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改めて披露山(前編)

●逗子市西北端に近い披露山の山頂一帯は市営の披露山公園として整備・公開されているが、ここはかつて海軍の高角砲陣地であり、円形の花壇・展望台・サルの檻は高角砲の台座を流用している。

――という話は以前から何度かここで話題にしているのだが、これに関し、hnさんがブログで面白い探訪・考察記事を上げていて、改めて興味をかきたてられたので、8日土曜日、散歩がてら出掛けてみた。

●そもそも「高角砲(高射砲)の台座を流用」といったところで、花壇・展望台・猿舎に作り替えるために掘り返してしまい、当時の名残りというのはせいぜい「円形であること」程度なのではないか……と、ずっとボンヤリ思っていた。

要するに、元の状態として、横須賀・猿島の高角砲台座のような状態を思い浮かべていたのである(下写真)。ちなみに、終戦直後に書かれた横須賀海軍警備隊「砲術科兵器目録」によれば、据えられた火砲は披露山(小坪砲台)も猿島も同じ12.7cm連装高角砲(正式な名称は四十口径八九式十二糎七高角砲)であったらしい。なお、猿島要塞探訪記についてはこちら

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しかしhnさんの記事によれば、特に猿舎は、ほとんど当時の高角砲陣地の原型をとどめているのだという。

猿舎はすり鉢状に2m近く窪んでいて、コンクリートの壁面には8カ所?の壁龕があるが、これは弾薬仮置場ではとのこと。hnさんが紹介しているこちらのサイトでは、山口県にある高角砲台跡(および当時の写真)が載っており、確かに披露山公園の猿舎内と瓜二つ。

これに関しては私が繰り返すよりも、hnさんの考察記事を読んでいただく方が早い。

披露山公園、あるいは小坪防空高角砲台(前編)
披露山公園、あるいは小坪防空高角砲台(後編)

実際にどのような感じに砲が据えられていたのか、hnさんは簡単に図面も起こされていて、これも判りやすい。

改めてウェブ上で披露山の高角砲陣地について検索すると、猿舎がほぼ砲台の原型を保っていることについて言及しているところもいくつかあり、私がそれらを読み飛ばしていただけだった。迂闊。

●そんなわけで、改めて撮ってきた写真を中心にあれこれ。その前におさらい。

以下は逗子市西北部の航空写真(国土地理院地理空間情報ライブラリーの「地図・空中写真閲覧サービス」、2014年9月撮影のCKT20141-C5-8より切り出し・加工)。

Ckt20141c5801a

中央やや右の黄色矢印が披露山公園、中央下のオレンジが大崎公園(後述)、左端上のピンク矢印が西小坪海面砲台跡。

その他の大まかな説明をしておくと、右下の砂浜が逗子海岸。中央の小判型の住宅地が、逗子のビバリーヒルズ的高級住宅地である披露山庭園住宅。他と比べて1軒ごとの建物のスケール感がちょっとおかしい。大崎公園左上が小坪漁港で、その隣の埋め立て地が逗子マリーナ。写真左上端にある岩礁のようなものが、鎌倉時代に船着場として作られた和賀江島

下は、披露山山頂付近のみを切り出し拡大、終戦直後の状態と現在を比較してみたもの。写真は同じく国土地理院の「地図・空中写真閲覧サービス」からで、終戦直後のものは1946年2月に米軍が撮影したUSA-M46-A-7-2-84、現況は上写真と同じCKT20141-C5-8より切り出し・加工。

Usam46a728402 Ckt20141c5802a

前述のように、高射砲の台座は3基分作られたのだが、実際の砲は2基しか配備されず、現在展望台になっている場所には測距儀か何かが据えられていたらしい。実際、上写真でも、真ん中のマルは上下とちょっと違って写っており、いくぶん窪みが浅いようにも見える。

●山頂の北東側、一段低くなった平場は、現在駐車場として利用されている(上写真①)。終戦直後の写真に写っているように、この場所には、もともと兵舎と思しき大き目の建物があったらしい。

20170708_144802

駐車場の東側突き当りからは細い山道があり、その先には憲政の神様と呼ばれた尾崎行雄(咢堂)の旧宅「風雲閣」跡がある(その向かい側は三文文士の元東京都知事邸だ)。これを記念して、駐車場中ほど北側には、尾崎行雄の記念碑が立っている。

