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2020年5月

5月30日、逗子海岸

20200530_163211 ●緊急事態宣言が解除されて最初の週末。

30日土曜日、夕方4時半頃の逗子海岸はこんな感じ。

天気がよかったこともあって、それなりの人出。

もちろん宣言解除=危機の収束というわけではなく、それで浮かれて海岸に遊びに出るとはもってのほか、といったような意見もSNS上ではよく目にする。しかし、ぱっと見、個々のグループ同士の距離は離れているし、仮にこれで感染リスクが高まったとしても、それは遊んでいる当事者のリスクなので(もちろん間接的に社会全体の、というのはあるにしても)、個人的にはさほど目くじらを立てる気にはなれない。

●nifty模型フォーラム時代の模型仲間、"たまんちん"ことはるとまん氏から連絡があり、土曜夜9時より、zoomでオンライン飲み会をする。参加者は他にはほちん氏、田一田氏で計4名。

はるとまん氏が横浜に住んでいた頃は、最も頻繁に会う模型仲間だったと思うが、もうかれこれ20年近く前だろうか、彼が京都に引っ越して(というか戻って)からは、すっかりご無沙汰になってしまった。一度彼がこちらに出てきた時に、がらんどうさん、くわっちんと4人で?飲んだのが、もうすでに10年以上前かも。

自宅のデスクトップPCはマイクもカメラも付いていないので、必然的にスマホでつなぐことになる。オンライン会議は2週間ほど前に一度、スマホ&LINEで経験しているが、会議中、10分と持たずに頻繁に熱落ちしたので、今回もかなり不安要素多し。

20200531_123023 とりあえずスマホにzoomをインストール。また、手放しで参加できるよう、当日夜になってから、模型のランナーを利用してスマホ用の簡易スタンドをでっちあげた。……いいんだよ! ちゃんと使えたんだから!

ビール系だと、飲み終わるたびに階下の冷蔵庫に取りに行かないといけなくなるので、常温で飲める安ワインと乾きもののつまみを用意。

熱落ちのリスクをできるだけ低下させようと、直前に再起動して余計なものは立ち上げず、zoomのみ起動。9時ちょうどに設定されたミーティングに入った……のはいいものの、久々のたまんちんの顔は見えるが声は聞こえず。あわててネットで検索して、zoomそれ自体の設定をいじる必要があるらしい、というのは判って、なんだかんだとワタワタ。5分くらいしてようやく音声も繋がる。

以下感想をつらつら。

・先日のLINE会議の時も思ったが、発言のタイミングがかぶったり、やはりコミュニケーション的には円滑とは言い難い。とりあえずは、「お互いの顔を見ることができ、声を聞くことができる状態で酒を飲む」以上ではなく、なかなか脈絡のある話などはしづらい感じ。慣れてくればもうちょっと何とかなるのだろうか?

・スマホで参加の場合、個人表示窓がPC画面に合わせた横長の中にスマホカメラの縦長が入れ子になって、顔も小さくなるし、非常に見づらい。……いや、もしかしたらスマホを横にすればよかったのか?

・LINE会議のときは頻繁に熱落ちしたが、今回のzoomでは一度も落ちず。再起動他の事前準備が良かったのか、単にzoomの動作が軽いのか、そのあたりは不明。

・いくら京都が暑いからって、久しぶりに会うのにいきなり裸で登場するな、はるとまん!

なお、田一田氏より、「赤板先行氏が消息不明」という、非常に気になる(というか心配な)話を聞く。でんでんとあかばんは割と頻繁に会って酒を飲む仲で、私も年に数回それに混ぜてもらう感じなのだが、昨年暮れからまったく連絡が取れていないそうだ。実家とか会社とかの連絡先は判らんし。

●先日「れっつ、きっす、頬寄せて」というのは、フィンランドの「Letkis」の空耳由来の歌詞だと書いたが、考えてみればそんな例は他にもあった。

例えば「ウスクダラ」のヒットで有名なアーサ・キット(Eartha Kitt)の「Sho-Jo-Ji (The Hungry Raccoon)」では、主人公を「腹鼓を打つタヌキ」から「いつも腹ペコのアライグマ」に変えたうえで、日本語の「ま~けるな、ま~けるな」の部分を

"macaron and macaroni ..."(マカロンにマカロニ…)

と、ぴったり語呂を合わせて、食べ物を連呼する歌詞に変えていて秀逸(なお、日本語で「負けるな、負けるな」と歌っている部分もある)。

それ以外にも、この歌はいかにも半世紀以上前っぽい、明らかに中国風が混じったアレンジや、多分に「日本語訛りの英語」を意識した歌い方など、「素敵恥ずかし」さが溢れている。

●31日日曜日。おそらく今年最後のキイチゴ(カジイチゴ)つまみ食い。よく熟していて甘かった。

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これの前に、赤黒く熟した山桜(オオシマザクラか?)のサクランボも試してみたのだが、一本のものはほんのり甘かったもののそれ以上に苦く、もう一本はそれよりは苦くなかったが甘みが足りず酸っぱかった。要するに、好んで食べたいと思うほど美味しくなかった。

●6月1日追記。

アストリッド・キルヒャーが亡くなった(5月12日)というのを数日前に知って、そのことだけでも触れておこうと思いつつも忘れてしまっていた。

アストリッド・キルヒャーはビートルズのデビュー前のベーシスト、スチュアート・サトクリフの婚約者だったドイツ人のカメラマンで、スチュアートが若くして亡くなった後もビートルズとは交流があり、その写真を残している。

たぶん、その名前を最初に知ったのは、ビートルズの最初のマネージャーだったアラン・ウィリアムズが書いた、デビュー前のビートルズの生々しい活動記録の本(邦訳の題名は確か「ビートルズ派手にやれ!」)だったと思うが、訳本の中では「アストリッド・キルヒヘア」と書かれていたようなボンヤリした記憶が。ご冥福を。

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キイチゴ三昧

●春の終わりはキイチゴの季節。

近所のキイチゴ類が生えているあたりを見回って、ちまちまとつまみ食いをする。まずはオレンジ色のカジイチゴ。

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2枚の写真はそれぞえ別の場所で採ったもの。1枚目の写真は昨年大量に収穫した場所のものだが、今年は枝が刈り込まれたこともあって収量はいまひとつ。2枚目もそこからさほど遠くない山すそ。道端のベンチに座ってのんびり楽しんでいたら、近所の方と思しきおばさんが「それ美味しいのよねえ、でも、食べられるって知らない人も多くて、採る人少ないのよ。昔は子供たちがみんな採ったんだけど」とひとしきり話して行った。

実の見た目上はよく似ているモミジイチゴも採って食べたが、写真に撮り忘れた。

●さらに市内某所でクサイチゴを採って食べる。

2年前に三浦アルプスのハイキング途中で見つけて食べたのが最初だが、もっと市街に近いところで群生しているのを見つけたもの。昨年は実を付けているところを見ず、「株がまだ若すぎて実らないのかな?」などと思っていたのだが、今年は結構採れた。しかもかなりの大粒で味も良かった。

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●そうこうしている間に、緊急事態宣言解除。

さすがにそれですぐに人の多い街に出るのはためらわれるが、人のいない山奥ならOKだろうと、27日水曜日、久々に三浦アルプス方面への山歩きに出かける。春先にクサイチゴの一大群生地を見つけていて、上記以上に食べ放題ができるのではと思うとウズウズしてしまったため。

久しぶりに公共交通機関(バス)に乗って沼間の山の上の住宅地、アーデンヒルからハイキングコースに上がる。五霊神社脇からアーデンヒルに上がる坂の擁壁の上にクサイチゴが実っているのがちらちら見えて(ただしここは手が届かない)、収穫への期待も高まる。

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ハイキングコースへの上り口の公園端に植わっているヤマモモは、まだ色づいていない実が鈴生り。食べ頃はどれくらい先だろう。半月くらい?

さらに山道の途中でクワの実も見つけて、クサイチゴの前座のつもりで数個つまみ食い。まだ実り始めで完全に赤黒くなりきっておらず、酸味が強いが、これはこれでなかなか。

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そんなふうに、食べる気満々で山道をガシガシ歩いて目的のクサイチゴ群生地(その1、その2)に到着したのだが、どちらも、食べ頃の実はちらほら、程度。熟していない若い実もあまりなかったので、要するに「完全に出遅れ!」という感じ。上のクサイチゴを採って食べたのは1週間前なので、その1週間が勝負の分かれ目だったか。それほど人が通る場所でもないので、ライバルは鳥だろうか。

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結局、合計で10粒も食べられなかったが、せっかくなので、うち3粒は、ヤマザキの「吹雪まんじゅう」を半割にしてトッピング。ベリー系とチョコレート味、ベリー系と餡子は鉄板組み合わせだと思うが、昨年はビターチョコレート味の「クリーム玄米ブラン」に載せるのを試したので、今年はこの組み合わせで行こうと用意して行ったもの。美味しかったけれど、チョコ味のほうが合うかな……。

●山道の途中でハンミョウに数度出会った。

天気が良く気温が高いせいもあってか非常に活発で、最初会った数匹は、きちんと写真を撮るほど近寄ることもできなかった。

「ミチオシエ」の別名通り、山道を先へ先へと小刻みに飛ぶことが多い、とされるハンミョウだが、うち2匹は手の届かない木の葉に飛び上がってしまった。

が、4、5匹目で、ようやく「ちっ、しょうがねぇな。撮らせてやるぜ」みたいな大らかなヤツに遭遇。かなり長時間、「撮影会」に付き合ってもらうことができた。

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ベアなスマホのソフト的なズームだけなので、物理的に十数センチくらいまで近寄らないと、なかなか画面いっぱいで撮ることはできない。

●ほか、ここ最近近所で見かけた虫など。

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1枚目:小さなダイミョウキマダラハナバチ。ハナバチにしては珍しい「ポンキュッポン」な体形。より獰猛なハチへの擬態?
2枚目:コチャバネセセリ。光の当たり具合では翅がキンキラと綺麗なのだが、地味にしか撮れなくてちょっと残念。
3枚目:使い込んだ革製品のような色つやが素敵なヤツボシハナカミキリ。どこが「八つ星」なのかよく判らず。
4枚目:この季節限定のコマルハナバチのオス。
5枚目:ハチのようによく飛び回るヒメトラハナムグリ。
6枚目:ハナダイコンにいたナガメ。
7枚目:これもこの季節の常連のラミーカミキリ。
8枚目:いつ見ても深紅が素敵なベニカミキリ。今年の目撃2匹目。

20200529_182555 ●近所のスーパーに、

「新型コロナウイルスの感染拡大防止にともない云々」

という張り紙があり、それって、

「新型コロナウイルスの感染拡大にともない」 あるいは 「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため」

と書くべきなんじゃないだろうか――と思いつつも、なぜそう思うのかをきっちり自分で説明できず、ちょっとモヤモヤする。


追記(5月28日)若干の推論。「(に)ともない」の用法は、「"何らかの原因、きっかけ"にともない、"ある結果や対処が"生起される」というものなので、「にともない」の前に、すでに対処の一部が含まれていることが違和感に繋がっている。 ――と考えたんですが、どうですかね。

追記2(5月29日)。さらに若干の考察。

「新型コロナウイルスの感染拡大防止にともない」は変(私の感覚では)。

「新型コロナウイルスの感染拡大にともない」はOK。

「新型コロナウイルス感染症にともない」は変。

「新型コロナウイルス感染症拡大の防止策強化にともない」はOK……かな?

「新型コロナウイルス感染症拡大の防止策強化方針にともない」はちょっと変(~方針に従い、ならOK)。

 ***

「梅雨前線の活発化にともない大雨の恐れ」はOK。

「梅雨前線にともない大雨の恐れ」は、何かちょっと変(言葉足らずな印象)。

これらから考えるに、「(に)ともない」の前に来る言葉は、先の推論にあるように「何らかの原因、きっかけ」であるだけでなく、現在進行形の変化する事象であるのが据わりがいい(だからこそ、「伴う(一緒について動く)」という言葉がしっくりくる)、ということになる。

 

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ブロック崩し

●「ブロンコ沼」から女神さまが現れて、

「あなたが使うのは、この歯数が正しくてサイズが違う起動輪でしょうか、それともサイズが正しくて歯数が違う起動輪でしょうか」

と訊ねるので、そっと見なかったふりをして森の外に出ることにしました(これにてひとまずお話はおしまい)。

……ここで「いえ、女神さま! 私が使うのはサイズも歯数も正しい起動輪でございます!」と言ったら、女神さまは褒めてくれるのかなあ。「よくぞ申しました、ではこのサイズが違う起動輪も、歯数が違う起動輪もあなたに授けましょう」って言われても嬉しくないしなあ。

●というわけで、ひとまずオチキスに関してはそれぞれ(3キット)そっと箱にパーツを戻して、何かとてつもない精神の高揚期が来るまで再び熟成させておこう……と思ったのだが、その前に。

起動輪ほどではないものの、これまた簡単に対処は出来そうもないと思った「誘導輪の形状が変(より正確には、再現度が(かなり)不十分)」という問題だが、(前回も触れたように)hn-nhさんは、過去、オチキスの自走砲の工作で、キットのパーツをコリコリ削ってそれなりの形に仕上げていたことが判明。その写真がある記事はこちら

いやいやいやいや。ちょっと待って。一度リム部を削り落すとかじゃなくて、キットのパーツを彫り込むだけで、そんなふうにできるの?

