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ロレーヌへの道(5)――車体前部

●ヴェスペからII号戦車を作るとか、マーダーIIIから38(t)戦車を作るとかじゃあるまいし。

車体のレイアウトもいじっていないし砲塔もないんだから、荷台周りをちょっといじればOKだよね。

……と思っていた時代が私にもありました。ええ。

「ちょっと進もうと思うたびに泥沼にはまるタミヤ」症候群、および基礎疾患「そんな細かいところまでいじんなくてもいいだろドイツ軍」に苦闘中。おとなしく、Pandaからベースのロレーヌ牽引車のキットが出るのを待っていればよかった、などと思うことしきり。いや、出るかどうか判らないけれど。

●というわけで、タミヤ「ドイツ対戦車自走砲 マーダーI」改め「フランス軍ロレーヌ牽引車」の製作記の続き。

まずは、上記のように「そんなにいじらなくていいよね?」と思っていた筆頭格の車体前部上面パーツ(キットのパーツ番号、C13)。これが結構な落とし穴だった。

20201215_104617

 キットのハッチのヒンジは外装式だが、これはドイツによる改修の可能性大(後述)。キットのヒンジのモールドは削り取り、きちんと左右と連続するよう筋彫りを追加(これがなかなか面倒)。ハッチ側に、内装式ヒンジの逆三角形のリベットを追加(なぜか車体側にはないが、車体側は装甲板ではなくフレームに接続しているためだろうと思う)。

 この部分のリベットはソミュールのマーダーIにはあり、モスクワの10.5cm自走砲、アバディーンの15cn自走砲にはない。オリジナルのロレーヌでも、どうもあるもの、ないものが混在している感じ。とりあえず、「ドイツが追加したもの」というわけではないようなので残した。

 ノテク・ライトの基部モールドを除去し穴埋め。

 予備履帯パーツの取付穴を埋める。こういう部分、穴ではなくて凸とか、薄い筋とかで指示しておいてくれると手間が少なくて済むのだが、迷いなく穴を開けてしまうところがタミヤ(以前に書いたようにそれがタミヤの強みでもあるのだが)。

 ドイツで追加されたジャッキの受け金具のモールドを除去。

 ジャッキ支持架基部モールドを除去し穴埋め。

 キットは逆Ⅴ字型のホーンガードが付くようになっている。これはドイツで追加したものではなく、オリジナルのロレーヌでも付いているものがあるようだが、それほど一般的ではない感じ。他には「ガード無し仕様」と「ガードが1本だけ仕様」があり、とりあえず1本型にしようかと、片側の穴を埋め、リベットもガードの縁モールドごと削ってから再生した。改めて写真を見てみると、結局ガードのないものが多いような気もするので、この後気が向いたらもう片方も同様に処理するかも。

 ハッチのこの部分の裏には、消火器?と思しき装備が付けられていて、ハッチ表にはそのホルダー用の極小リベットが8つあるはず(モスクワの10.5cm自走砲、アバディーンの15cm自走砲にはあるが、なぜかソミュールのマーダーにはない)。戦時中のオリジナルのロレーヌではそこまで詳細に確認できる写真がないのだが、少なくともハッチを空けた写真では内側の筒形装備はほぼ確実にあるので、リベットもあると考えるのが妥当だと思う。現時点で未工作だが、この後追加の予定。

続いて、操縦席~エンジンルーム上面パーツ(C12)。

20201215_104736

 後半部分は、対戦車砲PaK40の砲架が載るために本車輛で最もイジられている部分なので、ばっさり切り離す。ここは最初から覚悟の新造予定。

 トラベルクランプ保持棒の取付穴を埋める。

 トラベルクランプ取付架の穴を埋め、リベットを再生。

 ルーバー付きの左右パネルは後方にがばっと開く仕組みになっているので、この部分にヒンジ(たぶん内装式のヒンジなので、その取付リベット)が2つずつくらいあるのではとも思うのだが、自走砲型の場合、戦闘室装甲に隠れてよく判らない(そもそもソミュールのマーダー、アバディーンの15cm自走砲では、この部分は失われて鉄板で塞がれているので確認のしようがない)。引き続き要調査。

●車体各部のハッチのヒンジについて。

上のルーバー部分についてはひとまず置くとして、この車輛にはハッチと呼べる場所が3カ所(乗員室の上下2枚のハッチと、車体右側の点検ハッチ)ある。

タミヤのキットでは、3カ所ともにごく単純な蝶番型の外装式ヒンジのモールドとなっているが、改めて実車写真をよく見ると、

・ソミュールのマーダーIは(キットの基本資料となっているようなので当然かもしれないが)3カ所とも外装式。

・アバディーンの15cm自走砲は3カ所とも内装式。

・モスクワの10.5cm自走砲は乗員室上ハッチが外装式、乗員室下ハッチと右点検ハッチは内装式。

戦時中の実車写真を見ると、少なくともマーダーIの場合は外装式の例が多いようだ。

Bundesarchiv_bild_101i297170121_im_weste

たとえば以前にも載せたこの写真(Bundesarchiv, Bild 101I-297-1701-21 / Müller, Karl / CC-BY-SA 3.0)だが、跳ね上げた乗員室前面ハッチ部内側の左右三角板にある、本来なら内装式ハッチヒンジのプレート式アームが通る穴がぽっかり開いているので、少なくともこの部分はすでに外装式ヒンジに改められていることが判る。

