「あ」モデル
●年間の仕事上の最大の山場を越えた虚脱状態からいまだ脱出できておらず、模型製作も低調。
一つのキットに集中するモチベーションが沸いてこないので、あれこれキットをとっかえひっかえ取り出しては、ちょっと眺めたりいじったりしてまた箱に戻す、などということを繰り返している。
●そんななかで、最近いじったのが、A modelの1:72、IAR-80A。
A modelについては、以前に一度、ニューポールIVのキット評をUPしたことがあるが、もう一度、ざっとこのメーカーの説明を。
A modelはたぶんウクライナの会社で――と、最初から「たぶん」が付くところがなんとも情けないが、これは、キットの箱にも説明書にも、どこにも会社の所在地とか、「made in どこそこ」とか書かれていないため。箱横のロゴ下には、「ワールド・ワイド・ディストリビューター」として、ポーランドのIBG(International Bussiness Group)の名前とワルシャワの住所/連絡先が書かれている。IBGが独自キットを出すより、A modelが出回り始めた方が早かったと思うから、IBGって商社活動の方が先だったんだなあ……と今さらながら思ったりする。
箱の横には実機説明・キット内容説明が複数言語で書かれているが、それも英語とロシア語、もしくは英語とドイツ語とロシア語で、ローデンのようにウクライナ語は書かれていない。
「ウクライナ産」の証拠がどこにもないじゃないか、と突っ込みたくなる感じだが、日本でこれらのキットを扱っているバウマンのサイトには「Amodel from UKRAINA」と書かれている。キット名称や説明に多々怪しいところがあるバウマンが言っているだけだとやや根拠に乏しいが、ポーランドの通販サイトのJadarHobbyでも「Amodel (Ukraine)」と書かれているので、まず間違いないと思う。
我が家には右に上げた3キットのほか、以前にキット評を書いたニューポールIVと、あとは確かUTI-4(ポリカルポフI-16の複座練習機型)があったはず。とにかく初期のキットは簡易インジェクションとしても出来は悪い方で、(悪名高いマーリンやヴィーディーとまではいかないものの)モールドはでろでろ、ぱっと見でも、かなり削り合せないとそのまま接着もできない風のものが多かった気がする。
――箱を開けて見たとたん、「あ……」と言って二の句が継げずに箱を閉めちゃうから「あ・モデル」なんだよ。
と、誰かが言っていたような気が。
比較的初期の製品であるUTI-4も、翼弦長などは修正してあったものの、一部パーツは古いレベル72のU-16のデッドコピーだったような記憶がある(うろ覚え)。それでも、他ではまず出さないような珍機・迷機・マイナー機を次々に出すので、(私のような)アホなマニアがついつい手を出してしまう、いわば「マニアホイホイ」なメーカーでもある。
ただ、一時期以降は結構質も向上してきて(とはいっても、まともなインジェクションメーカーに太刀打ちできるレベルではない)、写真に上げた3キットやニューポールIVあたりは「好きなら手に取っていいかも」くらいには仕上がっている。とはいえ、これまたニューポールIVの時に書いたように、昔のひどいキットが箱替え・デカール替え/一部パーツ替えで番号が新しくなって出ている例もあるようなので、かなりの地雷含みではある。
▼せっかくなので上に上げた3キットの中身紹介を少々。
最初はIAR-80A。
前述のように、ちょっとだけお手付きなので、箱の中には切り離した胴体や主翼ほか一部パーツがバラバラと入っている(カウリング胴部や胴体前半部は左右を接着済み)。
このキット、どうも純正A model製ではない気配もあって、パーツ枝には「Master 44」という謎のタグが。以前は、実機の生産国であるルーマニア製のキットをリボックスして売っているものかと思っていたのだが、Scalematesを見ると、ルーマニアのレーベルである「Parc」からはA modelと同時期に1種のキットしか出ていないのに対して、A modelからは細かくバリエーションで5,6種出ている。しかも前述のようにキットの枝のタグは「Parc」ではない。
