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2021年9月

ルノー・ド・タミヤ(3)――予備転輪取付架など

SUMICONタミヤフェスのエントリー作、タミヤのルノーR35の製作記の続き。

毎年お決まりの季節労働がいよいよ佳境に入り(そのくせ、月半ばはすっかりサボってしまい)、しかもその合間に別件の仕事やら用事やらが挟まって来て、工作は遅々として進んでいない。が、とりあえず生存確認および「いや、ちゃんと作ってますって」確認を兼ねて。

●とりあえず、フェンダーと車体上部は接着した。

以前にも書いたように、今回のルノーR35製作では、運よく手に入れたホビーボス製の尾橇を追加の予定。

尾橇装着車の場合、それに干渉する予備転輪は付かないが、取付架自体は残っていることが多いようだ。多いような気がする。多い……よね?

予備転輪を付ける場合は隠れるので取付架は工作しなくてよいのだが、予備転輪を付けないことで逆に見えてしまうので、Passion Modelsのエッチングを使って追加する。

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R35の車体後面にはエンジン点検ハッチが左右にあり、右ハッチには開閉用の取っ手が付いているが、左ハッチはその位置に予備転輪取付架がある。尾橇装着車でも取付架を残している例が多いのは、要するに、予備転輪(もしくは取付架)が左ハッチ開閉時の取っ手を兼ねているためらしい。

ただし、本来この取付架は、直接車輪をボルト止めするベース部分がリングになっているのだが、この部分は尾橇と干渉するので、およそ半分に切り欠いてある(ので、Passionのパーツもそのように加工した)。予備転輪は3カ所でボルト止めするが、止め位置は左2、右1と決まっているようなので、この形状にすると、左側の2カ所が残ることになる。内側・外側の間の放射状リブは、当然エッチングでもパーツが入っているのだが、小さすぎてあちこちに飛ばしてしまい、プラバンで作り直した(そのほうが加工が容易で組立上も楽)。

ちなみにルノーR40では生産段階から尾橇が標準装備のため、最初から予備転輪取付架はなく、左右ハッチともに取っ手に変わっているようで、後面が写った貴重な写真で確認できる例では、尾橇があっても開けやすいよう取っ手の位置自体も変更されている(右写真の赤線部分)。R35で、左ハッチに右ハッチ(のもともとの位置)と対象位置に取っ手を付けている例もあるので、R35の生産末期、尾橇が標準化されて当初はハッチ内側辺中央、その後ハッチ内側辺上部に移ったのかもしれない。

なお、このような取っ手の配置の場合、左ハッチ上部、排気管直下に付く遮熱板は(取っ手位置と被るので)付かない。そもそも遮熱板は、おそらく、排気管の熱で予備転輪のゴムが焼けるのを防ぐために付けられていると思われるので、予備転輪がない尾橇装着車ではそもそも必要がないことになる。尾橇が追加装備された車輛では、遮熱板があるものないもの、両方のケースがあるようだ。

なお、右扉の取っ手は、キットのパーツはやや太めの上に脚無しイモ付けタイプになってしまっているが、実車はもう少し細くて上下にベロがあってリベット止めされているようなので、そのような感じに作り替えた。

なお、誘導輪基部に付く小さなパーツ(B2、右写真の黄色丸部分)が、接着剤の回りが悪かったらしくて、はっと気付いた時には取れてどこかに行ってしまっていた。まさかこんなコチャっとしたディテールを自作しなきゃいけないのか?と茫然としたが、奇跡的にも、机の下のホコリの中に落ちているのを発見し修復することができた。やれ嬉しや。

●その他の些末の工作。

左右フェンダーに工具箱パーツを着けた。右の工具箱(大)は、前面車体側に2つの小リベットを追加。左の工具箱(小)は電装品への配線出口を予め開けておいた。また、両工具箱とも、上面が前面に重なるベロ部分は、固定部側をやや削って、フタ部と段差を付けた。

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操縦士ハッチ下側のダンパーは、現状穴だけ開けてあるが、ここはPassionのエッチングに交換するかも。

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TKS用連結可動履帯 CHINO MODEL 1:35

20210906_171414 ●空恐ろしいものを入手してしまった。

CHINO MODEL製、TKS用連結可動履帯。

当今流行の3Dプリント製品。まあ、さまざまなアフターパーツが3Dプリントで出るようになってきたので、私もそのうち何か必ず手にすることになるだろうと思っていたが、最初がまさかこんなに“とんがった”アイテムになるとは思わなかった。

