バレンタイン復活の日
●なんとなく無理矢理時流に乗せてきたかのようなタイトルですが、小松左京さんも草刈正雄さんも関係ありません。
●前々回の書き込みで、
昨今の状況下で、なんとなく精神的にも浮足立ってしまったこともあって、今はなんとなく、難しいことは考えずにひたすら手だけ動かし、面倒な作業の消化をしたい気分。
と触れたネタ、タミヤのバレンタインの工作。このキットの工作についての前回記事はこちらで、2017年の5月10日。ほぼまる2年前になる。
工作がストップしてしまった最も大きな理由が転輪のゴムリム形状で、そもそもヴィッカースのMk.I巡航戦車からバレンタインに至るまでの一連のシリーズは、転輪のゴムリムが(他の戦車ではおおよそ長方形の断面であるのが普通であるのに対して)ふっくらと丸くなっているという大きな特徴がある。これについては、購入してすぐのレビューでも言及しているが、間も開いてしまったことだし、再度検証。
下は、ボーヴィントンにあるMk.IIの足回り。Wikimedia Commons、Makizox による Infantry Tank Mark III Valentine Mark II.jpg より切り出し。
履帯もやや独特で、ガイドホーンの内側根元は緩やかにカーブしていて、転輪がはまる部分の断面形状はフィヨルドのU字谷――というとちょっと言い過ぎだが、とにかく他の普通の戦車に比べると丸みを帯びていて、転輪がフィットするようになっている。なんでこんな形状にしたのかなあ。地面の細かな凹凸に合わせて履帯が(横方向に)斜めになった時に、転輪エッジに強い力が掛からないようにするとか?
これに対し、タミヤの転輪(写真は誘導輪)と、さらには履帯との関係は以下のような感じ。
ゴムリムは他の通常の戦車のように角ばった形状で、履帯と合わせてみると、ガイドホーンとの間にはかなりの隙間が開く。先行するAFVクラブやMiniartのバレンタインのキットではちゃんと「ふくらみリム」が表現されていたので、これは「タミヤのキットはちょっと神経が行き届いていなかった」と言われても仕方がない部分かなと思う。
●対処法としては、3年前、1つだけ試験的に、ゴムリムの表側に0.3mmプラバンを貼り増して丸みを付けるという工作をしてみた(記事はこちら)。
これに対して、hn-nhさんは、プラバンを貼り増したりせずにキットのパーツを直接彫り込むという工作を試みている。もともと転輪の厚みまで本格的に直そうとは思っていないので、であるなら、hn-nhさん方式のほうがすっとスマートなのだが、私自身の工作力だと、フリーハンドでゴムリムとリムベースの間を綺麗に彫り込める自信がまったくなく、リムベースがガタガタになる未来しか見えてこない。
というわけで、結局、「面倒だなあ」とは思いつつ、プラバン貼り増し工作を誘導輪合わせて全14個分やることにした。
当初は試作品と同じく、表側の側面にだけ0.3mm板を貼り増すことにしようと思っていたが、工作途中でさらに面倒くさい方向に方針転換し、外周にもプラペーパーをひと巻きすることにした。きわめていい加減な図解だが、工作手順は以下の通り(断面図)。
①.リム内側にぴったり合うよう、ドーナツ状に切り抜いた0.3mmプラバンを用意。なかなかサイズぴったりに切り抜くのが面倒くさく、微妙に穴が大きくなってしまった失敗作ドーナツも複数出た。
②.プラバンの内周を、あらかじめなだらかに削ってから、キットの転輪パーツに接着。
③.キットパーツのゴムリムエッジとの間にわずかに隙間(というか溝)ができるので、瞬着で埋める。
④.0.3mmプラバンの余った外周を削ったのち、接地面にプラペーパー(0.1mm?)をひと巻きする。
⑤.エッジ部分を丸く削り込む。本来ならば転輪の裏面側にも0.3mm板を貼り増すべきだが、面倒なので試作版同様に省略した。
工作途上の実際のパーツ写真は以下。左は表側にドーナツ・プラバンを貼った段階。右はドーナツ・プラバンの余りを削ってプラペーパーを巻き、最終的な削り作業を待っている段階。
削り終わったものはこんな感じになった。左写真は、キットパーツ、表側にだけ0.3mmを貼り増して丸みを付けた試作品、今回工作したものの比較。右写真は、ボギー1つぶんだけ仕上げて仮に装着してみたもの。こうしてみると、やはり転輪リムに丸みがついて、非常に雰囲気が良くなった……ようにも見えるし、別にそう大して変わらないようにも見えるし。いいんだよ! 所詮は自己満足なんだから!
