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KV maniacsメモ(ガイドホーン無し1ピース履板)

●KV-1重戦車の砲塔形式メモも書きかけだが、その続きの前に小ネタをひとつ。

先日の記事(トランペッター 1:35 KV-1 1942年型鋳造砲塔(その3))で、「レニングラード包囲突破」ジオラマ博物館に展示されている現存車両(2輌あるうち、バッスル下が角型になった砲塔を搭載しているほう)について、

この車輛の履帯は「1ピースだがセンターガイドが全くないタイプ」を混ぜ履きしている点でも非常に興味深い。

と書いたのだが、今回はこのタイプの履板の追加調査報告。

なお、当該車輛のwalkround写真集のサムネイルはこちら。また、履板の特徴が判る写真の例は、こちらが裏側で、こちらが表側。(Dishmodels.ru)

●また、サンクト・ペテルブルクでの何かの式典に引っ張り出されてきたらしい、この車輛もセンターガイド無しの1ピースタイプを(上記車輛ほど多数ではないが)使用している。

ただしこの車輛の場合、JS用の650mm幅履板(2分割タイプ含む)も混ぜて履いており、履帯の幅が不揃いになっている(写真)。

●実のところ、上の現存車両のwalkaroundを見るまで、こんなタイプの履板があるとは知らなかった(そもそも上のwalkaround写真も結構前から見ているのに、気付いたのは割と最近だった)。

問題は、この履板が実際に戦時中のKVも使っているタイプなのかどうかだが、これに関しては、前回も紹介したサイト「Тяжелые танки КВ-1」から、比較的すぐに、このタイプを履いていると思われる実例を探し出すことができた。

実例1、および同一車輛の別写真

バッスル下が丸タイプの短砲塔を搭載。実は1枚目の写真は「グランドパワー」1997/10、p32上にも出ているもので、さんざん見慣れた写真のはずなのに、ガイドホーンが1枚置きになっていることをまるっきり見落としていた。

この写真からではガイドのない履板が本当に1ピースかどうかまでは確認できないが(以下の例も同様)、

  • 1941年型で用いられ始める2ピースタイプは僅かながらセンターガイド部分の突起があること。
  • 基本、1枚おきにガイド無し履板を使っているが、起動輪に掛かっている外側から見える部分では2分割履板は確認できないこと。

の2点から、ガイドホーン無し1ピースでまず間違いなさそう。

実例2。やはりバッスル下が丸タイプの短砲塔搭載車。履板の中央にまったく突起が確認できない。こちらもほぼきっちり1枚ごとに繋いでいる。

実例3、および(たぶん)同一車輛の別写真。これもバッスル下が丸タイプの短砲塔搭載車で、1枚おきに使用。

実例4。若干見づらいが、裏返った履帯の中にガイドホーン無しのものが混じっているのがかろうじてわかる。バッスル下が直線の371工場製砲塔搭載車。

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●KVの履帯について改めて整理。

800tank_fortepan_93766
(wikimedia commons、1939年型と思われるKVの足回り。履帯は標準タイプ)

▼極初期(650mm幅?)。

基本、KVはSMK多砲塔重戦車の縮小・簡略型として作られており、足回りの部品もほぼそのまま引き継いでいるが、量産にあたって若干の改設計が行われている。

SMKの履帯は後のKVの履帯とよく似ているが若干幅が狭く、これは、履帯外側の連結ピン・エンドが履板フランジ端とほぼ同じラインであることで判別できる。この履帯はKVの試作車両にも(全部ではないが)使われている。KV-1s以降、JSにも使われた650mm履帯と同じものなのかどうかは(私には)よくわからない。

このU-0の写真では、この幅の狭い履帯が使われているようだ。また、「翼」タイプの燃料タンクを付けた試作車U-7の写真では、標準の700mm幅の履板に交じって幅の狭い初期タイプの履板が使われていて、履帯の端のラインが不揃いになっているのが確認できる。