CHINO、といっても中国製ではなくて(スペイン語だとchineseの意味になる……たぶん)日本製。

●(製品の必要性に関する)バックグラウンド。

これまでにポーランドの豆戦車、TK系のインジェクションキットは、大別して以下の3社から出ている。(約20年前に書いたTK系の実車解説はこちら

TOM/RPM:たぶん90年代に、当初TOMからTKS(20mm)とTK-3が発売され、後にRPMに移って、TKS(オチキス機銃型)だけでなく、TKDやらTKWやらドイツ軍鹵獲仕様やら現実に存在しない変な改造トラクターやら、やたらたくさんのバリエーション展開がなされた。

MIRAGE HOBBY:最初のキットは90年代末? TOMの箱替えかと思ったらまさかの新規開発キットだった。どういう風の吹き回しなのか、たった1輌だけ試作された(既存のTKSから改造)試作改良型のTKS-Bとして発売されたが、実際には通常のTKSとしても組めるコンパチキット。バリエーションとして、前後して出た同社ルノーUE用のトレーラーカーゴを付けたドイツ軍鹵獲仕様も発売された。

IBG:2018年発売の最新キット。基本的なバリエーションは20mm装備型とオチキス機銃装備型の2種だが、それぞれポーランド迷彩色の塗料付きセット、足回りの組立をロコ方式で簡略化させたイージーキット仕様も発売。機銃型(通常キットのみ?)はたぶんフィギュアとデカールを替えて、ドイツ軍鹵獲仕様も出ている。

うち、IBGについては当ブログでもキットレビューを載せている。

20210909_105504 履帯に関しては、TOM/RPMとIBGはインジェクションの部分連結式、MIRAGE HOBBYは軟質樹脂のベルト式のものが付属している。3社の履帯は、おおよそ写真のような感じ(左から、TOM、MIRAGE、IBG)。

実際、車輛そのものに関しては新キットになるほど出来がよく、それぞれが旧キットに比べて、「うん、さすが、一日の長がある」と思わせる出来だったのだが(TOMのキットも初のインジェクションキットとして結構頑張っていたが)、履帯は別で、最新のIBGのキットのものは履板表面の窪みもなくぱっと見でディテール不足(もちろん足回りが一体化されたイージーキット仕様はパターンを云々する以前の問題)。MIRAGEのベルト式はまるでハシゴのような代物で、むしろ最古のTOM製の履帯が一番マトモという状況だった。

そんなわけで、TKマニアであることを自認する私にとっては、ぜひとも手を出してみたいアイテム、ということになる。

●そんな履帯セットの中身はこんな感じ(金尺は私の)。

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3Dプリントされた履板が整然と並んだ板が一枚。パッと見ると目の焦点が変な風に合ってしまってクラクラした(ステレオグラムで変な模様や文字が浮かび上がってくるようなことはなかった)。

ベースの上に並んだ履板は13×20列で、計260枚。付属の説明書によれば、TOM/RPMのキットに使用した場合に片側に必要な枚数は113枚だそうなので、1輌分組んで十分にお釣りが来ることになる。これだけ細かいと破損や紛失が怖いので、十分な余裕は有り難い。例えばMIRAGE HOBBYのキットで(やや足回りが長い)TKS-Bを組み立てたいなんて言う場合でも対応可能だと思う。まあ、わざわざ試作車のTKS-Bを作ろう!なんて人がそんなに多いとは思わないけれど。

流石にこれだけ細かいと、「連結可動」にこだわらなくても、むしろキットに合わせて「リンク&レングス方式(部分連結式)」になっていたほうが組み立てのハードルはずっと低くなるが、TKSはインジェクションキットだけで3種も出ているので、そのどれにも使えることを考えれば、1リンクずつバラバラの方がよい。それに、3Dプリントするにあたっても、同じ図形の単純な繰り返しである現状のほうが、少しずつ傾きが変わる連結体よりも楽なのではないかと思う(素人の想像)。

20210906_220242 ●組立に関しては、説明書ではおおよそ以下のように指示されている。

  1. ニッパー等を使ってサポート材(役割は異なるが、形状的にはインジェクションプラキットのランナーゲートに当たる部分)を根元部分で丁寧に切り離す。その後、サポート材を部品の至近位置で1つずつ切り離し除去。
  2. 履板を繋げ、かみ合わせ部に連結ピンを通す(0.1~0.2mmの金属線を推奨)。
  3. ピン外側を瞬着で固定。