というわけで、「そっと箱にしまう」前に、私自身も削ってみることにした。主に使用した工具は、丸棒ヤスリ(の先端)と、先日も紹介した刃先を研いだマイクロドライバー(マイナス)。結果はこちら。

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左がピットロード/トラペ、右がブロンコ。2つ削るのに1日がかりだった(もちろん、そればかりやっていたわけではないが)。

総括:やってできないことはない、ということは、とにかく判明(が、もちろん面倒臭い)。また、ここまで削ってもhn-nhさんほどディスク部の「ふっくら感」は再現できていない。しかし、これ以上削るとリム部内側のあたりでパーツに穴を開けちゃいそうなんだよなあ。また、仕上がり具合もhn-nhさんの作例よりだいぶ粗い。前回、hn-nhさんを「人間ろくろ」と評したが、改めて「人間NC旋盤」と呼ぶことにしたい。

ちなみにわざわざ別会社のものを1個ずつ削っているのは、最初、「部品をオシャカにするかもしれないから、小リベットのモールドがないブロンコを実験台にしよう」ということで右を削り、次に「なんとかなりそうだから(本番として)トラペを削ろう」と左を削ったため。

なお、実際に作業した感じではブロンコのもののほうがプラが柔らかく削りやすかったが、me20さんの評にあるように、ちょっとケバ立つ感じがした。また、ここまで削ってしまうと片方を捨てるのももったいないし、どうせ両方一緒に見えるわけでもないので、これで1輌分として削り作業は終了、ということにしたい気も。

●今回キット比較をするために改めて押入れのストックの山をごそごそしていたら、久しぶりに目にするキットとか、「あっ、これ、前に探していて見つからなかったやつだ!」なんていうのも出てきたり。

「久々に目にした」一つがこれ。チェコ、KP製の1:72「AERO MB-200」。箱が汚いのはご勘弁。

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KPはまだ東欧が「共産圏」だった頃のチェコスロバキアで活動していたメーカー。というか、ボチボチ新製品もあるようで、今でも活動しているらしい。

そもそもNOVO-FROG以外、「東側」のプラモデルなんてなかなか日本の模型店には出回っていない頃から、KPは結構模型店の棚で見かけることが多く、後から思うに、「さすがチェコは先進工業国」ということなのか、それともプラモデル趣味が存在する文化があったのか。初期の製品は、アヴィアS-199(メッサーシュミットBf109の戦後チェコスロバキア生産型)とか、レトフŠ-328、アヴィアB-534、B-35といった国産機中心で、アイテム的には変わり種、しかし技術はちょっと……という感じだった。

しかし、その後次第に技術が向上して、このMB-200は、(scalematesによれば)1985年発売で、まだ東欧革命前のものだが、「かなり素敵なキット」と言える内容になっている。

ちなみにキット名称はチェコの航空機メーカーAEROの名を冠しているが、実機はフランス、マルセル・ブロック社が開発した双発重爆で、アエロはライセンス権を取得して生産したもの。本国フランスでは、第二次大戦でもまだ少数(本来の爆撃機としてではなく偵察や輸送用途で)使われたらしい。ちなみに、後継機種で低翼・引込脚になったMB210も、キットがエレールから出ている。

マルセル・ブロック(Marcel Bloch)はユダヤ系の航空機技術者で、彼のメーカーはこの爆撃機のほか、第二次大戦勃発時にはMB150シリーズという空冷エンジン装備の単発戦闘機も開発・生産しているものの、これはぼろぼろ欠陥が露呈してほとんど活躍できなかったなど、あまりぱっとしない。しかし、戦後は姓を兄のレジスタンス時代の変名に改名し、会社名も「マルセル・ブロック社」から「マルセル・ダッソー社」に変更。その後、超ベストセラーのジェット戦闘機、ミラージュ・シリーズを生み出している。戦前・戦中はぱっとしないのに、戦後大躍進したという点では、ミグなどとも近いかも。

なお、「Dassault」はもともと「D'Assault」(英語ならof assault)。つまり「マルセル・ダッソー」は「突撃マルセル」の意味なわけで、なかなかスゴイ名前。「突貫カメ君」っぽい。

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KPの初期の製品はパーツも分厚く、バリも結構出ていて難物感が高かったが、このキットは部品もシャープでスッキリしている。

飛行機モデルといえば胴体は左右分割が普通だが、旧式機らしく四角い断面のこの機の場合は大胆に箱組。4枚目写真にあるように、エンジンナセルも箱組。整流板かよー、みたいな細かいリブのある主翼表面も綺麗なモールド。ただし、尾翼周りなど一部にちょっとだけバリがあり、透明パーツの透明度もやや低め。デカールはかなり黄変していて使えなさそうだが、そもそも私はフランス機として作りたい気がする(あるいはスペイン共和国軍とかブルガリア軍とか)ので無問題。手書き感あふれる組立説明図も素敵。

何と言うか、非常に主観的な話になってしまうが、「ワクワク感溢れる模型って、こういうものだよなあ」と思わせる内容。問題は、決して誰もがワクワクするわけではないアイテム選択だろうが、また、そういうアイテムに(傍目では理解しづらい)力の入り方が見られるところが、ワクワク感を覚える源のような気もする。

……いや、そこまで褒めるなら仕舞い込んでないで作れって(←自分ツッコミ)。

●ブロックが出てきた在庫の山のブロック崩しの発見物その2。ロシア、マケット/モデリストの1:48、モラン・ソルニエG/H。

これは以前「そういえばあれ、どこに行ったかなあ」と探して見つけられなかったもの。意外に山の浅いところにあった。

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左の汚いのが箱の表。右が裏。そう、このキット、外箱と内箱でまったく同じ紙を使っているのだ。もちろん、内箱の方がやや小さめに折ってある。

マケットは陸物キットを見ても想像できるように、ここ自体がメーカーではなくてあっちこっちの金型(あるいは最終製品)を扱っている商社のような感じなので、このキットも併記している「モデリスト」のほうがそもそものメーカーなのかも。

箱にはローマン・アルファベットで「Moran G」、キリル文字で「Моран Ж」と書かれている。形式の「G」が、ロシア語だと「Г(ゲー)」ではなく「Ж(ジェー)」になるのは何故? 音じゃなくてアルファベットの順番?

箱は横幅で25cm弱しかなく、一昔前の1:72大戦機クラス。しかも箱を開けたら、なぜか2機分入っていた……。ありゃま。

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もちろん最初から2機入りだったということではなく(そういうキットも世の中にはあるが)、なんとなく、後からもう一つ、何かの機会に入手したようなおぼろげな記憶が。そのまま一つの箱にまとめて忘れていたらしい。

小さい箱に2機分なのに箱に大分余裕があり、(古典機ゆえということもあるが)パーツ構成はごく簡単。

こういうロシア・東欧製の怪しいキットだと、モールドもでろでろだったりすることも多いのだが、このキット場合は、(飛行機キットの肝の一つと言える)主翼後縁が素晴らしくシャープに薄い(それでいて、一機のほうの主翼はプラにゴミか何かが混入してまだらになっている)。

古典機によくある、裏側が窪んだ翼型は、本来ならリブとリブの間の布地は凹んでいるのではなく、むしろやや出っ張っているくらいでないと変なのだが、これは圧倒的多数の古典機キットが等しく間違えているので、ことさらこのキットを責めても仕方がない、美しい主翼に比べて、尾翼はボッテリしているのはご愛敬。

さて、中身は2機分だが、それぞれちょっと流通経路に違いがあったらしく、説明書も2種類入っていた。ひとつはA4版表裏でペラリと一枚。

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片面はまさに「組立説明図」なのだが、昔のレベル72の説明図もこんな感じだったかなー、みたいな簡単なもの。いや、キット自体の構成もこんなもんだし。しかしもう片面はキットの内容からするとギャップも甚だしい、ちょっと本格的な細部図解も含めた図面。これを見てディテールアップしろと!?

しかし、もう片方の説明書はさらに面白い。こちらはA4版2枚、裏表の4ページ。

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1ページ目は英語のそれなりの長文の実機解説。下に出典資料も列記してあるのが誠実。2ページ目が組立説明なのだが……。いやこれ、組立説明図って言えるの? 翼の取付け等については全く触れられていない一方で、胴体の図解は詳細で、一部構成品については「これはキットのパーツに含まれていないが自分でなんとかせぇ」みたいなことが書かれている。スパルタ!?

興味深いのは、こちらの説明書ではキット名称が「モラン・ソルニエ H」になっていること。実を言えば、キットはG型とH型の折衷のようなところがあり、H型として組む方がより簡単、ということであるらしい。また、箱はG型表記なので、もともと最初の説明書が入っていたものであるらしいことが判る。

3ページ目はモラン・ソルニエH型(G型との相違点含む)の1:48図面。この図解で、キットの主翼は基本H型で、G型の場合はリブ一つ分スパンが長いらしいことが判る。そして4ページ目は改造の手引きとして、モラン単葉機のライセンス生産型である、ドイツのファルツE.I/IIの図面と相違点の解説。スバラスゴイ。

ちなみにこのモランG/Hは、有名なフォッカー単葉機に非常によく似ているが、これは、戦前のベストセラーでドイツで(ファルツが)ライセンス生産もされていた本機のデザインを、フォッカーがほとんど丸パクリしたため。はっきり言って、見た目上は尾翼が尖っているか、“コンマ”形か、くらいの違いしかない。ただしフォッカー単葉機は本機と違って鋼管フレームを採用したこと、初めて実用的なプロペラ・機銃同調装置を搭載したことで「名機」として歴史に名を残すことになった。

●他にも、いつどういう経緯で入手したのかさえ全然覚えていない、(いろいろな意味で悪名高き)フェアリー企画の1:72「満州国軍オースチン装甲車」なんてのも出てきたりしたが、これはまたいつか、機会があれば。

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ほっち、きっす、頬寄せて♪(3)

●まさか3回も続けて書くことになろうとは。

とにかく逐一見ていくと、3種あるインジェクションキットのどれもがそれぞれに「脛に傷」を持っていて、いいとこ取りで組み合わせるにしても、「この点から見るとこのパーツを使いたいんだけれど、かといってここに問題があるし」みたいな悩ましい状況に。

いや、そんなところでグダグダ言ってないで、ETS35(世界初の3Dプリントによる1:35戦車のフルキット)を作れば?という身も蓋も無い解決法もあるが、この不良在庫の山を抱えている状態で軽戦車に3万円出せるかってばよ。

●というわけで足回り編。まずは転輪。

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左が3社比較で、左からエレール、ブロンコ、ピットロード/トランぺッター。ブロンコとトラペはほぼ同サイズ(約11.5mm径)、エレールは心持ち大きい(約12mm径)。リム部の厚みは、見てわかるように左から右の順に薄くなっている。オチキスの転輪は、H35時代にはゴムリム付きだが、新車体になって以降は全鋼製に変わり、リム部は薄くなっている。この点でトラペの転輪が最も“らしい”感じ。一方でH35を作るのであればエレールのものを使うのがよいかもしれない。ブロンコはちょっとどっち付かずだなあ……。

ハブ周りのディテールはエレールとブロンコで似ていて、なにやらリング状の板が6本の小リベットで止まっている状態。ブロンコはもっとシンプルに、四方に小突起とボルト。PMMSのレビューでは「The detail on the road wheels is better represented on the Bronco wheels」と書かれているのだが、レストア中の実車の転輪を見ると、ブロンコやエレールのようなリングのディテールはなく、トラペのものが近い。ただし、トラペではハブ周りに4カ所ある突起が、実車では3か所。まあ、どちらにしても組んでしまえばサスペンションボギーに隠れてほとんど見えなくなるはずだが。

なお、H35のゴムリム付き転輪ではどのようなディテールなのかは未確認。

右写真はパーツ枝に付いた状態のブロンコの転輪だが、ご覧のように一つ(右上)はなぜか成型ミスでハブ部が余計に出っ張っている。

●転輪ボギー。

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同じく左からエレール、ブロンコ、ピットロード/トランぺッター。ブロンコとトラペは同サイズだが(高さ約15.5mm)、エレールのものは2mm近く小さい。昔、エレールのキットを作った際、そのまま組んだらどうもシャコタンに見えてしまい、ボギーの取り付け位置を若干下にずらしたような覚えがあるので、これは新キット2種に分がありそう。

ブロンコのパーツはサス軸近くに四角いパッチが当たったような状態になっているが、これは片側3組ずつあるサスボギーのうち、最前方用の1組のみで、後方2組は他2社と同様の仕様。実際にこのパッチの当たったサスボギーはソミュール、ソフィアの現存車輛で最前方の1組に使用されている。ただし、クビンカの実車では左右全ボギーがこの仕様で、最前方だけに限って使用されるものでもないらしい。

一方、戦時中の実車写真を見ると、最前方ボギーでもこの「パッチ当て」ではない例は多いので、エレールやトラペのような構成でも誤りではない。ざっと見た印象では、どうも生産後期の車体でちらほら見られる仕様のようなので、変形や破損などの不具合が生じたための補強かもしれない。また、ここまで広いパッチではなく、軸部寄りの部分だけにもっと狭いパッチが当てられている例もあるようだ。

サススプリングに関しては、エレールのパーツは明らかに細く/短く貧弱で、「さすがにこれはいかがなものか」レベル。ブロンコはプラパーツの軸に本物のスプリングをかぶせる構成。トラペはプラパーツだが、スプリングの表現が細く密過ぎる。なお、実車は(おそらく同じ線径で)巻きの細いスプリングと太いスプリングの2重になっているので、よりこだわりたい人は金属線等で自作のこと。

なにはともあれ、「既存キットの組み合わせでよりよい後期型オチキスをでっちあげる」ことを考えた場合、ベース車体をどうするかは激しく悩ましいところだが(me20さんのように「とりあえずピットロード/トラペのキットを作る」という基本方針を最初に設定しているのは賢明)、少なくとも、転輪に関しては「ブロンコのボギーにトラペの転輪を組み合わせる」もしくはme20さんのように「トラペのボギー/転輪にブロンコのスプリングを組み合わせる」のがよさそう。ボギーは五十歩百歩だが、わずかにトラペのもののほうがモールドがくっきりしている感じで、ということは後者の組み合わせかな……。

●誘導輪。

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3社ともおおよそ同径(17mm前後)。後期型の穴無し・プレーンのディスク・タイプに加えて、エレールはリブ付き・穴開きの初期型(H35用)、ピットロード/トランぺッターは前期から後期への過渡期に用いられたリブ付き・穴無しタイプが付属している。トラペのリブ付きタイプは、裏側に穴位置がモールドしてあり、自分で開口することでエレールと同じ初期型誘導輪も作れるようになっている。ただし、穴開き/穴無しに限らず、新車体ではリブ付きの誘導輪はまず用いられていない(少なくとも私は実例を見たことがない)。

後期型の誘導輪のみを比較してみたのが右写真で、上がエレール。下左がトラペ、下右がブロンコ。3社ともほぼ同形状だが、ブロンコのみハブ周囲の小リベットの表現がない。しかしそれ以上に問題なのは、3社ともまっ平らなディスク状であること。実際には単純な円盤ではなく、表から見て、リム部に向けて引っ込んだ形状になっている。

以下実車写真は、ソフィアの国立軍事史博物館所蔵車輛。wikimedia commons、National Museum of Military History, Bulgaria, Sofia 2012 PD 075.jpg(作者:Bin im Garten)より切り出し加工。

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なお、hn-nhさんは、以前に手掛けた(そして仕上げ前で中断中?)の、ブロンコ・ベースの75mmPaK搭載自走砲で、この形状の誘導輪をきちんと再現している。製作記はこちら。最初に読んだ時にはおそらく「ああ、何か手を加えているんだな」くらいで読み飛ばしていたのではないかと思うが、今回改めてキットパーツの形状を実物を見比べて違いに呆然。しかし、hn-nhさんはどうやらコリコリと手作業でキットパーツを彫り込んで改修しているらしい。恐るべし。

