●タミヤ以外の35のロレーヌのキットについて少々。
▼レジンキット
まずはフランスのAl-By。確か同社の最初期のキットだったと思う。Al-Byのレジンキットは、同社独特のちょっと粘り気のある感じのレジンで出来ており、また「レジンキットはそういうもの」と言ってしまえばそれきりだが、ディテールはかなり一体成型の部分が多い。履帯は車体本体と同質のレジンである程度の長さが一体になったもの。ドライヤーなどで温めて柔らかくして取り付ける方式。確か、まだキヤホビーが青梅街道の北側の古~い建物にあった頃か、ホビースポットUが池袋にあった頃に買ったようなおぼろげな記憶が。
同社製レジンキットの共通の弱点として、平面があまり綺麗に出ていない傾向はあったものの、それなりに精密感のあるよいキットだったように記憶。確か起動輪の片方が行方不明になってしまってお蔵入りしてそのまま。今やストック棚の奥底のカンブリア紀の地層に埋まっている。
ほか、レジンキットとしてはMB modelsとかCommanderとか、割と古(いにしえ)のメーカーのいくつかから出ていたようだが、その辺の内容は未見(もしかしたら、この辺はドイツ軍自走砲型だけかも)。
たぶん最新(そして最良)のレジンキットとしてBrachModelのものがある。これも私は未所持だが、hn-nhさんが15cm sFH 13/1自走砲型キットを製作しているので、詳しくはそちらの製作記を。
▼RPM
ロレーヌ初のインジェクションキット。今回、比較のために模型棚から発掘しようと思ったのだが(Al-Byのレジンキットよりは浅い白亜紀くらいの地層にある気がするのだが)発見できなかった。
おぼろげな記憶と、かつての「河馬之巣」のフランス軍車輛キットリストの記述を元に書くと、一応、成型状態はカッチリしているものの、ディテールの再現度は今一つ(というか今二つか三つ)。車体は箱組みだが、足回り基部に関して、なぜか床板と側板の位置が合わない。操縦席は簡単な椅子のモールドを除きからっぽ。
履帯は(少なくとも私の手元にあるものは)インジェクションの1リンクずつバラバラのものが入っているが、1リンクあたりゲートが5つもあるので組立は面倒くさそう。版によってはベルト式の履帯が入っているものもあるらしい。
同社からは、最初に37Lのキットが出て、そのあと、ドイツ軍の15cm sFH 13/1自走砲、砲兵観測車、そして兵員輸送型の38Lも発売されているが、同形式のバリエーションの箱替えとかデカール替えとかのリニューアル版もあって、ラインナップはかなり混沌としている。
VBCP 38Lのキットは37Lのキットに、兵員室部分の装甲板を上につぎ足す形で追加パーツが入っているが、そんなふうに装甲板を継ぎ足しているのはおそらく38Lの試作車で、生産型の兵員室側面板は一枚もののはず。また、この追加パーツのリベットは元の37Lキット部分よりかなり大げさで、そのままではかなり違和感のある出来。
一方で、少なくとも私が持っている版の38Lのキットには、かなり大判のエッチングパーツが入っていた。サススプリングの結束具とか、工具受けとか、そういえば兵員室の内側のフレームとかも入っていたような記憶が(あやふや)。
▼IRONSIDE
RPMの37Lからそれほど間を置かずに発売になったもので、発売時には「箱替え?」と思ったのだが、全く別物。このキットはたまたまストック棚の浅いところにあってすぐに発見できた。
中身は簡易インジェクションと思しき基本パーツの枝3枚(車体、および足回り×2)、レジンのトランスミッションとエッチングパーツ、デカールという構成。
ディテールの再現度に関してはRPMより上なのだが、成型状態が甘いので、結局、「まあ、RPMよりはマシかな」程度に止まっている。ただ、運転室がレジンのトランスミッション込みでそれなりの内容で再現されているのはポイントが高い。車体側面パーツにもレバー(スロットル?)と操作ロッドがモールドされていたりする。
タミヤのマーダーでは潰されたり撤去されたりしている部分、ラジエーターグリルと荷台の後面版は……。
