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TAKOM 1:35 SMK多砲塔重戦車

20180721_194249 ●先週土曜日、横浜VIOLKSに真鍮のL字材を買いにいったら、TAKOMの新製品SMK(No.2112, SOVIET HEAVY TANK SMK)が出ていて、このドンガラの大きさと諸キット高騰の折、税別5850円は割とお買い得なお値段だ、と思ってしまったこともあり、いそいそとキットを抱えてレジに並んでしまったのだった。

以下、簡単なレビュー。

●実車は、基本、KV重戦車の「出来の悪い前代」として名前が出てくることが多い、“一点もの”の試作多砲塔重戦車。

T-35の後継としてT-100と競争試作されるものの、揃って不採用になり、代わって、SMKの「縮小(短縮?)単砲塔型」であるKVが次代の重戦車として採用された経緯がある。1輌のみ作られたSMKはT-100とともに対フィンランド戦(冬戦争)に投入されるものの、行動不能になって放棄され、後に回収されたもののそのままスクラップになったらしい。

「見掛け倒しでなければよいのだがな」と言われて、実際に見掛け倒し以外の何物でもなかった某モビルスーツは、どうもこの辺の戦車をイメージしているような気がする。

名称のSMKは共産党幹部だったセルゲイ・ミロノヴィチ・キーロフの頭文字。この戦車が完成する何年か前にスターリンに粛清された(とされる)人物。もっとも後の大粛清の時代のように大っぴらに罪をでっちあげられて殺されたわけではなく、暗殺されて死後は(表向き)偉人として祭り上げられ、この戦車の開発工場も元々は「プチロフ工場」だったのが「キーロフ工場」(レニングラードスキー・キーロフスキー・ザヴォド)と改称されている。

同工場はSMKの後もKV(クリメント・ヴォロシーロフ)、IS(イョシフ・スターリン)と、開発した戦車に偉いさんの名前を付けて党に媚を売り続けるのだが、なぜSMKだけは父称の頭文字も入っているのか、後のKVとISは、なぜKEVやIVSにならなかったのかは不明。まさか3文字にすることで多砲塔を表しているとか……(←考え過ぎ)。

●キットは、上側面が一体の車体基本パーツ、および通常のプラパーツの枝が9枚。透明パーツの小さい枝、エッチング、ワイヤーロープ用のより線1本、デカールという構成。

▼車体基本パーツ

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パーツ全長は25cm弱。ピンゲート形式の射出成形で、樹脂の入り口としてのランナーは付いていない。ゲート跡は車体上面に数カ所小さく付いている。

前後の装甲板形状などは後のKVとよく似ているが、一段高いエンジンデッキなどはSMK独特のもの。エンジンデッキ最後部のミッション点検ハッチが2つ並んだ部分は、(側面のスジ彫りに示されるように)もともと後ろ下がりでルーバー付きだったものが改修された結果であるらしい(実車の話)。

キットパーツは、そのミッション点検ハッチだけでなく前部の乗降用ハッチも一体の大胆お手軽設計。3カ所の丸ハッチはそれらしく細部ディテールのモールドがあるが、KV初期型のディテールとは若干異なっている。実際にはKVと共通である可能性もあるのではないかと思うが、何しろ実車細部ディテールのクローズアップ写真など存在しないので確認しようがない。

▼足回りを除く主要プラパーツ

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C、D、Eの枝3枚。Cは車体床面・後面とフェンダー。Dも比較的大ぶりな、砲塔上面ほか装甲板パーツ。Eは砲塔側面、その他こまごまとしたパーツ。車外装備品に乏しいソ連戦車ということを差し引いても、だいぶあっさりしたパーツ数。

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パーツのクローズアップをいくつか。前面装甲板の操縦手用バイザーフラップは一体モールドで、スリットも開口していない。主砲・副砲はスライド型で開口しているが、ライフリング表現は省略されている。

Charsergeimironovitchkirov 2丁の同軸機銃と主砲塔後面の機銃はすべて7.62mmのDTという解釈になっているが、実車写真(右、wikimedia commonsより)を見ればわかるように砲塔後面の機銃は明らかにDTよりも長大で、ここは12.7mmのDShK38が用いられているようだ。というわけで、どこからか調達してくる必要がある。

訂正:「2丁の同軸機銃と主砲塔後面の機銃はすべて7.62mmのDTという解釈になっている」と書いたが、これは私のパーツ誤認。3丁入っているDT機銃のうち機関部もあるものは主砲塔上の機銃架用のもので、ちゃんと砲塔後面用は別にドゥシュカ機銃前半部が入っていた。

●足回り

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転輪類の枝(Aパーツ)と履帯の枝(Bパーツ)が各3枚ずつ。

不思議なのがAパーツで、転輪・サスアームが6組、上部転輪・基部が3組、起動輪・誘導輪が1つずつ。これが3枚入っているということは、(SMKの転輪数は片側7つなので)転輪は4つ、上部転輪・起動輪・誘導輪は1つずつ余る。明らかに「転輪が6つの車輛」に合わせたパーツ枝の設計になっている。

当然、「KVのキット化を考えている?」ということになりそうだが、このタイプの転輪(緩衝ゴム抑え盤の穴が8つ)はKVの試作車・極初期型にしか用いられておらず、転輪・起動輪は別物。謎。

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転輪パーツをトランペッターの「KV Big Turret」のもの(左)と比較してみる。トラペのものは中央の干渉ゴム抑え盤が別部品だが、それだけでなく、全体的にディテールはトラペのものの方が細かい。もっとも、SMKは前記のように細部ディテールのクローズアップ写真もないので、「いや、KV試作車の転輪は、SMKのものとちょっと違ったんだよ」と言われても返しようがない。

