KV-1 1940年型装甲強化砲塔
●すっかりKVづいて、KV-2初期型以前に、ほぼ半完状態まで持っていってあった1940年型後期型(装甲強化砲塔搭載)も再びいじり始めてしまった。
キットとしては、トランペッターのキット番号00357、「40年型エクラナミ(Russia KV-1's Ehkranami)」なのだが、ボルト止めの増加装甲は付けず、砲塔はバッスル下が直線的に処理された装甲強化型砲塔に改造(以前のKV-1砲塔メモでは「短縮型・装甲強化溶接砲塔(90mm、バッスル下角型)(タイプ5)」としたもの)。車体もそれに合わせて細部をいじり、エクラナミよりも後、41年秋頃の生産車としている。おおよそ、レニングラードにおける疎開前の最終生産仕様、くらいの感じ。
当「かばぶ」にこれの製作記事は載っていないから、作り始めたのは「かばぶ」を始める前、つまり今から10年以上前のことであるらしい。もっともその時にここまで進んでいたわけではなく、以降も記事にはしないまでもちまちまいじっていて、Googleフォトをひっくり返して見たら、フェンダーの工作は2018年にやっていた。
あとはラジエーターグリルのメッシュカバーと履帯くらい、というところまで進んでいたのだが、そんなところでタミヤの新KV-1が発売されて、「実は溶接砲塔は非対称でした~」なんてことが発覚(以前にも書いたように、知っている人はとうに知っていることだったわけだが)。
それでもこれはこれで、もうそのまま作っちゃおう、それなりに砲塔も手を入れたし、などと思っていたのだが――もうしばらく前の話になるが、YSのパーツばら売りコーナーでタミヤの新KVの砲塔パーツ枝を見つけて、ついふらふらとゲットしてしまったのだった。
●というわけで、「さっさと作らないからこういうことになるんだよ馬鹿だねえ」の典型例というか、あるいは「ぐずぐずしていたおかげでより正確な砲塔に変更できた」と考えるべきか。とにかく、買い置きのタミヤ砲塔パーツを取り出し、改めて「短縮型・装甲強化溶接砲塔」を作ることにした。
このタイプの砲塔は、いまのところ、1:35のインジェクション・キットでは存在しないはず。おおよそデザイン的には同一ながら、より後期(1942年型)で、さらに装甲が増している(105mm?)の溶接砲塔に関しては、トランペッターとイースタン・エクスプレスから出ている(トランペッターは「Russia KV-1 model 1942 Simplified Turret Tank(キット番号00358)」、イースタン・エクスプレスは「KV-1 mod. 1941 late Version(キット番号35119)」)。ただし、この後期型砲塔は各装甲板が組み接ぎになっているうえ、装甲板それ自体が(増厚の結果)かなりごついので、改造ベースとしては標準型砲塔からの方が楽(と、個人的には思っている)。
まず、以前に作ったトランペッター・ベースの砲塔はこちら。
これもそれなりに頑張って改造したのだが、トランペッターのパーツがベースなので基本形状の左右非対称は再現されていない。今回はタミヤの新KV-1のパーツを使い、同様の改修を行うことになる。せっかく作り直すので、製作の基本方針として、左右非対称だけでなく、その他のディテールについても少々「前回以上」を心がけることにする。
タミヤの砲塔パーツは基本、装甲板ごとに開いた構成になっている。とりあえずは、側面装甲後下方をプラバンで延長する。
これと併せて、バッスルの短縮を行う。現存のこのタイプの砲塔の写真から、上面後方ペリスコープのカバーの縁角ギリギリくらいまで切り詰める。タミヤのパーツは部品取付位置がうっすら窪んでモールドされているので、これが切り詰める際のガイドになる(この取付位置指示モールド自体は、仮に取付位置を移動させたり、付けなかったりする場合に余計な手間を生むので、個人的にはあまり好ましくないと思っているが)。切り詰める寸法はおおよそ3mm。側面や底面も同じだけ切り詰める。
もともとのKVの溶接砲塔は装甲厚が75mm、この強化型砲塔では90mmになっているとされている。厚み差は1:35だと約0.43mmある。前回トラペの砲塔を改造した時にはバッスル下の角型への改修とバッスル長の切り詰めだけを行ったが、今回は装甲の増厚分も表現する&後下方の継ぎ足し部分の境目処理を省略するという2つの理由から、表面に0.3mmプラバンを貼り増した。
これによってタミヤの砲塔パーツの特徴である圧延鋼板表面の荒れ表現は消えてしまうが、これについては個人的に「まあ、あったらあったでいいけど、なくても別にいいや」的スタンスなので気にしない(砲塔にだけあるのって変な気がするし、そもそも新品のKVの表面はもっと「つるん」としているっぽいし)。貼り増し後、ピストルポート穴と視察スリットは、元のモールドに合わせて開け直した。
なお、(タミヤがパーツ化している)標準型の砲塔では砲塔上面にも埋め込みボルト跡があるが、この装甲強化型砲塔では、上面の埋め込みボルトは廃止されているらしい。当初は上面はプラバンで作り直し、モールドは元パーツから移植する方向で考えていたのだが(こういう時に圧延荒れ表現が邪魔になる)、割とすんなりと埋め込みボルト跡が消せたので、キットの天井パーツをそのまま使うことにした。
その際に、このタイプの砲塔の現存車輛の写真では、割と側面装甲との間の段差が目立つ感じがしたので、天井板裏側の縁に0.3mmプラバン片でゲタを履かせた。前回のトラペ改造砲塔では、上面板は周囲と一体だったので、「もうちょっと段差あったほうがよかったなあ」などと思いつつそのままにした部分。
砲塔後面はバッスルの切り詰めに合わせてやや幅が足りなくなるのでプラバンで新造(トラペの時はなんとか誤魔化して、切り離した元の後面を使ったが)。砲塔前面はタミヤのパーツのまま。装甲増厚のことを考えると、ここも0.3mm板でゲタを履かせるなりした方がよかったのではとも思うが、実車写真で見る限り、(階段状に組んでいる)前面装甲横の小口部分は厚みが増しているように見えなかったので、そのままとした。
右写真はタミヤの素組み砲塔との比較。ペリスコープと後縁との位置関係で、バッスルが短くなっているのが確認できると思う。
そんなこんなで、砲塔基本形は完成。
このあと、各部ディテールを工作するとともに、砲やペリスコープなどを取り付けていく予定。
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コメント
かば◎さんのKV暴走は歓迎です!