こんな感じ。前者は幅が合えば流用してもいいかもしれないが、若干寸足らずの可能性あり(ちゃんと測っていない)。後者は工具ラックがモールドされているのはいいのだが、そのため上部リベット列がその部分で飛んでいるのは「流石にそれはないんじゃない?」という感じ。厚みも不満なので、ここは自作かな。
タミヤで不満のリーフスプリングは、一応、細かく重なった形状を再現しようという意図は感じられるものの、いかんせんモールドが甘くて、これでは代替流用候補には成り得ない。
▼PANDA hobby
とりあえず現時点ではマーダーI、15 cm sFH 13/1自走砲、10,5 cm LeFH 18/4自走砲と、ドイツ仕様の自走砲3種のみを発売している。実質的に、インジェクションでタミヤのライバルキットと言えるのはこれだけだと思う。といっても、私自身は持っていないのであまり詳しいことは言えない。
履帯はインジェクション非可動の1コマずつの連結式。少なくともサススプリング部分については(ネット上の写真を見る限りでは)パンダのほうがよさそう。操縦席に関してはタミヤ同様に再現されておらずハッチも閉状態。
●タミヤのキットについてのいくつかの補足。
▼たまたまジャンクパーツを漁っていたら、20年以上前に発売されたヴェスペのリーフスプリングのパーツがあったので並べて撮影。
……なぜ退化しているですか(泣)。ドイツ製車体とフランス製車体の扱いの差?
これに関して、一時、「これ、奥行き削って長さも根元で切り詰めたら流用できるんじゃ……」と思ったのだが、曲がり具合が違うのでちょっと難しそう。先端に向けてしごいて曲がりをきつくすることも可能かもしれないが、12個同じように曲げるのは面倒くさそうだ。
▼履帯の装着方向に関して、説明書では、
――このように指示されている。しかし実際には、フランス軍においても、ドイツ軍においても、装着方向は割といい加減。ドイツ軍車輛に限ると、装着方向はキットの指示とは逆方向のほうがむしろ多いような気もする。
▼足回り再び。
キットのサスペンション部品を改めてよく見ると、車体左側用のサス列(左写真の上側)、後ろ側の小転輪(右側)の横に、右側用サス列にはない謎の小突起がある。拡大して撮った写真が右。
ソミュールの現存実車を見ると、確かにこの位置にだけ、このような突起がある(ただし、キットではまん中が単なる窪みだが、実車では穴が貫通している)。エル・アラメイン戦争博物館所蔵、あるいはイラクにあった15cm自走砲でも、同様にこの位置にある。
が、アバディーンの15cm自走砲では付いていない様子。戦時中の実車写真でも、これが確認できるものが見当たらない(奥まった位置にある小さな突起なので、陰になって見えていないだけの可能性もある。……何ナンダコリャ。
▼facebookで話題に上っていて(もともと平野義高さんが書き込んでいて、それが「AFV模型製作研究会」グループでシェアされていた)「ありゃ、ホントだ」とようやく気付いたネタ。
タミヤのリーフレットのソミュールの実車写真で、車両後部左下に、何やらどこかにぶつかってひしゃげたようなラックが写っていて、「これはいったい何なんだ」という話。大きさからすると、ジャッキ台かジェリカン用か?
とはいえ、戦時中の実車の写真を見ると、ここに何らかの装備をぶら下げていると断言できるものは見当たらず、逆に(右写真のように)明らかに何もついていない例は確認できる(wikimedeia commons、ブンデスアルヒーフ所蔵のBundesarchiv Bild 101I-258-1326-14, Frankreich, "Marder I".jpg)。どうもソミュールの車輛のカスタム装備の可能性が高いのではと思う。
▼タミヤのキットの側面装甲は、運転室部分とエンジンルーム部分の境に装甲板の継ぎ目/段差がある。
確かにソミュールの実車では確認できる特徴なのだが、他では確認できず(戦時中の実車写真では、そもそも鮮明なクローズアップが少ない)。もしやソミュールのマーダーだけの特殊仕様とか? などと、内心、結構戦々恐々。
なお、側面前下部にある車幅表示灯?(放射状のリブの付いた小ドームのモールド)は、元のロレーヌ由来の部品だが、マーダーIの場合はあったりなかったりなので個別車輛を作りたい場合は注意。
最近のコメント