トラクター
●地元の図書館で「トラクターの世界史 - 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち」(藤原辰史著、中公新書)を借りてきて読む。以前、「T-34 maniacs」で交流のあった秋山東一さんが、ブログ「aki's STOCKTAKING」で紹介されていたもの。
実際にこの本の中でも触れられているように、トラクターと戦車とはほぼ表裏一体の関係にあり(とはいっても、戦車の源流がトラクターにあるということで、戦後は技術もメーカーも割と離れてしまった感があるが)、戦車の模型を作っていてもちらりちらりとトラクター関係の話が出てくる。それでいて、これまでトラクターの歴史を体系的に見たことはなく、ここでちょっとおさらいしておこうと思ったのが読むきっかけ。
本のテーマとしては、第一章にある、
モータリゼーションは都市だけでなく、農村の風景も労働関係も一変するほどの衝撃を与えたし、その衝撃がなければ、これほどまでに農村から人は離れず、これほどまでに農地が広く四角く平らにならず、これほどまでに地球の人口は増えなかったはず
という一文が端的に表していると思う。中身的にも、馴染みのメーカー、車名などが頻出することもあって、それほど飽きることもなく読み通すことができた。ただし、基本は「トラクターと農業生産の関わり」「トラクターと農家(人間)との関わり」が主であって、「トラクターの技術」それ自体については、PTO(Power take-off)、三点リンクというブレイクスルーについて以外はそれほど詳細ではなく、その点はちょっと物足りなさを感じた。
なお、「馴染みのメーカー、車名などが頻出する」と書いたが、例えばラインメタルが「ライン金属機械工業会社」だったり、なんとなく「普段接しているのと違う」感を抱く部分も。
また、「戦後、ソ連では余剰の戦車車体を利用した大型トラクターが使われ、これが土壌を踏み固めてしまったことがソ連農業の衰退を招いた」という「伝説」について何か言及がないかと思ったが触れられていなかった。改めて考えると「戦車車体利用の農業用トラクター」というもの自体の写真を見たことがない気がするので、都市伝説(農村伝説?)の類なのかもしれない。
●借りたのは「トラクターの世界史」より若干前だが(確か新年の第一週目)、おそらく新年の恒例行事化しているらしい、地元図書館の「本の福袋」も1セット借りた。「本の福袋」は、どこぞの図書館で始めて以来、日本全国の図書館に(割と安直に)流行しているもの。どこでも全く同じ方式なのかどうかは知らないが、少なくも逗子市立図書館では、本2冊1組で、内容が判らないように新聞紙でくるんであり、表に「ちょっとしたヒント」が書かれた紙が貼ってある。
どんな本が入っているかは借りてみてからのお楽しみ、普段読まないような本も、それでちょっと試してみましょう的な企画。
今回私が借りた福袋のヒントは、「どんな世界にも図鑑がある。」で、中身は「お店の解剖図鑑」および「ときめく微生物図鑑」だった。あまりヒネリがないな……。
ちなみに「ときめく微生物図鑑」は以前に借りて既読だった。
「お店の解剖図鑑」も昨日読み終わったが、こちらはさまざまな店舗デザインの「仕組み」を判りやすく解説した本。もっとも、色々な業態の店舗デザインの実例を並べた前半は、「(著者の好みによる)デザイン先行の店」「味はそこそこなのに店構えで金を取る店」といった傾向が(少なくとも私には)感じられてしまい、どうもイマイチ。
●バンダイのガシャポンで、「東京地下鉄立体線路 東京メトロ編」というのが出る(出た?)そうだ。前後編の2シリーズがあり、その2つで東京メトロ全線が揃うらしい。発売の記事はこちら。
ほほほほほほほほほ欲しい!
が! ……きっと買い始めると、「うわあ、また日比谷線だあ!」とかいうことになるんだろうなあ。
単純に営業キロ数でいうと、まず東西線、次いで有楽町線が長くて(同一価格のカプセルの中身としては)お得、ということにあるのだが、見た目的には大きく曲がっている上に分岐のある丸ノ内線が「当たり」な気がする。
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コメント
トラクターの歴史は、わたしも読みましたが、
いろいろなうんちくが楽しかったです。
赤いトラクターの歌詞まで乗ってましたね。
ウルススがクオ・ワディスからってかいてありましたね。
投稿: みやまえ | 2018年1月21日 (日) 22時55分
地下鉄の車両かと思ったら、トンネルの立体モデルだったのか!
高低差とかも表現されて、なんともマニアック。
欲しいような気もするけど買ってどうする..という気もするし。
幻の新橋駅とか青山六丁目駅..
皇居や議事堂周りの秘密のトンネル..