駐車場の南側からも浪子不動(高養寺)に降りる山道があり、ハイキングコースの案内板が立っている。駐車場からこの道筋を少し降りたあたりに数カ所、コンクリートブロックでふさがれた横穴がある(上写真②のあたり)。高射砲陣地用の弾薬庫だったのではと思われるが詳細は不明。この2枚の写真は1年半ほど前に撮ったもの。

F1014344 F1014341

駐車場から山頂広場に向けてゆるいスロープになっており、その中途にもコンクリートでふさがれた横穴跡のようなものがある(上写真③)。

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これも弾薬庫だったのか、それともこの上にも監視所・指揮所関連の建物があったようなので、その地下室と連絡していたのか。

スロープを登った右手には現在レストハウスがある(上写真④)が、これは監視所跡であった由。上の建物は新しいが、スロープ側に入口がある半地下はコンクリートの頑丈そうなもので、おそらく当時まま流用されているのではと思われる。

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●スロープ上から山頂広場を望む。手前に花壇、中央奥に展望塔、左手奥にちょっと隠れて猿舎が写っている。

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まずは花壇(上写真⑤)。二重の縁石に囲まれていて、その間は細いドーナツ状の池になっている。こんなにせせこましい池なのに(公園案内板によれば、3つの高射砲台座跡はすべて直径12mだそうだ)ザリガニが繁殖していて、子供たちのザリガニ釣り場になっている。ちなみにここのザリガニは結構スレていて、エサのさきいかを挟むまでは行くのだが、釣り上げようとするとするとすぐに離してしまうため、小さな網を持って行かないとなかなか捕まえられない。

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閑話休題。流石にこの花壇こそ原型との共通点は丸いことくらいしかないんじゃないか、と思ったのだが、hnさんによれば、他の2つ同様、もともとのすり鉢状のコンクリートの構造物はそのまま残っているらしい。どのように改造されたかの詳しい推察はhnさんの記事に譲るが、hnさんが実際に池に手を突っ込んで確認したところ(偉い!)、池の外周の壁面は垂直でなく、内側に向けて斜めになっていたという。外周は砲台そのままで、単にその上に縁石を載せてあるらしい。

長くなったので続きはまた改めて。

●「RWBY」のテレビ放映が始まったのだが、なんと大幅に中身が端折られていた。なにこれ。DVDプロモ用の撒き餌か何か? 吹き替え版で話が分かりやすいので続けて観たいとは思うけれど、かなりガッカリ。

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コメント

以前逗子海岸から鎌倉の方へ歩いていこうとしてトンネルが「歩行者通行禁止」だったんで山道に入ってみたらこの公園に出たのですが、高角砲陣地だったのですね。
当時ボケっと見た猿の檻が旧軍独特の掘り下げ式の砲座あとだったなんて気が付きませんでした。
写真をよく見れば、うちの裏にある砲台山と同じ構造っすね。こっちは高校生の頃から本に載ってる高射砲陣地の写真と同じだなとか眺めてたのに・・・
今の季節はマムシとか出るんで裏山は登りたくないですが、秋になったら見に行ってみようかしら。

投稿: みやまえ | 2017年7月 9日 (日) 21時52分

>みやまえさん

ああ、みやまえさんの新作ツンダップについてそちらの掲示板に書き込みを!と思っていたのに、先を越されてしまいました(笑)。

それにしても、みやまえさんのご近所にそんな面白そうな場所があったとは。「砲台山」で検索して、確かにヒットしました。まさに同形式ですね。
ハイキングコース沿いとのことですので、近々、ぜひ見に行ってみたいと思います。

投稿: かば◎ | 2017年7月 9日 (日) 22時01分

小坪へと抜けるトンネルを無理矢理歩いてみたら、車がビュンビュンと通り過ぎてずいぶん怖い思いをしました。地元の人はみんなどうしてるのでしょうか?

