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KV-1 1940年型装甲強化砲塔 (4)

●KV-1 1940年型・後期仕様(第371製・装甲強化「角砲塔」搭載型)製作記の続き。それにしても、毎回、仕様の呼び方が定まっていないのは我ながら如何なものか。

●砲塔の工作は前回までで一通り終わったので、車体の工作に入る。

実際のところ、車体はトランペッター・ベースで、ラジエーターグリルのメッシュ・カバー部を除いて一通り工作終了していたのだが、砲塔を新調したのに合わせて、その後の知見・考証を加味して若干の修正や追加工作を行うことにする。

一番のポイントはフェンダー。もともとトランぺッターのKVシリーズのフェンダーは、初期型(~1940年型)では幅が広すぎる(なぜか後期型では正しい)という欠点を抱えていて、これについては以前に幅詰め工作終了済みだった。

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上写真は何年か前に工作した際のものだが、もともとのパーツの外側縁部分を切り落とし、その内側に新たに縁を作り直している。この際に、外縁のL字材を止める小リベットを、プラペーパーの裏から針でつつくという方法で再現している。

……が、これに関して新たな疑問が発生。

発端はタミヤの新KV-1の発売なのだが、タミヤのキットのフェンダーには、内側・外側の小リベット列が存在していなかった。改めて写真をひっくり返して検証してみたところ、どうも時期によっては、フェンダー内側(裏側)・外側のL字材はリベットではなく、溶接で止められているタイプがあるらしいことが判明。

Kvfender

とりあえず、KVのフェンダーを断面図にすると上のような感じになる。単純な平板の本体に、外側には上、車体側には下に補強のL字材が付けられている。ここがリベット止めの場合は、赤の矢印で示した部分にリベット列があり、溶接止めの場合には接合部に沿って破線状に溶接跡がある。ちなみに真ん中下のもう一本のL字材はフェンダーステイのボルトで固定されていて、フェンダー本体は単純にこれの上に載っているだけなので、フェンダー表側には何も影響を及ぼさない。

以上のことについては、セータ☆さんの検証記事が詳しい(リンクは(1)に張ったが、記事は(5)まである)。

→ GIZMOLOGIC CAFE KV重戦車のフェンダーについて(1)

なにしろ現存車輛ではオリジナル状態で残っていることが少なく、戦時中の写真ではなかなかはっきりと確認できる例が少ないのが悩ましいが、どうも、レニングラード・キーロフ工場における1941年初夏のエクラナミあたりから溶接タイプが使われ始め、チェリャビンスク疎開後は再びリベットタイプに戻ったという変遷のようで、この「371工場製砲塔搭載型」は、まさに溶接タイプどまんなか、ということになる(もちろん、絶対にそうなっている!と言い切れるほどの材料があるわけではないが)。

そんなわけで、せっかく縁の再生も終わっていたフェンダーだが、改めて溶接タイプに作り替えることにする。

●ここで選択肢。すでにリベット付きで幅詰め工作をしてあるトラペのフェンダーを作り直すか、それとももともと溶接タイプの表現になっているタミヤのフェンダーに交換してしまうか。

ただし、両社のフェンダーに関しては、先日、「ハラT」青木伸也氏に、

「ヘイ! タミヤとトラペとで、フェンダーの支持架の間隔が違うZE! ちぇけら!」(大意)

みたいなコメントを貰っていて、これまたいささか悩ましい。

とりあえずタミヤとトラペのフェンダーを並べて比較してみる。

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上からタミヤ、トラペ(初期型)、トラペ(後期型)。前述のように、トラペ初期型だけやや幅が広く、タミヤとトラペ後期型はほぼピッタリ同幅。

ぱっと見には「まあ、似たような感じ」ではあるものの、詳細にみると、確かに青木氏の言うように、フェンダーステイの位置に若干のズレがある。便宜的に、車体最前部のクランク形のステイを0番、車体横の三角ステイを1~5番とし、ステイに区切られた区画をI~Vとして説明すると、

  • フェンダーの全長はタミヤが約1mm長い。
  • 車体横のステイ1番~5番間の距離は、タミヤ・トラペでおおよそ同じ。
  • 1番、5番で位置合わせをすると、タミヤは3番ステイでやや前方、4番ステイでやや後方にずれている。
  • 三角ステイで区切られた区画(II~V)は、トランペッターはほぼ全部同じ長さで34mm。タミヤは、II:34mm、III:33mm、IV:36mm、V:33.5mmと、若干不均等(ここで示した寸法はおおよそ0.5mm刻みのアバウトなもので、0.2~0.3mm程度の出入りあり)。

結局のところ、どっちが正しいの?というのが気になるわけだが、これについては差異が微妙過ぎて写真等では判別できず、誰かが(レストアの結果フェンダーステイの位置などが変わっていない)現存車輛で測ってくれない限り、答えは出そうにない。ちなみに、青木氏のコメントへの返事で「実車写真を見ると、4区画目のボックス前方は三角ステイとの間隔がちょっと空いているので、不均等のほうが正しいかも」と書いたのは、結局「たまたま見た写真でそんな感じがしただけ」だった模様。いい加減なもんだなあ。

ステイ間の絶対値ではなく、車体ディテールとの位置関係でチェックできないかとも思ったのだが、よく比べてみると、タミヤとトランぺッターでは車体上面ディテールにも若干の前後のズレがあって、どちらも、自社の車体と合わせた時には特に不自然はないようだ。個人的には、何も考えずにキットを設計したら等間隔にしてしまいそうで、タミヤのキットでわざわざ区画ごとにわずかに差があるのは実車の採寸でそうだったからではないか――というような気もするのだが、これまた単に想像に過ぎない。

結局のところ、どちらが正しいかの判断は(今のところ)付かず、であるならば「使い易い方を使う」以外の基準も持ちようがないので、元のトラペのパーツを再改修して使うことにした(タミヤのフェンダーを流用する場合、車体側にモールドされたステイのベロの移植が面倒になるので。

騒いだ割に、実のある答は何もなし。

●結局、もともと工作してあったトラペのフェンダーの外縁は一度削り落とし、リベット無し状態のL字材表現を再工作。フェンダー面に接する部分は0.2mmプラペーパー、縁の立ち上がり部分は0.3mmプラバンを使用した。

また、車体に接する側のリベット列のモールドもすべて削り落とした。

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とりあえず上記の工作が終わった状態が上写真。ちなみにKVのフェンダーは、三角ステイのベロが両側に付いている場所(先の説明写真でいえば2番ステイと4番ステイ)を境にして3分割されており、作例では右フェンダーの前1/3は破損・脱落した状態として工作している。

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コメント

フェンダーの支持架の取り付け間隔が均等じゃないってのはなんだかもやもやしますね。普通に考えれば均等配置にするのが設計の基本なのでしょうが、(タミヤがわざわざ寸法を変えているのは意味がありそう:実測したのかな)室内の造作の関係で指示架のボルトが干渉するから少し避けた..とか

投稿: ミカンセーキ(hn-nh) | 2022年2月 8日 (火) 19時09分

そうなんですよねー。
青木氏に言われなかったらたぶんずっと気付かないままだった私が言うのも何ですが(笑)、ちょっとモヤモヤします。

まあ、基本、見た目で違いが判るほどでもないので、おそらく「トラペはトラペ、タミヤはタミヤ」で作ることになると思うんですが、(今のところ使うアテはないものの)パッションのエッチングのフェンダーステイを使うことになったら、接着位置にちょっと迷うかも。

投稿: かば◎ | 2022年2月 9日 (水) 16時51分

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