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ほっち、きっす、頬寄せて♪(2)

●オチキスH35~39キットの3社比較の続き。

当初は、me20さんの製作記事で判ったことの再確認も兼ねて、自分が作るときのための下調べでもしておくかあ~、くらいの軽い気持ちだったのだが、いろいろチェックを進めてみると、

これはとんでもないパンドラの箱を開けてしまったかも

感がひしひし。……最後に「希望」が残ってたらいいなあ。

●車体上部はこのような感じ。左からエレール、ブロンコ、ピットロード/トランぺッター。エレールのみは、エンジンルーム部分を別部品として、旧車体(H35)と新車体のコンパチにしている。H35のインジェクションキットは現時点でもエレールだけで(ブラチからブロンコ用の改造パーツは出ている)、この点だけでもエレールのキットの存在価値はまだまだあると思う。

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▼車体上部アウトライン

こうして並べてみると、明らかにブロンコのみ幅が狭く、アウトライン的にも砲塔横あたりで直線的になっていることが判る。もちろん寸法的にブロンコだけが正しい可能性も否定しないが、実車写真を見ると、上部車体の裾は全体が緩やかにカーブしていて、それに比べてブロンコは左右が直線的でちょっとイメージと違う。しかしその一方で、エレールはフェンダーが車体に隠れ過ぎな感じもする。ピットロード/トランぺッターはフェンダー自体がちょっと広いので、エレールよりはマシな感じ。

また、上部車体裾のアウトラインのカーブ具合は、実車では砲塔横の本棚の衝立状のフェンダー支持架部分で最も幅広となるが、エレール、ピットロード/トランぺッターとも、中心がちょっと後ろ寄りに感じる。これは戦闘室上面が後ろで広がり過ぎなことも一因かと思う。実際には、戦闘室上面も砲塔真横を幅のピークとして、後方に向かって絞られている。

砲塔位置もブロンコは他2社に比べて約2mmほども後ろにある。これも(正確な図面等がないので)どちらが正しいとパッと判断できない。また、(me20さんの指摘で知ったが)ピットロード/トランぺッターのキットは砲塔が車体に埋まり過ぎ。車体にべったり砲塔が乗った形になるが、実際には若干頸部が見えているのが正しい。この「首埋まり」はエレールのキットも同様。なお、ブロンコのキットは砲塔リング周りにリブ状のガードがある。これはソミュールの現存実車にはなく、クビンカのものにはあるので、生産時期、あるいは鋳造ブロックの製造工場の別によるものらしい。ちなみにクビンカの実車は砲塔後ろの刻印から、同車輛の前部ブロック同様、戦闘室ブロックもAPO(パリ・ウトロー製鉄所:Aciéries de Paris et d'Outreau)製であることが確認できる。

▼エンジンパネル

3社の新車体のエンジンパネルは、基本、右側グリルが横向きになった標準型。新車体は少なくとも800輌(発注は900輌)生産されているが、そのうち初期の100数十輌は、右側グリルも縦向きになっている(新車体は登録番号が40400番台からで、私が確認した最も若い横グリル装備車は40533号車。ただし、それ以降もしばらくは縦グリル、横グリルが混在している感じ。私が確認した最も番号が大きい縦グリル車は40600号車)。

しかし、3社同じ仕様の割には表現はまちまち。特にピットロード/トランぺッターの右グリルの位置と大きさは変。エレールは本来左右別のパネルであるはずが、分割線が無視されている。グリルの表現自体も、3社ともおざなり感がある。

また、実車のパネルは後端に軸があって後方に開くように出来ていて(側面上後端に軸頭が出ている)、そのため後端は丸く、車体との間には明瞭な溝があるが、それについては3社とも再現されていない。

▼上部車体後端

後端には車体下部との結合ボルトがあるのだが、エレール、ピットロード/トランぺッターのキットでは本来5カ所あるはずのボルトの溝が4か所しかない。予備転輪あるいは尾橇でほとんど隠れてしまうため、あっさり省略されてしまったらしい。また、エレールのキットは溝だけあってボルト自体はない。