しかしバレンタインの転輪のゴムリムの際も思ったが、どうしてhn-nhさんはそんな「人間ろくろ」みたいな作業が可能なのか。謎。

●そしてさらに混迷の度合いが深まるのが起動輪。

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これに関しては、キットの箱に一緒に放り込んであった別売履帯付属の起動輪にも参加してもらった。左から、エレール、ブロンコ、ピットロード/トランぺッター。4番目のレジンの起動輪は、たぶん今はもうないLINK MODEL WORKSHOPというブランドの非可動インジェクション履帯に付属していたもの。ネットでパーツ枝の写真を見ると、現在HOBBYBOSSで出ている履帯と同じものかもしれない(確証無し)。一番右のメタル製はモデルカステン。非可動式のものだが、可動式のセットにも同じものが入っているかもしれない(ルノーR35用はそうだったので)。

とにかく、本来なら全部同じ形であるべきなのだが、ぱっと見で歯の大きさや形状はまちまち。それ以上に、ブロンコのものだけ他に比べて明らかに小さい。なんでこうなったー!! ブロンコ以外の起動輪は、歯を除いた直径はおおよそ15mm(エレールはやや大きめ)。ブロンコは13mm強しかない。

検証のため、ほぼ真横から撮った実車写真を加工して、起動輪と誘導輪の径を比べてみた。上の写真と同じく、wikimedia commons、ソフィアに現存のもの。ファイル名:National Museum of Military History, Bulgaria, Sofia 2012 PD 071.jpg(作者:Bin im Garten)より。

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完全に等距離ではなくそれぞれ若干斜めなので「だいたいこんな感じ」でしかないのだが、おおよそ、歯を除いた起動輪径は誘導輪のリム片側分を除いた程度。ブロンコを除く「大きい子組」の方が、バランス的には適正。

なお、歯の形状に関しては、エレールは歯が幅広過ぎて、なんだか子供が描いたひまわりの花のよう。トラペのものは歯が小さ過ぎるように見える。ブロンコのものも歯の大きさはトラペとあまり変わりないが、小径であるぶん、バランス的にはちょっとマシ。モデルカステンのものは「ランズベルク軽戦車の履帯のセンターガイドかっ!?」(判りにくい例え)と言いたくなるほど、明らかに長すぎ。

しかしここで、更なる問題が。

上の「集合写真」に小さく番号が振ってあるのだが、エレール、ブロンコは歯数が22。トラペと別売履帯にセットされた2種は歯数が24と、これまた2グループに分かれてしまった。現存車輛の起動輪の歯数を数えてみたところ、正解は22本。となると、おそらくサイズ的に適正で歯数が正しいのは、最古のエレールだけということになってしまう。なんでこうなったー!!(再)

(追記:ここで取り上げている「ブロンコのキット」はCB-35019で、同社のオチキスの初版、CB-35001には径が他社とほぼ同じで歯数が24本のものが入っているらしい。me20さんに教えていただいた。詳細は後述)

しかも、「それならエレールを使おう」と思っても、今度は別売の履帯のどれもが上手くはまらない可能性も出てくる(フリウルはどうなんだろう?)。さすがにエレールのカチカチ履帯は使いたくない。

●ここでちょっと趣向を変えて、PMMSのブロンコ・オチキスのレビューについて。著者はTerry Ashley氏。

前回ちょろっと触れたように、このレビューでは、エレールとトラペのキットはややオーバーサイズで、ブロンコのキットがより正確であると評価している。根拠の一つとして、シュピールベルガーの「Beute-Kraftfahrzeuge und-Panzer der deutschen Wehrmacht」(『鹵獲戦車』として邦訳も出ている)に掲載されたドイル氏の1:35図面と関連データを挙げている。以下引用。

Comparing the parts to known data and plans including the side view 1:35 plans by Hilary Louis Doyle in the Spielberger “Beute-Kraftfahrzeuge und-Panzer der deutschen Wehrmacht” (Booty motor vehicles and tanks of the German army) book and associated diagrams and reference pictures show the dimensions of the Bronco kit to be well within reasonable tolerances. These sources also show the Trumpeter and Heller hulls and turrets to be oversized which are quite noticeable when comparing the parts directly.

おや。このボイテ本(原本のドイツ語版)、持ってますよ。……というわけで、掘り出してきて比較してみた。

まず第一に、掲載されたドイル図面(側面図)との直接比較。結果。図面の車体、砲塔のサイズはエレール、トラペに近く、ブロンコは明らかに小さい。ちなみにドイル図における砲塔の前後長は38mm。各社のAPX R砲塔のサイズは砲塔検証の記事を参照のこと。

20200524_112212 ただし、それよりも気になるのは、ドイル図面とは別に、各部の寸法が記入されたH35とH38の小さな三面図(左側面、平面、正面)が掲載されていること。残念ながらキャプションには、「35Hと38Hの主な違いはエンジンデッキで云々」みたいなことしか書いておらず、この図自体の由来は不明(ただし、図の但し書きはフランス語で入っている)。さらに残念なのは図が縮小され過ぎていて記入されている数字がほとんど読み取れないこと。しかし、全幅の数字は明らかに1950(mm)ではなく、めがーぬさんに教えて貰った(そしてトラペの説明書に書いてあった)1850と書いてあるようだ。

この数字を1:35にすると52.86mm。これは各社キットの車幅よりも小さい。ただ、以前の記事でちょっと誤解があったが、オチキスの「全幅」はフェンダーの両端間の距離ではなく、それよりさらに外側に突き出た起動輪中央間の距離のようだ。となると、各社とも既知の数字の1950mm(1:35で55.7mm)に近い。

しかしテリーさんがボイテ本を根拠に挙げているからには、もしかしたらその他の数字はブロンコのキットの寸法が近い、ということなのだろうか。というわけで、同じ図がネット上のどこかに転がっていないか探してみた結果がコレ

いつリンクが切れるか判らないので、一応、主要な数字を写しておいてみる。ただし、シュピールベルガー本より拡大されている図でも、手書きの数字は小さく潰れていてなかなか正確には読み取れない。

全長(履帯先端から後端まで):4220 ……これはwikipediaなどに出ている既知のデータと同じ。
全幅(フェンダーよりも外に突き出た起動輪中心の幅):1850 ……先述の通り。
全高(キューポラ先端まで):2.135もしくは2.155? ……文字が潰れて正確に判読できず。既知のデータでは2.15m

車体中心軸から前面左右の牽引シャックル中央まで(片側):260?
車体中心軸から左右の履帯内側まで(片側):630?
履帯幅:270?

地面から誘導輪軸:500 ……実際には履帯張度調整で稼働するので、若干の変動があるはず。
誘導輪軸から最後尾転輪ボギー中央:825?
各転輪ボギー中央間:960
起動輪軸から先頭転輪ボギー中央:765?

起動輪軸から砲塔中心:1660
砲塔中心から誘導輪軸:1840
車体先端から?砲塔中心:1870

車体高:1383? ……うまく判読できず

(ちなみに、この図自体はあくまで数字書き込み用のベースとしての用を満たすだけのもので、上部転輪が転輪ボギーの全く中央に合ったり、砲塔キューポラが砲塔の中心にあったりと、図面としてはまったくアテにならない。)

これらを35で割ってみた数字は、ドイル図面とおおよそ一致した。実際には、車体の大きさは3社でそう大きくは変わらず、明確に寸法が違う上部車体幅と砲塔の寸法は書かれていないので比較のしようがない。とにかくテリーさんと私の持っているボイテ本が、それぞれまったく内容が違う、なんてことがない限り、「この本をもとに判断するとブロンコがより正確」などとは言えないと思う。

* * *

さて、テリーさんのレビューがブロンコのキットのプラの質や表面の梨地仕上げまで褒めているのは、「まあ、個人の感性かな」ということにしておくが、それ以外にもこのレビューには興味深い記述がある。

それは、「実車の起動輪の歯数は22本だが、エレールは22本であるのに対してブロンコとトランぺッターは24本」、そして「ブロンコの誘導輪のハブのボルトは8本だが、エレールとトランぺッターでは6本」(ちなみに実車も6本)と書かれていること。

上にも書いたように、私の手元にあるブロンコの起動輪の歯数は22本だし、誘導輪のハブキャップの溝とボルト数は3社とも基本変わりはない。ハブ周りのホイールディスク面に打たれた小リベットに関しては、そもそもブロンコのパーツには存在していない。激謎!

しかし、改めてこのレビューに添えられたパーツ枝写真を見てみると、なんだかちょっと違和感がある。これでは小さくて判りづらいが、写真をコピーして、手元のソフトで拡大してみると……。

誘導輪のハブキャップは8溝・8ボルトだし、起動輪の歯数はたぶん24本ある! なんでだ!?

しかも私の手元にあるキットの枝とよくよく見比べると、起動輪はやや大きめに見えるし、そもそも起動輪と誘導輪が両方とも表側になっている(私の手元のパーツ枝だと、この写真の状態だと誘導輪は裏側になる)。どうやら、このキット評から私の入手したキットまでの間に、パーツに改修の手が入っているらしい。

実はキット評の対象となっているキットはブロンコの第一弾キットである「CB-35001」であるのに対して、私のキットはその後発売になった「CB-35019」。初版はレビューにあるような起動輪・誘導輪だったのか、あるいはテリーさんがレビューしたのはテストショットとのことなので(初期のショットと、その後発売直前のショットで改訂)、発売された正規版ではすべて「小起動輪と6溝誘導輪」になっているのかもしれない。もしかしたら、発売直前のテリーさんのキット評を見て慌てて改訂した、という可能性もあるかもしれない。

(追記:me20さん情報。やはりCB-35001には24枚歯で大径の起動輪のパーツが入っているそうだ)

が、これでブロンコだけやけに起動輪が小さい理由が想像できた。おそらく、

歯数を多く間違えているのに気付いて、とはいえ、すでにパーツ化してしまった履帯を作り直すのはコストが掛かり過ぎるので、起動輪を小径化することで歯数を2本減らした

――のではないだろうか。やりやがった! ブロンコのやつめ!

●とりあえずまたまた何か気になるネタが出てこない限り、オチキスのキット評に関してはこれでひとまず終了。

なんだか、実際にいじる日がちょっと遠のいたような気がする。オチキスより、おとなしくルノーでも作ろう……。

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ほっち、きっす、頬寄せて♪(2)

●オチキスH35~39キットの3社比較の続き。

当初は、me20さんの製作記事で判ったことの再確認も兼ねて、自分が作るときのための下調べでもしておくかあ~、くらいの軽い気持ちだったのだが、いろいろチェックを進めてみると、

これはとんでもないパンドラの箱を開けてしまったかも

感がひしひし。……最後に「希望」が残ってたらいいなあ。

●車体上部はこのような感じ。左からエレール、ブロンコ、ピットロード/トランぺッター。エレールのみは、エンジンルーム部分を別部品として、旧車体(H35)と新車体のコンパチにしている。H35のインジェクションキットは現時点でもエレールだけで(ブラチからブロンコ用の改造パーツは出ている)、この点だけでもエレールのキットの存在価値はまだまだあると思う。

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▼車体上部アウトライン

こうして並べてみると、明らかにブロンコのみ幅が狭く、アウトライン的にも砲塔横あたりで直線的になっていることが判る。もちろん寸法的にブロンコだけが正しい可能性も否定しないが、実車写真を見ると、上部車体の裾は全体が緩やかにカーブしていて、それに比べてブロンコは左右が直線的でちょっとイメージと違う。しかしその一方で、エレールはフェンダーが車体に隠れ過ぎな感じもする。ピットロード/トランぺッターはフェンダー自体がちょっと広いので、エレールよりはマシな感じ。

また、上部車体裾のアウトラインのカーブ具合は、実車では砲塔横の本棚の衝立状のフェンダー支持架部分で最も幅広となるが、エレール、ピットロード/トランぺッターとも、中心がちょっと後ろ寄りに感じる。これは戦闘室上面が後ろで広がり過ぎなことも一因かと思う。実際には、戦闘室上面も砲塔真横を幅のピークとして、後方に向かって絞られている。

砲塔位置もブロンコは他2社に比べて約2mmほども後ろにある。これも(正確な図面等がないので)どちらが正しいとパッと判断できない。また、(me20さんの指摘で知ったが)ピットロード/トランぺッターのキットは砲塔が車体に埋まり過ぎ。車体にべったり砲塔が乗った形になるが、実際には若干頸部が見えているのが正しい。この「首埋まり」はエレールのキットも同様。なお、ブロンコのキットは砲塔リング周りにリブ状のガードがある。これはソミュールの現存実車にはなく、クビンカのものにはあるので、生産時期、あるいは鋳造ブロックの製造工場の別によるものらしい。ちなみにクビンカの実車は砲塔後ろの刻印から、同車輛の前部ブロック同様、戦闘室ブロックもAPO(パリ・ウトロー製鉄所:Aciéries de Paris et d'Outreau)製であることが確認できる。

▼エンジンパネル

3社の新車体のエンジンパネルは、基本、右側グリルが横向きになった標準型。新車体は少なくとも800輌(発注は900輌)生産されているが、そのうち初期の100数十輌は、右側グリルも縦向きになっている(新車体は登録番号が40400番台からで、私が確認した最も若い横グリル装備車は40533号車。ただし、それ以降もしばらくは縦グリル、横グリルが混在している感じ。私が確認した最も番号が大きい縦グリル車は40600号車)。

しかし、3社同じ仕様の割には表現はまちまち。特にピットロード/トランぺッターの右グリルの位置と大きさは変。エレールは本来左右別のパネルであるはずが、分割線が無視されている。グリルの表現自体も、3社ともおざなり感がある。

また、実車のパネルは後端に軸があって後方に開くように出来ていて(側面上後端に軸頭が出ている)、そのため後端は丸く、車体との間には明瞭な溝があるが、それについては3社とも再現されていない。

▼上部車体後端

後端には車体下部との結合ボルトがあるのだが、エレール、ピットロード/トランぺッターのキットでは本来5カ所あるはずのボルトの溝が4か所しかない。予備転輪あるいは尾橇でほとんど隠れてしまうため、あっさり省略されてしまったらしい。また、エレールのキットは溝だけあってボルト自体はない。

▼エンジンルーム側面

なだらかに低くなっていた旧車体のエンジンルームに対し、新車体は、旧車体の丸っこいエンジンルームをベースに残したまま、箱型に上方に増築したような形状になっている。実車は次のような感じ。

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wikimedia commonsより。ブルガリア、ソフィアに現存の車輛。Hotchkiss H-39.jpgEdal Anton Lefterov作成。

とりあえず、戦闘室部分とは段差などはなく、かなりスムーズに面がつながっていることが判る。これに対して各社キットは以下の通り。エレール、ブロンコ、ピットロード/トランぺッターの順。

20200520_135648_20200523060101 20200520_135714_20200523060101 20200520_135737_20200523060101

ここも各社各様だが、いずれにしても、3社とも戦闘室後端からエンジンルームにかけて、特に側面上部で急激に絞られたような形状になっている。これは前述のように、本来は砲塔真横を最大幅として徐々に戦闘室上面の幅も絞られているはずが、エレールとピットロード/トランぺッターではむしろ逆に広がり、ブロンコでも最大幅のままになっていて、大きな段差が生じてしまっているため。

特にトラペではかなり極端な"えくぼ"が出来ており、増積されたエンジンルーム上部とH35の曲面を残した下部とのつながりもなだらかさが足りない印象。なお、トラペのキットでは本来あるはずの戦闘室/エンジンルーム間の継ぎ目もない。

この“ギャップ”を根本的に修正しようと思ったら、上部のエッジに生じている明瞭なS字カーブの前方をゴリゴリ削り込む(と、たぶん穴が開くので裏打ちは必須)。かつ、表面にも若干のパテ盛りが必要になるかも。うわ。面倒くせぇ!