1に関しては、当初はニッパーで数リンクを切り離してみたが、そもそも極小の履板にサポート材の「脚」は6本も繋がっていて、しかもその脚の位置が一直線ではないので、一度には切り離せない。そのため、どうしても切断中にパーツに余計な力がかかることになって不安なので、現状、ベース板の端から、ペンナイフでそぎ取るような形で切り離す方式をとることにした。

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「エッチング・ソーで切り離すのはどうだろう?」などとも考えたが、まだ試していない。ちなみに樹脂の“質感”は、通常のインジェクションキットのスチロール樹脂よりはやや硬めでもろい感じがするが、レジンキットの無発砲ウレタンよりはずっと粘りがある印象(それが3Dプリントの樹脂で一般的なものなのかどうかは経験値が低いので何とも言えない)。

現時点で20数枚切り離し、サポート材を除去したが、そこまでの過程で、2リンク、ガイドホーン部を破損した。そこそこ慣れてきたので、今後はもっと歩留まりがよくなるはず。

20210906_222847 それにしても、とにかく履板が小さい。72のIV号戦車(レベル)と比べてみたが、TKS用のほうが小さかった。なるほど、つまり72のIV号戦車の連結可動履帯も可能ってことか……(もちろん欲しいと言っているわけではない。言ってないよ! 本当だよ!)。

さて。

とりあえず履板それ自体は切り出したが、これを繋ぐという激しく大変な作業が待ち受けている。

繋ぐにあたっては、指先で一つ一つ繋げていくのは流石に無理があるように感じたので、写真のような治具を自作した。ガイドホーン間の寸法におおよそ合わせ、タミヤの3mm角棒に0.3mmプラバンを両側に貼り増して3.6mm幅のガイドを作ってプラバンのベースに接着。作業中に位置決めしやすいよう、片側にはストッパーを付けた。

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それでもこれで格段に作業がやりやすくなったかというと微妙なところ。なお、CHINO MODELさん自身も繋ぐ作業をやり易くするため、もっと本格的な(ちゃんと一枚一枚位置決めできる)治具を検討中とのこと。

ピン通しは、プリント上の都合で噛み合わせの中心部分にピン穴が開いていないため、一本のピンを突き通すことはできず、いわばカステン方式で左右からそれぞれ挿すことになる。一本で行ければもう少し繋ぎ作業が楽そうだが、自分で開けようにも、私が持っている0.2mm(~0.4mm)のドリル刃は、チャックに噛ませやすいように根元が太くなっているタイプで、刃先が短いので中央の噛み合わせまで届かない。もちろん根元が太くなっていないドリル刃なら、長く出せば行けそうだが、200枚以上開け直す間にポキポキ折ってしまう未来が想像できてコワイ。

なお、左右の穴に関しても、プリント時の誤差その他で一部狭まったり塞がったりしている可能性があり、作業前に一度ドリルでさらっておくことが推奨されている。私が作業した感じでいうと、サポート材が長い方の側で一部狭まっていることがあったが、低い方の側はしっかり貫通していることが多かった(といっても、まだほんの一部しか作業していないが)。

ピンに使用する線材については、伸ばしランナーも試してみたが、現在では細い(0.2mm程度?)のエナメル線を使用。たまたま手元にあったから、だけでなく、挿した後の切り詰めを考えると柔らかい線材のほうが都合がよかったため。もともとパーツが極小なので、線材があまり硬い必要はない。もっとも、ちゃんと内側の噛み合わせの穴に入れるまでが非常に大変で、それを考えると、穴を探り当てやすい硬い線材(真鍮線など)のほうがいいかも。……今度都会に出たら買ってきて試してみよう。

●長くなったので、実際のキットとの整合性等については改めて。

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ルノー・ド・タミヤ(2)――工作開始とジャッキ台

●SUMICON「タミヤ・フェス」参加作、ルノーR35製作記。

とりあえずエントリーはしたものの、8月中はまったく手に付かず。こりゃイカンと思い、せめて8月中に始めたという格好だけは整えようと、31日になってちょこちょこいじる。

とはいっても、エッチングに取り換えるなどの理由で後々邪魔になるダボ穴のいくつかと、車体上部と上部側面下側パーツの接着部の一部に出来る変な段差を埋めるため、ランナーとかプラ片とかをくっつけただけ。地味すぎる!