SMKと同じ、8穴タイプのゴム抑え板を持つ転輪(上写真参照)が生産初期のKVに見られることを考えると、この幅の狭い履板も、極初期の車輛に若干は使われている可能性がある。

▼標準タイプ(700mm幅)。後世の35戦車モデラーのために設定されたような履帯幅の標準型履帯(履板)。

起動輪と噛み合う穴から外側のフランジ部分は、上記極初期タイプや後の1s~JS用では正方形に近いが、この標準タイプではやや横長。ただし、履板同士の噛み合わせは極初期型ともJS用とも同寸法なので混用可能。博物館車輛ではJS用履板がしばしば入り混じっている(モスクワ中央軍事博物館のKVでは、まるごとJS用戦後タイプの履帯に置き換わっている)。

極初期タイプの項で述べたように、履帯外側の連結ピン・エンドよりもフランジ端のほうが外側に張り出している。

▼ガイドホーン無し1ピース履板(700mm幅)。今回の記事前半で取り上げたもの。写真資料から判断すると、後の2ピースタイプ同様、標準タイプの履板と1つ置きに混ぜ履きするのが基本であるらしい。

上に書いた当時の実例写真から判断すると、1941年8月前後の生産車の一部に用いられたものであるらしい。

▼2ピース履板(700mm幅)。ZIS-5搭載型(いわゆる1941年型)の生産半ばから標準的に用いられるようになった履板。標準タイプの履板と1つ置きに混ぜ履きするのが基本。後の1s~JS用履帯(650mm幅)はセンターガイドのホーンがまったくないのに対して、KV用の2ピース履帯はピースの分割部にわずかに突起がある。

パロラの1942年型の2ピース履板の裏側(legion-afv)。

▼一応書き足しておくと、KV-1s用には、当初、フランジを斜めに削ぎ落したような軽量型履帯が作られ、その後、再びフランジが角型になったものが作られた。後者は標準履帯と似ているが、幅は650mmに詰められている。後者は引き続き、後継であるJS戦車にも用いられた。

両タイプとも2分割タイプの履板と混ぜ履きされるのが標準だが、(特に後者の場合)1ピースタイプのみ使用している例もある。また、このタイプの2分割履板は、センターガイドにあたる部分の突起は全くない。

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コメント

なるほど、砲塔の装甲増圧など機動力低下への対策として軽量化のテストで作られたのかもしれませんね。それが2ピース履帯への伏線になってるのかな。
1つ置きガイドホーンはBT、T-34用履帯の系譜にヒントを得たものでしょうが、この形式が戦後のT54/55などには引き継がれなかったのは、やっぱり走行時のトラブルとかあったりするんですかね。

投稿: hn-nh | 2018年5月16日 (水) 05時41分

>hn-nhさん

軽量化もあるかもしれませんが、涙ぐましい資材節約の方策という可能性もありそうです。確かに、「T-34のセンターガイドは1つ置きだし、これも一つ置きでいいんじゃないか」と考えたというのはありそうですね。

2分割履帯に関しては、以前青木氏とT-34のそれをネタに話していた時、氏が「鋳型そのものを小さくすることで、中小工場でも生産しやすく/歩留まりを高くしたのでは」と推論していました。

結局、これらが戦後にメジャーにならなかった理由としては、上記のようなメリットが例えあったとしても、複数の種類を並行生産することの面倒さ、むやみにガイド無しだけ連結させられない使い勝手の悪さなどから、それなりに余裕が出て来た時点で廃れてしまったのでは、と想像しています。

T-34の場合は履帯の駆動形式と深く関わっているので、またちょっと問題が別ですが。T-34のクリスティー式の駆動法は、やはり通常のスプロケット式(歯車式)に比べ、起動輪と履帯の噛み合わせがゆるい等の問題があったのではと思います。

投稿: かば◎ | 2018年5月16日 (水) 09時26分

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