●長くなったので足回りに関しては改めて(続くのか!)。

なお、PMMSには、ブロンコ、およびトランぺッター両者のキット評が出ている。特にブロンコのレビューではトラペのキットとの比較も若干含まれているのだが、筆者(Terry Ashley氏)はかなり明確に“ブロンコ推し”。寸法的にもブロンコのほうが正確であるとしている。ホント!?

それ以外についてもいろいろと不思議な点が多いレビューで、これについてもできれば次回触れたい。

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ほっち、きっす、頬寄せて♪

●……なんて、お馬鹿な替え歌を歌ってみたり。この元歌が判る人って、結構年配なんだろうなあ、と思いつつ。

●バレンタインをいじる一方で、me20さんのオチキス工作を横目で見ていて気になって、キットを引っ張り出してきたのは先に書いた通り。

結局、ブロンコとピットロード/トラペのどっちをベースにしたらいいのよ?ってところまでよく判らなくなってきたので、ついでに出してきたエレールのキットも含めて、シャーシ・パーツの比較をしてみた。

まずは比較検討の基準の参考として、実車写真を二葉ほど。

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ともに、wikimedia commonsより。

左写真はブルガリア、ソフィアの国立軍事史博物館所蔵車輛、ファイル名:National Museum of Military History, Bulgaria, Sofia 2012 PD 071.jpg、作者:Bin im Garten

右写真はイスラエル、Yad la-Shiryon博物館所蔵車輛、ファイル名:Military vehicle in the Yad la-Shiryon Museum 031.jpg、作者:Anton Nosik、より切り出し加工。

●まずはブロンコ。

20200520_121738 20200520_194028

・シャーシ全長(後面ブロックが三角に出っ張った部分の頂点からギアハウジングの先端まで、以下同)は111.0mm。
・ギアハウジングを含めない車体前端までは109.0mm。
・起動輪軸までは104.0mm。
・シャーシ幅は33.8mm。

なお、これらの寸法は凹凸のあるところにモノサシを当てて目測で測っているので、「まあ、そんな感じ」レベルと取って頂きたい(あとの2社も同様)。

車体前面に対してギアハウジング部は3社のうち最も突出しているが、実車と比べると突出し過ぎな感じもする。梨地仕上げも余り感じがよくない。ギアハウジング部のバルジ内側に、グリースポイント用かと思われる2か所ずつのボルトのモールドがあるのは3社のうちブロンコだけ。ギアハウジング内側のバルジは本来車体前端と一体鋳造でなだらかにつながっているのだが、キットは別パーツなので、パテ等で処理する必要あり。

上部転輪基部のディテールのモールドがあるのはこのキットのみ。

車体側面には、前部ブロック、後部ブロックとの接合線に溶接痕のモールドが入っているが、ここはボルト結合のはず。

●次にピットロード/トランぺッター。

20200520_121113 20200520_193921

・シャーシ全長は109.0mm。3社のうちで最も短い。
・ギアハウジングを含めない車体前端までは108.5mm。ギアハウジングが車体の「おでこ」からほとんど前に出ていない。
・起動輪軸までは105.0mm。ただしキット指定の軸部はギアハウジング前下寄りに偏心している。ギアハウジング部中心までは103.0mm。
・シャーシ幅は33.8mm。ブロンコとピッタリ同寸。

寸法の数字の信頼性については同上。

こちらはブロンコと対照的にギアハウジング部のバルジが車体前端に対して引っ込み過ぎな感じ、というよりも、車体前端の「おでこ」部分がより切り立っているのが、ますます寸詰まったイメージを強調しているかもしれない。ギアハウジング部内側が車体前面と別部品になっているのはブロンコと似ている。バルジ内側部の傾斜具合(外周に向けての薄くなり具合)もこのキットが最も強調されている。ちょっと実車よりきつすぎるかな。

そしてme20さんを唖然とさせた、このキット最大の謎部分が、起動輪軸がギアハウジングの円周に対して中心でなく妙な位置に偏っていること。当然実車はそんなふうにはなっていない。キットはギアハウジングの中心位置に凸があるが、起動輪軸のパーツも凸なので、当然ながらそのままでは中心位置には取り付けられない。シャーシを設計し終えてから仮組みしてみたら何かしらの不具合が出て(フェンダーとの位置関係が変だったとか、ベルト式の履帯の長さが余ったとか)「しょうがないから軸を移しちゃえ!」みたいなしょうもない顛末があったのではないかと想像したのだが、どうだろうか。

また、車体前端上面部分が別部品になっていて、「おでこ」部分、オチキスのロゴの上に横一直線に実車にはない部品の接合線が来るのもこのキットの特徴。ここに貼った前面写真ではこの「おでこ」上部を取り付けていないが、その状態でも、上の実車写真と比べて明らかに前面の上半分が広過ぎなのが判る。

また、シャーシ側面写真で判るように、このキットでは、2カ所の上部転輪が、それぞれ転輪ボギーのちょうど中間に位置している。しかし、上の実車写真で判るように、実車ではそれぞれ外側に寄っており、キットの位置は明らかに間違い。ブロンコ、エレールのキットでは外側寄りになっている。

ピットロード/トランぺッターのキットは発売時、「ブロンコに対抗するためエレールを参考にバタバタと製品化された」と噂されたが、確かに砲塔は非常に似通っているものの、シャーシの設計は寸法的にも部品分割的にも大分違う。

●そして最も古株のエレール。

20200520_120756 20200520_194134

・シャーシ全長は112.5mm。3社のうちで最も長い。
・ギアハウジングを含めない車体前端までは111.5mm。
・起動輪軸までは105.0mm。
・シャーシ幅は34.5mmで、3社のうち最も幅広(といっても1mm弱だが)。

車体前端のパーツが、ギアハウジングのバルジ含めて実車通りに一体なのは、なんと最も古いこのキットだけ。実は前端部の形状、バルジの突出具合も、このキットが一番実車に近いような気も……あれれ? ただし、ハウジング部バルジ内側はちょっとエッジが立ち過ぎな感じもする。

オチキスのロゴに関しては、3社とも最も一般的なタイプに近いのだが、特にこのエレールのものは長円形ではなく単なる長方形になってしまっている(他の2社も「角を丸めた長方形」にしかなっていないが)。

●なお、転輪ボギーの位置については、ブロンコとピットロート/トランぺッターはほぼピッタリ同一位置(左写真)。しかしエレールはボギー同士が若干近接(右写真)。そのぶん、最終的には転輪と起動輪、転輪と誘導輪は新しい2社のキットよりも離れた感じになるはず。どちらがより実車に近いかは……う~ん。足回りまでちゃんと仮組みしてみないと判んないや~。いや、昔作ったエレールのH35を掘り出してくれば実車写真との比較ができるのか?

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先述の上部転輪の位置の違いもこの写真でよく確認できる。ブロンコとエレールも上部転輪位置に差があるが、これは転輪ボギーの位置自体が違うので当然。

改めて、3社のシャーシの「面構え」部の比較。左からエレール、ブロンコ、ピットロード/トランぺッター。

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「おでこ」部分の角度や広さ、ギアハウジング部の突出具合の違いで、意外にそれぞれ印象が違う。ギアハウジング部のバルジはエレールが最も厚みがあって角ばっており、トラペが最も斜めに薄くなっているのが判る。

●そして3社のフェンダーの比較。左からエレール、ピットロード/トランぺッター、ブロンコ。なぜ上と順番が同じじゃないんだ!(←単に間違えただけ)

20200520_124750

各社パーツの幅は、

・エレール:9.5mm
・ピットロード/トランぺッター:11.0mm(10.0mm)
・ブロンコ:9.7mm

トラペのものが一目でわかるように幅広だが、実はトラペのフェンダーだけが「シャーシパーツの上に載せるように接着する」形式になっていて、シャーシパーツの厚み分が加算されているためでもある。シャーシパーツの厚みを引くとカッコ内の数字になる(それでもわずかに他2社より幅広)。

各社パーツの長さは、

・エレール:全長117.5mm、直線部101.5mm
・ピットロード/トランぺッター:全長116.0mm、直線部100.5mm
・ブロンコ:全長117.2mm、直線部100.8mm

me20さんによれば、トラペのキットの起動輪をギアハウジング部中央に移して(つまり後方に移動して)組んだにも関わらず、カステンを履かせたらフェンダーに履帯が干渉してしまい、フェンダー屈曲部の内側を浚う必要が出たそうだ。う~ん。謎。もしかしたら起動輪の位置が高め? あ、誘導輪側も引っかかってるんだっけ。

なお、上記のフェンダー幅をシャーシ幅と合わせた全幅は、

・エレール:53.5mm
・ピットロード/トランぺッター:53.8mm
・ブロンコ:53.2mm

ということになる。複数の資料に出ている実車の全幅は195cm。この寸法が正しいとすると、1:35は55.7mmになるので……各社全部幅が足りないぢゃん!

(5月24日追記。オチキスは起動輪中央部がフェンダー端よりさらに外側に出っ張っているので、全幅は「フェンダー両端の幅」ではないらしい。というわけで、各社だいたい既知の数字の35分の1である55.7mmに近いと考えてよさそう)

●とりあえず今回はここまで。気が向いたら車体上部とかボギーの比較もするかも。

●割とどうでもいい話。

表題の元歌は、坂本九の「ほほを寄せて、キスをしようよ」という意味の歌なのだが、改めて調べてみると、曲名は「レットキス」。「キスをしよう」なら「レッツ・キス(Let's kiss)」なんじゃないの?……と思ったら、そもそもこの曲はフィンランド民謡で、原題の「Letkis」は「列になって踊ろう」というような意味なのだそうだ(wikipediaによる)。

「Let's kiss」だと思ったのはそもそも誤解だったわけだが、日本語の歌詞はその誤解を逆手に取って作られていたという次第。知らんかった……。ついでに言うと「ジェンカ」(この曲を含むフォークダンスのタイプの総称)と「ジェンガ」が頭の中でごっちゃになっていた。

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バレンタイン復活の日(4)

●オチキスだのルノーだのにちょっと気を取られている――のは否定しないが、バレンタインもじわじわ進行中。

というか、前回の段階から、車体前後のライト類と配線を済ませてしまえば、基本、工作は終了! 塗装を除くと、製作記は珍しくもたった4回! ヤッター!……という具合になるのではと考えていたのだが、ここまで来たところで、細かい"引っ掛かり"がいくつか出てきてしまった。面倒臭いなーこの戦車(面倒臭くしているのはお前だろう、というツッコミは置くとして)。

●とりあえず多少なりと進んだ部分。

車体後部に尾灯類?(パーツC45とC5)を付けて、引込部から配線を付けた。

20200519_202609

もっとも、この部分がこのようなパーツ配置になっていて、それが綺麗に残っている現存車輛が見当たらず、ディテールはいまいちよく判らない(ただし、このC45とC5の形状のものがくっついている戦時中の実車写真は、とりあえずある)。

一応、キットではC45の筒状のものの先を赤で塗るよう指示されているので、これが尾灯であるのは確かなような(ただし、実車ではこの部分は本当に「筒」で、ライトそのものはその奥にあるようなので、ドリルで開口した)。

もう一つの、ちょっと後ろ側にあるC5は何なのか謎だが、後ろ向きのホーン?……とにかく、単純な板ではなく奥行きのある部品なので電装品だろうと判断して配線した。

引込部のポッチは現存車輛でも確認できるので、線が後ろ側から出ているのは確かだろうが、それが尾灯?とホーン?のどこに繋がるのかはわからず、結局、見切り発車的に真後ろのど真ん中に穴を開けて繋げた。

●車体前側の電装品でまず引っ掛かったのが、左フェンダー上に載っているホーンと思しきパーツとそのカバー(C6とC42)。

とりあえず、最初はキットの指定通り付けるつもりでいて、配線用のパイプが通るようにカバーに溝など彫っていたりしたのだが……。

20200514_234837

改めて戦時中の実車写真を見直すと、このカバー(とホーン)は付いていたりいなかったり、付いているとしてももう少し小さめで縦長のカバーが内側寄りに付いていたり。

実際、キットのような大きさと配置(フェンダー中央)のものもあるのは確認できたが、防盾の機銃部が引っ込んだ初期型形質のものに限られているような。また、キット指定のソ連軍の「35-51」号車、「スターリンのために 52号車」のいずれもこのカバー(とホーン)が付いていないように見えるので、結局付けない(あるいは付けるとしても位置と形状を直す)ことにした。

そこで厄介なのが、キットのフェンダーにはカバーの取付位置に大きな凹部が設けられていることで、単なる穴なら埋めるだけで済むが、この場合、フェンダーの補強リブもその部分で途切れてしまっているのが悩ましい。

最終的には、穴を埋めて、その部分にかかる2本のリブも一度削り落としてしまい、プラペーパーの細切りを貼ってヤスってエッジを落として再生した。モールドにどれだけ近付けているかは塗装してみるまで不明(サーフェサーを塗って確かめるのが面倒)。どのみち予備履帯で隠れてしまうため、リブの後端の工作は適当で長さがまちまち。

予備履帯に関しては、前回、「まだ残っている電気系統の配線の工作の邪魔になりそうなので、現段階では取り付けない」と書いたのだが、車幅表示灯を後ろ側にずらして取り付けることにしようと思ったので、その位置決めの目安にする意味もあって、結局取り付けた。行き当たりばったり……。

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●前述の車幅表示灯、車体前端左右に付く前照灯(そしてもしも付ける場合には前述のホーン)には、車体の引込部から電源コードが接続しているのだが、これがご丁寧に、フェンダーに這わせた保護パイプの中を通っている。なんでわざわざこんな妙に凝ったものを付けるかなあ。ドイツ戦車みたいに単純にコードを這わせたらいいじゃん!

