイプの6.5mm径のものが、ほぼピッタリなことが判ったので、これを使うことにする。ただし、waveの肉厚パイプでも内側の穴の径は4.7mm。152mm砲(正確には152.4mmらしい)のスケール寸法は約4.34mmなので、ちょっと狭めてやる必要がある。

そもそも口径がデカくて目立つので、できればライフリングも入れてやりたい。細い伸ばしランナーでも並べて貼るか? いや、さすがに作業として現実的ではないか? などとあれこれ考えているうち、ふと思いつきで、「エッチングソーでプラバンに平行の筋をケガいてみたらどうだろう」と考える。

というわけで、早速0.3mmプラバンを相手に試してみたのが下写真左。

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本来ならば、エッチングソーがブレないようにきちんと当て木でもして作業すべきだが、一応、片側に定規(金尺)を当てただけで適当に作業する。ある程度何度かケガくと、今度はケガいた溝自体がガイドになって、(1cm足らずの短い距離であることも手伝って)比較的ブレずに作業できることが判った。

そうしてケガいたプラバンを丸めて、実際にプラパイプの砲身に接着してみたのが右写真。

もうちょっと深くケガくべきだったかなあ。というわけで、ライフリングの形状や条数はまったくいい加減だが(そもそも本来は畝と溝がそれぞれ同じくらいの幅なのではないだろうか)、一応、実車と同じ向きにらせん状にヒネリは加えてある。市販の金属挽き物砲身だと、単純にまっすぐギザが刻んであったりする。

なお、主量産型の砲身は、二層になった外側のスリーブが3分割されていて途中に分割線が(写真によっては)うっすらと見えるのだが、この初期型砲身の場合はどうなっているのか、よくわからない。前記のMagic Modelsの砲身パーツは商品名が「152 mm M-10T howitzer monoblock barrel. KV-2 (early)」となっていて、どうやら分割無しのワンピース構造であるという解釈らしい。とりあえずはそれに倣って、分割線無しの解釈で作業を進める予定。

ちなみに、waveのプラパイプは5本セット。1本からKV-2の砲身が4本とれるので、あと19輌、KV-2(初期型)砲身が作れる。……それ以外に使い道が思いつかないプラパイプ。どうしてくれよう。

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KV-1 1940年型装甲強化砲塔 (4)

●KV-1 1940年型・後期仕様(第371製・装甲強化「角砲塔」搭載型)製作記の続き。それにしても、毎回、仕様の呼び方が定まっていないのは我ながら如何なものか。

●砲塔の工作は前回までで一通り終わったので、車体の工作に入る。

実際のところ、車体はトランペッター・ベースで、ラジエーターグリルのメッシュ・カバー部を除いて一通り工作終了していたのだが、砲塔を新調したのに合わせて、その後の知見・考証を加味して若干の修正や追加工作を行うことにする。

一番のポイントはフェンダー。もともとトランぺッターのKVシリーズのフェンダーは、初期型(~1940年型)では幅が広すぎる(なぜか後期型では正しい)という欠点を抱えていて、これについては以前に幅詰め工作終了済みだった。

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上写真は何年か前に工作した際のものだが、もともとのパーツの外側縁部分を切り落とし、その内側に新たに縁を作り直している。この際に、外縁のL字材を止める小リベットを、プラペーパーの裏から針でつつくという方法で再現している。

……が、これに関して新たな疑問が発生。

発端はタミヤの新KV-1の発売なのだが、タミヤのキットのフェンダーには、内側・外側の小リベット列が存在していなかった。改めて写真をひっくり返して検証してみたところ、どうも時期によっては、フェンダー内側(裏側)・外側のL字材はリベットではなく、溶接で止められているタイプがあるらしいことが判明。

Kvfender

とりあえず、KVのフェンダーを断面図にすると上のような感じになる。単純な平板の本体に、外側には上、車体側には下に補強のL字材が付けられている。ここがリベット止めの場合は、赤の矢印で示した部分にリベット列があり、溶接止めの場合には接合部に沿って破線状に溶接跡がある。ちなみに真ん中下のもう一本のL字材はフェンダーステイのボルトで固定されていて、フェンダー本体は単純にこれの上に載っているだけなので、フェンダー表側には何も影響を及ぼさない。

以上のことについては、セータ☆さんの検証記事が詳しい(リンクは(1)に張ったが、記事は(5)まである)。

→ GIZMOLOGIC CAFE KV重戦車のフェンダーについて(1)

