ビッカース6t戦車(3) ギアハウジングの迷宮
●CAMsのビッカース6t戦車(中華民国軍、指揮車タイプ)の製作記の続き。
●起動輪基部のギアハウジング(C32、C33)には左右の別があるが、ダボ穴位置などには違いがないので、間違えやすいかもしれない。
ギアハウジング外周に等間隔に並んでいる小突起は、車体側から止めるボルトの受け部分なので、これが両側で揃うようにする。もちろん、説明図の「C32對側C33」――(図示されているのが)C32で、反対側がC33、という指示をちゃんと読み取れば間違わないはずだが。
こういう部分は、最近のタミヤならダボに変化を持たせるなどして「そもそも間違えるとうまく取り付けられない」状態にしているのが普通。その辺、「神経、行き届いてるなあ」と感心するし、実際、ストレスなく組み立てられるのは楽しいのも確かなのだが、一方で、もしもキット設計につぎ込める「こだわり」の総量が同じなのであれば、タミヤの場合、フールプルーフさはそこそこでいいので、もっとディテールの正確さに気を使って欲しいような気もする(わがままな話)。
●閑話休題。上の写真にも写っているが、ギアハウジング外周のやや大きめの2つの横U字型の突起は、どうやら、グリースポイントか何かのボルトの基部であるらしい。
しかし、これは(ソ連におけるライセンス生産型である)T-26系列ではこの位置に確認できるものの、オリジナルのビッカース6t戦車では位置が違っている可能性がある。
右写真は6t戦車の改良型であるMk.Fの当該部分の拡大。黄色矢印が、キットでは突起がある部分。赤矢印にはキットにはない突起がある。
このへん、当時の実車写真では、不鮮明だったり、履帯の陰に隠れていたりして、なかなか確認しづらいのだが、少なくとも、フィンランドに現存しているビッカース6tでは、キットのパーツの位置に突起がないことははっきり判る。
ちなみに、フィンランドのが輸入したビッカース6tは数輌が現存しており、ネット上にもそこそこ写真が上がっている。特に細部の詳細に関しては、以下のwalkaround写真集が非常に有用。
問題個所のクローズアップも多数あって、例えばこれを見ると、上のMk.Fの写真と同じ配置になっていることがわかる(フェンダーに隠れる上部にももう一つ、ボルト頭がある)。
しかし悩ましいのは、「フィンランドの6t戦車がそうだったとしても、中国(もしくはポーランド)の6t戦車もそうであったとは言い切れない」こと。
6t戦車は顧客(輸出先)のニーズや製造時期によって細かく差があり、なかでもフィンランド仕様はイレギュラーの度合いが大きい。実際に、このギアハウジング周辺に関しても、ハウジング部の車体内側に斜めに突き出している(やはりグリースポイントかと思われる)ボルト頭付きのバルジは、他国の6t戦車には見られない。
ただし、ギアハウジング外周部のレイアウトに関しては、とりあえず、
- ボービントンにある現存車輌も、どうやらフィンランドの車輌と同一配置(ただしこれもMk.F規格車体の後期型)。
- ポーランドの6t戦車は、おそらく上と同一配置(少なくともこの写真を見る限り、キットの位置に突起はなさそう)。
- タイの6t戦車も、この写真の車輌は、キットの位置に突起はないようだ。
- ボリビアの現存双砲塔型。この写真では陰になっている上に不鮮明だが、どうやらキットの位置に突起はなさそう。
- 中国軍車輌で断言できるほど鮮明な写真は見つけられなかったが、「う~ん、前面(キットの位置)にはボルトはないかな?」と思えるような写真が数枚。
というわけで、今一つ確証は得られないものの、こればかりうじうじ悩んでいてもしょうがないので、意を決して工作してしまった。結果が右。突起上のボルト頭は、トライスターのIV号戦車のサスペンション基部不要部品から。
なお、ポーランドにおけるライセンス生産型、7TPはまた事情が異なり、もっと多数の箇所に突起がある模様(ただし試作車はビッカース6tと同じ?)。
●起動輪は外側スポークと内側ディスクの間に補強用のロッドがある、マチルダの起動輪などと似た構造(というよりも、マチルダが6t戦車の起動輪を参考にしたのだと思うが)。
キットは小さなロッドのパーツ(Ab1)を起動輪内外のパーツで挟み込むようになっているのだが、工作手順上も、またパーツのゲート処理も面倒臭そうだったので、起動輪内側パーツにドリルで穴を開けてしまい、内外を貼り合わせたあとで、エバーグリーンのプラ材の細いロッドを差し込んだ。ちなみに穴の裏側は、どのみちギアハウジングがかぶるので見えない。
なお、起動輪内外の接着は、一応パーツに位置決め用の工夫はしてあるが、実際には角度はゆるゆる。内外の歯が揃うよう、慎重に接着する必要あり。
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コメント
かば◎ さん
起動輪基部のギアハウジングの形状は正面から拡大したクリアーな写真がないと分からないので難儀ですね。分解しているものがあれば尚いいのですが日陰の箇所なので判然としないことが多い部分です。
ケッテンクラートの場合もいくつも写真を並べ見比べて理解し、ボルトの窪みを作って六角ボルトとボルトナットを付けました。
投稿: hiranuma | 2017年12月 7日 (木) 17時11分
>hiranumaさん
なにぶんにも、中国軍ビッカースも、ポーランド軍ビッカースも現物はまったく残っていないので、周辺から「状況証拠」を固めていくしかありません。
非常に隔靴掻痒です。
投稿: かば◎ | 2017年12月 8日 (金) 18時28分