AFVクラブのキットでは別パーツとして付属しているが、タミヤのキットではあっさり省略されているので、気になる場合は追加する必要がある。が、これまた現存実車ではあれこれ差があって、どんな状態がMk.II/IVの場合に標準なのかがよく判らない(ちなみにソミュールの実車は、一見2ポンド砲砲塔装備の初期型だが、実際には「MkIII架橋戦車の車体にMk.Iの砲塔を載せたハイブリッド再生車」だそうだ)。

まあ、あれこれ悩んでも仕方がないので、これも見切り発車で工作開始。とりあえず、現段階ではパイプのメイン部分を作成したところ。

20200519_195844

フェンダー上への分岐になる円筒形部分は、丸棒に溝を彫ってパイプ本体の白いプラ棒をはめ込んで接着、それから両側を切って削って薄くして……ああ、面倒くさい!

●さらにここまで来て発覚した、もう一つの面倒臭い部分。

アフリカ型のサンドシールドでなく、"ヨーロッパ型"として組む場合は、ゴム製フラップ付きの丸いフェンダー前後と、前側にだけ小さな側面の"垂れ"(B12、B13)が付く。これを付けてしまうと後から誘導輪が取り付けられなくなってしまう……足回りを塗装してから取り付けるのは面倒くさいな、などと思っていたのだが、"垂れ"接着後でも、どうやら斜めにヒネるように差し込むと誘導輪を取り付けられる様子。

というわけで取り付けて見て、実際に誘導輪も後付け可能であることも確認……したまではよかったのだが、今度は、履帯がこの"垂れ"の内側に干渉してしまうことが発覚。

キットの履帯とブロンコの可動履帯は幅自体はほぼピッタリ同じなので、ストレートに作れば干渉することはないはずなのだが、とにかくうまく入らない。一部憶測交じりだが、どうも次のような感じ。

・そもそもこの"垂れ"は、フェンダーに対して垂直ではなく、裾広がりに(前から見てハの字に)斜めに付く。

・タミヤのキットは本来、足回りを組み終えてからこの"垂れ"を取り付けるように指示されている。また"垂れ"(B12、B13)パーツ裏側の履帯に当たる部分はもともとえぐれてモールドされていて、どうも、足回りを組んだ上からこの"垂れ"を履帯に触れるか触れないかくらいで接着すると、適正な「ハの字」具合に取り付けられるようになっている。なお、履帯自体がフェンダーに対してギリギリ外側に位置しているのは実車通りの位置関係。

・私は足回り組み上げ前に"垂れ"を付けてしまったので、適正な角度よりも若干垂直に近くなってしまっていたらしい。加えて、誘導輪のゴムリム部を外側に膨らませる工作をしているために(もともとキットのゴムリム部とガイドホーンの間には隙間があったので、履帯の位置自体そうズレていないはずだが)、ますます余裕がなくなったらしい。

結局のところ、私がきちんと立て付けを確認していなかったのが悪いのかもしれないが、とにかく、タミヤのバレンタインに別売の履帯を交換装着しようとしている方はお気を付けを(ほとんどhn-nhさんへの私信?)。

なにはともあれ、そんなわけで、キットの"垂れ"パーツの内側をゴリゴリと削って薄くすることで対処した。

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左写真がキットのままの"垂れ"裏側。履帯に当たる部分の溝が判る。右は裏をさらって薄くする工作中。主に、一緒に写っている自作のチゼル(というかノミ?)を使用。これは確か100円ショップ由来のマイクロドライバーのマイナスを自分で研いだもの。安直な工具だが、なぜかとても重宝している。

取り付けた状態。

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"垂れ"部分と前面部分のゴムには、実車では継ぎ目はないので、このあと削って消している。また、ちょっとゴムらしい柔らかさを出そうと、若干波打ったようなふうに削ってあるが……効果のほどはちょっと微妙かな?

実際に履帯を取り付けてみて、様子をみたのが次の写真。

20200519_183548

●次回には「工作終了!」といきたい。

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オチキス天国、もしくはオチキス地獄

me20さんのところで、着々とオチキス製作記が進んでいて楽しい。

それに関して、私のところでもピットロード/トランぺッターのキットと、ブロンコのキットを引っ張り出して車体の比較などしていたのだが、どうせならエレールの車体も比べてみたいと思い始め、押入れの中をごそごそと捜索。

エレールのオチキスはその昔にH35として1輌作ったが、それ以外に未組立のストックも、グンゼ版のものが1つ(あるいは2つ)あったはず。……と思ったら、エレール/ハンブロール版の箱のものが出てきた。あ~。そういえばこれも持ってたんだっけ。

20200517_023125 と感慨に浸る間もなく、その箱と重なって、ピットロード/トランぺッターのオチキスがもう一箱出てきた。このところ手元に置いてブロンコと比べていたのは短砲身の(キット名称)「オチキスH38軽戦車」。新たに出てきたのは長砲身の「オチキスH39 重ロケットランチャー40型装備型」。ええっ。オレこんなのまで持ってたっけ!?

今にして思えば「どうしてくれようホトトギス」的に持て余すトホホなキットだが、きっと出たときには「わーい、おちきすのあたらしいきっとだぁ~」と舞い上がって買っちゃったんだろうな……。

右写真のキットのほかに、上記のように、グンゼ版エレールのキットが1つ(あるいは2つ)どこかにある。また、APX R砲塔比較レポートで使用したこげ茶のプラ色のエレールの砲塔は、旧版のエレールのルノーもしくはオチキスのキットのもののはず。これの車体はいったいどこにあるんだろう。自分のことながら、ちょっと背筋が寒くなってきた。

なお、そのうちもうちょっとまともな比較検証もしてみたいところだが、とりあえず、エレールの車体とトラペの車体を比べたところ、部品分割に関しては全く異なるものの、全体のアウトラインは非常に似通っていた。特に車体上部の後姿は、予備転輪ホルダーに隠れる上下結合ボルト溝が省略されているところまでそっくり同じ。なんだかもう。

ついでに(これはまた全然別のキットの箱から)、Vanatorul de care R-35製作時に“食い散らかし”た、ON THE MARK MODELのルノーR35/オチキスH35用のエッチングの残りが出てきた。未使用のもう1セットと、オチキス用尾橇セットは、トラペのH38のキットの箱に一緒にしまってあったもの。

20200517_031527 20200517_023344

これらエッチングは、確かエレールしかなかった時代に買ったもの。ON THE MARKのエッチングは一見なかなか繊細に見えるが、実際には使えるパーツはあまり多くない(泣)。尾橇セットはそれなりに出来が良いように見えるが、トラペのキット、ブロンコのキットともに尾橇はプラパーツが入っていて、そこそこ薄く仕上がっているので、いまさら面倒な思いをしてエッチングは組まないかもしれない。とほほほ。

●トリビア(以前にも書いたかもしれない)。

よく、「文房具のホチキス(一般名称で言えばステープラー)は、軍需メーカーであるオチキス社(の係累?)が機関銃の装弾機構を参考に作発明した」と言われるが、これは俗説で、アメリカの(文房具の)ホチキス社と、フランスの(軍需メーカーの)オチキス社は創業者が親戚である可能性はあるものの(オチキス社の創業者は米系)、直接の関係を示す証拠は何も残っていないそうだ。

●ルノーR35およびオチキスH35~39搭載のAPX R砲塔について。

3Dプリント製品であるETS35のAPX R砲塔をセータ☆さんがお持ちだとのことで、「タテヨコの寸法を教えて!」とお願いしてあったのだが、予想の斜め上を超えるような回答が。詳しくは先の「APX R砲塔」の記事への追記、あるいは直接セータ☆さんによるレポートをどうぞ。

●以前にも紹介したことがある「マルハナバチ国勢調査」は、東北大学、山形大学の研究グループが中心となって行っている市民参加型のマルハナバチ類の分布調査。全国から、一般の人が撮ったマルハナバチの写真を位置情報付きで投稿してもらい、それを蓄積して分析・研究に役立てるもの(実を言うと私は最近、写真は撮るものの投稿はさぼっていて申し訳ない限り)。

そのマルハナバチ国勢調査の事務局からメールが来て、このほど、「マルハナバチ国勢調査」と「日本送粉サービス研究会」の協力により、「野生マルハナバチパンフレット」が作成された由。これまで送られてきたマルハナバチやその他ハナバチの写真からもいくつか使われているというので見てみたら、私が何年か前に近所で撮ったハキリバチの写真が採用されていた。縦横比から見て、まだ富士通のセパレート式の携帯を使っていた頃の写真。特にクレジットなど表示されるわけでもないが、何だかちょっと嬉しい。

パンフレット(第一版)は、「日本送粉サービス研究会」のこのページからPDFをダウンロードできる。また、使われた写真はこちら。

F1015933

写真の出来自体は「下手な鉄砲も数打てば」の結果でしかないが(しかもよく見るとピントが微妙に合っていない)、今見てもお腹にたっぷりとため込んだ花粉がなかなか可愛い。

それにしても、「マルハナバチ国勢調査」とセットになっていたから判るものの、「日本送粉サービス研究会」って、単独で聞いたら何の団体やら判らないな……。

●何かの模型を作るとき、そのディテールを知りたいと思ったら、現在は(車種・機種にもよるが)ネットで検索すれば、かなり豊富にwalkaround写真を集めることができたりする。その昔、「くぁ~っ、そうそう、この角度から撮った写真が見たかったんだよ!」と、たった1、2枚の写真のためだけに洋書を買ったりしたことがあることを思えば、まさに隔世の感がある。

もちろん、その特定の車種・機種名でも検索するが、それと合わせて、ある程度以上のwalkaround写真のライブラリが揃っているサイトとして、特に以下のあたりを探してみることも多い。

primeportal
SVSM
DishModels
LEGION AFV
SCALEMODELS WALKAROUNDS.ru

今回、オチキスに関して、それらに出ている以上の何かいい写真がないかしらん、と、あれこれ検索して漁っていて、以下のサイトにたどり着いた。

SCALENEWS Walkarounds

実を言うと、お目当てのオチキスの写真は少なかったのだが(それでも他にない写真があった)、たまげたのは、第二次大戦初頭にオランダ軍が使ったランズヴェルクL180(M38)装甲車の写真が348枚もストックされていたこと。この車種は、おそらく同一車輛と思われるもののレストア時の写真などもネットに上がっていて、また、wikimedia commonsにも結構写真があるのだが、それにしても約350枚はスゴイ。各部のヒンジとか留め具とかのクローズアップも多くて、オナカイッパイな感じ。

その昔、スコドロの「BLITZKRIEG」で知った時には、兄弟車輛のM36含め、いつかどちらかを作ってみたいと思ったものだが、ここまで詳細に資料があると、逆に軽い気持ちでスクラッチなど始められない感じ。

ちなみに、「T-28 walkaround」として150枚余りの写真が収められているが、これはもともとSA-Kuva(フィンランド軍写真アーカイブ)から持ってきたもので、T-28をフィンランドでバラしたパーツ写真集。いや、それwalkaroundって言うのか?

●ソ連時代の喜劇映画監督として有名であるらしい(映画にはほとんど詳しくない)レオニード・ガイダイという人がいるのだが、その名前が出てくるロシア語のページをGoogle翻訳に掛けたら「獅子座外大」と訳されてしまった。逆になんかスゴイ。

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披露山のタヌキ

●当「かばぶ」で披露山といえば、もっぱら高角砲台の話なのだが、今回は別。

夕方、ちょっと散歩に出たら、山頂からちょっと下った、披露山庭園住宅入り口あたりでタヌキに遭遇した(ちなみに山頂の公園は現在閉鎖中)。

最初は「アライグマ?」と思ったりしたのだが、帰宅してネットで見分け方を検索しつつ(これがなかなか覚えられない)画像を確認して、タヌキと判明。ポイントは脚と肩が黒いこと、シッポがシマシマでないこと。

「道渡りたいんけどなあ。あっちで何か構えて立っとるヤツおるしなー。どないしょかなー。あー、向こうからも人来たし。やめとこ」

みたいな。

昨年末、逗子ヘルスケア前で遭遇したタヌキと同じ個体かも。

me20さんのオチキス製作記事のスタートに触発されて、各社の砲塔比較を改めてアップしただけでなく、ややオチキス熱上がり中。いや、バレンタインも工作終盤だし、今手は出さないけれども。

そんなこんなで、ずいぶん昔にオチキスの「ノーズ部分」のメーカーロゴについて調べた旧HP「河馬之巣」の小記事が、埋もれたままになっているのを思い出し、当「かばぶ」のウェブページ記事として復活させることにした。

とりあえず、最初はほとんど旧記事のままコピーしてアップ、保存したのだが、改めて読み返すと間違いや気になるところもあったりして、結局、「chars-francais.net」掲載の写真をもう一度ひっくり返して見た。

というわけで、今回内容にちょっと改訂を加えた記事はこちら。

フランス軍軽戦車オチキスH35~39のメーカー名ロゴについて

特に原稿中、Type 4として分類しているものについては、図も説明も書き替えた。鋳造メーカーのものと思われる三角ロゴマークについては、「chars-francais.net」にある当時の写真では詳細が判らなかったが、クビンカ所蔵の現存車輛でロゴマークの詳細が判明。

中の文字はAPO、もしかしたら最初のAは別メーカーのFAPSの中にも含まれる「aciéries(製鉄所)」の頭文字ではないかとアタリを付け、「france acieries APO」で検索したら、何となくそれらしい「Aciéries de Paris et d’Outreau」というのがヒット。さらに、このページで、探しているのと同じ三角ロゴマークが描かれた貨車の写真を見つけて、まさにこの会社だと確定させることができた。

ちなみにルノーR35では、戦闘室の横のところ(砲塔のすぐ脇)に、また別の菱形のロゴが鋳込まれているものがある(たとえばソミュール所蔵の長砲身型のほう)。

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APX R 砲塔

●先日ホルヒを完成させたme20さんが、今度は(なぜか)ピットロード/トランぺッターのオチキスをいじり始めているのだが、同キットの出来に関してだいぶゲッソリされている様子。記事はこちら

