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wz.34装甲車リベンジ

●5月アタマから、週末模型親父さんのところの「SUMICON2017」がスタートしている。

期間は10月末までの長丁場の、AFVモデルのwebコンペで、レギュレーションは例年通り、製作過程を掲示板で報告し、あれこれ皆でコメントしあって盛り上がりつつ完成を目指そうというもの。

今度こそクブシュを作ろうかとも思ったが、結局、あれこれ考えてwz.34装甲車を作ることにした。

wz.34装甲車は、かつてポーランドの小メーカーCERTIから初のインジェクション・キットが発売された。CERTIはこのキット一つだけで消滅してしまったが、キットは数レーベルを転々として、現在はMirage HOBBYから出ている。現在でも35のインジェクションはこれが唯一。

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上段がCERTI版とその中身、下段がMirage版とその中身。基本パーツは同じだが、Mirage版は、

  • 箱絵がまともになった。
  • タイヤが別物になった(ただしディテールは五十歩百歩)。
  • 説明書が豪華カラー印刷。
  • デカールが大判で綺麗(ただし中身はだいぶ疑問有り)。
  • 砲塔上に掲げられるペナントが両面印刷の紙で付属。
  • Mirage製のMG34のパーツ枝が付いてドイツ軍鹵獲仕様に対応。
  • 金型の手入れをしたのか、あるいは単に成型状態の差か、若干パーツ表面が綺麗。

などの違いがある。なおCERTI版には写真の白箱と、グレー箱の2種がある。グレー箱が初版だったような気がする。なお、初版はプラ色がダークブルー(ホイールのみこげ茶)だった。

私自身はCERTI版が発売された直後に一度作ったことがあるが、当時は「wz.34装甲車が出た!」というだけで嬉しかったので、パタパタ組んでタミヤエナメルを筆塗りして完成させた記憶がある。

さすがに自分でもかなり不満の残る出来で、いつかもうちょっと気合を入れて作りたいと思っていて、このブログでも、過去、(その後あれこれ出てきた資料をもとに)若干の考証をまとめたことがある。

wz.34装甲車メモ
wz.34装甲車メモ(2)

なお、wz.34装甲車のインジェクション・キットは、その後、1:72ではFTFから旧型・新型2種の装甲車体それぞれのキットが発売されている。レビューはこちら

●CERTIのキットが出た当時に比べるとかなり資料的に充実してきたとはいっても、実のところ、なお謎の部分が多い。

wz.34装甲車は、もともとハーフトラック形式だったwz.28装甲車を改装して作られているが、エンジン・駆動系の違いによってwz.34、wz.34-I、wz.34-IIの3形式があり、さらに装甲ボディ形式に新旧の2種がある。MirageおよびFTFは、キット名称として、新型装甲ボディのものを指してwz.34-II(旧型をwz.34)としているのだが、これは少々怪しい。

基本の数値データ(全長、全幅、全高、ホイールベース)などは各資料にあるのだが、これも所々「えっ、それホント?」という部分がある。以下は「WRZESIEŃ 1939」(WKŁ)より。最初の数字がwz.34、カッコ内がwz.34-II(ということになっている)。

全長:3620mm(3750mm)
全幅:1910mm(1950mm)
全高:2220mm(2230mm)
前輪トレッド:1180mm
後輪トレッド:1470mm(1540mm)
ホイールベース:2570mm(2405mm)
グランドクリアランス:250mm(230mm)

「Wydawnictwo Militaria No.318」ではwz.34-IIの前輪トレッドが後輪と同じ1540mmになっているが、これは明らかに間違い。あとはwz.34のグランドクリアランスが257mmとやや大きくなっているだけの差。

さて、ここからがだんだんややこしくなってくるのだが、前述のように、wz.34、wz.34-IIという形式名称は駆動系の差にあり、それでホイールベースやトレッド(全幅)が変わってくるのは納得できる。が、全高あたりは装甲ボディの形状で決まりそう。

また、上記数字を信用すると、ホイールベースが約15cmも短いwz.34-IIのほうが全長が10cm以上長く、wz.34-IIは、wz.34に比べ、シャーシ後端が後輪よりもかなり後ろに出っ張っていることになる(前輪端が前端であるのはどの形式でも変わらないと思われるので)。

20170513_011228 このあたりに関する考察に関しては、「PIBWL Military Site」の中のwz.34解説ページがなかなか詳しく説得力もあるが、そこでは、(キット名称や一般的な印象とは逆に)旧型装甲車体のほとんどはwz.34-IIだったのでは、というようなことが書いてある(英語なので読み間違えていたら失礼)。また、上記数字データのうち「wz.34-II」のものとなっているのは、旧型装甲ボディのものではないかと推察している。

