ビッカース6t戦車(4) エンジンの謎
●「週末模型親父」さんのところの「New Kit Con」参加作品、CAMsのビッカース6t戦車(中国軍、指揮車仕様)の製作記の続き。といっても、今回は実際の製作というよりもああだこうだ疑問をこねくり回すのが主。
東京AFVの会に向けてwz.34も進めなきゃ、T-34も塗らなきゃ……なんて思いつつ、結局ちまちまビッカースを作っている。なんだかもう。
●そのビッカース。エンジンデッキ上の大きなグリルを仮組みしてみたら、角度によって床までほとんど丸見えになってしまうことが判明。過去のキットではここは抜けていなかったので油断した。
考えてみれば、左後方の通風孔も、メッシュは割と粗めなので中が覗けてしまう。
基本、内部をしっかり作り込む気はないものの、とりあえず「なんとなくそれらしく、何か入っている」くらいにはしないと情けないことになってしまう。その手掛かりとして、エンジンルーム内の資料を探してみたのだが、(その時点では)横方向からの透視図くらいしか見当たらず、何をどうしたらよいのやら。
●というような悩みをSUMICON掲示板に書き込んだら、キットの生みの親であるT.Wongさん自身から、「グリルの下にはラジエーターがあってエンジンなど見えないよ」(大意)というコメントを頂いた。
ええっ? ビッカース6t戦車って空冷エンジン搭載なんじゃなかったの? それなのにラジエーター?
……と思ったのだが、Wydawnictwo Militariaシリーズの#325“Vickers 6-ton Mark E-F vol.II”に掲載の図を見ると、しっかりグリルの下に「COOLER」と書き込まれている。な、なんと!(右図はその拡大引用)
そもそもWydawnictwo Militariaシリーズでビッカースが2冊に渡って出ているということさえ、hnさんに教えて貰って初めて知った。まあ、自国ポーランドがビッカース6tの最大ユーザーだし、当然出ていると思って然るべきだったような。何しろ、普通に「シャーマン」を出したうえで、「ポーランド軍のシャーマン」だけで2冊も出すようなところだし。
●それはさておき。ビッカース6t戦車のエンジンに関しては、手元の資料、C.Foss、P.McKenzie, “THE VICKERS TANKS From Landship to Challenger”, PSL(1988)には、
The first engine to be fitted as standard in the six-tonner was a horizontal four-cylinder air-cooled V8 Armstrong-Siddeley.
と書かれている。ここにはエンジン名までは書かれていないが、他では「アームストロング・シドレー『ピューマ』4気筒空冷エンジン」としている資料が多いようだ(キットの説明書にもそう書かれている)。
私も今までは、それを鵜呑みにしていたのだが、改めて調べてみると、なんだかおかしい。そもそも上の「VICKERS TANKS」の説明も改めて読むと「?」な点がある。「fiirst」って何だ? 後にMk.Fで別のエンジンになったことを念頭に置いてるのかな? しかし、「空冷4気筒」なのに「V8」ってどういうこと?
名前の出てきたアームストロング・シドレー「ピューマ」に関しては英語版wikipediaにも記事がある(最初に作られた時点ではアームストロング・ホイットワースとの合併前なので、記事名は「Siddeley Puma」になっている)。このエンジンはもともと航空機用で、第一次大戦末期、エアコDH9に搭載されて使われた(しかし性能がよくなかったので、その後生産はアメリカのリバティー・エンジンに換装されたDH9Aに切り替わった)。
そのwikipediaの記事では、「ピューマ」の搭載先として「Vickers 6-Ton light tank」の名前も出ているのだが……。DH9に搭載された「ピューマ」は(少なくとも記事に出ているスペック表や写真を見る限りでは)、液例6気筒なのだ。
航空機エンジンを車載用にデチューンするといった話はよくありそうだが、気筒数を減らして冷却方式を変えたら、普通、エンジン名称も変えるんじゃなかろうか。少なくとも全ての資料に共通する「アームストロング・シドレー」製は確かそうだが。
●もちろん今回の製作では、エンジン名称がピューマであろうがトンマであろうが特に関係はない(もしエンジンまで自作するというのであれば資料検索に必要になるが、今回はグリルからチラ見えする範囲がどうか、というだけの話なので)。
グリル直下にあるラジエーター(クーラー)に関しては、T.Wongさんより、重ねて、滑油冷却器である旨の書き込みあり。なるほど、それならエンジンが空冷でも付いているか……。
なお、ビッカース6t戦車に搭載されたエンジンが4気筒であること自体は、上掲の側面透視図でも何となくわかるし、また、同じWydawnictwo Militaria“Vickers 6-ton Mark E-F vol.II”に出ているエンジンそれ自体の解説図でもわかる(ちなみにWydawnictwo Militariaには、特にエンジン名は書かれていないようだ)。