角の丸いパーツ枝形状、枝の交点にいちいち出ている樹脂のヒケの穴などは他のA modelキットと似通っているので、「Master 44」とは単純に下請けの金型メーカーである可能性もある。いやまあ、それが判ったとしても何がどうということはないけれども。
A modelからは、私が持っているIAR-80Aのほかにも、-80、-80C、-81など何種もバリエーションが出ていて、それへの対応のためか胴体は前半と後半で別パーツ(そしてその擦り合わせは結構苦労しそう)。
ちなみに実機は、ルーマニアがライセンス生産していたポーランドのPZL P.24の胴体後半の設計をそのまま丸パクリして低翼単葉引込脚機をでっち上げたというもの。いかにも旧式なPZLの固定脚ガル翼機が、いきなりスポーツ機じみた外見に生まれ変わっているのはビックリだが、垂直尾翼の形状はP.11cともそっくり。
ちなみに箱の右上にあるポートレートは「Constantin Pomut(コンスタンチン・ポムート、と読めばいいのか?)」で、キットの塗装例の機体に乗っていたエース・パイロット。ただし以前にはハリケーンに乗っていて、何機をIARで落としたのか(あるいは落としていないのか)はよく判らない。
▼2番目はユーゴスラビア仕様のホーカー・フューリー。フューリーの72のインジェクションキットは、古くはマッチボックスからも出ていて、「マイナー機ほど出来がいい」と言われるマッチボックスらしくそれなりにいいキットだったのだが、形式はMk.IIだったので輸出型には対応していなかった。
A modelのこのキットはユーゴスラビアに輸出、また一部ライセンス生産されたMk.Iで、脚柱がV字でなくI字の一本脚であるなどの外形上の差がある。A modelからは、この他、イスパノスイザのエンジンを搭載したイスパノ・フューリーも発売されている。
御覧のようにパーツは72小型機としては標準的な構成。IAR同様、パーツ一つ一つのキレはお世辞にもいいとは言えないが、コクピット内壁のモールドもあるし、「それなり」には仕上がっていると思う。ただ、型からの取り外し時に無理な力を掛けたのか、私の入手したキットでは、胴体右側の排気管のモールドが部分的に(ちぎれたような感じに)潰れていた。これはどうにかして(ついでに左右揃えて)作り直さないといけない。うわ。面倒。
▼最後のキットはスパッドS.A.4。
箱絵は後ろ姿なのでちょっと判りづらいが、これはとにかくスタイルが珍妙なので実機解説から。
第一次大戦前半、同調装置が一般化するまでは、とにかく「まっすぐ前に機銃を撃つ」ということが難しくかつ大きな課題で、イギリスでは空力性能を犠牲にして各種プッシャー式戦闘機が実用化され、フランスのニューポールあたりは上翼の上にさらに架台を組んでプロペラ圏外から撃ったりしていたわけだが、そこでもっと斬新な(悪夢のような)解決法を導入したのが、スパッドS.A.2と、その小改良型であるS.A.4(どこがどう違うのかよく判らないが、とにかくA modelからは両方発売されている)。
基本、ごく普通の牽引式の飛行機に、プロペラを迂回する形で支柱を付けて、プロペラの真ん前に銃座を取り付けてある。だいたいこの頃の飛行機というのはほぼ野原のままの飛行場から運用されていて、そこで尾輪式の機体は、ちょっと“つまづく”とつんのめって逆立ちをしてしまう。実際にそんな状態の写真はよく見るが、この機でそんな事態になると、機銃手は真後ろから高速回転するプロペラとエンジンがかぶさってくることになる。……ブラック職場過ぎる。
そんなわけで、本国フランスでは嫌われて、生産機の多数がロシアに里子に出されている。このS.A.4のキットの指定塗装もロシア空軍。
小パーツ枝と一緒に写した10円玉との比較で判ると思うが、成型状態はお世辞にもいいとは言えないものの、細かいパーツはとことん細かい。ル・ローン・エンジンも吸気管が別パーツとなかなか凝っているが、果たしてこの極細パーツ群、破損させずに切り離すことは可能なんだろうか……。
