骨飛行機
●急ぎの締め切り仕事などあり、模型製作低調。
●前回、カッパーステイトのコードロンG.IVについて書いたところ、vol de nuitさんから、ボワザン10が欲しい旨のコメントを頂いた。10ではないけれど、ボワザンのキットなら持っていたなあ……と、押入れを開けたらすぐ目に付くところに目当てのキット、FLASHBACKのボワザン3が置いてあった。
改めて考えてみると、私の模型ストック(のなかの古典機ストック)には、この手の「胴体が単純に骨組だけ」飛行機が結構ある。
最新がカッパーステイトのコードロンG.IV(1:48)だが、ずいぶん昔にここでちょろっと紹介したことがあるバキュームフォームのフィアット/サボイア・ポミリオF5B(モーリス・ファルマン11のイタリア・ライセンス型)(1:72)ほかバキュームの「骨飛行機」が複数(実はコードロンG.IVもすでに72のバキュームで1機ある)。フィアット/サボイア・ポミリオF5BとコードロンG.IVのバキュームを紹介した昔の記事はこちら。
インジェクションでは上記のボワザン3のほか、インパクト~パイロ~ライフライクのブリストル・ボックスカイト(アンリ・ファルマンのイギリス・ライセンス型)と、ブレリオXI(ともに1:48)がある。
一番の大物は、Metropolitanというレーベルから出た、1:24のコードロンG.3のマルチ・マテリアル・キット(scalematesの紹介ページ)。
これは(いわゆるプラモデルとは別の方向性で)精巧な車模型を出していたポケール設計によるもの。スケールモデルとして正確かどうかは置くとして、半透明樹脂製の翼にシール式の帆布を貼っていくとか、エンジンのシリンダーが金属製の挽き物であるとか、車輪はワイヤースポーク張り済みだとか、やたらに高級感のある「ハイソな大人の趣味」的なキットで、機会があれば写真入りで紹介したいが、今は天袋の奥底に仕舞い込んである。
そもそもガリガリにスケールモデルとして仕上げるべきキットでもなく、そのまま説明書通りに作ればいいようなものだが、そうしていないのは「作っちゃうと大きさ的に邪魔」というだけではなく、肝心の骨組み部分の金属部品が一部(というか大半)劣化しており、ちょっと力を加えるとポキポキ折れ、まるごと作り替える必要があるという極度に面倒なハードル付きであるため。
もともと入手時に中古品で、Metropolitanというレーベルだかメーカーだかもたぶんこれ一作で(前世紀のうちに)消滅しているので、部品請求などしようもない。
●そんな具合で、我が家は結構、「骨飛行機」まみれであることが判った。
そもそも、(私の理解が確かなら)飛行機の胴体というのは、飛行そのものの機能のうえからは、尾翼ユニットを支えるという以上の意味は持たない。そのため、黎明期の飛行機には、胴体は骨だけという機体が結構ある。その後、「単純に尾翼を支えるだけといっても、骨剥き出しよりはきちんとカバーした方が空力的に有利」というのが判ってちゃんと胴体らしくなっていくわけだが、特にプッシャー式の機体の場合はその胴体が邪魔になるので、第一次大戦中盤に至るまで、なお「骨飛行機」の形態は残ることになる。
そんなわけで、初期の飛行機好きの私の場合、もともと「骨飛行機」率が高くなる素地があるが、加えて、「骨だけ・張り線まみれ」の機体は、模型として非常に見栄えがする。
若き日の私は、自分の製作技術やら製作速度やらをよくよく顧みることもなく、そんな「模型映えする機体を格好良く作り上げる自分」を夢想して舞い上がってしまった結果が、この骨飛行機ストックの山なのではないかと思う。考えてみると、私自身がこれまでに完成させた「骨飛行機」は、古のレベル72のDH.2だけだ(たぶん学生時代)。……この先、1機くらいは作りたいなあ(ストックの何分の1だろう)。
●せっかく久しぶりに取り出して中身を見たので、チェコ製簡易インジェクション・キット、FLASHBACKのボワザン3(VOISIN 3)の紹介。
このボワザンやエトリッヒ・タウベはまっさらの新キットだったが、FLASHBACKは他にも、簡易インジェクション時代のエデュアルドのバリエーション・キットなども出していたので、たぶん系列のレーベルなのだと思う。
基本、FLASHBACKのキットは48がメインだが、ソッピース・ストラッターやこのボワザンなど、一部は72。「機体が大きいのは72?」とも思ったが、タウベも結構大きいしなあ。基準がよくわからない。
改めてFLASHBACKの製品リストなど見てみると、結構面白いネタが並んでいる。アヴィアチク(ベルグ)D.1とかハンザ・ブランデンブルクw29の48キットなんて、今でも他メーカーから出てないんじゃ……入手しておけばよかった。ちなみにアヴィアチクD.1は、マクタロウさんが素晴らしい完成品をサイトに上げている(→こちら)。
実機は飛行機黎明期の有力メーカー(というかデザイナー)のボワザン製で、第一次大戦の緒戦期に手ごろな性能だったこともあって多数作られた複座機。前席にオチキス機銃を装備し、どうやら、「世界で初めて敵機を撃墜した機体」でもあるらしい(1914年10月5日)。4輪の乳母車に翼と骨組み胴体をくっつけたような形式だが、人が乗っていない状態だと前輪は浮いて尾翼部分が接地する。全部がそうかどうかは判らないが、指定デカールの塗装だと、フランス軍機もイタリア軍機も、軍用機らしからぬ全面白色。これって、ボワザンの目止めドープが白だったのかな?