一方でオリジナルのロレーヌ牽引車の写真を見ると、はっきり内装式であると確認できる写真はあるが、外装式であると断言できる写真は見当たらなかった。というわけで、この外付けヒンジはドイツ軍の手に渡ってからの改修である可能性大。うーん。オリジナルの内装式は破損しやすかったのかしらん。

ちなみに、特に乗員室前面ハッチ(上側ハッチ)について言うと、全開状態のときに、外装式ヒンジの場合は(上写真のように)閉位置に対して180度か、むしろやや立ち気味になるのに対して、内装式ヒンジの場合は180度以上、もっと後ろ側に倒れ込むように開く。いずれにしても、単純に開いたままだと走行時の揺れでバッタンと閉まったりして危ないと思うが、ロック機構のようなものは見当たらない。ただし(ロレーヌでもマーダーIでも)半開状態の写真もあるので、何らかのストッパーは必ず付いているはずで、どうなっているのか謎。

とにかく、そんなわけで、ロレーヌを作る場合は3カ所ともヒンジを作り直す必要がある。まさに「ハッチ大作戦」。ハッジ・ハレフ・オマル・ベン・ハッジ・アル・アッバース・イブン・ハッジ・ダウド・アル・ゴサラ、と一息で言わされるくらい面倒。

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コメント

ロレーヌへの道。。道のりは思いの外長くなりそうですね。黄色いレンガの道は見つかるかしらん。

操縦手ハッチの内側の円筒は消火器でしょうね。当時のカラー写真で見るとロレーヌシュレッパーの時は赤く塗られてたようです。
https://www.pixpast.com/stock-photo/france-1940-captured-french-trc-lorraine-37l-tractor-panzer-tank-with-ammunition-trailer-8937.html

ハッチのヒンジですが、15cm砲搭載型では
アフリカバージョン(第1次改装版):上ハッチ内装式/下ハッチ内装式
ノルマンディバージョン(第2次改装版):上ハッチ外装式/下ハッチ内装式


投稿: hn-nh | 2020年12月16日 (水) 06時56分

>hn-nhさん

おお。こんな写真があるんですねー。
しかし、消火器?の位置から考えると、もしかしたらこの写真、裏焼きですね。

よく見ると、車体側面のこちら側についているのも、マフラーカバーではなくて、何か別の箱のような?

手前の電柱のところに、なぜかウサギがたたずんでいる(!?)のも気になります。

ハッチヒンジに関しては、マーダーIでも内装式が残っているものもあるようで、生産時期(というか改装時期)と厳密な対応関係はないかもしれません。

投稿: かば◎ | 2020年12月16日 (水) 09時38分

かば◎さん

かば◎さんでも作り始めてから??!!があるものなのですね。
私はいつもの様に泥縄式で工作を進めながら発見(気がつく)箇所を見つけているので失敗が多くその分、リカバーが徒労の様な工作状態なのです。
なんでわざわざこんなことするのか?は、模型作りの楽しみでもあります。
かば◎レポートを完成までお願いします。
楽しみに見ていますから。

しかし、タミヤのキットの大穴傾向はやや問題ですね。
隙間が空いて埋める必要があるものが多いです。

投稿: hiranuma | 2020年12月16日 (水) 13時35分

内装式のハッチヒンジってのは、
でっかい1/4弧のアームが車内に出っ張るので、
ヘルメットじゃないドイツ戦車兵は頭打っていたいとかアームになにか挟まって開かねえ!とか
そういう理由で単純な外装蝶番になったのかな〜とか愚考しました・・・

投稿: みやまえ | 2020年12月16日 (水) 21時08分

>hiranumaさん

基本、実際にいじり始めてみないと本気で調べないので、毎回手探りです。
「ああ、これが判っていたら次回は最初からもっとうまく作るのに」と思うのですが、まあ、なかなか2度は作りませんよね。

それにしてもこのロレーヌは最初から躓き通しです。
もうちょっと「タミヤの設定」に近く作れるソミュアS35やルノーR35なら、こんなに切った貼ったする必要はないはずなんですが。

投稿: かば◎ | 2020年12月16日 (水) 22時56分

>みやまえさん

>>ヘルメットじゃないドイツ戦車兵は頭打っていたいとか

ああ! それは考えていませんでした。
そういえば、本当にドイツ戦車兵ってのは、最初期の詰め物入りベレー帽がなくなってからは、頭部の保護がまったくおろそかですよね。
他の国はほぼ必ず戦車兵専用のヘルメットor保護帽があるのに。
ああ、イギリスも基本は詰め物無しのベレー帽なんでしたっけ。

うーん。本当に、ドイツの戦車兵、頭大丈夫だったんですかね?
他の国の戦車と違って、戦車側に(ぶつけそうなところに)いちいちパッドを付けていたとか?

投稿: かば◎ | 2020年12月16日 (水) 23時00分

ヘルメット不足で禁止される前は、ドイツの戦車兵が普通に戦車にヘルメット装備してるのはそんな理由もあるのかなって思いました。
鉄に頭ぶつけるとものすごく痛いです。
あいつら本当にどうやって頭保護してたんですかね。コブだらけだったりして・・・
それともブレーキと加速の運転テクニックで極力揺れないように機動してたんでしょうか。

投稿: みやまえ | 2020年12月17日 (木) 20時19分

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