それに関して、実はタミヤのルノーR35を(発売後さほど経たずに)購入した後、facebookのAFV模型のグループに、各社のAPX R砲塔の比較を載せたのを思い出した。

いずれタミヤのルノーR35の簡単なレビューを書こう……と思って結局そのまま放置してバレンタインなんぞいじっているわけだが、せっかくなので砲塔比較のみUPしておこうと思う。

●念のための基礎知識。

APX R砲塔は、1930年代、フランスの軽戦車の標準型砲塔として開発されたもので、ルノーR35、オチキスH35のライバル2車種に共通して搭載された。

開発はこれら軽戦車の主砲にもなっているピュトー37mmと同じ、国営ピュトー工廠(Atelier de Construction de Puteaux)。ここはフランス戦車の砲塔の標準化を一手に担っていたらしく、他にもD2やB1に搭載されたAPX-1、B1bisのAPX-4、ソミュアS35のAPX-1CEなどの各種砲塔がある。パナール178、ルノーACG-1の砲塔もAPXだったはず。ちなみに似たような名前のAMXは国営イシ・レ・ムリノー工廠(Ateliers de construction d'Issy-les-Moulineaux)で、後にAPXはAMXに吸収合併されているらしい。

APX Rの「R」は、「もしかして“ルノー用”ってこと?」と思ったのだが、TRACKSTORYの「ルノーR35/R40」の巻の開発経緯の章に、「1934年4月18日、新たなAPX R砲塔が『atelier de Rueil』(リュエイ工場?)から届いた」とあるので、この「Rueil」の頭文字なのかもしれない。

(5月21日追記。ザロガ先生の「D-Day Fortifications in Normandy」という本に(トーチカに使われた)APX R砲塔についての記述があり、それによれば「APX R砲塔は1935年にピュトー工廠によってルノー向けに開発され、そのためAPX Rと名付けられた」そうだ。素直にルノーでよかったのか……)

APX R砲塔は同じく軽戦車のFCM 36にも試験的に搭載されたことがあるが採用されず、反対にルノーR35にFCM 36の砲塔を載せて試験されているが(より新型のFCMの砲塔を標準砲塔として代替させる計画があった)こちらも採用されていない。ちなみに溶接車体のカクカクしたFCM 36に"ぬるん"としたAPX R砲塔を載せたもの、反対に車体上部が鋳造のルノーR35にビシッとしたFCMの溶接砲塔を載せたもの、どちらも写真が残っているが、似合わなさ過ぎてキモチワルイ。

●なにしろ2車種にまたがって搭載されていることもあって、改めてみてみると、1:35のインジェクションのみですでに5種類ものAPX R砲塔が存在している。その他に、私が知る限りでは、ブラチ(BRACH MODEL)からレジンで、ETS35から3Dプリントによる製品が出ている。他にもあるかも。

とりあえず、1:35のインジェクションで出ているAPX R砲塔を並べてみた。

20200512_100918 20200331_220954

左から、

  • HOBBY BOSS:ルノーR35
  • BRONCO:オチキスH38/39
  • ピットロード/トランぺッター:オチキスH38/39
  • エレール:ルノーR35/オチキスH35/38/39
  • タミヤ:ルノーR35

こうして全部並べてみると、まず目につくのは「小さいグループ」と「大きいグループ」の2群にほぼ明確に分かれること。大きさは縦横でそれぞれ2mm内外違う。1人用の小さな砲塔でもあり、かなり大きな差と言ってよい。

「大きいグループ」はトラペ、エレール、タミヤ。最新のタミヤと最古のエレールがほぼぴったり同寸なのがちょっと意外。おそらく設計的に大いにエレールを参考にしている気配があるトラペもこちらの群で、トラペとエレールは互いの砲塔本体パーツと砲塔下面パーツを入れ替えても、若干の調整で使えてしまいそう。

「小さいグループ」はホビーボス、ブロンコ。もともと同系の企業だったように思うトラペとホビーボスでまったく異なっているのがちょっと面白い。まあ、ドラゴンのI号戦車A型とB型のように、同じメーカーなのに砲塔の大きさが全然違う例もあるけれど。hn-nhさんからの情報、およびETS35のサイトの製品写真によれば、ブラチおよびETS35の砲塔も、ともに「小さいグループ」側に属しているようだ。

(5月16日追記。セータ☆さんがETS35のAPX R砲塔を持っていると聞いて採寸をお願いしたところ、了承して頂けた。セータ☆さんどうもありがとうございます。

が、しばらくして、セータ☆さんから衝撃の事実が。なんとETS35は、既存キットに合わせて「小さいグループ」と「大きいグループ」の両方向けに、2サイズで砲塔を販売しているとのこと。

な、なんですとーーー!?

確かに「プリント」であれば、出力の際にちょちょいと倍率指定すれば済むのかもしれない(3Dプリントの仕組みをよく知らないけれども)が、それにしたってなあ……。ETS35の製品リストのページで砲塔のセットが複数あるのは見ていたが、武装とか、何か細部の仕様が違うのだと思い込んでいた。「**向け」としっかり書かれているのを見落としていたわけだが、既存キットの砲塔との比較写真が、「小さいグループ」向けの製品ページにしか出ていなかったのも、気が付かなかった一因。ちなみに同社のコンプリートキットの砲塔はどちらのサイズなのか不明。

とりあえず、セータ☆さんが持っているのは「小さいグループ」向けだそうで、その詳しい紹介はセータ☆さんのページで。)

手元に正確なAPX R砲塔の寸法がないが、流石のタミヤでも、今になって2mmものディフォルメをするとは考え難いので(根拠のない信頼)、「大きいグループ」のほうがより正確なのではと思いたい(願望?)。

●一方で、ディテールの特徴からは、別の分け方もできる。

まずは砲塔側面に、砲耳の軸部の表現のあるグループ。左からホビーボス、ブロンコ、タミヤ。3社とも左側面も軸穴が表現されているが、タミヤはこのためにバルジ部の左側面を別パーツとしている。また、こうして並べるとブロンコの砲塔のエッジの尖った"ギスギス"感が目立つ。一方でホビーボスの砲塔は5社の中でもっとも丸っこく、"ぬるん"とした印象。

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下は砲耳軸部の表現がない2社。左からトラペ、エレール。こうしてみると、面の凹凸具合も非常によく似ていて、「トランぺッターがブロンコのオチキス発売にぶつけるために、エレールを参考にあわててキット化した」という説にもなんとなく信憑性が出てくる。トラペの砲塔は、側面前上端にちょっとヒケが出ている。

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●ハッチ両側の面は、単純な平面ではなく、実際には微妙に「ヒネリ」がかかっている。特に右側の面でヒネリが強い。これが再現されているのは、より新しい2社のキットだけ。下写真は左がホビーボス、右がタミヤ。

20200331_221124

一方で、より古い3社の砲塔はヒネリなしの単純な平面になってしまっている。左からブロンコ、トラペ、エレール。特にブロンコの砲塔はこの面の頂部が狭く尖り過ぎなのも減点ポイント。もっとも、ヒネリのせいで真横からだと尖って見えるのも確か。

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●最古のエレールを除く4社の砲塔には、上面右側に信号旗用の小ハッチのモールドがあるが、位置や形状など、だいぶまちまち。左からホビーボス、ブロンコ、トラペ、タミヤ。実車写真と見比べると、タミヤのものが最も形状的に正しそう。トラペのものは形状も適当なうえに小さ過ぎ。ブロンコのものは前方後円墳、じゃなくて前円後方墳型に薄く凸モールドがあるだけで、こちらも適当。

20200331_221238

ちなみに一体モールドか別部品かの違いはあるが、5社ともハッチ直上の対空機銃架取付架が表現されている。5社とも基本、ほぼ真ん中にあるが(タミヤとホビーボスはやや左寄り)、これはおそらく後付けで改修キットが配られたもので、実車では取付位置にだいぶバラ付きがある。エレールのものは取付穴も何もないが、ちゃんと取付架のパーツは入っている。「位置がまちまち」「付いていないものもある」ということでいうと、エレールの処理が一番有り難い気もするけれど。

なお、砲塔上面右隅のアンテナ用の孔を塞ぐパッチが、ホビーボスの砲塔にのみ見られないが、これは同社のキットではエッチングで別部品化されているため。実はつい最近気が付いたのだが、実車でここの孔(当然ながらパッチも)がない仕様も存在するようだ。

●砲塔に3カ所付く吊り下げフック基部の盛り上がり、特に前方一か所の基部に大きく傾きが付けられているのをきちんと表現しているのは、より新しい2社のホビーボス(左)、タミヤ(右)のみ。

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●改めて、各社ごとの特徴の整理。添付した寸法はノギスとかではなく、凹凸のあるところに定規を当てて測ったので割と適当。

▼タミヤ(ルノーR35用)

20200512_092306 20200512_092324

縦:38mm、横:37mm

APX R砲塔の1:35インジェクションキットとしては最新。砲塔右側面前方のゆるやかな面の変化もよりよく再現されている。エッジ部分の丸みの具合も、各社並べてみた中では最も適正な感じ。先行のソミュアの砲塔は「右前がちょっと出っ張り過ぎなんじゃない?」などと思ったが、このAPX R砲塔はよく出来ていると思う。後部ハッチ両側の面のヒネリもきちんと表現されているが、右後ろ頂部は少し尖り過ぎのようで、左写真のように左上前方から見ると、右後ろ隅がほとんど「角ひとつ」状態に見えてしまう。もっとも、APX R砲塔は数社で並行生産されているので、若干の形状差もあったかも。

ここには写っていないが、3面の視察装置は(とりあえず現時点では)スリット式のものしか用意されていない。

▼エレール(ルノーR35、オチキスH35/38/39用)

20200512_092439 20200512_092417

縦:39mm、横:37mm

APX R砲塔の1:35インジェクションキットとしては最古。寸法的には最新のタミヤとほぼ同じなのは流石だが、側面の微妙な角度変化などはうまく捉えきれていない感じ。砲塔上面の信号旗用小ハッチも再現されていない。主砲バルジ上面の3つのボルトも位置が前方過ぎる。

視察装置は双眼鏡式(シュレティアン式)とスリット式のコンパチだが、両方とも形状的にはいまひとつ。武装も短砲身・長砲身のコンパチ。

▼ピットロード/トランぺッター(オチキスH38/39用)

20200512_092507 20200512_092532

縦:39mm、横:37mm

前述のように、形状的にはエレールのものに非常によく似ている(特に右側面前方の可展面的な窪みかた)。砲塔バルジ上面のボルト列も、エレールほどではないが前寄り。上面の信号旗用小ハッチは明らかに小さすぎる(ヒンジ部も似ていない)。数種のキットが出ていて、視察装置と武装はキットにより異なる。

▼ブロンコ(オチキスH38/39用)

20200512_092613 20200512_092638

縦:36.5mm、横:34mm

ブロンコの第一号キットで、現在のやたら細かい同社製キットを基準にするとだいぶ大味。発売時にはエレールの古いキットもこれでようやく引退か、などと思ったが、実際には一長一短? 形状としては、5社のAPX R砲塔のなかで、最もエッジが立ってギスギスした感じ。側面の面の切り替わりも直線的にカクカクしている。これだけを見る分にはそれほど違和感はないかもしれないが、各社比較のうえ、実車写真と見比べると印象の違いが気になる。上面の信号旗用ハッチの表現もおざなり。

武装は、少なくとも後から出た方のキット(35019)では選択式。視察装置はスリット式のみ?

▼ホビーボス(ルノーR35用)

20200512_092708 20200512_092729

縦:36.5mm、横34mm

ブロンコとともに「小さいグループ」だが、表現は全く対照的で、5社の砲塔の中では最も丸っこい。砲塔が小さいせいもあって、やや丸め過ぎに感じないこともないが、実物の印象を強調するにはこれくらいでもいいような気もする。ハッチ両隣の面のヒネリも、タミヤ同様に再現されている。信号旗用小ハッチは、後方の「エグレ」を表現しているのはいいが、ヒンジが繋がっていないように見える変な状態。タミヤとは砲塔の部品分割の仕方はちょっと違うが、同様に主砲用の開口部にパーツの分割ができないよう工夫されているのはよい点。

キットは初期型、後期型(キット名称はR39)の2種が出ていて、前者は短砲身で双眼鏡式視察装置、後者は長砲身でスリット式視察装置をセット。

(5月15日小改訂)

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バレンタイン復活の日(3)

●結局、バレンタインの製作を続行中。

T-34-85は、「新型コロナのせいで履帯も買いに行けないじゃないか!」なんてヤキモキしていたのだが、MiniArtがリブの多い500mmワッフルを出しそうな雰囲気になっているので、「それを待ってもいいかな」なんて思い始めていたり。……MiniArtのD-5T搭載初期型発売にも追いつかれてしまいそう。

●転輪の改修は楽に数をこなせる方法が思いつかず、結局、一個一個「うが~面倒臭ぇ~」と唸りつつ手作業で直す「苦悶式工作法」を採らざるを得なかったが、たぶん、あれをやらなかったら、いつまでも「転輪、直した方がよかったかなあ」とウジウジ心に引っかかっていたはず。済ませたおかげで、「あとはもうオマケの工作のようなもの」という楽な気分で作業を進めることができる。やっててよかった苦悶式。

実際、車体上部に関して言えば(買って早々にやっつけた防盾以外は)ちょっと気になった細部ディテールをつまみ食い的に工作しているだけで、切った貼ったの大掛かりな工作はしていない、というのもあるけれど。

●というわけで、重箱の隅的工作の進捗報告。まずは砲塔工作。

すでに発売直後の様子見の延長で、

  • 防盾の形状修正と「同軸機銃部張り出しタイプ」への改造
  • 防盾カバー部の擲弾発射部の形状修正
  • 砲塔後部のバラストを兼ねていると思われる通風孔付き鋳造パーツ部分の継ぎ目消しと形状修正

等については工作済み。

改めてその続きということで、上面ディテールをいじりつつ取り付けていく。

20200511_124758 20200511_124834

①、防盾カバー部上面左右には、実物にない分割ラインが出来てしまう。何かの取付部かと思われるフチ付きボルト穴のモールドを横切っているので、構わず消してしまって後から再生。

②、直接照準用のツノは強度的にも薄さ的にも金属板で作り替えた方がいいのだが、下部の二股の処理や取付が面倒臭そうなので、キットのパーツの二股をくり抜くとともに薄削りして使うことにした。

③、ハッチ前側には、開閉補助用かと思われる謎のシャクトリムシ機構があるようだ。あるいはこれを引っ張ってハッチを開けるのか? (AFVクラブやMiniArtのキットには含まれているが)タミヤのキットではさっぱり省略されているので適当に追加。

④、右後部のアンテナベース台座を薄削り。

⑤、左側のアンテナベースは、柄の部分をエッチングパーツの切れ端で薄く作り替えようと思って一度は切り出したのだが、よくよく現存実車の写真を見たら、実物でも結構厚みがあったのでキットのまま。裏面にコードを追加した。なお、この付け根部分は、AFVクラブのキットのように丸く一段盛り上がっているものもあるが、タミヤのように割と薄くベタ付けになっているように見えるものもある。ちょっと混乱したが、結局キットのままとした(単に面倒くさかった、というのもある)。

⑥、中央後方には、ハッチを開状態にしたときにロックするためのものだろうか? 三角形のベロが立っている。キットのモールドは低く厚いので、金属板で作り直した。三角のパーツを立てて貼るだけでは強度的に不安なので、0.3mmドリルで連続して穴を開けてから繋げてスリットを作り、“根っこ”を深く差し込んだ。

●操縦手用バイザーは開閉選択式。キットのパーツの裏側は、おそらくヒケを防ぐために彫り込んだ形状になっているが、実物はどうやら鋼鉄のムクなので、そのように修正。ついでに軸の表現も追加。

20200505_142845

なお、この写真ではちょうど開いたバイザーに隠れる位置に、丸いポッチがある。当初、「何か内側にある機構の取付ボルトかな?」などとボンヤリ思っていたのだが、バイザーを取り付けてみて、開いたバイザーのダンパー(というかストッパー?)らしいと判明。

●すでにフェンダーを車体に接着してしまってから、最後部のフェンダーステイが、車体側にモールドされたステイのベロと前後方向にズレが発生していることに気付いた。ふんがー!

