II号戦車b型 THE WORLD AT WAR 1:72
●先日(令和初の購入キットとして)入手した、THE WORLD AT WAR 1:72のII号戦車b型(PANZER KAMPFWAGEN II ausf.b)の簡単なレビュー。
これに先立って発売されているII号戦車a1/a2/a3型についてはこちら。
以前にも書いたが、「THE WORLD AT WAR」シリーズはポーランドのメーカー、IBGのミニスケール専門のレーベル。同社では単にIBGレーベルでも1:72のAFVキットを出していて、「THE WORLD AT WAR」シリーズがどういう切り分けになっているのか少々はっきりしないが、とりあえず、今のところこのシリーズでは第二次大戦初期のドイツ戦車しか出ていない。
なお、少し前に書いたが、基本同シリーズは1:72スケールなのだが、IV号戦車系列は、どうやら設計の際に寸法を間違えてしまったらしく、最初のA型は「1:72」表記で出たものの、その後のB型以降は「1:76」表記に改められている。ミニスケールの72と76なんて誤差だよ!なんて開き直ることなく、スケール表示を改めたのは潔いと言えるが、そのため、同一シリーズで2種のスケールが並列するという妙な格好になってしまった。
また、1939年のドイツ・ポーランド戦の1:72両軍AFV/車輛/砲/フィギュアを出している「First to Fight」シリーズは、発売元は違うようだが、キットそのものはIBGが手掛けているようで一部設計データは両シリーズで共通している。
●キット内容。シリーズ共通の構成で、キャラメル箱の中身はプラパーツと、折りたたまれた実車解説の小冊子。小冊子は表紙を含めて16ページ、英語とドイツ語の併記(輸出仕様)。
プラパーツは枝3枚で、デカールが1枚。
Lパーツ(写真1枚目):車体、足回り。おそらくプラパーツとしては、これのみがこのキット専用のもの。
Mパーツ(写真2枚目):砲塔および装備品類。a1/a2/a3型キットおよびA型キットと共通。
Nパーツ(写真3枚目):マフラー、工具箱、スリットのないクラッペ等の小さな枝。A型キットと共通。
デカール(写真3枚目):塗装例2種に対応。ポーランド戦時の黄十字と、フランス戦以降のものと思われる第10師団第7連隊所属車(ステンシルのバイソンと大きな「5」の砲塔番号)。
●車体形状は前型のa1~3型とも、後のc型とも異なっているので、前述のようにb型専用のパーツ。a1~3型とはエンジンルームのディテールがかなり違い、車体長がa1~3型のほうが短い。b型では車体後部が延長され、後の標準型II号(c、A~C型)とかなり近い形状になるが、エンジン上部の傾斜面が後部でたち切れ、後端グリル部分が独立した形になっていたり、フェンダー後半部が後ろ下がりになっていたりと、なお若干の差がある。戦闘室後ろのハッチも、c初期型までの2分割式。
写真1枚目:b型の車体形状、特に後部ディテールはかなり頑張って再現している感じ。車体上下パーツの接合線の隙間が後端グリルに掛かっていて、何か方法を工夫して消すか、放置するかちょっと悩ましいところ。
写真2枚目:車体右側面の2つの燃料注入口の小丸ハッチ、その後ろのエンジンルーム側面吸気口は一体モールドの都合でやや不十分な再現度。これはa1~3型キットでも同様だった。右前部クラッペは、a1~3型キットでは別部品だったが、このキットでは一体モールド。なぜか、後の型の特徴であるはずの跳弾リブのようなモールドもある。
写真3枚目:車体前面に一体モールドされている牽引具と点検パネルは、a1~3型キット(右)と比べて位置がかなりずれている。小パネル上のリベットの数・位置が変更になっているのは実車もそうなのだが(a1~3型は7カ所か8カ所、b型は左右2カ所)、このキットのように、位置まで変更になっているのかどうか……。少なくとも、このb型キットの位置は(牽引具も含めて)ちょっと上過ぎる気がする。
●足回りはa1~3型と起動輪の形状が大きく異なり、後の標準型II号(c、A~C型)とよく似た形状になった。
ただし実際には、c、A~C型と全く同じではなく、おそらくファイナルギアケースの形状が違っているためなのではと思うが、b型の起動輪のほうが、後の型よりもふくらみ方が大きい。キットの起動輪はパッと見、後の型と同じくらいのなだらかさで、膨らみ具合が不足しているように思う。上部転輪はa1~3型よりも小径化されており、その辺はきちんとフォローされている。
ただ、よく見ると、a1~3型キット同様、履帯の巻き方が逆方向になっている。ロコ方式の一体成型なのでそもそも大したディテールもないため、それほどうるさく言うほどのこともないかもしれないが。
●砲塔パーツは、おそらく「THE WORLD AT WAR」シリーズのII号戦車すべてに共通のもの。Mパーツの枝に含まれるクラッペは、a1~3型に合わせてすべてスリット付きのものになっているが、b型以降用に、スリットのないフラットな形状のクラッペが別枝(Nパーツ)で用意されている。なお、私の買ったキットでは、砲塔ハッチ上のダンパーのモールドが、片側が型抜き時の事故で?潰れていた。
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コメント
茶帯の迷彩に黄十字をまとったバックショット。そそられるボックスアートです。
ミニスケールはプラ素材の厚みが直接的に見えてこないようにしたいところですが、後部グリルの合わせのところは悩ましいですね。サフ塗り込んで磨いたりして地道に目立たなくする、とか。
1/72と1/76なんて誤差かと思いきや、例えば180cmの人間が1.5mm近くの寸法差になるんですね。。
投稿: hn-nh | 2019年5月22日 (水) 04時41分
>hn-nhさん
「大戦初期のドイツ戦車はグレー一色」という昔の常識から、最近になってようやく「対フランス戦の頃までは1/3がブラウンの2色迷彩」が、なんとか納得できるようになってきました。
この新解釈が出て来て結構長いこと、「えー、ほんとなの?」と半信半疑だったんですが。
ちなみにこのキット、付属の小冊子に載っている「黄色十字の塗装例のカラー説明図」は、なぜかグレー一色です。
なんで箱絵と矛盾してるんだ?と不思議に思ったのですが、解説文には「1937年から1940年は、RAL7021のべースカラーに、RAL7017の迷彩」と明記してあるので、単純に作図のミスのようです。
a1~a3型とb型とでは、「どちらも小転輪のほぼ似たような型」と思いがちですが、同スケール(しかも同一メーカー)で並べてみると、a1~a3の「寸詰まり感」が判ってなかなか興味深いです。
こうなると本格量産型のA~C型も並べてみたくなります。
投稿: かば◎ | 2019年5月22日 (水) 22時51分
ランナー状態の写真を見ていたら、
子供の頃作ったエーダイグリップの四号線車F2型とかの記憶が蘇りました。
投稿: みやまえ | 2019年5月23日 (木) 20時51分
>みやまえさん
エーダイの76シリーズ、懐かしいですね。
あのシリーズは意外にマニアックで、クルップ・プロッツェとかありましたよね。
実は我が家にはエーダイのV2号セットのキットがあるんですが、無粋にもあちこち切り刻んでしまってて……。
投稿: かば◎ | 2019年5月25日 (土) 22時27分