▼エンジンルーム側面

なだらかに低くなっていた旧車体のエンジンルームに対し、新車体は、旧車体の丸っこいエンジンルームをベースに残したまま、箱型に上方に増築したような形状になっている。実車は次のような感じ。

Hotchkiss_h39

wikimedia commonsより。ブルガリア、ソフィアに現存の車輛。Hotchkiss H-39.jpgEdal Anton Lefterov作成。

とりあえず、戦闘室部分とは段差などはなく、かなりスムーズに面がつながっていることが判る。これに対して各社キットは以下の通り。エレール、ブロンコ、ピットロード/トランぺッターの順。

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ここも各社各様だが、いずれにしても、3社とも戦闘室後端からエンジンルームにかけて、特に側面上部で急激に絞られたような形状になっている。これは前述のように、本来は砲塔真横を最大幅として徐々に戦闘室上面の幅も絞られているはずが、エレールとピットロード/トランぺッターではむしろ逆に広がり、ブロンコでも最大幅のままになっていて、大きな段差が生じてしまっているため。

特にトラペではかなり極端な"えくぼ"が出来ており、増積されたエンジンルーム上部とH35の曲面を残した下部とのつながりもなだらかさが足りない印象。なお、トラペのキットでは本来あるはずの戦闘室/エンジンルーム間の継ぎ目もない。

この“ギャップ”を根本的に修正しようと思ったら、上部のエッジに生じている明瞭なS字カーブの前方をゴリゴリ削り込む(と、たぶん穴が開くので裏打ちは必須)。かつ、表面にも若干のパテ盛りが必要になるかも。うわ。面倒くせぇ!

●長くなったので足回りに関しては改めて(続くのか!)。

なお、PMMSには、ブロンコ、およびトランぺッター両者のキット評が出ている。特にブロンコのレビューではトラペのキットとの比較も若干含まれているのだが、筆者(Terry Ashley氏)はかなり明確に“ブロンコ推し”。寸法的にもブロンコのほうが正確であるとしている。ホント!?

それ以外についてもいろいろと不思議な点が多いレビューで、これについてもできれば次回触れたい。

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コメント

うーん。こうやって見るとエレールが予想以上に健闘してる、というか
オチキス作るならエレールをベースに手をいれるのが正解なんじゃないかと思ってしまう。
そういえば、ソミュアS35もタミヤキットの登場でエレールのが過去の遺物に追いやられるかと思いきや... というのもあったな。

投稿: hn-nh | 2020年5月23日 (土) 19時43分

>hn-nhさん

そういえば、去年?一昨年?東京AFVの会で、タミヤとエレールのソミュアの作り比べが展示されていましたね。


パーツ状態で見ると、細部ディテール他、圧倒的にタミヤが上なのは言うまでもないんですが、形としてまとめてしまうと、意外にエレールが見劣りしないっていう……。

投稿: かば◎ | 2020年5月23日 (土) 20時41分

ご無沙汰しています。シェルです。
砲塔だけの比較かと思っていましたが、車体にまで考察が進んだので、
どういう決着がつくのかと大変興味深く拝見していました。
私自身は、ホチキスのキットよりもR35がタミヤから新作が出てきたこともあって、是非ともR35も考察をお願いしたいと勝手に思っています。

投稿: シェル | 2020年5月24日 (日) 00時14分

>シェルさん

お久しぶりです!
タミヤのR35はなかなか小粋なキットですね。

今いじっているバレンタインは、正直言って「う~ん。行き届いてないな~」感があるんですが、R35は(シュレティアン式視察装置も付けて欲しかったとか、尾橇も欲しかったとか、ワガママ言えばいくつかあるものの)結構気に入っています。

砲塔比較を書いたときには、R35のレビューに続けていくような気持でいたんですが、いつのまにかオチキスに逸れちゃって(笑)。

KVが出る前には簡単なレビューを書ければと思っています。

投稿: かば◎ | 2020年5月24日 (日) 00時51分

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