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2021年1月

骨飛行機

●急ぎの締め切り仕事などあり、模型製作低調。

●前回、カッパーステイトのコードロンG.IVについて書いたところ、vol de nuitさんから、ボワザン10が欲しい旨のコメントを頂いた。10ではないけれど、ボワザンのキットなら持っていたなあ……と、押入れを開けたらすぐ目に付くところに目当てのキット、FLASHBACKのボワザン3が置いてあった。

改めて考えてみると、私の模型ストック(のなかの古典機ストック)には、この手の「胴体が単純に骨組だけ」飛行機が結構ある。

最新がカッパーステイトのコードロンG.IV(1:48)だが、ずいぶん昔にここでちょろっと紹介したことがあるバキュームフォームのフィアット/サボイア・ポミリオF5B(モーリス・ファルマン11のイタリア・ライセンス型)(1:72)ほかバキュームの「骨飛行機」が複数(実はコードロンG.IVもすでに72のバキュームで1機ある)。フィアット/サボイア・ポミリオF5BとコードロンG.IVのバキュームを紹介した昔の記事はこちら

インジェクションでは上記のボワザン3のほか、インパクト~パイロ~ライフライクのブリストル・ボックスカイト(アンリ・ファルマンのイギリス・ライセンス型)と、ブレリオXI(ともに1:48)がある。

一番の大物は、Metropolitanというレーベルから出た、1:24のコードロンG.3のマルチ・マテリアル・キット(scalematesの紹介ページ)。

これは(いわゆるプラモデルとは別の方向性で)精巧な車模型を出していたポケール設計によるもの。スケールモデルとして正確かどうかは置くとして、半透明樹脂製の翼にシール式の帆布を貼っていくとか、エンジンのシリンダーが金属製の挽き物であるとか、車輪はワイヤースポーク張り済みだとか、やたらに高級感のある「ハイソな大人の趣味」的なキットで、機会があれば写真入りで紹介したいが、今は天袋の奥底に仕舞い込んである。

そもそもガリガリにスケールモデルとして仕上げるべきキットでもなく、そのまま説明書通りに作ればいいようなものだが、そうしていないのは「作っちゃうと大きさ的に邪魔」というだけではなく、肝心の骨組み部分の金属部品が一部(というか大半)劣化しており、ちょっと力を加えるとポキポキ折れ、まるごと作り替える必要があるという極度に面倒なハードル付きであるため。

もともと入手時に中古品で、Metropolitanというレーベルだかメーカーだかもたぶんこれ一作で(前世紀のうちに)消滅しているので、部品請求などしようもない。

●そんな具合で、我が家は結構、「骨飛行機」まみれであることが判った。

そもそも、(私の理解が確かなら)飛行機の胴体というのは、飛行そのものの機能のうえからは、尾翼ユニットを支えるという以上の意味は持たない。そのため、黎明期の飛行機には、胴体は骨だけという機体が結構ある。その後、「単純に尾翼を支えるだけといっても、骨剥き出しよりはきちんとカバーした方が空力的に有利」というのが判ってちゃんと胴体らしくなっていくわけだが、特にプッシャー式の機体の場合はその胴体が邪魔になるので、第一次大戦中盤に至るまで、なお「骨飛行機」の形態は残ることになる。

そんなわけで、初期の飛行機好きの私の場合、もともと「骨飛行機」率が高くなる素地があるが、加えて、「骨だけ・張り線まみれ」の機体は、模型として非常に見栄えがする。

若き日の私は、自分の製作技術やら製作速度やらをよくよく顧みることもなく、そんな「模型映えする機体を格好良く作り上げる自分」を夢想して舞い上がってしまった結果が、この骨飛行機ストックの山なのではないかと思う。考えてみると、私自身がこれまでに完成させた「骨飛行機」は、古のレベル72のDH.2だけだ(たぶん学生時代)。……この先、1機くらいは作りたいなあ(ストックの何分の1だろう)。