一度気付くと気になるし、気になりだすとみっともないので、ステイの前側ラインで一度フェンダーを切断。わずかにフェンダーを削って長さを詰め、ステイの位置とベロの位置が合うように調整した。

20200507_201600 20200508_125654

また、前後のズレだけではなく、横方向にも隙間ができていたので、車体側のベロのモールドも作り直した。なお、車体側のボルト等との位置関係もあるので、「ベロを作り直すなら、フェンダーを切り詰める必要はなかったんじゃ?」とは行かない。

●エンジンルーム右側後部には、エンジンルームパネルの開閉ロック用……なのかどうかよく判らないが、謎の機構のモールドがある。キットでは省略されているが、直角に曲がったハンドルが突き出ているので、金属線で追加した。

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●装備品類の工作の続き。右側の大型工具箱上に載せられた「くの字」上の工具は、履帯張度を調整するため誘導輪位置をスイングさせるための「てこ棒」で、同じヴィッカーズ社の6t戦車にも似た工具が搭載されている。

キットパーツの同工具の先端は、それだけ見ればなんだかもっともらしい形状に作られているものの、本来、誘導輪基部にある薄い長方形の穴に差し込んで使うものなので、先端はもっと単純な板状でないとおかしい。というわけで、プラバン片を使って修正。また、工具の取付け具も若干形状修正し、蝶ネジを追加した。蝶ネジは数年前にme20さんに一枝分けて頂いたブロンコの脚付きインジェクション・パーツ。これって今でも売っているのかしらん……。

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蝶ネジは、最初はドラゴンのパンターの予備履帯の枝に入っているものを使おうと思っていたのだが、予備履帯の留め具部分に使うには脚付きの方が望ましく、そこに使うと他の箇所も形状を揃える必要があるので、このパーツで統一した。まあ、使えるパーツがあるのに(そしてこの先いくつ模型を完成させられるかもわからないのに)出し惜しみしていても仕方ないし。

なお、上記工具を実際にどのように使うかは、以下の写真が判りやすい。インペリアル・ウォー・ミュージアム(Imperial War Museum/IWM)のアーカイブより引用。

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おじさんたちはヴィッカーズ社の工員だろうか?

とにかく、足回りの調整のデモンストレーションっぽい写真で、中央のハンチングの小太りおじさんは、おそらく、前回触れたフェンダー内側に突き出た誘導輪スイング機構のロックを緩めているか締めているかしているところ。右端のエプロンおじさんが件の「くの字」工具でスイング機構を動作中。向かって左端のしゃがんだオーバーオールおじさんは、おそらく履帯ピンを打ち込んでいるのだと思う。

●左側フェンダーの工具。シャベルは、ドイツ戦車によくあるようなポケットタイプではなく、枠状の薄板に開いた平たい三角の穴にブレードを突っ込んで固定するようになっている。

この三角穴のあるホルダーは、キットでは、下部がフェンダーと一体成型、上部はシャベルと一体成型になっているが、どちらも見た目が分厚過ぎる。当然、パッションのバレンタイン用エッチングセットなどにも含まれているが、今回はケチって買っていないので、ちまちまと薄削りした。なお、前方のツルハシの頭とともに、こちら側の留め具にも蝶ネジを追加した。

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●左側フェンダー前方には、予備履帯4リンクが付く。ちょうど足回り用に繋いだブロンコの履帯で4リンク「おしゃか」が出たので、これを予備履帯に回す。キットのパーツとの比較は下のような感じ。なお、この後で連結部分にはピン孔を開け直した。

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作り直したホルダーの右端のスリット部分に、固定用の蝶ネジが付く。これについては、まだ残っている電気系統の配線の工作の邪魔になりそうなので、現段階では取り付けない。なお予備履帯は、どうやら初期は装着位置が縦方向、Mk.II/IVの途中から横方向に変わるらしい。私は一応、キットの指示に従って横方向に付けるつもり。

●車幅表示灯と思われるパーツは、キットのものはカバーが分厚くライトが埋まったような状態になっていてあまり見栄えがよくないので、削り込んで薄くし、中のライトを改めて(適当な丸棒を輪切りにして)入れた。左がbefore、右がafter。

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これも現時点では形状修正だけ終えて取り付けていない。なお、この車幅表示灯?は、写真のようにフェンダー水平部の前端にあるもの(キットの指示通り)と、もっと後ろ寄りにある場合とがあるようだ。おそらく後者の方がより初期の仕様で、より見えやすくするために前側に移動させたのではないかと想像(ただししっかり検証はしていない)。

●とりあえず、あとは電気系統を工作すれば組立終了、というところまで漕ぎつけた。製作記事の本数が他キットに比べて少ない!!

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LET IT BE

"I Dig a Pygmy", by Charles Hawtrey and the Deaf Aids.

Phase One : in which Doris gets her oats.

●5月8日はビートルズのアルバム、「LET IT BE」のイギリスにおける発売日で、今年はその50年目なのだ――というのを、facebookでの知人の書き込みで(日付が変わる直前に)知り、駆け込みで聴き始める。"DIG A PONY"あたりで日付が変わった(時差が8時間あるからOKだ)。

有名な話だが、「LET IT BE」は、ビートルズの「最後に発売されたアルバム」ではあっても「最後に録音されたアルバム」ではない。アルバム制作そのものをドキュメンタリー映画として撮るという特殊な環境下で続けられた、だらだらとメリハリのないセッション。録音された音源は膨大になったもののアルバムとして仕上がるまでに紆余曲折があり、その間に、後から録音された「Abbey Road」が発売。一度はお蔵入りになったアルバム「GET BACK」が再編集されて「LET IT BE」として発売される頃にはビートルズ自体がすでに分解していた、という次第。

しかし、私はどうしてか、このアルバムが一番好き。

他のアルバムが「とにかく綺麗に整えられている」のに対して、「LET IT BE」はどうにも"ユルイ"というか――「スタジオ・ライブだから」と言ってしまえば聞こえはいいものの(それならそれでノリとか即興の緊張感とかがあって然るべき)、要するに、アレンジで取り繕っているものの、演奏にどうにも締まりがない。でも、それがいいのだ。果物は腐る直前が美味いというか、表に出ていないところで壊れていくのがそこはかとなく感じられる(と、後付けで思っているだけかもしれないが)寂寥感がイイとか。

今は音楽を聴くにもほとんど「ながら」で、PCで漫然と流していることが多いのだけれど、それでも、「LET IT BE」に関しては、最初のジョン・レノンのおふざけフレーズ、「あ~ぃ、でぃが、ぴぐみぃ~!……」だけでもうゾクゾクしてしまった感覚を時々は思い出す。

●その「I Dig a Pygmy!....」をはじめ、曲間にちょっとしたセリフとか戯れ歌が挟まるのもこのアルバムの特色で、その一環として、(これは正規に録音曲目としてカウントされているが)曲「レット・イット・ビー」の直後に、港町リヴァプールの俗謡「マギー・メイ」が入っている。

……に関するトリビア。

ディズニーの映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の現時点での最新作(5作目)、「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」には、ポール・マッカートニーが主人公の叔父「ジャックおじさん」として特別出演しており、牢屋のなかで朗々と「マギー・メイ」を歌っているシーンが収められている。

同シリーズの第3作には、主人公の父親としてストーンズのキース・リチャーズが出演している。キース・リチャーズが父親で、ポール・マッカートニーが叔父! ジャック・スパロウ船長、パねえな!

●前述の「だらだらと続けられたメリハリのないセッション」(いわゆるGET BACKセッション)に関して言うと、その録音テープは、海賊版の多いビートルズの中でも特に定番の音源になっている。

昔、主に西新宿の「海賊レコード屋」で結構ビートルズの海賊盤を買い漁っていた時期がある(その近所に伝説のAFV模型屋、MOKがあった頃だったか、あるいはそれより前か)。そんな中で手に入れた「SWEET APPLE TRAX」はGET BACKセッション由来の海賊盤としては名盤で、海賊版にしては珍しく、カラーの立派なジャケ入りの2枚組(当然、レコードの時代)。

もっとも、最初に聴いたときにはあまりのメリハリのなさぶりに愕然としたものだった。何しろ一曲をちゃんと通して演奏しているものがほとんどなく、不真面目で断片的なものばかり。こんなもん、海賊盤としてでも出す価値あるのか?と最初は思ったものの、しばらくすると、それはそれで面白いと思うようになった(最終形態では消えてしまったフレーズがあったり、録音時期としてはしばらく後になるABBEY ROADや、解散後のソロアルバムに収められた曲の原型があったり。「DIG IT」のロングバージョンや、「SUZY PARKER」も、これで初めて聴いた気がする。(追記:改めて調べたら、「DIG IT」のロングバージョンも「SUZY PARKER」も「SWEET APPLE TRAX」には収録されていないっぽい。記憶、アテにならなすぎる!)

もっとも、GET BACKセッションの海賊盤としては、その後donjiさんから借りたCD17枚(?)組というバケモノみたいなヤツには負ける。

しかしそれらをひっくるめて、こうした「未発表音源」は、最近はほとんどyoutubeなどで聴けるようになってしまい、海賊盤漁り自体が"今は昔"の話になってしまった。

●なお、発売されたアルバム「LET IT BE」は、お蔵入りになったアルバム「GET BACK」の音源をジョンとジョージがフィル・スペクターに託して再編集されたものだが、ポール・マッカートニーは「勝手にいじられた」とひどく立腹した(特に「ロング・アンド・ワインディング・ロード」のオーケストラ)。

それだけなら単なる「LET IT BE」制作裏話だが、なんと発売から30年以上経って、ポール・マッカートニー主導のもと、フィル・スペクターのアレンジを排し、「これがもともとあるべきだったアルバムの姿」という触れ込みで、「LET IT BE...NAKED」が発売された。

まさにポール・マッカートニーの怨念の所産という感じだが、実際に発売されたものの内容は、「本来目指していた、自然な感じの演奏」かといえば……例えて言えば、よくネット上で話題に上っている、「美しすぎる芸能人のスッピン画像」みたいな感じ。「いや、確かに厚塗りの化粧はしていないかもしれないけれど、それ以前に画像いじってんじゃね?」と言いたくなる不自然さ。

発売時にさっそく買って聴いたのだけれど、私の当時の印象は「なんだかウィングスがビートルズの曲を再録して作ったみたい」。ビートルズマニアの後輩は「海賊盤以下」と切って捨てていた。結局、その当時何度か聴いたものの、今はCD棚のどこかに埋もれて全然聴いていない。はっきり言って、ビートルズの音楽における黒歴史以外の何物でもない気がする。

●鎌倉・小町に何か月か前にオープンしたダジャレ・パン屋、「BREAD IT BE」についてはあえて触れぬ。

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5月6日、逗子海岸

●5月6日、ゴローさんの日で休日。かみさんがテレビで井之頭五郎さん(「孤独のグルメ」)を見ていた。

GW最終日であるらしいが、どのみち閉じこもって何をするでもないので平日と休日の境目がない。

●ちょっと買い物に出たついでに、海岸を回って帰る。夕方5時過ぎの逗子海岸。

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緊急事態宣言が出た直後、なぜか海岸に人が押し寄せ、海岸沿いの国道が渋滞するというあべこべな状況が生じたが、その後、県からの自粛要請等々もあり、だいぶ人は減った様子。もっとも、「県外から人が押し寄せている!」と大騒ぎしていたものの(実際に県外から来ている人も多かったろうが)、海岸でバーベキューなどしている集団のある程度は地元民だと思うな……。

とりあえず、6日夕はこんな具合だったが、ここ最近海岸には足を向けていなかったので、現状だいたいこうなのか、単に天候と時間によるのかは不明。

●自分が読んだ本を登録・管理するサイト「読書メーター」を、主に続き物のマンガを何巻まで買って読んだか判らなくなるのを避けるためという、幾分しょうもない理由で利用しているのだが、ここ最近記入をさぼっていて、最近読んだ本に関して「何をいつ読んだか」がよく判らなくなってしまった。休館前の図書館でも何か借りて読んだ(あるいは読み終わる前に期限が来て返却した)気がするが、何だったかなあ。

とりあえず、直近読んだマンガは「戦争は女の顔をしていない(1)」、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ原作、小梅けいとによるマンガ化。以前、hn-nhさんがテプルーシュカ(ストーブ付きの有蓋貨車)のキットレビューを書いたときに一緒に紹介していたもの。

