ARMA HOBBY 1:72 PZL P.7A
●先日の「東京AFVの会2017」の折、下北沢のサニーで購入したもの。
ARMA HOBBYはポーランドの新興メーカーで、これまでにインジェクション・キットとしてはTS-11イスクラ、フォッカーE.Vなどを出している。メーカーのサイトはこちらだが、どうやらポーランド語だけのようだ。
「うわあっ! この機体の新キットが出るのを今か今かと待ってたんだよ!」という人は、少なくとも日本にはあまりいなさそうな気がするが、それだけに日本語のキットレビューなどどこにも出なさそうなので、簡単に中身について書いておきたい。……役に立つ機会は少なそうだなあ。
●実機について
1930年代前半、ポーランドのPZLで開発・生産された単発単座の戦闘機。ジグムンド・プワフスキ設計による一連のガル翼戦闘機のなかで、初めて量産されたのがこのP.7Aで、ポーランド空軍の主力戦闘機として約150機が生産され、1933年より使われた。
その後まもなく、エンジンが強化され機体も各部が手直しされた発展型P-11が登場。その主生産型であるP.11cの配備が1935年に開始され、主力戦闘機の座は受け渡したものの、余剰となったP.7Aは訓練部隊で使われたほか、1939年戦役時にもなお少数が実戦部隊で使われていた。
●キット概観
というわけで、「大戦時の主力戦闘機の1世代前」という微妙な位置にあるうえ、その主力戦闘機であるP.11cとは、外見上、素人目では「どこが違うの?」くらいの差しかないため、インジェクション・キットが発売されること自体ですでに驚けるレベル。
もっとも、今からたぶん30年くらい前だと思うが、ポーランドのPZWからやはりインジェクション・キットが出ており(もちろん持っている)、それを考えると、ポーランド本国では根強い人気があるのかもしれない。……たとえば九六艦戦的な?
ちなみにそのPZW社のP.7Aは、その後MasterCraftやZTSなどで箱替えで発売され、どうも最近でも売っているようなのだが、かなりプリミティブな出来で、このARMA HOBBYのキットが出た今となっては手を出す価値はほとんどない(そもそも当初は、このARMA HOBBYのキットも、PZWの箱替えではと少々疑っていた)。
私の買ったARMA HOBBYのキットは、箱の上部に「JUNIOR SET」と書かれているが、実は同社からは、同じP.7Aで、他にも「DELUX SET」「EXPERT SET」「EXPERT SET 1939」と、計4種出ている。
基本はどれもプラパーツ部分は同一のキットなのだが、私の買ったジュニアセットが廉価版で、ARMA HOBBYのサイトによれば32ズウォティ(1ズウォティは30円ちょっと)。エキスパートセット2種が52ズウォティで、デラックスセットが118ズウォティ。
それぞれ中身の違いは、
ジュニアセット:デカールは2種(1939年戦役時)で、エッチングは簡易版。
エキスパートセット:デカールがジュニア版より大判(ただのエキスパート版は戦前、1939版は1939年戦役時で、それぞれ4種に対応)。エッチングも大判。風防・車輪用カッティング済マスキングシート付。
デラックスセット:2機入りで、デカールはエキスパート版よりさらに豪華。ポーランド空軍のほか、ルーマニア空軍、ドイツ空軍も含む8種対応。エッチング、マスキングシートはエキスパート版と同じで、さらにレジンの自重変形タイヤが付く(当然それぞれ2機分)。
同じ廉価版でもエデュアルドの「ウィークエンド版」の場合は、ないとちょっと困るパーツ(例えば風防の外に付く照準環とか)も入っていなかったりするのだが、このキットの場合はジュニア版でも最低限のエッチングが付いているのが良い。
●基本のプラパーツはグレーの成型で枝1枚。1:72の小型単発の戦間機としてはこんなものかな、という感じ。
各翼表面は、細かな波板、いわゆる「コルゲート板」の表現が入っている。同じ波板でも、いかにもトタン板然としたユンカースよりもずっと細かい模様だが、モールドはなかなか綺麗。ただし、上下を貼り合わせた時に翼後縁はやや厚ぼったくなりそうな感じもあるが、モールドがあるので表から削り込むのは不可能。
方向舵下部の厚くなっている部分に若干のヒケが生じていたが、この部分は波板ではないのが救い。
コクピット部分の胴体内側にはリブモールドあり。床(というかフットステップ?)やシートが付くフレーム、計器盤など、コクピット内のこのスケールならほぼ十分なパーツが揃っている。
主脚は胴体下部の一部と一体に成型されていて、角度決めに苦労する必要がないだけでなく、脚の間にある燃料タンク部分も継ぎ目消しなどの作業が不必要になっている。
ブリストル「ジュピター」エンジンは前側のフェアリングと一体成型。ちなみに後のP.11cでは、グロースター・グラディエーターなどと同様、排気管はカウリング前面に集めてから後方に排出しているのだが、P.7Aではシリンダー前面から直接後方に取り回している。しかし箱絵ではカウリング前面がP.11風に焼鉄色になっているような……。
●エッチングパーツ&透明パーツ。
エッチングはカウリング(タウネンドリング)の支柱と照準環、シートベルトとコクピット内の若干の小部品。エキスパートセットでは、このほかに武装の別に対応したオプションの外板や、さらにこまごまとしたパーツが入っている。
透明部品は風防が2種類。側面形が三角形のP.7A用の風防と、上面が平らになって側面形が台形になったP.11c用の風防が入っている。一部のP.7AでP.11用の風防に交換されている例があるためだが、とりあえず、ジュニアセットの塗装例はどちらもP.7A用を使うようだ。……余ったP.11用はエレールのキットに使おうかな(合うかな?)。
ちなみにエキスパート版/デラックス版では、エッチングの風防枠と風防用透明シートも用意されているようだ。この手の構成は簡易インジェクションキットなどで時々見るが、素材的には薄さを表現するにはいいにしても、接着と塗装はどうするんだろう。
●説明書。カラー印刷なのは同じくポーランドのMirage HOBBYあたりと似ている。
ジュニアセットのデカールは先述のように2種で、シリアル「6.11」・機番「999」は飛行学校の所属機。飛行場でおそらく無傷で鹵獲され、ドイツ兵と一緒の写真ほか複数の写真が残っているようだ。
シリアル「6.120」・機番「青の1」は151戦闘中隊所属機で、おそらく退避基地で木の枝でカムフラージュされた状態でドイツ軍に接収されたらしい写真が残っている。一部外板がはがされ、プロペラがなくなっている写真がある一方、プロペラ付きの写真もあるので、小破したのは記念品漁りによるものかも。
デカールそれ自体はポーランド製としては割とお馴染みのテックモッド(Techmod)製。印刷はかなり綺麗。
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