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戦うプーさん/「クブシュ」Mirage HOBBY 1:35(3)

●7月に入って、なんだかんだですっかり模型製作をサボり気味。当「かばぶ」の更新もだいぶご無沙汰になってしまった。

というわけで、だいぶ久々のクブシュ(”KUBUŚ” - Improwizowany Samochód Pancerny, Powstanie Warszawskie, Siespień 1944, Mirage HOBBY 1:35)の製作記。

●基本は前回の続きで、装甲車体の溶接線工作。

天井部分を除いて、ほぼ全周の溶接線を入れ終えた。

溶接線はオーソドックスに、伸ばしランナーを貼って流し込み接着剤で溶かして潰す方法。潰すための工具は主にペンナイフの背で、ほかに適宜、ピンセットの先、金尺の角、自分の爪の先などを使っている。細い溶接線を除いては、伸ばしランナーを最初に貼った時点で、一度ナイフの刃先で細かく輪切りにし、接着剤がよりしみ込みやすくした。

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以前にも書いたように、実車のクブシュは限られた材料を使い、半ば(あるいは完全に?)素人が溶接工作をしているために、以下のような顕著な特徴がある。

  • 溶接線が不揃いで、場所により太い/細いの差が大きい。同一ライン上でさえ、太さが変化している場合もある。
  • おそらく大面積の鋼板が入手できなかったため、戦闘室左右の1平面の部分も複数の鋼板を接ぎ合せてあり、しかも左右で分割が異なる。
  • 材料不足に加えて鋼板の切り出しも稚拙であるために、継ぎ足しやつじつま合わせの隙間埋めがあちこちにある。

したがって、工作においても、なるべく実車における溶接線の太さの差の再現を心掛けた。太さの差は、例えばこんな感じ。

20190723_123533

もっとも、「ここは太め」「ここは中くらい」「ここは細め」くらいのいい加減な区別で、しかも伸ばしランナーを潰す工作過程でも仕上がりの太さに差が出て来てしまうため、厳密に比較すると「あれ? ここはこっちよりも細いはずなのに……」といった箇所がちらほらある。

●前回、右側面の溶接線工作の報告の際も触れたことだが、操縦席/助手席左右の斜めラインは、途中で角度が変わっている。

ここについては、前回記事へのhn-nhさんのコメントで、「単に線の角度が変わっているだけでなく、溶接線が破線状になっているようだ。この部分は2枚の三角の鋼板を接いだのではなく、1枚の鋼板を破線状に溶断し、折り曲げたうえで、溶断部分を再び溶接で埋めたのでは」(大意)という観察と推論を頂いた。

確かに、特に左側面では溶接線が下端で消えてしまっていることなどを考えても、hn-nhさんの推論はかなり説得力があるように思う(ただし、実際に“折り曲げ工作”だった場合、他にも浅い角度で2面が合わさっている箇所はいくつかあるのに、なぜこの場所だけそのような手法を採ったのか、という疑問は残る)。

というわけで、右側面の当該位置の溶接線は破線状に入れ直し、また、左側面は最初から破線状に工作した。

20190723_183613 20190723_183555

●その他、現時点での溶接線工作に関するトピックスその1。

20190723_183512

戦闘室頂部前面装甲板は、切り出し精度が悪かったせいか、中央に継ぎ足しがあって溶接線がV字に二重になっている。これはレプリカ・クブシュにはない大きな特徴。また、操縦席前面の装甲板はきっちり左右対称でなく、中央の溶接線は斜めになってしまっている。

操縦席前面の視察口、助手席側の銃眼の“開け直し”工作痕についてはこの後に工作予定。

●トピックスその2。

ラジエーターグリル部上の三角形の装甲板は、キットと実車で形状がちょっと異なっている。

20190723_183537

キットでは写真のように下辺②よりも中央縦の辺①のほうが短いのだが、実車ではほぼ同じか、むしろ縦線①のほうが長い。溶接線を入れ直すことによって、形状の差が目立つことになってしまった。

もっともここを修正するとなると、前面全てを作り直すことになってしまう(そして細かいことを言い出すと、形状や角度にズレがあるのはこの場所だけではない)。というわけで、ここは見て見ぬふりに徹することにする。

●溶接線について未工作の天井に関しては、(せっかく実車が残っているにも関わらず)しっかり写した写真がネット上に見当たらず、なお調査/考証中。開けた上面ハッチを覗きこむような写真に、その前後がわずかに写っているものしか現時点では発見できておらず、想像交じりの工作を余儀なくされそう。

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コメント

溶接線の微妙なニュアンスが重要なポイントになる車両というのも面白いです。

例の折り曲げ装甲板ですが、まずは戦闘室まわりの搭状の装甲を組んでから前方のエンジン部に向けて貼り伸ばす時に省力化になるかもと折り曲げてみたけど、続いて同じ方法を繰り返すほど有利な工法ではなかったんでしょうね。

投稿: hn-nh | 2019年7月25日 (木) 21時39分

なにしろ、ディテールらしいディテールといえば溶接痕くらいなので……。

あとは、ラジエーター前面ルーバーの「不揃い具合」をどれだけ再現できるかが大きな課題です。

投稿: かば◎ | 2019年7月26日 (金) 19時36分

手作業の、長い溶接っていうのは息を止めるようにして均一に、
体をできるだけ揺らさないように引っ張っていくので偉い難しいみたいです。
ボランティアの溶接工たちの担当部分ごとに、
練度による差が出たんでしょうねって、
職場でベテランの溶接を見てて思いました。
製缶とかは、水密とか要求されなければ、
設計的に、長い溶接ってのは避けて、数十センチ単位での破線で済ませてるようです。
そういう主張を持った溶接工が一人いたんではないかなどと勝手に想像して楽しんだりしてしまいました。

投稿: みやまえ | 2019年7月27日 (土) 21時26分

確かに鮮明なクブシュの上面写真は見たことがないですね。
http://m.cdn.blog.hu/ka/karosszektabornok/image/blog77-03.jpg

陸軍博物館でよじ登った猛者はいないかしら...笑


どこまで信頼出来るかは分かりませんが、上面が写った図を...
http://tankmodels.pl/muzeum/kubus/kupus_ekner_01.jpg
(https://pwm.org.pl/viewtopic.php?f=18&t=12492)

投稿: vol de nuit | 2019年7月28日 (日) 12時09分

>みやまえさん

タルチンスキさんという人の書いた資料本の中に、クブシュの溶接について書かれているくだりがあります。何しろ機械翻訳頼りなので内容がいまいち不確かですが――

戦後、ポーランド軍事博物館にある「クブシュ」の溶接線が不揃いであることを指摘されると、(戦時中に溶接を担当したらしい)「シュチェプコ(コードネーム、本名はアドルフ・レシェク)」は、「素人だったのだからしょうがない」と答えた。

というようなことが書かれています。

ちなみに、薄板などを長い距離溶接する場合に、破線状で止めるという手法は、T-34の側部フェンダーなどがそうですね。

投稿: かば◎ | 2019年7月30日 (火) 09時22分

>vol de nuitさん

結局、天井板の溶接ラインは、次回記事のような感じになりました。
いやほんと、「せっかく実物があるんだから、誰か撮っとけよー」って思います。

投稿: かば◎ | 2019年7月30日 (火) 09時23分

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