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戦うプーさん/「クブシュ」Mirage HOBBY 1:35(4)

●Mirage HOBBY 1:35、ポーランド国内軍の簡易装甲車「クブシュ」(”KUBUŚ” - Improwizowany Samochód Pancerny, Powstanie Warszawskie, Siespień 1944)の製作記の続き。

●前回やり残しの天井部分の溶接線の再現は以下のようになった。

20190729_174001

前回書いたように、この部分はまともに写っている写真がなく、だいぶ想像交じり。ただし、

  • 左右辺は上面ハッチの幅で内側にも溶接線があり、二重になっている。
  • 中央ライン(ハッチの前方のみ?)にはリブテープ状に張り増しがある。

という二点は、ハッチから内部を覗きこんで撮ったような写真にわずかに写っていて確認できたので再現した。

前者に関しては、クブシュがスペースド・アーマー式の二重装甲であることから、内側溶接線は側面の内部装甲の位置を示しているのではないかと思う。

後者については、戦後のレストア時に追加されたものという可能性もあるのだが(例えば前面下部スカート中央のラム状の張り増しは戦後の追加である旨、Mirageのキットの説明書で解説されている)、この部分はさらに上に防盾が付いていて、しかもその防盾は(戦後の遺棄状態時期の写真から見て)オリジナルである可能性が高そうであるため、その下を通るリブテープも最初からあったものと判断した。ただし、実際には防盾の裾部分のそのものズバリの写真はないので、このリブテープが防盾の手前で終わっているとか(その場合、戦後の追加工作である可能性がやや高くなる)もあり得る。

特に天井部前端の溶接ラインに関しては、キットのパーツ分割と面構成に準拠していて、本当にこんな感じかどうかはちょっと怪しい。

●運転席左面の視察スリット。

20190729_173903

もともとキットにあったモールドはエッジが寝惚けていたこともあり、作り直した部分。

  • 貼り増した板はやや斜めになっていて、スリットはその下の溶接ラインとほぼ平行なため、板のなかでスリットは傾いた状態になる。
  • 最初に車体に直接開けたスリットの位置が悪くて塞いだのか、それを塞いだような溶接痕が板の後方にあるので再現。
  • 破損個所を直したようなツギハギの溶接線が上面にかけて走っているので再現。

●運転席正面の視察口。ここも、元のモールドが寝惚けていたので作り直した。右がキットの元々の状態。

20190729_191050 20190530_023539

実際に作り終えてから見直すと、現存実車に比べて可動フラップ部分の縦幅がちょっと広く、スリット自体ももっと狭く左右に長かった方がよかったように思う(ちゃんと作る前と作っている最中に確認しろよって感じ)。ただ、実車のフラップ部分は一度失われて作り直してあるようで、現在の状態をあまりシビアに追及する意味も薄い気がしたのでそのままとした。

実際には、戦後、公園に遺棄されている時期の写真で、オリジナルの状態なのではないかと考えられるフラップ付きのものがあるのに今更ながらに気付いたのだが後の祭り(とはいっても、その写真もそれほど鮮明ではない)。

“助手席”側の銃眼に関しては、内側に、一度開けて塞いだ跡を追加した。

●本日のクブシュ考証。

実車の記録によれば、クブシュは1944年8月23日未明まで製作が続けられ、同日早朝、ワルシャワ大学正門への攻撃に参加(一回目の出撃)。

撤退後、天井に機銃架と防盾を増設、さらに視察装置の改修が行われた後、9月2日に再びワルシャワ大学への攻撃に参加している(二回目の出撃)。

現存実車およびそれを参考に作られたキットは、当然ながら、改修(および戦後のレストア)後の姿を基本にしている。

戦時中に撮られたクブシュの写真はごく限られているが、そちらもほとんどは改修後の姿のもの。改修前のものとしては、唯一、一回目の出撃前日(8月22日)にポヴィシュレ地区のザイェンツァ(Zajęcza)通りで撮られたとされる写真があるが(前回記事へのvol de nuitさんのコメントでリンクを張って頂いた写真と同じもの)、これは距離を置いて見下ろした不鮮明な写真で、ディテールもへったくれもない(天井に防盾が付いているかどうかさえはっきりしないので、タルチンスキ本のキャプションにある日付で、ようやく「えっ、これって初出撃よりも前なんだ!?」と思う程度)。