前部機銃手ナセルの両側面には、直後の空冷星型エンジンの冷却を助けるためにダクトがあって入り口にメッシュが張られているのだが、キットでは頼りなさげなモールド表現のみ。もっとも、エッチングに張り替えるなどと余計なことを考えたりせず、塗装表現で済ます方が平和だろうなあ。
とりあえず模型として形態だけを見ると、奇抜な前部機銃手席の機構に加えて、デュペルデュサン以来の、ルイ・ベシュロー設計機の特徴である矢羽根状のシュッとした垂直尾翼とか、後のスパッドVIIやスパッドXIII同様の、張り線保持用の補助支柱とか、いろいろ見どころがあって、いつかものにしてみたいキットではある。……いつか、いつかね。
●新型コロナに関しては、新たな変異株であるオミクロン株の話題で持ち切り。
前回「来年は東京AFVの会は開催されるだろうか。またまた変異株も出て来て、でかい第6波とか第7波とか来そうな気もする」と書いたが、悪い方に予測が当たりそう。こうなると、今年、感染の波のちょうど合間にささっと開催できた関西AFVの会は大したものだと思う。
オミクロン株について。うちのかみさんは「鬼クローン株」だと思っていたらしいことが判明。強そう! そして質悪そう!
もっとも私自身、オミクロンというのがギリシャ・アルファベットだというのは判るが、何番目なのか等はよく知らない。最後の文字の「Ω(オメガ)」株とか出てくるとなんだか終末感が漂っていて怖いが、すでにオミクロンで文字数の半分は超えているようなので、来年にはオメガに到達しそう。
なお、慶応の湘南藤沢キャンパスに通っている知人によると、同キャンパスの校舎はギリシャ・アルファベットが割り振られていて、「オミクロン棟」もあるそうだ。
●昨晩(12月2日)から、あっちこっちで地震が起きて、震度5クラスの地震も2度。今朝の山梨の地震ではここ(神奈川東部)でも結構揺れた。コロナだけでも面倒なのに、大きい地震とか被せて来ないでほしいなあ。
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コメント
A modelのUTI-4は私も持ってますよ。箱絵を愛でてそっと棚にしまってありますが…。
投稿: セータ☆ | 2021年12月 4日 (土) 00時45分
>セータ☆さん
冷静になって考えると、あのキットを作るよりも、ハセガワかICMのI-16から改造したほうが話が早そうですよね……。
投稿: かば◎ | 2021年12月 4日 (土) 02時31分
何でそこまで変なモノばかり…
完成させる気がないでしょ?
(苦笑)
投稿: 屋根裏戦車隊 | 2021年12月 4日 (土) 14時37分
>屋根裏戦車隊さん
そんなことないもん!
作るもん!
……いつか。(笑)
投稿: かば◎ | 2021年12月 4日 (土) 20時16分
また魅力的なキットが!
IAR-80のバリエーション展開を意識したパーツ分割は色々と泣かされそうですね...笑
投稿: vol de nuit | 2021年12月 7日 (火) 19時31分
>vol de nuitさん
はい。
実はこのあと引き続き、とりあえずIAR 80Aについては「士の字」くらいにはしておこうかと作業を進めているのですが、まさに現在進行形で泣かされています。
これについては次回とか次々回とかにちょっと触れようと思います。
投稿: かば◎ | 2021年12月 7日 (火) 20時03分
Aモデルはキャノピとかのクリアパーツさえなんとかなれば結構行けそうなんで惜しいんですよね。
Yak-38とかウィルガとか素敵なアイテムはここだけです。
投稿: みやまえ | 2021年12月 7日 (火) 22時09分
>みやまえさん
結構ピンキリだと思います。
古いやつは、基本のプラパーツ自体、それこそ「あ……」という出来だったりしますが、新しいやつは結構いいような。
PZL ウィルガ、いいですよねえ!
すごく「虫」っぽいのが何ともいえず。
戦後の機体ってことで、私は手を出しませんが、あのフォルム自体は大好きです。
投稿: かば◎ | 2021年12月 7日 (火) 22時36分