ホルトの鈍牛(8) 履帯
●「週末模型親父」さんのところの「SUMICON2018」のエントリー作、RODEN 1:35、HOLT 75 Artillery Tractor製作記。
今回は「一応キットの履帯を使うんだけれども、もうちょっと見映えをなんとかしたい」編。
●キットの履帯は以前にも書いたように、表面(接地面)はそれなりだが、内側の出来が大雑把すぎる。
(1) 実物の履帯は、現在でも建機などにみられるように、リンク部分とシュープレートが別体の構造だが、改めて整理すると、
(2) リンク部分は左右2つずつの軽め穴があるが、キットでは省略されている。
(3) 連結ピン部外側のディテールがない。
(4) 転輪と接する部分は、実車ではレール状に逆L字断面になっているが、キットでは表現されていない。ここまでの3つに関して言えば、リンク部とシュープレートが一体成形されている以上、スライド型でも使用しない限りは仕方がない。
(5) シュープレートは実車ではプレスされた薄手のもので、当然ながら接地面の「ニの字」のリブ部分は裏側では窪んでいるのだが、キットでは鋳造なみの厚み。当然接地面に対応した窪みもない。
(6) シュープレート内側に、一見、何かしらのディテールを再現したように見える押し出しピン跡がある。
(7) 起動輪がやや小径であるのと関連して、履帯のピッチもやや短いようだ。
(8) シュープレート表側(接地面)には、(少なくとも軍用タイプとして使用されたものは)本来おおよそ浅いV字型のグローサーが(すべてのリンクに標準で)取り付けられている。動態保存されている現存実車では確認できないが、これは路面/地面を傷めないための措置かもしれない。
●以上の問題点のうち、(5)、(7)に関しては、おそらく履帯そのものを自作するしか解決策がないと思われるのでスルー。また(8)に関しても、凹凸のあるシュープレート表面にグローサーをフィットさせるのが大変であること(1枚だけとかならまだしも!)、前輪と履帯部分の高さの再調整も必要になってしまうことなどから目をつぶることにした。
●残りについても、当初は、(6)にある両側の押し出しピン跡を削るだけでお茶を濁そうと思っていたのだが、キットの履帯パーツは必要枚数より数枚多く、その余りを使って「お試し工作」したところ、ある程度なんとかなりそうなことが判明。リンク部分に若干手を加えることにした。
▼リンク部側面に2カ所ずつの軽め穴を開口。
片方の穴が噛み合わせのために広がるナナメ部分にかかってしまうため(実車はそうではないのだが)、綺麗に開けられるか不安だったが、細いドリルから段階的に開けることで、なんとか我慢できるレベルに。
本来は冶具など用意して正確に位置を決めるべきだが(ドリルスタンド的なものがあれば比較的容易なのかもしれないが)、私の環境ではいろいろややこしく、結局すべてフリーハンドで開けた。というわけで、実際にはかなり誤差があるのだが、ぱっと見「うわっ、ガタガタじゃん!」というほどでもないのでOKということにする。
それよりも、プラの質が柔らかく粘っこいため、開口部周囲にケバ立ちが生じて、これを綺麗に除去できないのが参った。
▼転輪と接する部分のレールを再現する。簡単な冶具を作成し、同じ形のプラバン片を量産(0.3mm厚を使用)。これを履帯リンク部両側に貼っていく。
▼貼り増したレール部分は余裕を持って左右にハミダシ気味にしているので、連結後にヤスリで幅詰めを行う。なお、もともとこのリンク部の幅は転輪フランジよりごくわずかに広めなので、転輪フランジ内側も少しヤスって、履帯が綺麗にはまるようにする。
なお、履板中央にも押し出しピン跡と思われる突起があるのだが、これは履帯を足回りに巻いてしまうとほぼ見えなくなるので放置した。
▼キットではつんつるてん状態の連結軸部外側を工作。先に削り落とした押し出しピン跡突起の再利用。面倒くさいので、見える外側にしか付けていない。
なお実車では、この部分は、履板側(リンク側)にドーナツ状の盛り上がりがあり、その中心に軸が見えているような状態。というわけで、工作はその点だいぶあっさり手を抜いているのだが、「ないよりはマシ」ということで。
●一応連結可動式とはいえ、チャラチャラと気持ちよく稼働するような状態ではなく、巻くのに苦労しそうなので、(若干の手戻り覚悟で)足回りに履帯を巻いた状態で車体に後付けできるよう、一工夫してみることにする。
というわけで、すでに車体にガッチリ接着してある起動輪軸を基部を残してエッチングソーで切断。先日組んだ転輪桁部分と位置合わせできるよう、後から取り外せるフレームを作って誘導輪を仮固定。
誘導輪外側の機構は、役割がよくわからないが、とりあえずキットのパーツ(写真3枚目)はちょっとお粗末なので少々手を加えた。
●とりあえず片側分の履帯工作が終わったので、足回りユニットに巻いてみた。だいぶ工作の手間を増やしてしまったが、こうしてみると、わざわざ手を加えた価値はあったと思う(手前味噌)。
足回り全体の各部バランスも、キットそのままの状態よりはだいぶ良くなった気がする。
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コメント
最近はいいペースで模型を作っていますな
切った貼ったとチョップもしていて
楽しんでいますね
飛行機の方は最近作ってないのかな?
ゲーム話だけど、
提督の決断新作、作ってくれないかなぁ?
最近海の河口とかで、ゴンズイ玉って見なくなったよね・・
投稿: 赤板先行 | 2018年9月20日 (木) 20時06分
エンジンの次は足回りとキャタピラ
工作の満点星状態ですが、もうピークは超えたでしょうか。
完成の日は祝杯ですね。
投稿: hiranuma | 2018年9月20日 (木) 22時30分
履帯工作は面倒くさくてとても一気に工作する気になれないので、もう片側分は今なおちっくりちっくり工作継続中です。
並行して操縦席回りをいじっています。
>あかばん
ゴンズイ玉かぁ……はっきりそれと分かったうえで、野生で群れて泳いでいるのは見たことがあるかどうか。
ゴンズイそのものは(毒びれがあるものの)食うと美味いらしいですな。
投稿: かば◎ | 2018年9月21日 (金) 08時15分
逗子海岸にある河口でも昔は見られましたよ
間違ってもボラの稚魚じゃないからね(笑)
私の田舎、那智勝浦町の海辺でも昔はどこにもいたんだけど、
最近は帰郷しても見かけなくなりました。
ゴンズイ玉に向かって飛び込めば漢になれる!
という風説の流布が懐かしいw
食べられるんだ?
じゃあ一度は食べてみたいですね
投稿: 赤板先行 | 2018年9月21日 (金) 10時41分
田越川(逗子の川ね)では、ボラの稚魚は最近でも頻繁に見られて、時によると川面がわしゃわしゃ沸き立つくらいの感じになっていることがあります。
投稿: かば◎ | 2018年9月21日 (金) 11時07分
きょう、三浦海岸に行ったら、波打ち際に一匹だけ小さいゴンズイがいました・・・つーか、三浦海岸はまだ海の家営業しててびっくりデス。
投稿: みやまえ | 2018年9月24日 (月) 21時16分