なにしろ現存車輛ではオリジナル状態で残っていることが少なく、戦時中の写真ではなかなかはっきりと確認できる例が少ないのが悩ましいが、どうも、レニングラード・キーロフ工場における1941年初夏のエクラナミあたりから溶接タイプが使われ始め、チェリャビンスク疎開後は再びリベットタイプに戻ったという変遷のようで、この「371工場製砲塔搭載型」は、まさに溶接タイプどまんなか、ということになる(もちろん、絶対にそうなっている!と言い切れるほどの材料があるわけではないが)。

そんなわけで、せっかく縁の再生も終わっていたフェンダーだが、改めて溶接タイプに作り替えることにする。

●ここで選択肢。すでにリベット付きで幅詰め工作をしてあるトラペのフェンダーを作り直すか、それとももともと溶接タイプの表現になっているタミヤのフェンダーに交換してしまうか。

ただし、両社のフェンダーに関しては、先日、「ハラT」青木伸也氏に、

「ヘイ! タミヤとトラペとで、フェンダーの支持架の間隔が違うZE! ちぇけら!」(大意)

みたいなコメントを貰っていて、これまたいささか悩ましい。

とりあえずタミヤとトラペのフェンダーを並べて比較してみる。

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上からタミヤ、トラペ(初期型)、トラペ(後期型)。前述のように、トラペ初期型だけやや幅が広く、タミヤとトラペ後期型はほぼピッタリ同幅。

ぱっと見には「まあ、似たような感じ」ではあるものの、詳細にみると、確かに青木氏の言うように、フェンダーステイの位置に若干のズレがある。便宜的に、車体最前部のクランク形のステイを0番、車体横の三角ステイを1~5番とし、ステイに区切られた区画をI~Vとして説明すると、

  • フェンダーの全長はタミヤが約1mm長い。
  • 車体横のステイ1番~5番間の距離は、タミヤ・トラペでおおよそ同じ。
  • 1番、5番で位置合わせをすると、タミヤは3番ステイでやや前方、4番ステイでやや後方にずれている。
  • 三角ステイで区切られた区画(II~V)は、トランペッターはほぼ全部同じ長さで34mm。タミヤは、II:34mm、III:33mm、IV:36mm、V:33.5mmと、若干不均等(ここで示した寸法はおおよそ0.5mm刻みのアバウトなもので、0.2~0.3mm程度の出入りあり)。

結局のところ、どっちが正しいの?というのが気になるわけだが、これについては差異が微妙過ぎて写真等では判別できず、誰かが(レストアの結果フェンダーステイの位置などが変わっていない)現存車輛で測ってくれない限り、答えは出そうにない。ちなみに、青木氏のコメントへの返事で「実車写真を見ると、4区画目のボックス前方は三角ステイとの間隔がちょっと空いているので、不均等のほうが正しいかも」と書いたのは、結局「たまたま見た写真でそんな感じがしただけ」だった模様。いい加減なもんだなあ。

ステイ間の絶対値ではなく、車体ディテールとの位置関係でチェックできないかとも思ったのだが、よく比べてみると、タミヤとトランぺッターでは車体上面ディテールにも若干の前後のズレがあって、どちらも、自社の車体と合わせた時には特に不自然はないようだ。個人的には、何も考えずにキットを設計したら等間隔にしてしまいそうで、タミヤのキットでわざわざ区画ごとにわずかに差があるのは実車の採寸でそうだったからではないか――というような気もするのだが、これまた単に想像に過ぎない。

結局のところ、どちらが正しいかの判断は(今のところ)付かず、であるならば「使い易い方を使う」以外の基準も持ちようがないので、元のトラペのパーツを再改修して使うことにした(タミヤのフェンダーを流用する場合、車体側にモールドされたステイのベロの移植が面倒になるので。

騒いだ割に、実のある答は何もなし。

●結局、もともと工作してあったトラペのフェンダーの外縁は一度削り落とし、リベット無し状態のL字材表現を再工作。フェンダー面に接する部分は0.2mmプラペーパー、縁の立ち上がり部分は0.3mmプラバンを使用した。

また、車体に接する側のリベット列のモールドもすべて削り落とした。

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とりあえず上記の工作が終わった状態が上写真。ちなみにKVのフェンダーは、三角ステイのベロが両側に付いている場所(先の説明写真でいえば2番ステイと4番ステイ)を境にして3分割されており、作例では右フェンダーの前1/3は破損・脱落した状態として工作している。

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