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●流石にそれだけでは何だなあ、という気がしたので、前からちょっと尖り過ぎな感じが気になっていた、砲塔右後ろ上の角をちょっと丸める。先日亡くなった仁鶴師匠を偲びつつ、

四角い仁鶴がまぁるく収めまっせ!

などと呟きつつ、あっちこっちの角度から見て具合よくなる感じに削る(といっても、たいして削ったわけではない)。丸めるにあたって邪魔になる上面のパッチは削り落とした。

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もっともこれは多分に私の好みの問題で、実車でもタミヤのキットくらい尖っているように見えるものもあり、タミヤの間違いとは言えないようだ。

ルノーR35、オチキスH35に搭載された規格品のAPX R砲塔は、複数の工場で並行生産されているためか、おそらく工場別/ロット別で、この角を含めて、形状には微妙に差異が見られる。

ちなみに右側面前半についても、タミヤはいわば「ふっくら」タイプだが、エレールやトラペのようにここが窪んだ「げっそり」タイプもある。もっとも、ブロンコのように折り紙細工っぽくカクカク凹んでいるのは流石にやり過ぎ。なお、各社砲塔比較については過去記事参照のこと。

●そしていきなり些末な工作。

右フェンダー後部には、ジャッキとジャッキ台ラックがあるが、タミヤのキットでは、ラックと一体モールドされたジャッキ台の裏側はつんつるてん。しかし、車体側を向いていることが多いとはいえ、割と普通に見えてしまうジャッキ台裏のリブパターンがないのはちょっと寂しい。

我が家には、だいぶ年季物のON THE MARK MODELSのR35/H35用エッチングも2セットあって(1枚は使いさし)、これにジャッキ台が入っているので、当初はこれが使えないかと希望的観測を立てていたのだが、エレールを作ったとき同様、結局サイズが微妙に合わなくて断念した。

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以前にも触れたことがあるが、ON THE MARKのエッチングにはルノー用(黄丸)、オチキス用(赤丸)に2つのジャッキ台が付属しているものの、それぞれ表裏で別物だと認識してしまったらしく、片面しかないだけでなくサイズも異なっている。ルノー用にプラバンを貼り増して使えれば楽だったんだけどなあ。

そんなわけで、プラバンから自作する。エレールの時に一度作ったので、「おおよそこうすればできる」という手順がすでにあり、あとは淡々と手を動かすだけ。

Passion Modelsのエッチングのジャッキ台ラックはタミヤのパーツに合わせて設計されているはずなので、タミヤ準拠の大きさで製作。材料はすべて0.3mmプラバン。

サイズに切り出したベース(縁取りを考慮してタミヤのパーツより一回り小さくする)に、まずは内側のリブを貼り付ける。その後、しごいて柔らかくした縁材を周囲に巻いていく。工作しやすくするため、最終的なリブよりだいぶ高め。しっかり接着固定されたら、ゴリゴリと削って適正な厚みにする。

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現時点では表側は未完で、この後、ジャッキ位置固定用の円弧のリブを付ける必要がある。最終的にラックに装着する際には、表側(円弧のジャッキ固定リブ)があるほうが外側を向く場合が多いようだが、逆の例もある。せっかく作った裏のリブを見せびらかすために逆向きにするのもありかなあなど、あざといこともちらりと考慮中。

●車体側部、数カ所に出来る小さな段差(というか窪み?)を埋め終わったあとに、鋳造時の型分割ラインを入れる。当然ながら、工具箱に隠れてしまう部分はオミット。

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いつもながら、伸ばしランナーを貼って接着剤で溶かして潰して……という作業。当然ながら、同じ「鋳造型の分割線」ではあっても、T-34の砲塔のようなゴツさはなく、ごくごくおとなしいもの。表面もあまりゴツゴツさせず、「これは溶接線ちゃいますよー。鋳造型分割線ですよー」というのを示したいと思ったが……どこが違うんじゃ状態。ちょっと反省。

ちなみに砲塔裾部にも鋳造型分割線はあるのだが、そちらは(通常)さらに目立たないので、キットのパーツの接合線をわずかに残す感じでヤスるだけに留める。……「接着した後、ちゃんと消さなかったでしょ」状態にしか見えないのが難点。

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