そしてその後、転輪+誘導輪のすべてを何とか削り終えた。サスも組んで装着してみたのが以下。
さすがにこういうのは、「あえて面倒な作業を、無心にやりたい」などと発作的に思った時にやっておかないと。
●なお、サスペンション支持架に関しては、キットのパーツは抜き方向に対して垂直になるボルト類はきれいさっぱり省略されている。「どうせほとんど見えなくなるし、いいかな……」とも思ったのだが、せっかくゴムリムに手を加えたことでもあり、結局追加することにした。
左がキットパーツのママ、右がボルトを追加したもの。V字の“つば”の部分の両面(各5個×4)と、両側面下部の水平部分(各3個×2)。左右前後の4つで、104個。V字のつばの部分は両面が対応しているので、本来は片方がボルト頭ならもう片方はナットでないといけないのだが、こんな部分にマスタークラブを投入するのはもったいないと感じたので、すべてジャンクパーツ(タミヤのM60A1リアクティブアーマー)からのボルト頭の移植で済ませた。
●タミヤのキットの履帯は、ガイドホーン付け根外側の穴が貫通していない。これはおそらく、金型の耐久性を上げるための措置。II号戦車の履帯はちゃんとスケルトンだったのに対して、このバレンタインやSU-76Mの履帯で開いていないのは、やはりそれなりに売れるドイツ戦車と、採算をとるのが難しい連合軍戦車の差かなあ、と思うとちょっと侘しい。
もちろん、以上のような理由だとするとタミヤを責めるのは酷というもので、それでもこの手のキットを出してくれたことを感謝すべきかと思う。
などと言いつつも、私自身としてはやはり穴は開いていて欲しいので、ここはブロンコの別売履帯を奢る予定。タミヤの履帯との比較は以下のような感じ。
それぞれ下がタミヤで上がブロンコ。この写真では見づらいが、ブロンコは接地面両側に鋳造ナンバー?もモールドしてある。ブロンコの履帯は可動式だが、別部品のピン止め式ではなく、クリッカブル(はめ込み式)。硬質スチレン樹脂のクリッカブル履帯の場合、ハメコミ時にピンが折れるとか、あるいは逆に穴側の縁がつぶれてつないだ後にポロポロ外れるとかのトラブルが多い気がするが、このバレンタインの履帯の場合は比較的きっちり止まって動きも軽快。
●話は変わるが、めがーぬさんから、「CAMsから、フィンランド軍仕様のヴィッカース6t後期型が遂に発売される!」という情報を頂いた(めがーぬさんありがとうございます)。検索してみたら、TRACK-LINKにボックスアートの画像入りで話題が上っていた。
先日発売された「フィンランド仕様」は1輌だけ試験用に輸入された通常型だったので、これは嬉しい。でも、インテリア無しの廉価版も出てくれたらもっと嬉しいな……。
それにしても、模型屋に新製品を見に行ける日はいつ来るのやら。
●追記。
ひとつ余った旧型誘導輪で、hn-nhさん方式(プラバンを貼り増しせずにキットパーツを削り込む)を試してみた。
結論から言うと、「思ったよりうまく仕上がった」ものの、hn-nhさんのように「1個5〜10分くらいで加工」はとてもできず、上の1個を削るのに1時間くらい掛かってしまった。いやもう、なんだか伝統工芸品の職人になったような気がしましたよ。
原因は――。
hn-nhさんはつまようじを挿してくるくる回しながら削る、ドリルレースならぬ「楊枝レース」で作業したそうだが、私はそれがうまくできず、そのまま転輪パーツを手に持ってナイフの先でコリコリする羽目になったため。
また、hn-nhさんはホイールディスクのリム部分(ゴムリムのベースになっている金属部分)の縁もついでに薄くなるよう削ったとのことだが、私はそれもうまくできずに基本キットのままになってしまったので、タミヤの「リムベース部分が厚くゴムリム部分が薄い」形状が強調されることになってしまった。うーん。やっぱり私はスマートじゃなくてもプラバン貼り増しの愚直な工作で正解だったか……。
もちろん、モーターツールなどに噛ませて一気に削れる人であれば、全く事情は異なるはず。
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