そのまま突き進んでください!!
ま、これまで溜まっていたものが吹き出す様に作り掛けが完成し、
新KV-2がそれに拍車をかけてKV戦車のまとまった情報になることはめでたいから。
私もストックしているタミヤのKV関連キットがこれで離陸するかもしれません。
投稿: hiranuma | 2022年1月23日 (日) 20時31分
>hiranumaさん
我が家にもタミヤの旧KV系キットは複数ストックがあります。
たぶん、そちらをベースにKVを作ることは、私自身はもうないと思うのですが、hiranumaさんなら何とかしてしまうのかも……。頑張ってください。
私も、少なくともトラペの4輌はなんとか完成させたいと思っています(EECのSU-152も成仏させてやりたいなあ)。
投稿: かば◎ | 2022年1月23日 (日) 22時11分
うおー。タミヤの新KVを改造素材に..
砲塔天板にゲタはかせて側面装甲と段差をつけた、ということは「砲塔天板の背の高さが少し高くなってる」ということかしら?
IV号戦車なんかだとH型後期に砲塔天板の増圧で段差ができたりしてるけど、KV-1にもそういうことが起きてるのでしょうか。
投稿: hn-nh@ミカンセーキ | 2022年1月24日 (月) 05時30分
>hn-nhさん
たとえばこのあたりの写真を見て頂くと、少なくともタミヤやトラペの標準型砲塔に比べると、ちょっと天井板が出っ張った感じに見える――というのが判っていただけるかと。
http://www.kv1ehkranami.narod.ru/big-F32-371/big_kv1-F32-371-029-003.jpg
「そう見えるだけ」かもしれませんが、周囲の装甲が増厚されているのと併せて、天井板も厚みが増している可能性はありそうな気がします(もちろん天井は周囲の装甲に比べれば薄いでしょうが)。
投稿: かば◎ | 2022年1月24日 (月) 07時32分
天井板の溶接は側面装甲の端部を溝欠きして天板を落とし込んで溶接してたけど、工程簡略化のために天板を(増厚とかではなく)溝欠きなしで乗っけただけで溶接してる可能性もありますね。
鋳造砲塔だと後期の強化型砲塔(トラペのキットだと軽量化砲塔)では天板をくみ継ぎにしたりと、溶接工程を簡略化しつつどうやって強度を確保するかが課題だったのでしょう。
投稿: hn-nh@ミカンセーキ | 2022年1月24日 (月) 15時52分
>hn-nhさん
1942年型の装甲強化型溶接砲塔(今作っているのと外形がほとんど同じヤツ)の天井も組み継ぎですよ。
今作っている40年型の装甲強化溶接砲塔も、それ以前の砲塔と同じく、天井は四周の装甲板に段を付けてハメコミ式だと思います。
ロシア語版のwikipediaを見ると、75mmタイプ(つまり標準型溶接砲塔)で天井板の厚みは40mmあるそうで、ハメコミ無しで乗っけた場合、1:35で段差は1mm以上付いてしまうことになります。さすがにそこまでは……。
ちなみに、1942年型の装甲強化溶接砲塔は組み継ぎになっている代わりに溝欠きはなくなっている可能性があります。トラペのキットがそんなふうな表現になっていたような気がします。
投稿: かば◎ | 2022年1月24日 (月) 19時52分
久しぶりにお邪魔します。(・∀・)
KVといえば今度ミニアームからこんなものが出るようですがhttps://armorama.com/news/miniarm-wheel-sets
かば◎さんどれか欲しいものはありますか?(^o^)
投稿: M.N | 2022年1月25日 (火) 20時15分
>M.Nさん
ミニアームのこの辺のパーツ、いいですね。
起動輪に関しては、トラペのものは(私はちまちま付け直しましたが)スプロケットの取付ボルト位置がずれている場合が多いので、「直すのが面倒臭ぇ~!」という人にはいいと思います。
どうせなら初期型(35239 KV-1/2 Early Drive Sprockets)後期型(35240 KV-1C Drive Sprockets)だけじゃなくて、インジェクションでパーツがない中期型(12本タイプ)も出せばいいのに。
それにしても今の時代に「KV-1C」って呼称はどうなんだ……。
転輪は、エクラナミで使用例のある穴無しタイプ(35221 KV Road Wheel Set (Reinforced, without Perforated, 1941) と、極初期のゴム抑え板のリブ無しタイプ(35219 KV Road Wheel Set (Early, 1940))がいいですね。後者は私もちょっと欲しいかも。
緩衝ゴム内蔵転輪の後期型のリブの少ないやつは、タミヤの新KV-1をデカールの個体通りに作ろうと思ったら必要になるタイプなんですが、35223 KV Road Wheel Set (Reinforced, ChTZ, 1941)として製品化されているものは、リブの形状(長さ)と位置が違います。こんなタイプのものもあったのかなあ?
投稿: かば◎ | 2022年1月26日 (水) 00時08分