Wz.14/19 100mm榴弾砲 IBG 1:35
●IBGの新製品、Wz.14/19 100mm榴弾砲・機械化部隊型(Wz.14/19 100mm Howitzer Motorized Military、#35060)を購入したので、簡単にそのキット紹介など。
新製品とは言っても、実際にはすでに数年前(Scalematesによれば2014年)に出ているシュコダ100mm榴弾砲 vz.14/19に新パーツをいくつか追加したバリエーション・キットで、シリーズ5作目ということになる。一応、以前の4作のラインナップを記しておくと、
- シュコダ100mm榴弾砲 vz.14/19(#35025):vz.14榴弾砲を第一次大戦後に改良・長砲身化したタイプ。
- シュコダ100mm榴弾砲 vz.14(#35026):キット番号はこちらが後だが、砲自体はこちらが第一次大戦中にオーストリア・ハンガリー軍向けに生産され使われた最初のタイプ。
- 10cm LeFH 14/19 (t)(#35027):車輛牽引用にゴムタイヤを付けたvz.14/19。LeFH 14/19 (t)は接収使用したドイツ軍呼称。
- Obice da 100/17 Mod. 16(#35028):イタリア軍型。山砲タイプ?
●実際の砲は、上にも書いたように当時オーストリア・ハンガリー領だったチェコのシュコダ社が同国軍向けに開発した榴弾砲で、最初のvz.14(14年型、の意)、オーストリア・ハンガリー軍名称「10 cm M.14 Feldhaubitze」は、同軍で6500門近く、さらにその山砲型であるM.16は350門近くが使われたらしい。
大戦中の鹵獲、および戦後の賠償で同砲を大量に入手したイタリアでは、独自の改修なども加えつつ、第二次大戦まで使用している。
一方、戦後独立したチェコスロバキアでは、シュコダ社が長砲身化した改良型であるvz.14/19を開発。これはポーランド、ギリシャ、ユーゴスラビアなどに輸出された。特にポーランドでは、1920年のソ・ポ戦争当時に多数を購入しただけでなく、1928年~39年にライセンス生産も行われている。
また、ドイツは大戦初期にチェコ、ポーランド、ギリシャ、ユーゴの砲を接収・鹵獲、主に二線級部隊で使用している。
●というわけで、今回私が購入したのは、ポーランド生産型で、車輛牽引用のゴムタイヤ付きのもの。
あー。S Modelのポルスキ・フィアットのハーフトラックを買うときに、「どうせ牽引させる砲もないし」と、基本形のwz.34を買っちゃったけど、こんなことなら砲牽引車型のC4Pにしとくんだったー。
先行キットのシュコダ100mm榴弾砲 vz.14/19(#35025)、Obice da 100/17 Mod. 16(#35028)の2種に関しては、発売後間もないころに、hideさんが簡単なレビューを上げている。それにしても、hideさんは音沙汰なくなって久しいが、今頃どうしているやら。ちなみに、その時のレビューでhideさんは「da100/17は伊軍お馴染みガントラックの備砲になって(中略)ついでに出さないかなぁ、IBG」と書いている。出しましたよー。出ましたよー。(→コレ)
さて、hideさんのレビューを読んで貰えれば、実はそれ以上あまり言うことない気もするが、それでは身も蓋もないので改めて紹介。中身は、プラパーツの枝が大小取り混ぜて6枚。金属製削り出し砲身が付属、デカールが1枚。エッチングは無し。
▼まずはプラパーツについて。基本パーツの以下の2枝はシリーズの先行キットと共通。
左がA枝。基本、砲架周りのパーツ。右がB枝で揺架に付く細部パーツや防盾関係。B枝のパーツでかなりの割合を占めるフェンダー付き防盾や、いかにも旧式野砲っぽい、防盾前に付く椅子などは、シュコダ製のオリジナルの3バリエーションに使うもので、今回のポーランド型の場合はごっそり不要パーツとなる。
残りの小さな枝群が以下。
一番右のG枝は砲身(とその関連パーツ2つ)だが、前述のように砲身は金属挽き物が入っているので、こちらを使う人は少なそう。左のH枝2枚はポーランド型の車輪。もしかしたら、やはりIBGから最近出た75mm mle.1897のポーランド仕様にも使い回しできるのかもしれない。まん中のI枝はポーランド仕様の(フェンダーが付いていない)防盾ほか。なぜか組立説明書のパーツ展開図では、このパーツも「×2」(つまり2枚入り)と表記されている。「小パーツの中に2組必要になるものがあるのか? 欠品か?」と一瞬焦ったが、どうもそういうこともなく、単に説明書の表記ミスのようだ。
G枝(砲身)はシリーズ最初のキットにも入っていた枝で、残る3枝(H枝2枚とI枝)が今回のポーランド型用の新パーツということになる。
プラパーツ群は全体に「良くも悪くもIBG」な感じで、即座に「これはアカン」と断じるような部分はない(と思う)が、全体的にシャープさや細部ディテールは不足している。
「全体的にピリッとしないなあ」以外に、現時点で個人的にだいぶ気になっている点は以下の2つ。