20210128_194224 ●せっかく久しぶりに取り出して中身を見たので、チェコ製簡易インジェクション・キット、FLASHBACKのボワザン3(VOISIN 3)の紹介。

このボワザンやエトリッヒ・タウベはまっさらの新キットだったが、FLASHBACKは他にも、簡易インジェクション時代のエデュアルドのバリエーション・キットなども出していたので、たぶん系列のレーベルなのだと思う。

基本、FLASHBACKのキットは48がメインだが、ソッピース・ストラッターやこのボワザンなど、一部は72。「機体が大きいのは72?」とも思ったが、タウベも結構大きいしなあ。基準がよくわからない。

改めてFLASHBACKの製品リストなど見てみると、結構面白いネタが並んでいる。アヴィアチク(ベルグ)D.1とかハンザ・ブランデンブルクw29の48キットなんて、今でも他メーカーから出てないんじゃ……入手しておけばよかった。ちなみにアヴィアチクD.1は、マクタロウさんが素晴らしい完成品をサイトに上げている(→こちら)。

実機は飛行機黎明期の有力メーカー(というかデザイナー)のボワザン製で、第一次大戦の緒戦期に手ごろな性能だったこともあって多数作られた複座機。前席にオチキス機銃を装備し、どうやら、「世界で初めて敵機を撃墜した機体」でもあるらしい(1914年10月5日)。4輪の乳母車に翼と骨組み胴体をくっつけたような形式だが、人が乗っていない状態だと前輪は浮いて尾翼部分が接地する。全部がそうかどうかは判らないが、指定デカールの塗装だと、フランス軍機もイタリア軍機も、軍用機らしからぬ全面白色。これって、ボワザンの目止めドープが白だったのかな?

それはそれとしてキット内容。まずはプラパーツ。

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枝は2枚。翼とコクピット・ナセル関係の大枝と、支柱パーツの小枝。支柱パーツの枝は、古き良き時代のチェコ簡易を知っている人ならお馴染みの放射状のもの。MPMのバキューム・キットに入っている小物インジェクション・パーツもたいていこの形式だった。たぶん、射出時の圧力が低めでも樹脂が回りやすいように、ということなのだと思う。

成形そのものはいかにも「かつてのチェコ簡易」そのもので、若干の表面のざらつきやバリに発展しかけのパーティングラインなどあるものの、初期の簡易インジェクションによくあった「厚みの不均一」とか「盛大な型ズレ」などはない、まずは満足すべきレベルのもの。

エッチングパーツも2枚。

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写真の都合で右のほうが大きく見えるが、実際は左の方が2倍くらいの面積。後部胴体の骨組みはそのまま折り曲げて作る感じで、クロスの張り線もそのままエッチングになっている。その分、枠組み部分との太さ・厚みの差がちょっと足りない気もする。右は小物で、床板だの椅子だのスポークだの。

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あとはレジンパーツとデカール。エンジンはクランクケースにシリンダーを一つ一つ付けていく方式。なのはいいとして、エンジンの回転軸が歪んでるよ……。デカールは長年死蔵している間にちょっと汚れや黄ばみが出てしまったが、印刷そのものは薄く美しい。とはいっても、実際に貼ってみないことにはどうにも。

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説明書(右)の最終ページには張り線の手順が説明されているが、間違いがあって正誤表が入っている。が、なぜか私のキットには正誤表が4枚も入っていた。そんなサービス嬉しくない。それ以前に、張り線の多さとややこしさにクラクラする。

●そして、同じ箱の中に、それ以前に入手したものだと思われるボワザン3のバキュームキットが突っ込んであった。

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クラシック・プレーンというメーカー?の72。なんとびっくり、半割の胴体だけでなく、上下の主翼もすでにサンディングが終わっていた。ちゃんとこれを作り上げる気があったのか……。