それにしても披露山の住宅街を上から見ると変ですね。そこだけ膨張したのか遠近感が強調されてるのか...航空写真を見てると飽きません。山の端に三文文士(笑)の家も写ってるし。

展望台の場所の台座が空撮で浅く見えるのは、周りに土塁がなかったのからなのかもと思いました。測距儀での観測の邪魔にならないようにしていた可能性あり。

投稿: hn | 2017年7月10日 (月) 18時50分

>hnさん

>>小坪へと抜けるトンネルを無理矢理歩いてみたら、車がビュンビュンと通り過ぎてずいぶん怖い思いをしました。

え? ええ?
それって、いったいどこのトンネルですか?

まさか134号線のトンネルを歩いたんじゃ……(と言いつつ、私も134号のトンネルの新宿-小坪間を一度歩いたことがありますが)。

基本、小坪と逗子市街、小坪と鎌倉間のトンネルで人が歩いてOKのトンネルって、小坪の北端の県道311号のトンネル群(お化けトンネルとして有名なところ)と、姥子台の上の小坪隧道くらいしかありませんよ。

投稿: かば◎ | 2017年7月11日 (火) 21時46分

>>まさか134号線のトンネルを歩いたんじゃ……

まさに134号線。海岸沿いに材木座まで歩きたかったので... 抜けた後も小坪漁港に降りる道がなかなか見つからず。その時は知らなかったのですが、お化けトンネルを歩くのも微妙ですね。小坪から鎌倉に抜ける134号のトンネルは、穴の向こうにぽっかり海が見えて綺麗でした。抜けると和賀江島も目の前で。

投稿: hn | 2017年7月12日 (水) 19時16分

>hnさん

あのトンネルは歩行禁止ですよ(笑)。

逗子海岸から鎌倉まで歩くには、

▼七曲り(尾崎行雄の風雲閣に至る坂道)もしくは浪子不動脇からの山道を登って披露山に登り、小坪漁港方面に降りて、飯島崎・六角井脇を通って材木座に抜ける。あるいは披露山から小坪小学校方面に降りて姥子台を越えて材木座に出る。姥子台から南ヶ丘団地に入って光明寺の裏に降りるという手もあります。

▼披露山に登りたくなければ海岸から披露山の山すそ沿いに歩いて陸橋を登り、小坪切通を抜けて(八風堂という閉店寸前の模型店あり。土日のみ閉店セール営業中。スケールモデル弱し)、突き当りを漁港方面に行くか、お化けトンネル方面に行くか。

▼県道311号(いわゆる水道路)を通ってお化けトンネルをくぐる。

▼県道311号から久木新道バス停手前で降りて、史跡「名越切通」を歩い大町に降りる。

って感じですかね。

ちなみに、134号線からは、一応、漁港方面に降りる道があります。

>>小坪から鎌倉に抜ける134号のトンネルは、穴の向こうにぽっかり海が見えて綺麗

飯島トンネルですね。助手席から写真を撮る人多いです(笑)。

投稿: かば◎ | 2017年7月12日 (水) 20時59分

かば◎さん、ルートガイドありがとうございます。こういうのはGoogleMapでは分からないですよね。(いずれそういう機能も実装されそうですが...)

陸橋を渡って小坪切通しのルートは、先日の砲台調査で通りました。
八風堂ありましたね。こんなところに模型店!というロケーション。閉店セールと書いてありましたが電気も消えてて..土日のみOPENだったのですね。

逗子で模型店と言うと、桜山の消防署の手前にいい感じの模型店があったでしょうか。向かいに風情のある八百屋も。

投稿: hn | 2017年7月14日 (金) 18時32分

>hnさん

ちなみに、小坪の住民(私のような山の上の新住民ではなく、もともとの漁港の住民)が、とりあえずバスは使わずに徒歩で街に出る、ということを考える場合は、逗子駅前に出るよりも、飯島崎を通って材木座に出るほうが簡単です。

もっとも、そこから鎌倉駅前まで行こうとするなら、また結構歩きますが。

>>桜山の消防署の手前にいい感じの模型店があった

つばさ模型ですね。
ただしここも、最近は週末だけの営業じゃなかったかな……。

八風堂がなくなると、ここが逗子で唯一の模型屋さんということになります。週末だけでもいいので、なるべく長くやってくれるといいなあ(と言いつつ、私もだいぶ長いこと行ってないのですが)。

投稿: かば◎ | 2017年7月14日 (金) 22時11分

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