そんなシークレットアイテムがあったらドキドキ
投稿: hn-nh | 2018年1月22日 (月) 06時37分
>みやまえさん
小林旭の「赤いトラクター」は、私も結構耳にしみついてます(笑)。
ウルススについてはトラックのキットの製作記事の時に調べましたが、現在はほぼトラクター専業メーカーとして頑張ってるんですよねー。
ウルスス(クマ)の名称にちなんで、現在は歯車とクマを組み合わせたロゴマークを使っています。
http://ursus.com.pl/
>hn-nhさん
>>欲しいような気もするけど買ってどうする..という気もするし。
それって、ほとんどすべてのガシャポン/食玩に共通しますよね(笑)。
ちなみに大量に買い集めた「ワールドタンクミュージアム」は、パックのまま箱詰めにされて押し入れの中で寝ています。
投稿: かば◎ | 2018年1月22日 (月) 12時40分
>ウルススのロゴ
さすがに、姫にちょっかいを出したローマの拳闘士を殴り殺すポーランドのマッチョ男ってロゴには出来ないでしょうな・・・
投稿: みやまえ | 2018年1月22日 (月) 22時18分
>みやまえさん
クォ・ヴァディスが下敷きになっているとなると、クマはクマでも、単なる「力持ち」ではなく、「守護者」的イメージということなんでしょうね。
いや、「クォ・ヴァディス」自体読んだことがないので、内容もぼんやりとしか知らないのですが、「ウルスス」ってヒロインの護衛なんですよね?
投稿: かば◎ | 2018年1月23日 (火) 11時51分
>「ウルスス」ってヒロインの護衛なんですよね?
そうです。姫に欲情しないところがクリスチャンの鏡なのです。つーか姫とウルススはポーランドの蛮族なのに清く正しいクリスチャンなのです。
ペトロニウスは、姫に感化された甥に書き送ります。
「お前の神は、汝の敵を愛せよというが、わたしは、皇帝の周りの、醜いものは愛せない。」
この辺の、主人公を囲む登場人物たちの一本通った筋が素敵な小説でもあります
投稿: みやまえ | 2018年1月23日 (火) 23時07分
>みやまえさん
設定とか細かく知らないんですが、その姫君は、ローマの虜囚になってからキリスト教に改宗したんですかね?
今度図書館で借りて読んでみます。
投稿: かば◎ | 2018年1月24日 (水) 16時48分
キリスト教徒の蛮族がローマにとらわれてきたのです。
物語の始まりの次点では、キリスト教は何やら得体の知れない異教徒の宗教という扱いなのです。
そのポーランドの姫が水浴びしてる姿に一目惚れした、ペトロニウスの甥の、おじへの手紙から始まる話だったと記憶しています。
ネロの時代の物語というサブタイがあったような・・・
投稿: みやまえ | 2018年1月24日 (水) 21時41分
ポーランドがキリスト教化するより900年も早く!!
投稿: かば◎ | 2018年1月25日 (木) 02時17分
>ポーランドがキリスト教化するより900年も早く!!
その辺は、物語を盛り上げるなんていうか・・・(笑)
一読して損はないと思う逸品ですよ。
あと、ポーランドといえば、ゴーゴリの隊長ブーリバ
ポーランド対コサックの血で血を洗う野蛮な戦い
でも聖書は欠かさない・・・
投稿: みやまえ | 2018年1月26日 (金) 00時10分
>みやまえさん
「隊長ブーリバ」は、子どもの頃「少年少女世界の名作文学」で読みました(今考えると、あのシリーズって妙にマニアックな選択だった気が)。
コサックが包囲しているポーランドの街の姫君と、ブーリバの息子が恋仲になってしまうというような下りだけ覚えてます。
「少年少女世界の名作文学」は古今東西の作品を子供向け抄訳で、その国(地域)ごとに何編かずつ合わせて編集してあるシリーズですが(今でもあるのか?)、今考えると、妙にマニアックな選択だった気がします。
投稿: かば◎ | 2018年1月26日 (金) 08時58分
少年少女文学全集ってのは確か講談社と小学館と岩波のがあった記憶ですが、講談社のは古くて、前にかば◎さんが触れておられた「町から来た少女」(小学館のでしょうか)のKV戦車の落書きも、ただの「大きいタンク」という訳だったりします。
小学館のは小さいのとでっかいのと二種類あったようです。
これらソ連/ロシア編は、大祖国戦争者の比率が多いですね。
子供の頃は小学校や中学校の図書室や市の施設の図書室にズラッと並んでたんですが、今は絶滅してますね。なんかさみしいです。
たまにブックオフで100円とかで買えるので、見かけたらゲットしています。
投稿: みやまえ | 2018年1月27日 (土) 22時36分