そんなわけで、一回目の出撃時のクブシュの細かいディテールははっきり言って謎だが、タルチンスキ本の記述によれば、どうやら、運転席前面の視察口は、当初はスリットだけで、一回目の出撃のあと、ドイツの兵員輸送車(Sd.Kfz.251か?)から持ってきた防弾ガラス付きに改修されたらしい。その他、上の工作で述べた銃眼の移動や側面視察口の改修も、この時に同時に行われた可能性は高いのではないかと思う。

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コメント

かば◎さん

私には厚紙細工の不細工な装甲車としか思えないクブシュなのですが、こうして精密さも感じられる多面体の溶接を観ると違って見えるのが不思議です。
かば◎さんの工作精度の賜物なのでしょう。
まだ早いですが塗装は怪しい雰囲気の迷彩でしょうか。

投稿: hiranuma | 2019年7月31日 (水) 08時37分

>hiranumaさん

なにしろ実物は1輌しかないので、塗装も、戦時中の姿を再現するつもりであれば選択肢はありません。

……の、はずなんですが、色の取り合わせにはちょっと検討の余地がありそうです。

投稿: かば◎ | 2019年7月31日 (水) 08時54分

かば◎さん

そう興味もなかったので自分では調べていなかった(失礼)ので、数両は存在したのかと勝手にイメージしていました。
なら、実車の通り:青味がかったライトグレー地に明るめのフィールドグレーと、、、
フラットブラウン!!のうねうね状の迷彩、あらら、、。
2つの車両の現存すると思われる(詳しく見ていないからどうか、)写真がネット検索でみつかります。
フィールドグレーの方が疎らでフラットブラウンの方が密の迷彩になっています。

http://www.webmodelers.com/201504photokubus.html

しかし、フラットブランドの方は自走可能なレプリカとのこと。

いい加減な読者ですみません。
でも、どっちにするのでしょうか?

投稿: hiranuma | 2019年7月31日 (水) 20時16分

>hiranumaさん

ちなみに、現在は実車の方も自走可能にレストアされて、イベントなどに出動しています。せっかく作ったレプリカの立場が……。

塗装に関しては、当然、(私にとって)問題となるのは「戦時中にどうだったか」なのですが、ポーランド軍事博物館の実車も、以前の塗装は戦時中のものとパターンが全然別物です。(レプリカもパターンは全然似ていません)

ただし実車は、その後の補修の過程でだいぶ修正が入ったようで、おそらく最新の状態と思われる写真(前面裾部に“クリバル”部隊のマークが書き足されているもの)は、少なくとも前面部分の塗装パターンは、かなり頑張って戦時中の状態に似せているようです。色まで合っているかどうかは判りませんが。

レプリカの方も、以前はまったくデタラメなパターンでしたが、最近は(戦時中の)実物に似せたパターンになっているようです。

投稿: かば◎ | 2019年8月 1日 (木) 09時32分

複雑で拙い面構成と溶接線の配置は、なんだか整理されてないなーとも思えたのですが、2重構造のスペースドアーマーになっているのだと考えると、作る手順で溶接線が発生する意味が見えてきて面白いです。例の折り曲げ装甲もそれと絡んでいるようにも思えます。

現存車もその構造をきちんと調査記録した図面があると嬉しいですよね。

投稿: hn-nh | 2019年8月 2日 (金) 17時47分

>hn-nhさん

ポケモンgoで「ポリゴン」を捕まえると、「あ、クブシュ……」と思ってしまいます(笑)。

「いくらなんでも、ここまで複雑な面構成にしなくてもいいだろう」と思うのですが、とはいえ、単純な広い面でピラミッドに近い構成にするのは、それだけ大きな面積の鋼板が手に入れられる「贅沢な状況」下にある場合だけなんだなあ、と、クブシュを見てつくづく思います。

切れ端のような鋼板しか手に入らず、どのみちツギハギにしかならないのなら、複雑な面構成にするのは単純に「考える手間」が増えるだけ。
しかも薄い鋼板だけなので、効果というより必要にかられて二重装甲にせざるを得ない。

ボンネットハッチまで2枚(左)、3枚(右)の鋼板を接いでいるのには涙ぐましさを感じます。

ほんとに、ぜっかく実車があるのですから、もっと詳細なwalkaround写真と調査資料が欲しいですね。いや、もしかしたら(かなりオタク気質なマニアが揃っている)ポーランド本国には、私が知らないだけですでにあるのかもしれませんが。

投稿: かば◎ | 2019年8月 2日 (金) 18時30分

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