実際、SMKの写真では、KVでははっきり確認できるハブキャップ中央のポッチがないようにも見える。また、リム部の穴は大きい・小さいの2種があるようだ(キットは穴の小さいほうに近い)。また、最前部に用いられている転輪はリム部の穴がないようにも見える。なお、KV試作車ではゴム抑え盤のリブがないタイプも確認できる。

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履帯は非可動連結式。ディテール表現は「使えなくはないけれど何だか固いなあ」という感じ。SMKの履帯はKVの標準型履帯よりも幅が狭いので、通常のKV用別売履帯は使えないが、ブロンコの「RUSSIAN 650MM OMSH TRACK LINK SET FOR KV-1/KV-2」は、「KV-1/KV-2用」の名前を裏切ってKV-1s/IS用の幅になっているので、流用が可能かもしれない。このブロンコ製履帯の詳細はこちら。上写真の茶色のパーツがブロンコのもの。

なお、キットの説明書によれば、履板の必要枚数は片側110枚。ブロンコのセットは240枚入りなので、説明書の指示が間違えていなければ1セットで間に合うことになる。ケン太さんから貰ったブロンコ履帯に、意外なところで活躍の場が!?

●その他小パーツ類

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透明パーツは前照灯1つと、あとはペリスコープ。エッチングはエンジンデッキのグリルメッシュのみ。

説明書に出ている塗装例は4種、デカールは赤星、番号とスローガンだが、実際には、SMKで何らかのマーキングが施された写真はないはずなので、これらはおそらくフィクション。スローガンの「НАШИ СИЛЫ НЕИСЧИСЛИМЫ」は、戦時中のポスターなどにも確認できる文句で、たぶん「我らの力は計り知れず」くらいの意味。塗装自体も、説明書に出ている多色迷彩はフィクション。

●それはそれとして、今はホルト・トラクターを先に片付けねば。

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コメント

SMKを買ってる人がここにも..(笑)
激しく迷ってますが、ドライバーズハッチが一体整形など割り切った設計のようですね。まあ、開けたりするシーンもなさそうだからそれでいいと言えばそれでいいのかもしれませんが。

TAKOM製品では唯一持ってるパンター転輪を見る限りはディテール表現など期待できそうな感じでしたが、この勢いでKVシリーズに乗り込んでトラペのキットを過去のものに...ということにはちょっとならなそうですね。トランペッターのも金型技術はしっかりしたキットでしたし。あとは車両に対する理解の深さの話になってくるのかな。

投稿: hn-nh | 2018年7月24日 (火) 05時19分

ボコボコに撃ち込まれて擱座した状態を作ってみたらどうでしょうか?

投稿: hiranuma | 2018年7月24日 (火) 09時14分

>hn-nhさん

私も、仮にハッチが別部品だったとしても接着してしまうと思うので「一体であること」自体には文句はないのですが、どうも全体にいまいちピリッとしないんですよね。

本格的に手を入れるなら、転輪含め細部部品をごっそりトランペッターのKV-2初期型から持ってくるという贅沢な手もないわけではないんですが、そうなるとトラペのKVを2輌潰すことになるし、実際そこまでして劇的に良くなるってわけでもないし……。

TAKOMは結構「バリエーション制覇」的な出し方をするようなので、今後KVシリーズに進むこともあるのかもしれませんが(そこでこのパーツを使って極初期型も出す?)、この調子だとトランペッターは超えられない気がします。

>hiranumaさん

SMKの行動不能は「溝に落ちた」「カサパノスもしくは地雷にやられた」等複数説がありますが、ボコボコに撃たれたことはないんじゃないかと……。
もちろん「史実はどうあれ自由に作る」というアプローチもあるとは思うのですが。

投稿: かば◎ | 2018年7月24日 (火) 10時36分

Wikipediaには下のように記述されているので、どんな風にも解釈できそうです。
KV-1登場の際にドイツ軍から怪物と恐れられたのと同じだったら、、少しは意味が。
ただ、一度の戦闘で遺棄、破壊されただけならツマラナイ戦車だと。

1993年の冬戦争に1輌が投入され、その装甲は敵の対戦車砲に耐え抜いたが、雪溜りにはまり込んで(地雷または収束爆薬による肉薄攻撃による損傷説もあり)行動不能となり放棄の已む無きに至った。その後2ヶ月の間、地形と大重量のためフィンランド軍もこれを捕獲できず、またソ連軍は後にT-28中戦車を6輌も使って牽引、現場からの移動には成功したものの、結局そのまま輸送することは叶わず、現地で溶断されていくつかのブロックに分けて回収された。

投稿: hiranuma | 2018年7月24日 (火) 13時55分

>hiranumaさん

まさに「ただ一度の戦闘で遺棄、破壊されただけのツマラナイ戦車」なんですよ(笑)。

1939年12月17日にフィンランド戦線に送られ、翌18日の戦闘に投入されて、何らかの損傷で行動不能になって放棄されています。(「雪中の奇跡」より)

実戦テストを兼ねての出撃だったので、乗員7名のうち3名はキーロフ工場の工員だったとか。

投稿: かば◎ | 2018年7月24日 (火) 20時58分

で、ブロンコのR-2は?

投稿: はほ/~ | 2018年7月24日 (火) 21時26分

>はほちん

買いました(それだけか!)

投稿: かば◎ | 2018年7月24日 (火) 22時11分

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