図面に関しては、一応、手に入る既存資料のものを比較してみたのが右上写真。一番奥のマンガっぽいカラー図は「WRZESIEŃ 1939」。右下の外形図と中上のシャーシ図は「Wydawnictwo Militaria No.318」のコピー。左の2枚は「PIBWL Military Site」の参考図を1:35相当に引き延ばしたもの。

一見、一番もっともらしいのが「Wydawnictwo Militaria No.318」の図面なのだが、実はこれはだいぶ怪しい(そもそも側面図と平面図で寸法が合わなかったりする)。特に旧型装甲ボディの図面は明らかにおかしく、実車写真と各部バランスが食い違っている。むしろ見た目では牧歌的な「WRZESIEŃ 1939」のカラー図や、同じAdam Jońca氏の図面を元に若干の手直しをしたという「PIBWL Military Site」の(図面というには小さすぎる)図のバランスの方が信用できそう。

結局のところ、上記諸元数字を信用するとしても、装甲ボディ等々細部寸法は、後2者の図等を参考に、自分で「えいやっ」と決めるしかないようだ。

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コメント

てっきり何かのトラックを装甲板で囲ったものかと思ってましたが、ベースはハーフトラックだったんですね.. そうなるとホイールベースの数値も信頼できるものなのかということになってきます。先日の図面と写真と重ねた検証図ですが、写真の遠近補正を作図で行い、側面図、平面図の補正をしてみました。
http://imgur.com/HJVgnBr

写真から推定したフロントグリルは前輪車軸の直上辺りか?そのあたりは要検証。
そんなこんなでMilitariaのwz.34 本を眺めてましたが、確かに作りたくなる車両です。wz.29なんかもイタリア軍のAB40をさらにヨワヨワにした雰囲気でいい感じ。

投稿: hn | 2017年5月18日 (木) 09時13分

>hnさん

PDFファイル、確かに頂きました。
おおお。さらに大幅パワーアップしている……。
大いに参考にさせて頂きます。
まずは御礼まで。

投稿: かば◎ | 2017年5月18日 (木) 13時32分

上記の検証図、追記と訂正です。
修正図(PDF)Dropboxにアップしておきました。
共有機能でダウンロードできます。参考までに
https://dl.dropboxusercontent.com/u/14080826/wz.34_drawing_170519.pdf

先日の図で車体側面の折れ線の位置に誤りがあったのと、砲塔形状が変形八角形になるのが正しいのか検証を兼ねて、正面図などから精査しました。

結果として写真との整合性は向上したものの、砲塔が元図面のような正八角形ではなく前方が伸びた変形八角形になる現象は解消されません。他の写真で見ても前方が長いような気もしますが、確証はありません。これについては、写真の遠近感で横方向で周囲が圧縮されることも加味する必要もありそうです。

いずれにせよ、決め手になる情報が不足しているので、写真からの検証はこれぐらいが限界でしょう。
上記修正PDFにて補正した図をThe-Blueprint.comにあった図面にも重ねてみました。これもまた解釈が違うので、どれも参考図以上にはならなそうです。
結局のところは見た目で似てるかどうかという判断が重要なのかもしれませんが。

先日の検証図など不確かな情報で混乱を招いてしまっていたら失礼いたします。

投稿: hn | 2017年5月19日 (金) 18時23分

重ね重ね有難うございます。

平面図の側面ラインに関しては、「あ、ここhnさん間違えてるな~」と思っていました(^^;)。いや失礼。
ここは新図のようにドア(…になっているのは左側面だけですが)後端まで一直線になっているのが正解だろうと思います。
ちなみにキットは……「なんじゃこりゃ」って感じですが、ドアヒンジのちょっと前側のところで(ドアの前から2/3くらいのところ)で折れています。

砲塔に関してなのですが、私はとりあえず正八角形底面で作ったものの、それ以前から、「もしかしたら正八角形じゃないかも」疑惑は抱き続けています。
写真によっては、どうも前左右斜めの面の下辺が、側面に比べて長いように見えるものもあるんですよね~。

「Wydawnictwo Militaria No.318」の平面図で、砲塔側面が不等脚台形になっているのは側面図とも矛盾しますし、写真から判断しても間違いだと思いますが。

投稿: かば◎ | 2017年5月19日 (金) 19時56分

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