内容は、大祖国戦争(ww2の独ソ戦)に従軍したソ連軍女性兵士・軍属のインタビュー。パルチザンを除けば唯一女性兵士が前線で戦った、しかしそのためのシステムがほぼ何もなかった赤軍の生の姿。女性戦闘機パイロットとしてトップエースとなったリディヤ・リトヴャク、世界初の女性実戦飛行部隊の創始者であるマリーナ・ラスコーヴァもちらりと登場するが脇役で(そもそも両方とも戦死しているのでインタビューに登場しようがない)、幾人もの「女性無名兵士」の壮絶な体験を淡々と綴る。

とはいえ、リディヤ・リトヴャクが、最後まで「女であることを捨てる=髪を切る」ことに抵抗したエピソードは興味深い。「出撃!魔女飛行隊」(ブルース・マイルズ)にそんなエピソードが出ていたかどうか。ずいぶん昔に読んだきりなのでうろ覚え。

一読して、確かに「戦争は女の顔をしていない」んだなあと感じるのだが、改めてよく考えると、このタイトル自体いかにも女性ジャーナリスト視点のように思う。実際には独ソ戦の(ひいてはすべての戦争の)悲惨さは男女関係ないのであって(そのあたりは「イワンの戦争 赤軍兵士の記録1939-45」(キャサリン・メリデール)にも描かれている)、戦争は男の顔だってしていない――要するに「戦争は人間の顔をしていない」。もっとも、直接的な生存本能に関わりなく集団の欲望やら面子やらで「戦争」という事象を引き起こすのは人間だけで、その点では「とことん人間的」であるのは大いに皮肉だと思う。

絵のせいでさらりと読めてしまうところもあって、「小梅けいと」って何となく聞き覚えがあるけど誰だっけな、みたいに思っていたら、「狼と香辛料」のマンガ版の作画の人だった(読んでないけど)。ちなみに男性だそうだ(女性兵士を女性ジャーナリストがインタビューして本にまとめ、それを女性が作画?なんて勝手に思っていた)。

1、とあるからにはこの先2巻も出るのだろう。それはそれとして原作も読みたいと思って市の図書館のサイトで検索したらちゃんと所蔵していた。もっとも貸し出し中の上に予約も入っていて、しかも当然ながら図書館は現在休館中。とりあえず予約だけはしておいたが、読めるのはいつになるやら。

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バレンタイン復活の日(2)

●タミヤのバレンタイン工作。履帯をつなぎ終わった惰性で、車体側の細部工作進行中。

なんとなく続き物っぽく書いてはいるが、いつまたT-34-85やルノーR35に戻るかわからない。いやでも、面倒な足回りを済ませてしまったからには、ストレートにMk.II/IVで作るつもりなのであとは大掛かりな改修作業もないし(←Mk.VIIへの改修作業を見たいなあ、というhn-nhさんへの密かな催促)、このまま工作を全部終わらせちゃった方がいいのか?

●繋ぎ終わったブロンコの履帯はこんな感じ。

ちなみに、上部転輪は下部の転輪と違って、ゴムリムが横方向に膨らんでいないので追加工作はしていない。

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必要枚数は片側99枚。実車が、ではなく、あくまでタミヤのキットにブロンコの履帯を履かせる場合の枚数で、実車は(きちんと数えていないが)あと1,2枚多いようだ。とりあえず、ゆる過ぎずきつ過ぎず、ちょうどいい具合にはまる。

ブロンコのバレンタイン後期型履帯(AB3536)は、12枚綴りの枝が18枚入りなので、失敗なく組めれば1枝半余る。前回、(クリッカブル履帯にしては)比較的きっちり止まると書いたのだが、それでも、両側分繋ぐ間に、連結部がつぶれてしまったリンクが4枚出た。ちょうど予備履帯に回す感じ?

なお、はめてみてからわかったことだが、ブロンコの履帯はタミヤの起動輪に対してわずかにピッチが大きく、若干のダブ付きが出る。PMMSのAFVクラブ、MiniArtのバレンタインの比較レビューによると、MiniArtのバレンタインの起動輪はやや大径で、ブロンコの履帯はもともとMiniArt用のためピッチがズレているらしい。もっとも起動輪の歯はとりあえず合うし、ダブつくといっても、よほど注視しないと判らない程度。「AFVクラブの履帯の方がよかったかな……」とも思うが、あちらはあちらで、リンク同士のハメ合わせがどうだか判らないし……。

●なお、PMMSのレビューに関連してもう一つ。バレンタインの転輪は、大径のほうが24インチ。小径のほうが19.5インチだそうだ。1:35に換算すると、前者が約17.4mm、後者が約14.2mm。これが正しければ、タミヤの転輪はやや小径ということになる。私は外周に0.1mmプラペーパーを巻いたが、0.3mmプラバンを巻いてもよかったかも(その方が、ゴムリムとリムベース部分のバランスもよくなったはず)。

まあ、「今さら言うても」という話ではあるけれども。

●フェンダーを取り付けるに際しての些末工作。

バレンタインは誘導輪をスイングさせることで履帯張度を調整する、T-34あたりと同じ仕組みをもっているが、そのロック機構と思われる六角ロッドがフェンダー内側を突き抜けて顔を出している。

タミヤのキットではこれが再現されておらず、ロッドが通る穴の部分が浅い凹モールドになっているだけなので、この穴を開けるとともにロッドを追加することにする。なお、このロッドの下部、レバーをまたぐ部分もフェンダーの穴の位置と微妙にずれているので、ここもついでに作り直した(これは誘導輪基部のスイング用の“てこ”を突っ込む穴の掘り込みや、2カ所のボルト追加と合わせて、2年前にすでに工作した部分)。

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六角ロッドに関しては、プラストラクトあたりにちょうどいい素材がないかと思っていたのだが、新型コロナ騒ぎで模型屋にも行けなくなってしまったため、自分で丸棒から削った……のだが、ちゃんと六角断面になっていない気がする。

●右フェンダー前部にはジャッキ台と思われる木製ブロック収納部がある。本来は、薄板で組んだ箱型枠の中に木製ブロックが2段重ねで入っているのだが、キットパーツは抜きの関係で2段に分かれていないうえ、枠の底部分は台状のモールドで上に乗るブロックのパーツもエッジが立っていないため、「枠に収まっている」のではなく、どうしても(パーツ構成通りに)「台に乗っている」ようにしか見えない。

ブロックと一体の枠や止めベルト、ブロック自体の木目モールドも実感に欠けるので、そのあたりを若干いじった。

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上横の枠は他のキットのエッチングパーツの枠から。止めベルトはプラペーパーで作り直そうと思ったが、結局手を抜いて、ドラゴンのT-34のグローサー取り付けベルトのパーツを加工。下枠は、フェンダーからリブ分浮いて見えるように、見える所だけ少し彫り込み、留め具を4カ所追加した。

もちろん、この辺は、フェンダーステイあたりも含めて別売のエッチングパーツを使えば一挙解決な部分なのだけれど、そこまで張り込む気にはなれなかったというか(ちなみにタミヤのキット用エッチングでは、パッションのものが要所を抑えた手ごろなものでよさそう)。

●左フェンダー上には大きなマフラーが付く。排気口は元パーツの掘り込みが浅く、2分割のパーツを貼り合わせたらますます埋まってしまったので、改めて深く掘り込み、2カ所の仕切りも入れ直した。が、そこまでやったところで、「そもそもパーツを貼り合わせる前に内側を彫り込んでおけばもっと楽だったんじゃ……」と気付いた。迂闊。

マフラーカバーの前端には、フェンダーステイへの取付ボルトを追加。なお、このボルトの位置や数はじめ、この戦車の細部ディテールは現存車輛のwalkaround写真を見ると車輛ごとに結構違いがあって、そもそもMk.II/Iだとどんな形状がスタンダードなのかがいまいちよく判らない。

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●左フェンダー上、エンジンルーム横には何やら四角い枠状のパーツが2つ付く(キットパーツP3、写真のオレンジ矢印)。最初は何かの工具のホルダーかとも思ったのだが、そうではなく、エンジンルーム上面を左右に開いた際の受け金具なのではないかと思う。右フェンダーは工具箱があるので金具の意味がないためか付いていない(工具箱が付いていない車輛だと、右フェンダーにもこの金具が付いている例が確認できる)。

キットのパーツは単なる四角い枠だが、実車では薄板によるL字材の枠のようで、プラバンで枠を作り直すことも考えたのだが、あまり目立つ部分でもないし……と思って、適当に内側を彫り込んだ。こうして拡大して写真に撮ると仕上げが汚いなあ。ちなみに、窪んだ側が前なのか後ろなのかは、これまた現存車輛ごとに違いがあったりしてよく判らない。私は一応、両方後ろ向きにした。

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追加工作とは関係ないが、左右フェンダー後部の謎のツノ部品は、どうやら水色矢印方向に起こして、エンジンルーム後部パネルハッチを開いたときに、縦黄緑矢印のダンパーを受けるパーツであるらしい。無駄に凝っているなあ。みやまえさんあたり、バレンタインを作るときには可動にしそう。

なお、ツノを倒したとき、その先端部分(横黄緑矢印)を受ける金具がフェンダー側に付いている車輛もある。形式によるものか?

●フェンダー最後部は一段高くなっているが、その間は明瞭な段差ではなく、下の入隅部分は緩やかにrが付いている。で、右フェンダーの小さいほうの工具箱の後ろ側は、そのrに合わせて角が丸くなっている。

タミヤのキットは、フェンダーの入隅のrはなんとなく表現してあるものの、工具箱の角は丸くなっていない。

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というのに後から気付いて、いちど接着した工具箱を引っぺがして再工作。入隅のrはキットの状態よりもう少し丸みがあるように思うのだが、そこまで直すのは面倒くさいので、工具箱の隅を丸めるほうを控えめにした。

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不要不急料理

●発作的に茶葉蛋が食べたくなり、卵を買ってきて茹でる。

作り方はいつも通り、普通に茹で卵を作ってから、スプーンの背で細かくひびを入れてから、改めて煮汁でことこと。このためだけに買ってある烏龍茶のティーバッグ、香辛料はお手軽に五香紛をたっぷり。あとは料理酒に塩に醤油を適当、砂糖少々。温めたり冷ましたりを繰り返して味と香りを染み込ませる。

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今回は割とうまくできた、気がする。もともと茶葉蛋は、もう何年も前に横浜中華街で売っているのを買い食いしたのが初めてなのだが、その後、そのお店が無くなってしまったのか売っているのを見掛けないので、オリジナルの味に近づいているのか遠ざかっているのかがよくわからない。

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●先日、いちど干したもので汁物を作り、味はいいものの独特な匂いにちょっとショックを受けたニリンソウだが、三度目の正直で、今度こそ「一度茹でてから干す」を試してみることにした。……こんなことをしているうちに、いつかトリカブトに当たるか知れん。

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肝心のニリンソウは、今がまさに花盛り。それなりに「一食分、これくらいかな」と思って採ってきたのだが、茹でてから干したら、そのまま干した以上に縮んで、これっぽっちになってしまった。そのまま干したときのような強い匂いがしないので、これは期待できるか?

●MiniArtのT-34-85 m1943(製品番号35290、キット名称“T-34/85 w/D-5T. PLANT 112. SPRING 1944. INTERIOR KIT”)のパーツ構成が発表になったというのをセータ☆さんのgizmologで知って早速見に行く。

とりあえず現時点でのMiniArt公式サイト(日本語版)内の同キットのページはこちら。「コンテンツボックス」のタブでパーツを見ることができる。チェックポイントに関してはセータ☆さんのところでも言及されているが、個人的に気になったのは以下。

▼防盾は砲塔の枝に(後のバリエーション展開に対応して)ZiS-S-53用のものが2種。砲尾部を含めたD-5Tの枝にD-5T用防盾が一種。横幅が広がった、D-5T用としては後期の防盾(今回のキットに対応)で、初期型用の横幅の狭い防盾はセットされていない。MiniArtのことなので、初期型の発売も可能性は非常に高いと思われるものの、とりあえず、今回のキットのパーツ構成の中に初期型発売が確実と言えるものは(少なくとも私の知識の範囲内だと)見当たらない感じ。

▼起動輪はリム部が薄くハブ周りにボルト列がない後期型だが、ローラー軸のナットを受ける台座状の出っ張りがリム部に繋がっているものと、繋がらずに円形に独立しているものの2種の表側パーツが入っている。後者の起動輪のインジェクションパーツ化は初めてじゃないかなあ。それはそれとして、D-5T装備型でも、1944年春生産型はこれら後期標準型の起動輪でいいんだろうか?

▼履帯パーツは内側の面しか写っておらず、一般的なワッフルか、リブの多いタイプが新規型起こしされているか、これだけでははっきり判らない。ただし、同社からすでに出ている連結履帯とは枝の配置が異なっているので、このキットのために改めてパーツ化されたものである可能性は高そう。楽しみ。

▼やっぱりMiniArtのT-34系ってエンジンデッキ側部のグリルの縦幅がちょっと狭い気がする。

▼予備燃料タンクのステイは3種含まれている。D-5T搭載型の場合、プレートタイプの支持架を使うことになると思うが、キットに含まれているプレートタイプの支持架は上側と下側が完全に非対称。う~ん。こういうのもあったのかなあ。

▼転輪はゴムリムに刻み目と穴の両方があるタイプ。私は製作中の1943年型初期型に穴のみタイプを用意してあって、「う~ん、刻み目もアリのやつのほうがよかったのかなあ」とちょっと心が揺らぎ中。いや、まあ、いまさら交換しないと思うけれど。

20200503_210148 ▼エンジンデッキ中央の点検ハッチに関し、セータ☆さんが「112工場製の場合、ハッチ自体が(バルジの中で)前寄りになっている」と書いていて、それについて私自身は気付いていなかったのでワタワタ。単純に、183工場製ではバルジの後ろに板が差し渡されているのがないぶん、バルジが後方にちょっと長いだけ、みたいなイメージでいた。改めて作りかけのT-34-85を見てみたら、もともとアカデミーのキットでも前寄りになっていた(後方の形状は183工場風になってしまっていたわけだが)。一安心。

●タミヤの新製品のKV-1は、誤解を招きやすい「1941年初期生産型」ではなく、「1941年型 初期生産車」に変更されたそうだ。善哉善哉。まあ、それでも判りにくいっちゃ判りにくいんだけれども、他に「これだ!」という呼び方もないので仕方がない。

また、同キットはカラー塗装図の隅にペーパークラフトがオマケについているそうだ。ドイツ軍が前線兵士に、敵戦車識別用に配っていたペーパークラフトを模したもの。ただし付属のものは約2cmだそうで、35倍すると70cm。当時の識別用ペーパークラフトとしては大き過ぎるかなあ。もっともその半分の大きさにすると、今度はペーパークラフトとして作るのが大変そうだ。

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