ちなみに骨組みの後部胴体や翼間支柱は、バキュームのこの手のキットには割とよくあるが、「自分でよろしく作ってね」と、コントレールのプラ棒がセットされている。スパルタン。

●ついでにもう一つ、手近にあった「骨飛行機」。パイロ(旧インパクト)のブレゲーXI。

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旧インパクトの古典機6機シリーズは、1960年代に発売されたものだが、現在でもインジェクション・キットとしては(たぶん)全種がこのスケールで唯一であるだけでなく、それなりに古さは目立つものの、現在でもスケールモデルとして手に入れる+手を入れる価値が十分あるという点でも貴重。ブレゲーXIそれ自体は、旧フロッグ(その後NOVOほか)から72のキットはあるが、キットそのものの出来はこちらのほうがだいぶ上。

写真のキットはインパクトが無くなった後に再版されたパイロ版で、インパクト版では透明プラで成形されて「塗装でワイヤースポークを再現してね」形式だった車輪が、そのまま普通のプラになってしまったのが、中身的な違い。

コクピット上面は枠だけなので素通しで見えてしまうコクピット側面は、布張りにワイヤーのクロス張り線がモールドされているのは素敵だが、押し出しピン跡はなんとかしたい。また、私が入手したこのキットは、4枚目写真の脚支柱ほか、数カ所に成形不良(樹脂のショート)があった。

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ここ数か月の買い物・補遺

●すでに新年になって半月以上。

すっかり当「かばぶ」更新をさぼっていたのは、仕事に追われたり仕事をさぼったり仕事から逃げたりしてワタワタしていたため。きちんと仕事をしていればブログの更新時間も模型の製作時間も取れたはず、というのは言わない約束で。

まあ、そんな有様ですが、本年もよろしくお願い申し上げます。

●セータ★さんのところの記事で知ったのだが、ICMが今年、ラフリーV15Tを出すそうだ。

うぉう! 攻めてるなあ、ICM!(どこに向かって攻めているかは置くとして)。これはとても楽しみ(セータ★さん同様、私もストックのどこか奥底に、Al-Byのレジンキットがあるけれど)。

ラフリーV15Tは25mm対戦車砲の牽引などに用いられた4輪軍用車で、割とダサダサなデザインの多い第二次大戦のフランス軍車輛には珍しく、現用車両としても通じそうな格好良さがある。

ただ、実車でちょっと不思議なのは、車体後部の制動灯が英語で「STOP」という透かしになっていること(Al-Byのキットでもそのようなモールドになっていた)。フランス人、英語はあまり好んで使いたがらないイメージがあるけどなあ……。

20210118_174858 ●ラフリーV15Tに引っ張らせるもの、ということでは、まさに本来の役割の25mm対戦車砲がエレールから出ているが、かなり古いキットなので、ディテール的に最新キットと組み合わせるのはちょっと厳しい。

写真はかなり昔に、防盾を作り変えるなどそこそこ手を加えて組むだけ組んであったエレールの25mm砲。

もっともこれは、(タミヤの)ルノーUEに牽引させるつもりで作ったもの。牽引姿勢なので脚は閉じてトラベリングロックも掛けてある。しかしラフリー向けにもう一つ作る気にはなれないなあ(別に、砲は一つでUEに付けたりラフリーに付けたりして遊んでもいいわけだが)。

●タミヤのロレーヌも引き続きちまちまいじっているものの、1記事立てるほどの進展は無し。というわけで、昨秋以降、特段キットレビューとか入手報告とか書いていないキットや半端なパーツについて書きとめておくことにする。

20210117_224137 ▲まずは半端な買い物から。一つ目は、ブロンコのPz.kpfw.35(t)/LT vz.35の砲塔パーツ。

砲塔そのものが欲しかったというよりは、ディテールがモールドされた、戦闘室/エンジンルームの隔壁が欲しかったのが第一。CMKのTACAM R-2(ルーマニアの対戦車自走砲)のキットはオープントップ車輛なのにシャーシ内がからっぽで、複雑なディテール付きの隔壁は追加工作が大幅にショートカットできる有り難いアイテム。