・尾栓は開いた状態……なのかと思いきや、右写真のパーツを側面の窪みにはめ込むよう指示されている。するとどうなるかというと……尾栓の左右は「閉じた状態」を表しているにもかかわらず、肝心の中心部は筒抜け。「町京子ちゃんの首はどこにある?」状態。なんだそりゃ。
・ポーランド軍用の防盾は、私の入手したキットでは、やや中心が膨らんだような形状になっていた(下写真では、上縁部分の影の付き方でなんとなくわかるのではないかと思う)。ポーランド型の防盾は実は平らじゃない、なんてこともあり得るのか?とも思ったが、ランナーそのものがややねじれが出ていたので、やはり単純にパーツに反りが生じているようだ。
実のところ、シュコダ100mm榴弾砲 vz.14/19の防盾についてhideさんが書いているように、このポーランド仕様の防盾もやや厚めで、できれば0.3mm板あたりで作り直したいところではあるが、そこそこ表面ディテールのモールドがあり、かつ、下部は緩やかに曲がっているので、自作はそこそこ面倒くさそう。悩ましい。
▼金属砲身について。
金属砲身付きなんて、なかなか贅沢だね!……というのは、まあ、その通りなのだが。これについては、hideさんがすでに言及している通り、
- ライフリングがやや大げさ。
- ライフリングの切削屑が、そのまま砲口奥に残っている。
- 中途の"たが"のように太くなっている部分のプロポーションがややおかしい。
など、あれこれ問題がある。しかし、ライフリングが大げさだからと言って、逆にライフリングのないプラの砲身を使う(自分でライフリングを再現する?)という人はまずいないだろうし、切削屑については掻き出すとなると面倒くさそうだが、黒く塗ってしまえば処理しなくても構わないかもしれない。
プロポーションに関しては、プラ砲身のほうを使えば削って「たが」を作り直すことは可能かもしれないが、その場合、砲身の台座部分駐退復座レールに乗る部分も(たがに合わせて溝があるので)作り直す必要が出てくる。結局のところ、「これはこういうキットだから」と割り切って作るのがよさそうだ。いや、だって金属砲身もったいないでしょ(←貧乏性)。
▼デカールは4種類、とはいっても、防盾表側、向かって左上に記入される女性名が4バリエーションあるだけ。
入っている名前は、MARYŚKA(マリシュカ、マリアの愛称?)、BAŚKA(バシュカ、バルバラの愛称)、URSZULA(ウルシュラ)、ZOŚKA(ゾシュカ、ゾフィアの愛称)の4つ。実は先に発売された同じくIBG製の、大戦後半、自由ポーランド軍で使われたアメリカ製75mm mle.1897のキットにも同様の女性名デカール(ゾシュカを除く3種)が入っていて、「そんなに大砲に同じ名前ばっかり付けてるのかよ、ポーランド人!」って感じ。アントン、ベルタ、ツェーザー、ドーラ……みたいにアルファベットに対応しているっぽくもないし。
も一つ問題は、箱絵はオリーブグリーン一色だが、説明書の塗装説明は1939年戦役時の第10機械化騎兵旅団所属の3色迷彩のみで、「名前は4つの中から自由に選んでね」状態。ナニソレ。
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コメント
自由ポーランド軍の野戦炊事車(Armoから出てたヤツ)も確か全車に個別の女性名が付いてましたよね。
そういう文化なのかな。
投稿: セータ☆ | 2021年2月26日 (金) 01時21分
>セータ☆さん
はうっ!?
それ、何情報ですか?
ARMOの自由ポーランド軍のフィールドキッチンは長年死蔵していますが、
「同型の鍋が3つセットになっているのは、煮込んで3日目の美味しいビゴスを食べるためなんだろうなあ」(←妄想)
という以外のことは今なお何も知らずにいます。
この砲のデカール、使いまわせるかな……。
投稿: かば◎ | 2021年2月26日 (金) 12時27分
あれれ何処で見たんだったかな?とHDを漁ったんですがちょっと見つからなかったです。
英国内で撮られた写真で「全車に女性名のニックネームが付いていた」というようなキャプション付きで、実際に白で名前が(比較的小さく)ペイントされていました。
古いHDの方だったかもしれないなー。見つけたらお知らせしますので気長に(半年とか)お待ちを。
投稿: セータ☆ | 2021年2月27日 (土) 00時00分
>セータ☆さん
ありがとうございます。
あのフィールドキッチン、キットの箱にジープで牽引されている写真が出ていますが、
“polosh field kitchen”で検索しても、“Kuchnia polowa”で検索しても、
当時の写真どころか、そもそもあの形式のキッチンの写真自体全然引っかからなくて、
どんな情報でも歓迎です。
まあ、当分作る予定はないので、見つかったときに教えていただければまるっきりOKです。
気長に楽しみに待っています。
投稿: かば◎ | 2021年2月28日 (日) 01時47分