それはそれとしてキット内容。まずはプラパーツ。
枝は2枚。翼とコクピット・ナセル関係の大枝と、支柱パーツの小枝。支柱パーツの枝は、古き良き時代のチェコ簡易を知っている人ならお馴染みの放射状のもの。MPMのバキューム・キットに入っている小物インジェクション・パーツもたいていこの形式だった。たぶん、射出時の圧力が低めでも樹脂が回りやすいように、ということなのだと思う。
成形そのものはいかにも「かつてのチェコ簡易」そのもので、若干の表面のざらつきやバリに発展しかけのパーティングラインなどあるものの、初期の簡易インジェクションによくあった「厚みの不均一」とか「盛大な型ズレ」などはない、まずは満足すべきレベルのもの。
エッチングパーツも2枚。
写真の都合で右のほうが大きく見えるが、実際は左の方が2倍くらいの面積。後部胴体の骨組みはそのまま折り曲げて作る感じで、クロスの張り線もそのままエッチングになっている。その分、枠組み部分との太さ・厚みの差がちょっと足りない気もする。右は小物で、床板だの椅子だのスポークだの。
あとはレジンパーツとデカール。エンジンはクランクケースにシリンダーを一つ一つ付けていく方式。なのはいいとして、エンジンの回転軸が歪んでるよ……。デカールは長年死蔵している間にちょっと汚れや黄ばみが出てしまったが、印刷そのものは薄く美しい。とはいっても、実際に貼ってみないことにはどうにも。
説明書(右)の最終ページには張り線の手順が説明されているが、間違いがあって正誤表が入っている。が、なぜか私のキットには正誤表が4枚も入っていた。そんなサービス嬉しくない。それ以前に、張り線の多さとややこしさにクラクラする。
●そして、同じ箱の中に、それ以前に入手したものだと思われるボワザン3のバキュームキットが突っ込んであった。
クラシック・プレーンというメーカー?の72。なんとびっくり、半割の胴体だけでなく、上下の主翼もすでにサンディングが終わっていた。ちゃんとこれを作り上げる気があったのか……。
ちなみに骨組みの後部胴体や翼間支柱は、バキュームのこの手のキットには割とよくあるが、「自分でよろしく作ってね」と、コントレールのプラ棒がセットされている。スパルタン。
●ついでにもう一つ、手近にあった「骨飛行機」。パイロ(旧インパクト)のブレゲーXI。
旧インパクトの古典機6機シリーズは、1960年代に発売されたものだが、現在でもインジェクション・キットとしては(たぶん)全種がこのスケールで唯一であるだけでなく、それなりに古さは目立つものの、現在でもスケールモデルとして手に入れる+手を入れる価値が十分あるという点でも貴重。ブレゲーXIそれ自体は、旧フロッグ(その後NOVOほか)から72のキットはあるが、キットそのものの出来はこちらのほうがだいぶ上。
写真のキットはインパクトが無くなった後に再版されたパイロ版で、インパクト版では透明プラで成形されて「塗装でワイヤースポークを再現してね」形式だった車輪が、そのまま普通のプラになってしまったのが、中身的な違い。
コクピット上面は枠だけなので素通しで見えてしまうコクピット側面は、布張りにワイヤーのクロス張り線がモールドされているのは素敵だが、押し出しピン跡はなんとかしたい。また、私が入手したこのキットは、4枚目写真の脚支柱ほか、数カ所に成形不良(樹脂のショート)があった。
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