そもそもブロンコの35(t)系はR-2のキットを持っていて、もともと個人的に(通常の戦車の場合)インテリアを工作する趣味はないので、そちらから隔壁パーツをコンバートしようとも思っていたのだが、このパーツ、一部外側にも影響するので余分にあるならそのほうがいい。また、出来のいい砲塔パーツが丸ごとあるのも、CMKの35(t)のディテールアップに使えるので無駄にはならないはず。

……手を付けずに死蔵したままだと結局無駄なんじゃないの、と言われそうだけれど。

20210117_224207 ▲半端な買い物その2。タミヤのKVの砲塔パーツ。

溶接砲塔の非対称を表現している(たぶん)唯一のもの。

トランペッター・ベースで作りかけている(というかほとんど組み立て終わっている)1940年型後期の装甲強化砲塔搭載型は、素直にそのまま組み上げて終わりにしようと思っていたのだが、イエローサブマリンのパーツばら売りラックにこのパーツがあるのを見た途端、「これをベースに砲塔だけ新しく作り直そう……」と、つい変な欲が出て手を伸ばしてしまった。

もともと、タミヤのKV自体、あっちこっち不満点があるのでストレートに作る気がせず、いっそ、大昔に最初に発売された「KV-1C」から砲塔を持って来て、タミヤ新キットの仕様と同時期の鋳造砲塔搭載型を作ってやろうか、そうしたら溶接砲塔が余るから、そっちはトラペに回して……などと、獲らぬ狸のなんちゃらを妄想したこともあったりして(結局のところ、タミヤのKVをどう料理するかはまだ決めかねている)。

ちなみにこの砲塔パーツの枝にはペリスコープカバーやツノ型ペリスコープのパーツが足りないので、トラペに使う場合はトラペのパーツと合体させる必要がある。

20210117_224318 ▲最後に半端じゃない買い物。

カッパーステートモデルズのコードロンG.IV水上機型、1:48。私にとっては初のカッパーステイト。

牽引式のくせに胴体がスケルトンという、何を考えているのかちょっとよく判らないコードロン社の初期の機体。単発のG.IIIに対して、G.IVは双発。主翼は前半だけ翼形で後半はペッタンコなのはG.III、G.IV共通の特徴。これまた何のメリットがあるのかよく判らない。……が、その諸々の変てこな点が魅力の機体。

実を言うと、G.IVの水上機型というのは、一応、1,2枚の写真はあって実在は確かであるものの、文献的記録には乏しく、どうやら試験的に少数(もしかしたら1、2機)作られただけのタイプであるらしい。

基本、(戦車にしても)実戦に出ていない試作機とか試作車輛とかにはあまり惹かれないので、この機にしても実際には通常の陸上機型のキットが欲しかったのだが、数年前に発売されて、(もともと入荷数も少なかったのだろうが)一度、確かVOLKSあたりで見かけただけで、たちまち店頭から姿を消してしまった。

今回買ったこの水上機型のキットも見かけるのは初めてで、「これを買い逃したらカッパーステイトのコードロンには一生縁がないかも」と、つい手を伸ばしてしまった。実はこのキット、1万円を超える高額キットで、衝動買いしていいようなものではないのだが、魅力に抗しきれなかった。ちなみに帰ってからパーツを検証したところ、プラパーツ的には陸上機型のものは全部揃っており、デカールと、エッチングパーツの一部が異なっている程度であるらしい。個人的には、陸上機型の説明書をなんとか入手して、陸上機型として作りたい感じ。

とはいっても、このキットの内容はあまりにも高度な感じ(キットの出来が悪いのではなく、むしろ出来が良すぎ+細かすぎ)で、久しく飛行機(特に第一次大戦機)の製作から遠ざかっている私としては、手を付けるのに怖気づいてしまう。

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