そこで改めて気付いたのは、直列4気筒のエンジンを、左方向に横倒しにして搭載していること。最初に上記「VICKERS TANKS」で「horizontal four-cylinder air-cooled」と書かれているのを見た時は、「なるほど、水平対向4気筒なのか」なんて思っていたのだが、「水平」なだけで全然対向じゃなかった……。しかし、直列を横倒しにしているなら(水平対向じゃなくても)エンジンルームが低いのも納得できる。ちなみに、Wydawnictwo Militariaの内部図から判断するに、左側に倒したシリンダーの下に冷却ファンがあり、そこからダクトになって後部の通風孔から暖気が出ていく、ということらしい。
というわけで、後部左通風孔の下は基本ダクトなのでがらんどう。誘導輪基部の受けと、排気管が通っているのがちょっと見えるかな。
とりあえず、「見える範囲」とはいえ、エンジンらしきものをでっち上げる、などという事態には陥らなくて済んだようだ。よかった……。現在は、(ライセンス型であるT-26を含め)グリル下のオイルクーラー(仮)がどれくらいの大きさのものかを調査中。グリル幅いっぱいに作っておいてええんかいのぅばあさんや(誰や)。
●その他の細かい進捗。
(1).誘導輪基部の履帯張度調整部(パーツC1、C2)は、調整用の「金てこ」を突っ込む穴が浅くモールドしてあるだけで開いていないので、コリコリと穴を削った。
(2).先述のように、このキットは、成型方向の都合上で略してあるボルト・ナット類に関しては、ランナーにモールドしてあるものを削り取って移植せよ、という(それなりにこだわっている人には嬉しい)設計。エンジンルーム上のグリル部分にも移植が必要な部分がある。
前部の斜めになった部分の6本に関しては、ぺろんと1枚エッチングを貼るオプションも用視されている。ボルト列の位置を揃えるにはそのほうが楽そうだが、ボルト頭が薄く、また貼る際に瞬着で汚しそうな気もしたので移植を選んだ。後部左右の2本ずつは、説明書では貼り付け位置が曖昧だが、上面左右枠内側ラインよりも、さらにやや内側、という感じのようだ。
●ところで、ニュースサイトを見ていたら、いきなり、
おめでとうございます
最新版iPhone 7でさらに多くのテストユーザーが必要なため、あなたのDesktopが選出されました
参加するにはOKを押し、iPhone 7をゲットしましょう
という、怪しさ120%の文言+OKボタンの画面に切り替わってしまった。うわっ。なんじゃこりゃ。
今どき、こんなものに引っかかる奴が……ということ以前に、普通のニュースサイトを見ていて、いきなりフィッシング画面に飛ばす手口が「どうなっとるんじゃ」という感じ。
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コメント
下にフィンランドのヴィッカースがガバッとグリルを上げた写真がありますよ。
車体のガワが違いますが、たぶんこれに準ずるんじゃないかと。
st.otvaga2004.ru/wp-content/uploads/2012/11/otvaga2004_photo11.jpg
otvaga2004.ru/tanki/istoriya-sozdaniya/tank-vikkers-finskij/
あと、下にT-26のマニュアルからラジエター周りの画像を上げました。ほぼ同じみたいですね。
gizmolog.cocolog-nifty.com/photos/zl/t26_radiatora_01.jpg
gizmolog.cocolog-nifty.com/photos/zl/t26_radiatora_02.jpg
投稿: セータ☆ | 2017年12月15日 (金) 20時07分
「スパムコメント対策のため、このコメントは非公開の状態で受け付けました」
URLを貼ったら上のメッセージが…(^^;)。内容を確認下さい。
投稿: セータ☆ | 2017年12月15日 (金) 20時10分
>セータ☆さん
ありがとうございます!
うおおおおお。これは助かる……。
フィンランドの“ビッケルス”写真は結構漁った気になっていたんですが、こんな戦時中のソ連側の鮮明な調査写真があるなんて知りませんでしたよ。
URL入りのコメントは、どこのコメント欄でも苦労しますね。
ご面倒掛けて済みません。
一応、ここのコメント欄は「URLは自動的にリンクする」設定にしてあるので、もしかしたら「http://」が入っていた方が受け付けられやすいかもしれませんが、とはいっても、URLが3つ4つと入っているとやっぱりダメかも……。
投稿: かば◎ | 2017年12月15日 (金) 20時34分
うおぅ!これはすごい!
これだけあればエンジンルームが再現できそうですね。
グリル越しにちらりと見えるラジエターの下のエンジンを再現、とか...笑
ラジエーターを跳ね上げてエンジンにアクセスする構造。バレンタイン戦車も確かそんな感じだったと思ったけど、この頃そんな配置が流行ったんですかね。
投稿: hn | 2017年12月16日 (土) 06時31分
>>これだけあればエンジンルームが再現できそうですね。
いやいや、本当、行けちゃいそうですね。
やりませんよ! やりませんけれども!!(笑)
投稿: かば◎ | 2017年12月16日 (土) 10時29分